「だから十七歳で立派にライターさんをやってる人もいるんだから、姉貴ももう少し自立心を持ってだね……」
「よそはよそ。うちはうち」
「それ躾けられる側が言うことじゃないからな?」
未確認ライオットの最終審査をみんなで観に行った数日後、俺と結束バンドメンバーの合計五人は山田家が所有する海に面した別荘に来ていた。
みんなでたくさん夏の思い出を作ろうということで、花火大会には行ったから次は海に行く話になったんだ。でも、時期的にどこも混んでいるだろうということで比較的人のいない、ほぼプライベートビーチになっている山田家の別荘にやってきたんだよね。
「今さらだけどさ。男一人と女四人で海に来るってバランスおかしくない?」
「だって、レンくんだけ仲間外れにするのはかわいそうじゃん」
「みんなが大丈夫なら別にいいんだけどさ……」
今回は夏祭りと違って海で遊ぶことになっているので、必然的に水着になる。つまり肌の露出が増えるということだ。男の俺は正直眼福だから何も問題ないんだけど、みんなは異性に肌をさらすのに抵抗があるお年頃なんじゃないの?
「レンくんだし、いいかなって」
「そうですね。レンくんだし」
「私は照れる」
「嘘つけ」
姉貴や虹夏ちゃんはともかく、喜多さんもなんでそんな軽い感じなの? 喜多さんは元々距離感ガバガバ女だから、大抵のことは「喜多さんだから」で片づけられるけど、今回はさすがに異性だから意識されると思ったんだけどな。
「……後藤さんも本当によかったの?」
「あ、はい。み、みんなで遊んだほうが楽しいので……(ほ、ほんとはものすごく恥ずかしいけど!! 友達と海に行くのなんて初めてだし、お、おおおお男の子の前で水着になるなんて……は、恥ずかしすぎて何回死ぬかわからないっ!! はっ!? こんなときこそ大槻さんのえちえちパワーを受信すれば羞恥心なんてなくなるのでは!? 大槻大明神様……今こそ私に力を!!)」
なんか後藤さんがいきなり手を合わせて祈り始めた。
正直、君が一番心配なんだけど……花火大会以降、前より距離が縮まってすごく仲良くなれたから耐久力もアップしたのかな? でも、いつ死んでもおかしくないから警戒だけはしておこう。海で爆発四散したり溶けたりしたら大変なことになりそうだし。
「あ~もしかしてレンくんったら照れてるのかしら?」
「可愛い女の子四人の水着だもんね~。意識しちゃうよね~」
喜多さんと虹夏ちゃんがからかうように、メスガキっぽく笑いながら俺を見てくる。そりゃあ多少は意識するけど……結束バンドだしなぁ。あ、でも後藤さんはスタイル的に目のやり場に困るかもしんない。
まあ、後藤さんのことだからそんなに露出の激しい水着は着ないと思うけど。
「俺を意識させたかったら───」
と、そこまで言って俺は本能的に命の危険を感じたので口を閉じる。ほんとは「もっと発育が良くならないとね」って言おうとしたけど、普通に最低な発言だし、喜多さんに海に沈められそうだからやめておこう。
「意識させたかったら……何?」
喜多さんは表面上はニコニコ笑いながら俺を見てくる。うん、怖い。
「さて、着替えてくるか」
「ちょっとレンくん! 何が言いたかったの!? ねえ!?」
「喜多さん……世の中には、知らない方がいいこともあるんだ」
「絶対変なこと言うつもりだったんでしょ!!」
俺は喜多さんを無視して二階にある自分用の部屋へ向かう。一階は女の子達が使うから俺は必然的に二階になるんだよね。
この別荘、久しぶりに来るけどめっちゃ広いな。部屋も十部屋くらいあるし。……なんでこんなに部屋があるんだよ。
俺はそんなことを考えながら適当な部屋に入り、水着に着替える。
下はレギンスタイプのラッシュガードの上から水着を履き、上は前開きのファスナータイプの長袖ラッシュガードを着る。なんでここまで厳重にラッシュガードを着こむのかというと、クラゲ対策だ。
時期的にはぎりぎり大丈夫だと思うけど、用心しておくに越したことはない。小さい頃クラゲに刺されて酷い目に遭ったし。
あと、ラッシュガードってスタイルがよく見えて、デザインも格好良いのが多いんだよね。
着替え終わって時間があったので、俺はベッドメイクや荷物の整理もついでにやっておくことにする。俺達が来る前に清掃屋さんが一通り掃除してくれたからかなり綺麗だな。エアコンや家電も問題なく動くし。
「レンくーん、着替え終わったー?」
「終わったよー」
下の階から俺を呼ぶ声が聞こえたので、部屋から出て階段下をのぞいてみると、ビキニ姿の喜多さんがいた。カラフルな水着が喜多さんの明るさとよくマッチしている。……胸のサイズについては触れないでおこう。
「いいじゃん。髪色ともよく合ってるし、可愛いよ」
「ふふん、でしょ?」
喜多さんは得意げに(慎ましい)胸を張る。きっと貧乳フェチもどこかにいるだろうから、気を落とさないでね。南無南無。
「他の三人は?」
「虹夏先輩とリョウ先輩はもう着替えてたわよ」
「よし、じゃあお姉様達の水着姿を拝みに行くとしますか」
姉貴と虹夏ちゃんはリビングで待っているらしい。後藤さんは別の部屋で着替え中だから、ラキスケに遭遇することもない。ラキスケが許されるのは二次元の中だけだ。現実に起こったら気まず過ぎて関係に亀裂が入りかねないんだよね。
「あ、レンくん! あたしの水着どうかな?」
「ハイウェストで、裾を前で結んでるのがいいね。髪も後ろでお団子にしてるし、めちゃ可愛い」
「えへへ。ありがとっ!」
「レン、私は?」
「シースルータイプか。いいんじゃない?」
適当に言ったら姉貴が露骨に拗ねた表情になる。
「……大人っぽいね」
「むふー」
ちゃんと褒めたら姉貴はめちゃくちゃ得意げな顔になった。姉貴は不養生なくせしてスタイルは抜群に良いからな。なんか知らんけど腹筋が割れてるし。俺、姉貴が筋トレしてるところなんて見たことないんだけど。
「レンはなんでレギンスタイプのラッシュガードを履いてるの? せっかく私がすね毛を脱毛してやったのに」
「だからだよ!!」
姉貴は昨日、俺が昼寝をしている隙をついて脱毛クリームで俺のすね毛を全部剃りやがったからな。起きた時つるっつるだったからびっくりしたわ。
「でも、こうして見るとレンくんってスタイルいいのね~。肩幅も結構広いし、腹筋も割れてたりする?」
「割れてるよ、ほら」
「すご~い! 板チョコみたいね!」
俺がファスナーを開けて腹筋を見せると喜多さんが遠慮なくぺたぺた触ってきた。あのさ、俺が言うなって思うかもしれないけど、距離の詰め方おかしくない?
「虹夏先輩、すごいですよ。レンくんのお腹、カッチカチです!」
「レンくんって筋トレが趣味だからね~」
今度は虹夏ちゃんが俺の二の腕をさわさわしてきた。
「なんというか、ほどよい筋肉って感じですよね。ボディビルダーみたいなムキムキじゃなくて、バランスと見栄えのいい細マッチョというか」
「そうそう! レンくんは脱ぐとすごいんだよ~」
「レンくんったら服の下にこんなえっちな肉体を隠していたのね」
「この弟……スケベすぎる……!!」
女三人が俺の体をペタペタ好き放題触ってくる。君達、俺が男子高校生だってこと忘れてない? 普通に結構恥ずかしいからね?
「ただ、レンの本当にエロイ部分は筋肉じゃない」
「ま、まさか……まだ上があると言うんですか!?」
「その通り。レン、上を脱げ」
「そんな前振りされて脱ぐわけないだろ!?」
俺はファスナーを閉じようとするも、姉貴と虹夏ちゃんにがっつり両腕を抑えられてしまう。
「大丈夫よ、レンくん。すぐに終わらせてあげるわ」
「喜多さんには恥じらいとかないんか!?」
「レンくんがいけないのよ? リョウ先輩に似た顔でそんなにいやらしいフェロモンを出してるんだから」
「だめだこいつ、話が通じねえ!」
なんで俺が逆レされてるみたいになってんだよ!!
そんな感じで四人でぎゃあぎゃあ騒いでいると、リビングのドアがゆっくりと開いたので、全員の視線がそちらに向く。
「あ、あの……き、着替えました……」
後藤さんがドアの向こうから恐る恐るこちらの様子を伺い、おっかなびっくりといった様子でリビングに入ってくる。
彼女が着ていたのは白のVネックタイプのビキニで、胸のリボンとフリルスカートが非常に可愛らしい。後藤さんの姿を見た喜多さんは、例によって目をシイタケ化させて俺から離れて後藤さんへと駆け寄る。
「レンくん、どう!? どう!? 私がこの水着を選んだのよ!!」
「……正直、大儀であったとしか言いようがない。やっぱり後藤さんは白が似合うよね。髪型も両サイドでお団子にしてて、すごく可愛い!」
「あ、ありがとうございます……(ふへへ。は、恥ずかしいけど、また褒められちゃったっ! み、水着も案外悪くないかも……)」
「……浴衣の時みたいに動揺しないんだね?」
「虹夏ちゃん、俺は成長する生き物なんだ」
「ふーん?」
虹夏ちゃんはジト目で見てくるけど、浴衣の時ほど衝撃は受けてないよ。今回はしっかり心の準備をしてきたからね。まあ、正直ビキニは予想外だったし、目のやり場に困ってるところはあるけど。
水着になったら後藤さんの胸の大きさがより強調されるな。……うん、視線には気を付けよう。
「う~ん、これはぼっちじゃなくて間違いなくえっち。レンもえっちだし、STARRYの風紀が乱れてしまう」
「俺のどこがえっちなんだよ?」
「……鎖骨のくぼみ」
姉貴はそう言って、一瞬の隙を突いて俺が羽織っていたラッシュガードを脱がしてくる。この女……こういうときだけ無駄に動きが速くなりやがって!!
「この、水が溜まりそうな鎖骨のくぼみ……ここが最高にえっち」
「あ~それすっごくわかるな~!」
虹夏ちゃんがくぼみをツンツンつついてくる。くすぐったいからやめて!
「鎖骨もいいですけど、肩幅からウエストにかけて逆三角形になってるのがいいですよね」
「俺、小一からずっと水泳やってて、中学は水泳部だったから」
「へー、だからこんなにスタイルがいいのね」
「今も週一で温水プールに通ってるんだ。体と筋肉のバランスを整えられるし、ダイエットにもなるからおすすめだよ」
将来結婚して子供ができたら絶対水泳は習わせようと思ってるくらいだし。ベース? 絶対やらせねーわ! ギターかドラムなら歓迎だけどね。
「あたしも最近食べ過ぎてちょっと太っちゃったし、泳ぎに行こうかな~」
「……どこが太ったの? 虹夏ちゃんめっちゃ細いじゃん」
「男の子だって身長で悩むでしょ? それと一緒だよ」
「そーゆーもん?」
「そーゆーもんっ」
虹夏ちゃんはにっこりと笑いながらそう言った。喜多さんもめちゃくちゃ細いし、女の子ってやたらと痩せたがるよね。俺としては、ちょっとくらい肉付きがある方が抱き心地良くていいんだけどな。
男と女の価値観の違いかぁ。
「だからレンくん、今度プールに行くときはあたしも誘ってね?」
「しょーがない。虹夏ちゃんを『みわくのぼでー』にするお手伝いをしてあげますか」
「そうなったらレンくんを誘惑してあげるから」
「……ふっ」
「あーっ! 鼻で笑いやがったなこいつーっ!」
虹夏ちゃんはそう言いながらほっぺたをぷくーっと膨らませてぽこぽこ殴ってきた。虹夏ちゃんが「みわくのわがままぼでー」になるのは解釈違いだし、たくさんの人が悲しむからそうならないでほしい。
「ほらほら、ひとりちゃん。レンくんの腹筋すごいのよ? 触ってみたら?」
「む、むむむむむむむむむむむむむむっっ!! (じょ、上半身裸になってる山田くんが目の前にいるってだけでも死にそうなのに……ふ、腹筋なんて触っちゃったら確実に死ぬ!! で、でもリョウさんが言う通り、山田くんの体ってすごくえっちだ……はっ!? ま、待てよ……も、もしも大槻さんが山田くんの水着姿を見たりしたら───ああああああああああああああああああああああああ!! か、鴨葱なんてもんじゃない!! 山田くんの山田くんが大槻さんの大槻さんとセッションしてしまうううううううううううううううううう!! ま、守らねば……山田くんを守らねば……!!)」
首を激しくぶんぶん横に振っていたかと思ったら、急に力強い表情になって俺をじっと見つめてきた。何を考えているんでしょうかね。
「みんなのお着替えも終わったし、海に行こうか!」
「さんせーです!」
ひと悶着どころか百悶着くらいあったけど、みんなで海に向かいます。
「リョウ先輩、海に入らないんですか?」
「海水でべとつくから映画観とく」
「お前海に来てまで何してんの?」
「レン、ジュース取って」
「そこにクーラーボックス置いておくから好きなもん飲んでろ」
パラソルを設置するや否や、姉貴はビーチチェアに寝転がってタブレットで映画を見始める。ほんとに何しに来たんだこいつ。まあいいか。俺達が楽しそうに遊んでいればそのうち寂しくなって混ざりに来るだろうし。
「姉貴、何観んの?」
「シャーク・ネード」
「海に入れなくなるヤツだな」
「それは小さい頃にジョーズを見て海に入れなくなったレン」
いや、あれは小さい子にはトラウマになるって。あの不穏なBGMがさぁ……って、おいバカ姉貴! こんな時にジョーズのBGMを流すな!
「……恥ずかしいこと思い出させんな」
「照れてる。可愛い」
「うっせ。ディープブルー2でも見てろ」
「約束された駄作」
姉貴はクスクス笑って映画を観始める。どうせならイケメンのハゲがメガロドンと戦うヤツにすればいいのに。
姉貴を見ていたら、パラソルのすぐ隣で喜多さんが何やら大量の荷物を抱えてゴソゴソ動いているのに気づいた。
「喜多さん、その浮き輪……全部手で膨らます気?」
「人がいないし、絶好のチャンスだからたくさん持ってきたのよ」
喜多さんはサメやらあひるやら貝やらの大量の浮き輪を持ってきていて、全て手動の空気入れで膨らませるつもりらしい。……日が暮れちゃいますよ?
「別荘に電動の空気入れがあるから持ってくるよ」
「レンくん……あなたにはリョウ先輩の息子になる権利をあげるわ!」
「弟で息子とかどろどろしたバックボーンしか思い浮かばないんだけど」
姉貴の息子になるとか年中反抗期不可避ですね。そもそも姉貴は結婚できるのだろうか。顔は良いけどそれ以外が終わってる女だからな。
「ぼっちちゃんは泳がないの?」
「あ、私……泳げないので……」
パラソルの下で薄手のパーカーを羽織ってしゃがみ込んでいる後藤さんに虹夏ちゃんが声をかける。
後藤さん泳げないのか。足がつく範囲で水遊びくらいはできるだろうけど……後で泳ぎを教えてあげようかな。喜多さんがいっぱい浮き輪持ってきてるし。あ、そういや別荘にフロートボートやビート板があったはずだから空気入れと一緒に持ってこよう。
ボートで揺られるくらいなら大丈夫でしょ。
と、この時の俺は思っていたんだ。
俺は後藤さんの運動能力の低さを───あまりにも高く見積もっていたとすぐに思い知ることになる。
「喜多さーん、持ってきたよー」
「ありがとうレンくん!」
「こんなに浮き輪を持ってきてどーすんの?」
「もちろんイソスタにあげるのよ!」
「……俺の写真はあげないでね」
「レンくんの水着写真を欲しがる子は多いと思うわよ?」
「それを聞いて俺が喜ぶと思う?」
自分の容姿とか体には自信があるけど、知らないところで写真が出回るのは普通に嫌だな。まあ、喜多さんもその辺はわかってるだろうし、俺が本気で嫌がることをやるような子じゃないから大丈夫だと思うけど。
でも、二学期になったら佐々木さんにめっちゃいじられる予感がする。
「電動だと早いのね~」
「全部手動でやるとか正気の沙汰じゃないよ」
喜多さんの浮き輪と一緒にフロートボートも膨らませる。ついでに喜多さんがめっちゃでかい貝の浮き輪に寝転んでヴィーナスになっているところをスマホで撮ってあげた。
そうしたら調子に乗って色々リクエストしてきたから、面倒になって虹夏ちゃんや後藤さんも巻き込んで女の子三人が色々な浮き輪に囲まれてきゃっきゃと戯れている光景を写真に収めていく。
うん、眼福眼福。後藤さんも楽しそうでよかった。喜多さんもたくさん写真が撮れて満足してるみたいだし。
「じゃあ、三人ともボートに乗りなよ。俺が引っ張ってあげるからさ」
「ぼっちちゃん、大丈夫そう?」
「あ、はい。それくらいなら……」
後藤さんの表情がぱぁっと明るくなる。泳げないとはいえ、やっぱり海で遊びたいよね。
それに、ほとんど波はないから大丈夫大丈夫。
俺は三人をボートに乗せ、ロープを引っ張りながら沖へ向かって泳ぐ。三人乗ってるから苦戦するかなと思ったけど、意外とスイスイ行けるな。三人とも体重軽すぎだろ。
あと、一応念のために足が届く範囲までにしておこうかな。喜多さんや虹夏ちゃんはともかく、後藤さんは泳げないから足のつかないところで落ちたりしたら大変だもんね。
「三人とも、乗り心地はどう?」
「船長、最高だよ~」
「た、楽しいですっ」
「ひとりちゃん、虹夏先輩、写真撮りましょう! ほら、もっとこっちに寄ってください」
どうやら喜多さんはまだ写真を撮りたいらしい。動かすと写真がブレるから俺は足を止めてボートをしっかり支えようとしたんだけど……
「ひとりちゃんが落ちちゃったわーーーーっ!!」
「さざ波にも負けるバランス感覚!!」
喜多さんの方へ移動しようとしたときに後藤さんはバランスを崩して海に落ちてしまったようだ。足がつくところだから大丈夫だと思うけど……
「後藤さんが犬神家みたいになってるーーーーっ!?」
ギャグ漫画みたいに頭から落ちて見事に足だけが海面から出ていた。って!! やばいやばいやばい!! ツッコんでる場合じゃない!! これ普通に息できてないじゃん!! 後藤さんが溺れちゃう!!
俺は慌てて海中に潜り、砂に頭を突っ込んで微動だにしない後藤さんを抱き上げる。どうやったら犬神家をそこまで完全再現できるんだよ!?
「後藤さん、大丈夫!?」
「あ、おぐぇっ!? げほっ、ごぼっ、おぼろろろろろろっ!!」
「もう大丈夫だからねー。しっかり息吐いてー。ゆっくり吸ってー。もう一回しっかり吐いてー」
俺は後藤さんを正面から抱きしめながら背中をトントンと優しく叩く。彼女は年頃の女の子が出しちゃいけない擬音を発しながら魚を五、六匹吐き出していたけど、後藤さんだからこのくらいの超人技は朝飯前だな。
「あ、ありがとうございばず……し、死ぬかと思いました……」
後藤さんはそう言いながら俺の首に腕を回してぎゅっと抱き着いてくる。……うん、なるべく意識しないようにしてたけど、めっちゃ胸が押し付けられてますね。いや、これを意識するなって方が無理だわ。しかもお互い水着で薄着だから余計に柔らかさが伝わって……
あー!! やめやめ!! 後藤さんはそれどころじゃなくて、下手したら命の危機だったんだから!! そんなときに変な気分になるとか最低だな俺!! 今は人命救助中なんだよ!! 反省しろこの大馬鹿野郎!!
「一回上がって休もうか?」
「は、はい……そうしま───」
そこで俺と後藤さんの視線がばっちりと交錯する。お互い正面から抱き合ってるから、今までにないくらいの至近距離で見つめ合うことになってしまった。
やっぱ後藤さんって、めちゃくちゃ可愛いよな……
(やっぱり山田くん……すごく奇麗な顔してる……)
こんなに近くで後藤さんの顔を見るのは、初めてかもしれない。それこそ、ちょっと顔を動かせばキスができそうなくらいの距離……
俺の心臓がドクンと跳ねる。
その瞬間───
「いい写真が撮れたわ~」
スマホを俺達の方に向けているキタキタオーラ全開の喜多さんがいた。ちょ……おまっ……!? それは、それはいかんでしょ!? よりによって俺と後藤さんが水着姿で抱き合ってるところを……
油断も隙もねえなこの女!! 虹夏ちゃんも嬉しそうに笑ってないで止めてよ!!
「あ、あ、あ……」
ご、後藤さんが痙攣し始めた!? まずいまずいまずいまずい!!
「後藤さんちょっと待って!! 溶けるのはせめてボートに乗ってからにして!! 海で溶けちゃうと回収できなくなっちゃうから!!」
ボートに乗った瞬間、後藤さんはデロッデロに溶けてしまいました。
さっきまでの変な気分? そんなもん全部吹っ飛んだわ!!
そこはある意味喜多さんに感謝です、はい。後藤さんと二人きりだったら俺……何してたかわかんないし。あー……マジで最低だな俺。後藤さんをそういう目で見ちゃうなんて。
「ぼっちのおっぱいどうだった?」
スライムになった後藤さんをパラソルの下で休ませていると、姉貴が怪しく笑いながら尋ねてくる。
その笑顔がムカついたから、ビーチチェアをひっくり返して姉貴を砂浜に叩き落してやるのだった。
水着回でした!
全然レンくんの掘り下げができない……でも順調にぼっちちゃんを意識していってますね。容姿デバフがなくなったぼっちちゃんは最強ですから。
次は虹夏回になります。
激重感情持ち虹夏ちゃんが幼馴染みを免罪符にレンくんに攻勢を仕掛けます。多分。
喜多ちゃん回はその次! 別荘で結束バンドメンバーとと個別にイベントを起こします!
山田回?
毎回山田回みたいなもんでしょ。
では、感想、評価、誤字報告、ここすき等ありがとうございました!
次回もよろしくお願いします!