ヤバい。目の前にいるのはただの少女だと言うのに、それと相対したとき五条はそう感じた。
何が「ヤバい」と感じたのかは彼にさえ分からない。彼の特徴的な『六眼』と呼ばれる呪力を見通す目は目の前のそれをただの少女としか認識していないし、彼女の見た目も別段注目すべき場所はない。ただ、彼の特級呪術師としての感のみがそう囁いているのだ。
「……君、何者?」
しかし感というのは案外無視してはならないものだということは、呪術師として活動してきた年月が示している。そのため五条は、最大限警戒しつつ彼女に声をかけた。
「……ふむ。″貴公″が呪術師というものか。なるほど、只人では無いらしいな」
「……そういう君も、ただの女の子じゃないみたいだね?」
こちらを見る少女の目つきに、五条はさらに警戒度を引き上げる。
まるで狩人が獲物を見定めるようなそれは、決して幼い少女がしていいものでは無いのだから。
少女はそんな五条を見て少し笑うと、相対している月見家屋敷にぽつんと置かれている岩に背を預ける。
「ほう、私を見破るか。これでもなるべく頑張った方だったのだがな」
「僕じゃなかったら分からなかったかもしれないね。上手く隠れてると思うよ」
「ふむ、それは結構」
少女はそう頷きつつ、何も無い空間に手を伸ばす。
すると空間が、まるで池に石を投げ入れた時のように波紋を生み、少女の手をその中に招き入れる。
「……何をするつもりだい」
「正直、この娘が目覚めるまで待っても私としては構わない。しかし、だ。貴公のような面白い人間がやってきてしまった。であらば、狩人の私が今取るべき、最も楽しい行動とは何かわかるかね?」
「……分かりたくもない、かな」
五条が冷や汗をかきつつそう言うと、少女は愉しげに笑みを浮かべ、答えを述べる。
「決まっているじゃないか。狩りだとも」
その言葉と共に、少女は波紋から1つの無骨な大剣を引き抜く。
1本の直剣を装飾が施された鉄の鞘にしまい込み、強引に大剣と成したような剣。
ルドウイークの大剣と呼ばれたそれを、少女は愛おしげに撫でる。
「フフ……これを取り出すのも随分久しぶりだ。上位者を狩り尽くして以来、これを取り出す機会も減ったものでね。……腕前が訛っていないか……貴公、確かめさせてくれたまえ」
「っ、やっぱりねっ!」
言葉と共にいきなり振り下ろされたその重い一撃を、五条は自らの術式、『無下限呪術』で防ぎつつ後ろに下がる。
「ふむ、何かを切り付けるような感触。透明な泡のような何かで防いだ、と言ったところか?」
「ふう……少し違うんだけど……君に解説する余裕なんてないよ……っ!」
反撃に、五条はまず無下限呪術の順転、『蒼』と呼ばれるそれを放つ。
少女は見てかわすことなど不可能であろうそれをあっさりと躱しつつ、目を輝かせながらつぶやく。
「ほう! 今度はなんだ? 何を飛ばした? 空気弾、にしては地面を抉るほどの質量があるもの……なんだ、興味深い! もっと見せてくれたまえ!」
「なんでさも当然のように避けてるんだよ……っ!」
五条は焦りつつ、複数蒼を放った後に術式反転、『赫』を繰り出す。蒼の術式に反転した呪力を流し込むことによって凄まじい発散力を持つそれは、青以上に厄介なものだ。
しかし少女はそれを、姿を消すようにして躱した。
「ふむ、今のは少し危なかったな。大量の吸引の中に発散を混ぜ込む。上手い使い方だ」
「……マジか、もうそこまでわかっちゃったんだ?」
「私が神秘に触れることの出来る側で良かった。おかげでその虚構とそれを埋め込む力を利用した代物を理解出来た。……存外外の世界も面白いものだな」
五条は自らの術式を一瞬で看破したその少女に思わず舌打ちを漏らす。今すぐにでも『紫』を撃ち込むべきだが、ここは京都市内。こんなところであれを使ってしまえば京都校の上層部に何を言われるかわかったものでは無い。
どうするか悩んでいると、少女が突然手に持っていた武器を手放した。
「……悪いな貴公、時間だ」
「……は?」
「体の持ち主が目を覚ましたようでな。私はここまでだ……ではな、貴公。存外楽しかったぞ」
そう言い残すと、少女は突然魂が抜けたようにその場で倒れ込んだ。
そのまま寝息を立て始めたその少女に、五条は思わず目元を隠しつつ空を仰いだ。
「はあ──……厄ネタ拾っちゃったかなぁ……」
ルドウイークの大剣
特に医療教会の狩人が用いる「仕掛け武器」
教会の最初の狩人、ルドウイークが用いたことで知られ
銀の剣は、仕掛けにより重い鞘を伴い、大剣となる
最後の狩人である彼が愛用した仕掛け武器。獣を狩るならば、小細工など使うな。ただ目の前からねじ伏せるのだ。
♢
狩人くんのモチーフは僕の初見クリアした時の愛用キャラです。
筋バサこそ至高。みんなもルド剣使おうね!
0スタートか本編から入るか、どっちがいい?
-
0
-
本編