転生疑惑な破天荒の彫魂革命   作:スダホークを崇める者

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グランサガポケットの方で色々衝撃的な情報ががが
まあ大体プロフィールなんですが、このまま使っていいものかどうか
なお放置ゲー気味なので軽くやれるのが長所ですな


91. 令嬢もまた波に乗る

 

正騎士任命式及び特別近衛騎士任命式……無事に完了した。

それにしても、我ながらああいうのは本当ガラじゃない。

この時ばかりはとつい張り切っちまったが、あれで本当に良かったのやらか。

ヨシトラおじさんを参考にしたんだが、俺じゃあ半分汲めてせいぜいだろうからねえ。

 

「というわけで、俺は暫しスイッチオフとさせてもらおう」

「いきなり怠惰全開かよてめえ……ったく、本当に同一人物なのか疑いたくなるな」

「いっつも肩肘張られるよりかは幾分かマシだけど、ここまで落差が酷いのは流石にねえ……」

「そこは言いようじゃないかな……って擁護したいところだけど、確かにもう少ししゃんとしてほしいね」

 

お小言エルフコンビはまあいいとして、ラスまでそんなこと言わんでもええだろうが。

というか、任命式の最中やたらそそっかしい様子だった天災の方にも何か言ってくれ。

少なくとも今は短いながらのオフなんだから充電させてほしいんだが。

 

「気を抜くにしてももう少し品と言うものをですね……ああもう、いつぞやのように椅子から滑り落ちないでください」

「ほら相棒、しっかりしないと今度は雷が落ちちゃうぞー?」

 

雷?そんなものリトルグリフォン装備の耐性で無効化すればいいだろうが。

……って、ちょっと待った。

今、明らかに先ほど特別近衛に任命した人間以外の声が聞こえた気がするんだが。

そういや、終わった直後からしれっと一人分の気配が増えていたような……。

 

「──ユフィ、お前が何でここにいやがる。いつからちゃっかり属性なんて得た?」

「え、いつ9つ目の属性が現れたのですか?少々長いのが気になるところですが……」

「分かっててボケかますな、流石にその口ぶりは無理があるぞ」

 

何で魔法ないし顕魂術の属性の話になるんだよ。

 

 

「ええっと、てっきりマッド様が事前に容認していたからこそユフィリア様も連れたのだとばかり……」

「俺もてっきり何かお考えがあるのかと思って何も言わなかったのですが……申し訳ございません」

「マッドなら気付いてないってことは流石に無いよねーって普通思っちゃうよ。ここはむしろユフィリア様を褒めるべきじゃない?」

「むしろウチもまるで気付けなかった!何かもう、マッドの隣にいるのが自然だーって風だったし」

 

……ああうん、確かに御尤もな言い分だな。

キュイは言い方こそ気になる部分はあるが、嘘をついている顔ではないし。

ウィンとセリアードは俺の意図を変に読みすぎた結果だ、責めちゃいかんね。

さーて、そうなってくるとだ……。

 

「エルフ二人、お前らは全てを理解してて何も言わなかったクチだろ?」

「あそこまで自然な半歩後ろを歩く姿なんて見ちゃったら、いちいち咎めるのも野暮ってものじゃない?」

「明らかに不審者ならまだしも、このご令嬢ならいちいち言う必要もねえだろ」

 

あ、こいつらやっぱ有罪だわ。

先日新たに会得したものの復習ついでだ、主からのありがたい折檻を食らわせてやろう。

魔力を凝縮しつつ、黒龍の別側面をイメージしては腕に乗っけて……これでも食らえ!

 

「いった!?ちょっと、わざわざ術で作った手でデコピンするヤツがどこにいるのよ!?」

「完全に俺とばっちりじゃねえか!?しかもこっちが気を失わないギリギリを突いてきやがって……ぐ、かなり頭を揺らされてるぞこれ」

 

『アブソリュート・デコピン・フォース』!…………うん、クッソダサいな。

ちょっと強いデコピンってだけにしておこう、うんそうしよう。

 

「それにしてもさっすが相棒、悪魔の指でデコピンなんて面白~い!ウチもやりたいからちょっと教えてよー!」

「……あんなの食らったら私は吹っ飛んじゃうから、マッドの事はあんまり怒らせないようにしようっと」

 

安心しろ、ロム助の場合は物理的に折檻はしないから。

さて、狼藉者に軽めの罰も与えたことだし……お次は当の潜入者の方だな。

 

「ナマリエの戯言はさておき、何でしれっとこの場に混ざったんだよお前は……」

「この次は魔法省暗部への対応や顕魂術についての会議ですよね?僅かながらでも防衛に参加した私にも出席義務があると思い至り、合流した次第ですが」

「前も言ったが、こっから先はどうなるか分かったもんじゃねえんだぞ?そもそもお前は、今だからこそ姉上の助手業務の方に力を入れろっての……」

「……先日も言いましたが、もう置いて行かれるつもりはありませんよ」

 

……まあ、要するにあの時の押し問答の続きってわけなんだが。

キーストーンを用いた暗部貴族に対して、少なくとも防戦出来るほどの奮戦を見せていたとか何とか。

それ即ち、劣化版とはいえ大量のゴーストナイトやら影の番人やらは捌き切るという最低限の成果は上げているということだ。

確かに、そんじょそこらの魔法使いよりは戦力としては遥かにマシであることは疑いようはない。

が、アル兄さんはおろかガークやエイパほど信頼できるかは未知数だ。

そんな無条件にホイホイと首を縦に振るわけには行かねえよ。

 

「マドラーシュ様の言うことは一理ある。ユフィリア様が暗部との戦いにも首を突っ込むなど、父君であるマゼンタ公爵がお許しになるとは思えません」

「そこはデイジーおねえさんとかが根回しすれば大丈夫じゃない?あのおじさん、グランナイツに頭が上がらないっては話じゃん」

「キュイ、アンタも大概えげつないこと言い出すわね……」

「実の娘がいる前であのマゼンタ公爵をおじさん呼ばわりする辺りもな?ったく、毎度ながらチビは肝が据わり過ぎなんだよ……」

 

身も蓋もない言い分を平然とかます辺りは、流石は天災キュイ。

これからも保守派とやり合うなんてことになったらこいつも連れて行っちまおうかと思うくらいだ。

いや、絶対に場を滅茶苦茶にするだけだからよっぽどじゃない限りはやらねえけどな?

あーでも、どうしても話を聞かねえドアホを脅す分には丁度いいか……?

 

「父については私自身で説得してみせます。魔学と顕魂術という2つの新概念の橋渡しとなれるのは私だけ……突破口は既に見出しておりますので」

「双方のアプローチを取るって寸法か……ユフィリア様の最大の武器はそこだから、そうせざるを得ないか」

「要するに王女様の乗ってた箒とか、あの時飛んでた変なのと顕魂術がごちゃ混ぜになるかもってこと!?何それ面白そうじゃんウチも乗った!」

 

魔学と顕魂術、双方の連携事態は興味がないわけじゃない。

このはしゃいでいるキュイの召喚型顕魂術『ファイヤーサモンムム』から顕魂術側でも精霊石の使い道は出来てきたわけだしな……。

逆に魔学側で顕魂術のアプローチ、ないし兼用する手段が出てくるかもしれないし。

……だが、それくらいじゃあ首は縦に振れないな。

 

「それだけじゃあユフィがここから先の戦いに加わらなければならないって理由としては弱すぎるだろ。それこそエリオ姉さん辺りの方がよりスムーズに行くからな」

「何でこういう時だけ年不相応に頑固なのよアンタは……甲斐性くらい見せなさい」

「無茶言うな。俺だって別に意地悪で言ってるわけじゃねえんだぞ?」

 

そこに甲斐性も何もあってたまるかって話だろうが。

こっからはどこまで突っ込んでいくかまるで分からんし、きっちりついて来られるという保証なんざどこにもない。

足手まといになる、とまでは思わねえが……こちとらこの国の成り立ちそのものに犯罪予告をすることも厭わない。

そうなると、公爵家という地位が逆にしがらみを生み出して……結果ユフィが無駄に苦しむことになる。

そればっかりは俺として本意ではないってだけの話で、ウィンとかラスはその辺り分かってくれてる風なんだがなあ……。

 

「あの、マッド様……私から一つよろしいでしょうか」

 

見事なまでの堂々巡りに待ったがかかる。

ここまであまり口を開かなかったセリアードからの鶴の一声だ。

てっきりウィンと同じく慎重派かと思ったが思わぬ伏兵である。

だが、元々は愛弟子であり今はれっきとした臣下……耳を傾けないといかんか。

 

「私は記憶喪失で、戦う力なんてまるで一切なくて……それこそ今の時点で防衛線に参加できるユフィリア様よりよっぽど足手まといだったと思います。恐らく今でも迷惑をかけていると思いますが……」

「……いや、今のセリアードはもう俺たちの陣営にとって唯一無二だろ?」

 

加入当時は戦闘に関してはズブの素人で箱入りだったからか身体能力でも厳しかったな。

それでも弱いままでいたくないからと、俺たちに置いて行かれまいと足手まといになるまいと必死に食らいついて……。

あの頃を思えば、もはや別人そのものだろうに。

相も変わらず控えめだねえ……この間共闘したであろうティルティは大絶賛だったというのに。

 

「……マッド様やラス……いえ、みんなに助けて貰えなかったら今の私はありません。記憶を含め何もかも無くしても、ここにいることが出来たから……私はここまで来ることが出来たんです。だから、その……彼女にも私と同じように機会を与えてくださらないでしょうか」

 

……今度は自分が先達となって後押しをする構図、か。

まさかセリアードがここまで言っちまうとはねえ……これは一本取られたか?

 

「……俺もセリアードの言うことに賛同するよ。確かユフィリア様を心配する気持ちも分かるけど、本人の意志を真っ向から捻じ伏せるのは良くないよ……いつもなら『上等!』って言いながら快く引き受けるところじゃないか」

「そうそう、むしろ変に過保護発揮しちゃうとあちこちから勘繰られちゃうんだからいっそどっしり構えちゃおうよ!」

 

ラスとロム助まで加勢、これまたかなーり御尤もな忠言のおまけつき。

ああくそ、ここぞとばかりに絶妙に反論しづらい理屈ばかり並べやがって。

ここで突っぱねるのはこいつらの主としてどうなんだって気になってきちまったじゃねえか……。

こうなっては、もはや潔く白旗を揚げる以外無いだろうがよ。

 

「……しゃあねえ、今回もきっちり折れてやるよ。セリアード、ラス、ロム助の助力には大いに感謝しとけよ?」

「押し負けた癖に上から目線というのはどうなのですか……?」

「お前だっていつぞやか似た返ししてただろうが。ここくらいはおあいこにさせろっての」

 

せめてものお返しだ、それくらい許容しやがれ。

 

「ナイスアシストよセリアード!毎日コツコツと私のコレクションを読破していった甲斐があったってものね!ラスも幼馴染の事情となれば一気に有能になって助かるわ!」

「はい、実際そんな場面を読書会の時に読んでいたので何とか生かせました!」

「ナマリエ、セリアードと打って変わってその言い方は酷くない……?」

 

セリアードになんちゅうもん読ませてんだよこのスイーツ脳め。

その素直な気性をまんまと利用された形ってことじゃねえか。

しかもこの俺がセリアードには強く出ないことまで計算に入れやがって。

くそったれ、見事に行き場が無いぞこのやるせなさ。

 

「これで顕魂術に加えて魔学でも色々実験出来るー!あ、でもマッドの相棒の座だけは譲るつもりはないからね!」

「仲間に入れて早々火種ぶち込んでんじゃねえよチビ!そもそも問題行動の共犯者なだけだろうが!」

「申し訳ない、ユフィリア様。キュイに関しては些か活発が過ぎることが多く……問題児そのもので。後できっちり叱っておきます」

 

早速キュイがいい感じで引っ掻き回すであろう兆候を見せてくれてちょっとだけ昇華された。

悪友兼相棒の座はお前の特権だ、安心して居座ってくれ。

 

「まあとりあえず、本当にと・り・あ・え・ず俺は許してやらなくもないが……グランツ公の方もちゃんと話は通せよ?そこはお前らの問題だから一切関与するつもりもないのであしからず」

「分かっていますとも。流石にそこまで手を借りるほど面の皮が厚いつもりはございません」

 

まあ、そこで俺に縋るようなタマじゃねえのは分かってるがね。

ただグランツ公も大概一本気だ、そう簡単には行かないだろう。

勘当騒ぎとかになりかねない状況にならねえよう、プリシラに仕込みを頼んでおくかね……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

私は現在、息を殺して歩を進めている。

……ここは私の住まいであるはずなのに、何故こんなことをしなくてはならないのかと尋ねたくもなるが、その葛藤も必死に抑え込む。

僅かながらの痛みに堪えながら、我ながらなかなかに涙ぐましい努力である。

そもそもが、いい加減動いてもいい頃合いのはずなのだ。

だってこれくらい歩けるし、足音だって消すことくらいなら何てことない。

 

「私は辿り着くんだ……我が楽園まで、後少しなんだ……!」

 

あの扉さえ開いてしまえば、もう私を遮るものは何もない。

あそこでは、数々の未完成品が私の事を待っているのだ……!

逸る心を何とか抑え、じわりじわりと我が工房の入り口との距離を縮めて……。

 

「一体どこに行こうと言うのですか~?」

 

……なんて時に上手く行かないのは世の常ではある。

でもね、まさか前世でも聞き覚えがあるまくるセリフで遮られるとは思わなんだ。

ブリキのような動きで背後を振り開けると、そこにいらしたのは……ユフィと似た長い銀髪のお姉さん。

すっごいいい笑顔なんですけど、見るからに笑っていません。

 

「まさか、アニスフィア様までどこぞのおバカな弟みたいなこと、したりしませんよね~?ね~?」

「ちょっとクリスティーナ待って、これは……そう!リハビリの一環なの!だから見逃してほしいというか……」

「なるほどなるほど~、それはいい心がけですね~。でも何でわざわざ盗人のようにコソコソと工房に忍び込もうとしてるのでしょうか~?」

 

……正直に言おう、これは明らかにヤバイ。

とんでもない程の圧を掛けられてしまって身動きすら取れなくなっちゃってるし。

説教モードの母上ですら可愛く思える程の恐るべしプレッシャー、これがかの破天荒の天敵ってわけ……!?

しかもこういう時のストッパーになってくれるはずのイグノックスもいないというおまけつきだ。

え?マッドくん絡んでないからスルーする可能性が極めて高いって?

そうなんだけど、今は藁にでも縋りたい気分なんだよ。

まあ結局は抵抗空しく、駆け付けてきたイリアに私はズルズルと引きずられてしまったのだった。

 

「全く、そういうことはせめてアイツレベルの隠密が出来るようになってからにしなさい。そんなだからいつまで経ってもトンチキなのよ」

「見てないで助けてよティルティ!呪い大好きで寝る間も惜しんで研究するアンタなら、この苦しみは分かるでしょうが!」

「私は普段からそうならないように努めているもの。後先考えない行動ばかりとる自分の浅はかさを呪いなさいな」

 

……ああうん、ティルティの救援を期待した私が愚かだったよ。

呆れ半分、愉悦半分で見ているだけだから取り付く島もないのは当然だ。

結局、私はクリスティーナに首根っこ掴まれたまま自室に引き戻されることとなった。

果てしなく不敬な扱いなんだけど、そんな不平不満をぶちまける勇気など私には無い。

 

「工房や魔道具は逃げないというのに、何故おとなしく出来ないのですか?いらない手間をかけて申し訳ございません……クリスティーナ様、ティルティ様」

「レイニの予後観察のついでにアニス様の監視なんて造作もないわ。イリアがわざわざ頭なんて下げなくて大丈夫よ」

「イリアもまだまだ本調子じゃないんだから、どんどん頼ってくれていいんですよ~」

 

クリスティーナ、スイッチの切り替えがえげつないくらいに早い……。

というか、あのイリアにお姉さんぶることが出来るのも彼女くらいだろうなあ……。

あれ、そもそもクリスティーナの方が年長なんだっけ……いや止めておこう、同性と言えど女性に年齢の話はNGだ。

ちなみにレイニの方は、魔石をぶち抜かれたとは思えないほどの回復を見せているとか。

セラの治癒がそれはもう凄まじい効力を発揮していて、魔石の方もきっちり元通りの形で収まったようだ。

そういえば、血が足りないってことでマッドくんがこっそり血液供給してたっけ。

……当然のようにユフィにバレては、即ドナドナされてたけど。

同じくこっちの離宮で防衛線を張っていたイリアとユフィも殆どダメージは無い。

強いて言うなら、戦闘時間が長かったイリアの方に魔力枯渇や軽傷があったくらいか。

そんな事態に備えて現在こっちの離宮に一時配属となったのがクリスティーナ、というわけだ。

 

「全くも~、この手の人たちは辞書からお休みという言葉が抜けちゃってるのでしょうか?もうちょっとユフィリア様やセリアードを見習ってほしいものですね~」

「これくらい動けるようになったんだし、ちょっとくらい研究に戻ったって問題ないと思うんだけど……」

「アンタのちょっとは問題しかないのよ。モーリッツ相手にムキになってドラゴンの力を酷使した挙句精魂尽き果て、更にキーストーンの魔力込みの攻撃をいくつか掠ったせいで刻印にも乱れがあるおまけつき。全会一致で絶対安静を言い渡されるのも当然でしょうが」

 

……と、ティルティが懇切丁寧に説明してくれた通りではある。

あの腹の立つ態度に翻弄された上に消耗戦を強いられたことで私は完全にガス欠にさせられてしまった。

その上、マッドくんと交代する前からアイツはキーストーンとか言う怪しい物体から魔力供給は受けていたわけで。

紛い物とは言え、人の身を大精霊相当の存在に変質させるだけの魔力による攻撃は掠っただけでも結構影響があった。

後からマッドくんにその魔力を取り除いてもらい、クリスティーナ、セリアードの二人から治癒の顕魂術を受けたから何とか歯止めは利いたみたいだけども。

 

「……モーリッツと戦ったって意味では、マッドくんにだって同じことは言えるんじゃないの?」

「あっちはただただ徹夜で戦っただけで、むしろ仕方ない側面もありますからね~……それに、ユフィリア様がきっちり後始末をつけてくれたそうですし」

「まあ随分と怪しいところだったらしいけれども……マッド様、その内食われるんじゃないの?」

 

こら、いくら何でも品が無さ過ぎるぞ引き籠りめ。

それにしても……やっぱりあっちは基本的にお咎めなし、か。

モーリッツ戦では色々と無茶苦茶してた気もするけどね……自分から視覚潰して魔力変換とかトンデモかましたりとか。

結局は勝ったもの勝ちってところなのか……

 

「そういえばクリスティーナ、貴女が単独行動というのも珍しい話よね。イグノックスとエリオは正騎士任命式の方かしら?」

「ご名答で~す。イグノックスは本当マッドの行事となったら大体すっ飛んでいきますので……それを言ったらユフィリア様もすっかり同類になっていますけど」

「なるほど、じゃあ今頃は就任したての顔ぶれにしれっと紛れ込んでると……マッド様がぐぬぬって言ってる様が目に浮かんでくるわね」

「私も同じく!まあ普段は散々ヤキモキさせたり心配かけさせてるわけだから、ユフィリア様には頑張ってもらいたいところです!」

 

任命式、かあ……。

普段は騎士団の詰め所でさっくりやってたけど、今回は特別に王城の一室を使うことになったはず。

見習いから昇格するのがエイパ達3人、ガッくん、そしてラスくん達6人……先日の防衛で貢献度が高い顔ぶれであることが理由だ。

更に任を下すのが、旗印であったマッドくんというこれまた狙ったようなやり方だ。

ラインヒルト顧問も用意周到すぎるよね……父上と母上も巻き込んだって話も聞くくらいだし。

 

「ただ、ユフィリア様もここからは順風満帆とは行かないでしょうね……」

「実のお父様がいい顔をするとは思えませんからね~……むしろアニスフィア様と懇意にした方がって考える程ですもの」

「十分あり得るわねえ……正直、無理やり同性愛者に仕立て上げられるのは流石に見てられないし、正直不快だわ」

「あれれ、そこは好機だってことで掻っ攫うって気にならないのですか~?確か貴女も……」

「……まあそれもまた魅力的な話に聞こえなくもないけど、私は控えめを貫いてやるわ」

 

なーにが控えめだ、要するに2番手以降を虎視眈々と狙ってるってことじゃないの?

それにしても、どんどん周りの状況は動いているというのに……私はこんな体たらくとは。

はあ、とにかく魔道具に触りたい……資料読みたい……うう、I need more 魔学ぅ!

 

『そうよね、そうしないとただでさえ離されているのに……ますます置いて行かれるね?』

 

「……姫様?また脱走計画でもお考えでしたら、すぐに止めることをお勧め致します」

「──っ!いやいやそうじゃないよ。動けないなら動けないなりに新しい魔道具の構想を練り始めたってだけだって!」

 

危なかった……イリアが声をかけてなかったら抜け出せない思考に陥ってたかも。

うう、早く終わって欲しいよこの療養生活……。

何とか魔学の研究に戻れれば、きっとこの棘みたいな感覚も無くすことは出来るはず。

──うん、きっとそのはずだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

現在私と特別近衛騎士たちはグランナイツ会館の一室で待機している。

マッド様は合間を縫って細かい私用を片付けるために別行動中だ。

てっきり特別近衛騎士の誰かでも付けるのかと思ったが……王城内ならばセラとプリシラで事足りるとのことで。

代わりにラス達を私に付けておけば無駄が無い、とも。

とりあえず、これまで間接的に聞かなかった特別近衛騎士達との会話に華を咲かせる……その前に一つだけ。

 

「まずは、個人的な我儘に皆様を巻き込んでしまい……いえ、利用してしまったことに謝罪を。大変申し訳ありませんでした」

「うええ!?コーシャクレイジョーがいきなり頭下げちゃって大丈夫なの!?」

 

謝罪に身分や立場などいちいち言ってなどいられませんから。

あのマッド様でも非を認めたらきっちり頭は下げますし……アニス様のような土下座、でしたか?もしたことがあるほどですので。

 

「別にそんなこと気にしなくていいのに。貴族令嬢なんだから、それくらいじゃないとやっていけないでしょう?」

「あの年に似合わず頑固なバカ王子相手じゃあな……こっちとしては泥仕合繰り広げられるよりはよっぽどマシってやつさ」

「マッドがいきなり無茶振りかますよりかは全然マシだよ。俺としてもユフィリア様を除け者にするのは心苦しかったし、力になれて良かったと思ってるくらいだ」

「私もかつての自分を見ているようでしたので……お役に立てたなら良かったです」

 

私に対して怖気づいたり過度に畏まったりすることもなく、ただただ自然体でいてくれていた。

……やはりあの人が直に選んだ人たちだということがよく分かりますね。

さて、そこから各々名乗りを上げてはちょっとした雑談の時間となった。

 

「幼馴染のラスとキュイ以外は皆マッド様がケルビムとしてあっちこっちでやりたい放題していた時に知り合ったのですね……」

「俺は東部の亜人種待遇改善策で大変世話になりまして……その恩を返そうと思って騎士団入りして、今に至るというわけです」

 

クラマ族は特に迫害を受けていた、というのは私でも耳にしている。

本来の立場ならば簡単に割って入るのは厳しいというのに、無理やりどうにかしてしまったのでしょう。

分かってはいましたが、そういう捻くれたお節介焼きは昔からなのですね……。

 

「その後もさぞ苦労されていることでしょう。いくら親子ほどの年の差があれど、マッド様の破天荒やりたい放題っぷりはグランナイツでも手を焼くほどで……」

「あの、ユフィリア様。一応俺はまだ25でマドラーシュ様とはちょうど10歳差で、親子ほどの年の差はないのですが……」

 

……え?ま、待ってください。

ウィンがまだ25って……えええ?

てっきりお父様よりも年配なのかとばかり思っていたのですが……。

老け顔とかそういうわけではなく、この面々の中で明らかに落ち着き度合いが違うからで……。

 

「……これ、下手するとカルリッツ様より年上だと思われてたんじゃない?」

「ええっと同年代くらいには思っていたのですが……やはりこれまで物凄い苦労されたから、その影響で?」

「機会があったら今でも東で元気にやってる他のクラマ族に聞いてみたらどうだ?『元々そうだった』って返ってくるはずさ」

 

その後、何とか謝り倒しては慰めることで何とか気を持ち直してくれたようだ。

亜人種と交流を持つことなどこれまでに無かったが、外見だけで測ることだけは絶対にしてはいけないと重々理解した一件ですね……。

……こんな種族間における差異をものともせず、ある程度纏めて形にしているマッド様に改めて舌を巻いてしまいますね。

 

「で、次はカルトだけど……最初は勧誘をすぐに断ったのよね?」

「最初は面倒くさそうとしか思わなかったからな。──まあ、後からあのバカっぷりに興味が湧いてついていったわけなんだが」

「あれ、『アイツの在り方から習って、その力を吸収したい』とか言ってなかった?カルトって、結構マッドと一緒に訓練することも多いし……」

「……んなこと言った覚えねえよ。訓練についてはたまたまアイツと俺の生活ルーチンが一致してるからついでにってだけだ」

 

確か、ダークエルフは群れることを好まず孤高に強さを求める種族でしたか。

それだけでもマッド様が目をかける可能性は十分でしょうね。

口ではこう言っているものの、モーリッツとの最終決戦の際は何も心配せずに見守っていたから……彼もまた沼に浸かりきった深い理解者ということ。

……オルタやラス、アルガルド様以外にもいましたね、私を先んじる者は。

 

「私は傭兵時代に共闘して、ひょんなことから共通の師匠を持つ間柄と知って意気投合。そこから身の上話になって……まあ、結果的には絆されたってことにしておいて下さいな」

「私はワケも分からず追われていたところをラス達に助けてもらって……記憶が無くて身分も証明できない私を庇護下に置いてくれました」

「後はブローチとかキーストーンの件でジュウヨウサンコーニンとして正式に保護してもらいながら、顕魂術を始めとした色々なことを教わったよね。お陰ですっかり師匠と弟子って感じになっちゃったし」

 

ナマリエは病気がちな妹と共に生きるために傭兵稼業をしていて、とある案件でマッド様と共に戦っては勧誘された。

その際に妹の療養場所やそのための費用まできっちり面倒を見るという、相当破格な契約を持ちかけられて承諾したとのことで。

セリアードはラス達を経由しているとはいえ、本来なら得体の知れない要素だらけだというのにあっさりと保護してしまっているし……。

更に偉志ノ大陸やら顕魂術やら、専属侍女二人、そして私とアルガルド様のことも合わせてしまったら……。

 

「全く、私の知らないところでどれだけ動いているのですかあの人は……」

「きっとこれらだけでも氷山の一角だ。本当にすっ飛んでいくか分かったものじゃねえぞあのバカは」

「挙句、この間のこと含めて自分の命も平然とチップに出来ちゃうから困り者なのよ。幸いユフィリア様には甘いところもあるし、これからは抑止力になってもらいたいものよ」

 

誰もが口を揃える、それこそ筋金入りのやりたい放題っぷりだ。

あんな軽口染みていながら、自分に対して苛烈になりすぎている。

全て自分で選択しているので自己責任と、こちらの追及もさらっと遠ざけてしまう。

……考えるだけで、じわじわと来てしまいますね。

 

「ただ、その為にはまだいくらか懸念が残っているぞ?これまでマドラーシュ様が水面下で動いていたのも、そこが要因の一つらしい」

「ええっと……それは、ユフィリア様の立場上の問題ですか?」

「この場合はむしろマゼンタ公爵家の方ですね。父は元々アニス様の後ろ盾になる形で便宜を図っていましたが……」

「対暗部が急務となった今、そうも言ってられない可能性が高い……でも、急にマッドに鞍変えなんてことも安易ってことだね」

 

それこそ対抗派閥にいらない口実を与えかねない。

魔法省が長官含めた暗部の露呈で揺れている時だからこそ、あちらに付け入る隙は与えるのは得策ではないでしょうね。

 

「ったく、王族の方はそんな気はまるで皆無だって言うのに、外野がギャーギャーと拗れさせやがって。毎度のことながら面倒な極まりねえ」

「だからマッドは可能な限り自分たちだけで決着をつけたかったんだよね……うんざりしながらも何だかんだ辛抱強いんだよね」

「そんな様子はまるで表に見せないけどね。全く、ああ見えて空気をあえて読まないから困ったものよ」

 

本当に、ナマリエの仰る通りです。

やりたい放題をしているが、決して他を顧みない暴虐一辺倒な方では断じてない。

むしろ自己責任の下、自分だけに影響を留められるよう捻くれた道を歩むことを当たり前とするほどだ。

今ならば、普段の軽い態度がいくらか演技混ざりであることはよく分かっている。

そんな一面を知ってしまったからこそ、私としてはそれを看過することは出来ない。

 

「ここまで知ったからには、守られるだけの立場など断固拒否です。勝手に突っ走るならば、とっ捕まえて差し上げましょう」

「公爵令嬢様もいい顔するじゃねえか。なるほど、アイツがやたら気に掛けるのも少しわかった気がするぜ」

「カルト、それは一体どういう……って、何で全員して頷いているのですか」

 

セリアードとロムまで……何でそんな暖かい笑みを浮かべるのですか。

そういえば、アニス様やティルティも時折そんな表情を向けてきますね。

最近マッド様関係の話をすると、やたらこういった事例が散見されますが……まるで意味が分かりません。

セラとプリシラの先導の下で会議に向かう最中も、主にナマリエから色々根掘り葉掘りと聞き出されそうになり……マッド様の言うすいーつ脳の意味が何となく理解できてしまいました。

全く、主がああなら近衛もだなんて……苦情がもう1つ増えてしまったではありませんか。

後々また込み入った話をしなければなりませんね……ええ絶対にそうさせていただきますとも。

 





ユフィリア、グランサガ現世代と正式に知り合うの巻。
ウィンの老け顔ネタとか、ちょっと先輩風なセリアードとか原作通りだったりそうでもなかったりなネタ豊富気味。
これにて個人的に書きたい『ユフィリアの人間関係広げましょうねー』という導線が点きました。
既に弄られるような兆候が出てますが、まあこちらではまだ無自覚だから仕方なし。

Youは何を求めてこの作品を?(要するに需要調査です)

  • 転天キャラでのNLとか他絡みを所望
  • グランサガの二次がレアすぎて
  • バトルハードモードに釣られた
  • ちらほらある(?)デビルメイクライ要素
  • その他(そもそもの作風とか)
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