【完結】俺の姉貴はやべーヤツ   作:わへい

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#32 グッドラック

「ガンガン焼いていくから各々好きに食べてね~」

「レンくん、カステラも焼いていいかしら?」

「開幕からなんでそんなもん焼こうとしてんの!?」

「フランスパンもあるわよ~」

「喜多さんのエリアは端からここまでね? そこで好きに焼いてなさい」

 

 虹夏ちゃんとお風呂に入り、他の三人も俺達と同じようにお風呂で海水を流した後、庭でバーベキュータイムになった。母さんが気合いを入れて結構良い肉を買ってきてくれたんだけど……この肉、バーベキューにするのもったいなくない?

 

「後藤さん、これ焼けてるから。はい、どうぞ」

「あ、ありがとうございます……」

「姉貴、肉ばっか食ってないで野菜も食え」

「野菜生活飲むから」

「あんなもん飲んでも意味ねえよ。糖尿病になるだけだわ」

「レンくん大変! お好み焼きがくっついて取れないわ!」

「ちゃんと牛脂使った?」

 

 喜多さんと姉貴はマイペースだけど、後藤さんは友達とバーベキューなんて人生で初めてだからどうしていいかわからずオロオロしている。なぜか率先的に焦げた野菜を食べようとしてるけど……お腹壊すからやめなさい!

 

「あ、でもバーベキューポイントが貯まってない状態でお肉を食べるとヘイトが集まりやすく……」

「バーベキューポイントって何!?」

 

 後藤さん曰く、バーベキューに対する貢献度によってポイントが加算されるシステムで、俺はすでに二百ポイント貯まっているとのこと。

 

 なんじゃそりゃ。

 

 後藤さんの脳内が奇想天外すぎる。俺、察しの良さには結構自信があったけど彼女の頭の中は時々ほんとに何もわからなくなるんだよな。

 

「ポイントとか気にしなくていいよ。むしろどんどん食べてもらわないと消費しきれないから」

「わ、わかりました」

「こっちのお肉とウインナーも焼けてるよ。お皿出して。あと、喜多さんにもこっちのお肉を食べさせてあげてくれる?」

「はいっ」

 

 喜多さんは嬉しそうにカステラやらフランスパンやらを焼いて写真をバンバン撮ってる。普通さ、そういう変わり種って飽きてきた後半に投入するよね? なんで開幕ブッパしてんの?

 

「レン、鶏肉まだ?」

「もうちょい。鶏肉は時間かかるからな。半生で食うとマジで腹壊すよ?」

「こっちのウインナーは?」

「端に寄せてるのは全部食えるヤツ」

「有能。ヨシヨシしてやろう」

「ええから黙って食え」

 

 姉貴の皿に肉や野菜を放り込んで食わせてやる。最初は姉貴も「なんで美味い肉をわざわざ砂と灰まみれにするのか」とか文句言っていたのに、始まったら誰よりも嬉しそうに食ってるからな。

 

「レンくんも焼いてばっかりじゃなくてちゃんと食べなきゃだめだよ?」

 

 俺が三人のお世話をしていると、虹夏ちゃんが取り皿にお肉と野菜を盛って俺に差し出してくる。

 

「食べさせてあげる」

「あ」

「はい、どうぞ」

 

 虹夏ちゃんがお箸を俺に向けてきたので、俺は躊躇うことなく口を開けてお肉を食べる。……この肉めっちゃ柔らかいな。母さん、気持ちはありがたいけど学生のバーベキューには不釣り合いな肉だよ。

 

「次は?」

「玉ねぎ食べたい」

 

 具材を焼いている俺の隣に虹夏ちゃんが座って食べさせてくれる。その光景を見た後藤さんはムンクの叫びみたいな顔になり、喜多さんは俺達をパシャパシャ撮っている。

 

 俺はもう、後藤さんがどんな顔になろうと驚かないよ。

 

「虹夏ちゃんも食べなよ?」

「うん。ちゃーんと食べてるよ~」

 

 虹夏ちゃんはニコニコ笑いながら言う。二人でお風呂に入ったから、それを意識するんじゃないかと思ったけど、それは全くの杞憂だった。

 

 でも虹夏ちゃんって……そういうのを隠すのは上手いからなぁ。

 

 俺に対する激重感情も、気付くのが結構遅れちゃったし。

 

 俺は虹夏ちゃんが俺に対して、友情や恋愛感情とは違った特殊な感情を向けていることを知っている。あえて言語化するなら、親愛の一種だろう。

 

 そして、俺自身も虹夏ちゃんに対して結構重たい感情を持っている自覚はあった。ただの幼馴染に対する愛情……とは違う家族愛のようなもの。

 

 虹夏ちゃんのことは大好きだ。

 

 姉貴を除けば一番近しい異性で、それこそ家族のように思っている。中学時代には友達によく「初恋相手は虹夏ちゃんなのか?」って聞かれてたけど、俺の答えはいつもノーだった。

 

 なんというか……俺達の距離感が近すぎるから、虹夏ちゃんをそういう恋愛対象として考えたことはなかったんだよな。

 

 もちろん、虹夏ちゃんと付き合ったらすごく楽しいだろうし、彼女のことをたくさん愛せる自信はある。だけど、彼女に対して恋愛感情を向けられるかどうかと聞かれれば、正直よくわからない。

 

 そもそも、俺自身が今まで誰かに恋愛感情を抱いたことがないからな。だから女の子と付き合っても、そんなに長続きしなかったんだ。

 

 もしも俺が虹夏ちゃんと付き合うことになったら、別れることはないんじゃないかと思う。お互いのことはよくわかってるし、お互いがお互いに重い感情を向け合っていることを知っているから、長く付き合って最終的に結婚するという未来が容易に想像できた。

 

 けど、俺と虹夏ちゃんがすぐに付き合うことはないと思う。多分。

 

 うまく説明できないけど……お互いがこの感情を上手く整理できない限りは、そういう関係にはならないんじゃないかな。

 

 まあ、俺の場合は虹夏ちゃんに対する感情が重たいことよりも、自分が誰かに恋愛感情を抱いたことがないっていうのが根本の原因なんだけどね。

 

 そこを解決しない限り、虹夏ちゃんに対して曖昧な感情のまま付き合うなんてことはしたくない。

 

 学生の恋愛なんだから、もっと気楽に付き合えばいいっていう意見もあるだろうけど……気楽に付き合った結果、中学時代は長続きしなかったからね!

 

 虹夏ちゃんにそんな不義理な真似できるわけないだろ!

 

 ……俺って結構面倒臭い性格してるな。よくこれで何人もの女の子と付き合えたもんだね。山田家の遺伝子パワーバフが強すぎる。

 

 あと、そもそも俺は───虹夏ちゃんの俺に対する感情を「重たい」とか「面倒臭い」なんて思ったことは一度もない。

 

 なんでかって?

 

 こちとら物心ついた時から虹夏ちゃんの百倍重たくて面倒臭い女の世話をし続けてるんだよ!!

 

 姉貴の面倒臭さと重さに比べれば……虹夏ちゃんなんてわたあめみたいなもんだ。

 

 だから俺は、虹夏ちゃんにあんまり深刻に考えすぎないでほしい。

 

 強がりでも気遣いでもなく、俺は本当に虹夏ちゃんの気持ちを重荷だなんて思ってないから。

 

 ただ、俺がそう言ったところで、虹夏ちゃんは真面目だから真剣に考えこんじゃうんだよね。しかも、理屈じゃなくて感情の問題だから解決するのが難しいんだ。

 

 一番の解決策は、時間が経ってもっと精神が成熟して気持ちに整理をつけることなんだろうけど、それ以外にも三つ……解決する方法はある。

 

 それは───

 

「レンくんっ。カステラ食べさせてあげるわ!」

「砂糖が真っ黒に焦げてる! ただの残飯処理でしょ!?」

「……私の愛が強すぎたのよ」

「姉貴に食わせればいいじゃん」

「リョウ先輩にこんなもの食べさせられるわけないでしょ!?」

「こんなものって言いやがった!」

 

 喜多さんが無理矢理俺にカステラを食わせてくる。この女……好き放題焼くだけ焼いて失敗したのを俺に押し付けやがって。

 

「や、山田くん……これ、私が育てたお肉です。どうぞ」

「ありがとう」

 

 後藤さんはそう言ってぷるぷる震える手で俺にお肉を食べさせようとしてくる。そんなに緊張するなら無理しなくていいからね!? 

 

 お箸とお肉がめっちゃ振動してて食べにくいけど彼女の頑張りを無下にするわけにもいかず、どうにか口に入れることに成功する。……ちょっと焦げてる。でも後藤さんが勇気を出して俺に食べさせてくれたからそんなのは気にならない。むしろ美味しい!

 

 娘が「パパ食べさせてあげる~」っていうのと同じような感情なんだろうな。

 

「美味しい。後藤さん、焼くの上手だね」

「そ、そうですか。ふへへっ、た、たくさん食べてくださいね?」

 

 そんな感じで、バーベキューは平和に終わり、みんなで片付けをした後にスーパー銭湯に行ってその帰りにアイスを食べました。

 

 

 

 

「それではこれより結束バンド旅行~夏の思い出編~夜の部、スタートしまぁす!」

 

 お腹いっぱいになって一階のリビングに布団を敷いて後は寝るだけになったのに、郁代はまだまだ元気いっぱいだった。レンはさっさと二階に上がっちゃったし、郁代を押し付ける相手がいない。

 

「起きてくださーーーーーーーい!!!」

「だーーーーっ!! うるせーーーーっ!!」

 

 郁代は電気のスイッチを何度もオンオフにして私達を叩き起こす。隣で寝ていた虹夏は額に青筋を浮かべて、ぼっちはいつも以上にどんよりした表情になっていた。

 

「喜多ちゃん、夜の部って何するの~?」

「女子高生が四人……夜に集まってやることなんて一つじゃないですか!」

 

 郁代はそう言って虹夏の布団に潜り込む。郁代は虹夏に対するスキンシップがものすごく激しい。美少女同士の絡み合いだからこれをなんとか有効に使えないだろうか。

 

 別に悪用するつもりはない。ただ、私達は貧乏バンドマンだから現在の経済状況を打破するために、使えるものは何でも利用しなくちゃいけないんだ。

 

 その面で一番期待できるのはぼっち。ぼっちが水着でギターを弾けば動画収益が激増するし、ぼっちの精神面も鍛えられる。まさに一石二鳥。

 

 ただ、これをやるとレンに本気で怒られるという最大にして最悪のデメリットがあるから実行できない。

 

「恋バナしましょ!」

「郁代、正気か……?」

「このメンツで恋バナができると思う?」

「こ、恋バナ……あ、あ、あ……せ、青春コンプレックスが刺激されて……死にそう……」

「欠片も女子高生っぽさがない反応!?」

 

 ふっ、甘いな郁代。この四人でそんな普通の女子高生っぽい会話ができるわけないだろう。ここにいるのは顔が良いだけで恋愛とは縁がない女達なんだから。

 

「しましょうよ~恋バナ~恋バナ~! みんなでお泊りできる機会なんてあまりないんですよ~?」

「喜多ちゃん、暑いから抱き着かないでよ~」

「虹夏先輩良い匂い。今日は一緒のお布団で寝ましょう?」

「聞けっ!」

「じゃあ、私はぼっちのおっぱい枕で寝ることにする」

「お、お……おっぱい枕!?」

「もしくは抱き枕」

 

 ぼっちのおっぱいはふかふかで気持ちいいから枕に最適。郁代も虹夏も細すぎて抱き枕にはちょっと適していない。やはりぼっちがベスト。

 

 待てよ? もしもレンとぼっちが付き合ったら私はぼっちを毎日抱き枕にできるんじゃないだろうか?

 

「そこまで言うなら仕方ないな~。じゃあ、喜多ちゃんは好きな子いるの?」

「いませんけど?」

「言い出しっぺの癖に話を広げる気が全然ないなっ!」

 

 虹夏と郁代が布団の中でぎゃあぎゃあ言い合いながら乳繰り合っている。正直、私は眠いからさっさと話しを切り上げたい。いや、むしろ今のうちにレンの部屋に行って寝るのもありかもしれない。

 

 レンは嫌がるだろうけど、あの子は私がおねだりすれば、なんやかんや言うことを聞いてくれるから。

 

「じゃあ、レンくんのお話をしましょうよ~。私達の一番身近にいる男の子ですし」

「レンくんの……どんな話?」

「私達の知らない中学時代の話が聞きたいですね。やっぱりモテてたんですか?」

「そうだね~。レンくんはずーっとあんな感じの性格だから人気あったよ。でも、付き合う女の子はみんなちょっと面倒臭い感じのお世話が必要な子ばっかりだったんだ」

「……レンくんらしいですね」

「でも、レンは付き合ってもあまり長続きしない。一番長くて……半年くらいだったはず」

「そうなんですか? ……って、リョウ先輩! なんでひとりちゃんに抱き着いてるんですか!?」

「ぼっちの体、柔らかくて温かくて気持ちいいから」

「羨ましいです! 私も間に入れてください! ほら、虹夏先輩も行きますよ!」

「え~……暑いじゃん」

 

 虹夏はブツブツ言いながらも私達の方へやって来る。そして、私達四人は布団の中でくっつき合うことになった。

 

 ぼっちと私の間に郁代が割り込んできたけど、郁代はまな板だから抱き心地はぼっちに遠く及ばない。でもすごく良い匂いがする。さすが郁代。

 

「でも、意外ですね。レンくんと付き合う女の子が面倒臭いのなら、すっぱり別れられるとは思えないんですけど」

「レンはあれで地雷になりそうな女を見分ける目を持ってる。その上、あいまいな態度を取らずにきっぱり後腐れなく別れるのも上手い」

「別れた女の子は『別れ話をするときのレンくんの目を見たらすっぱり諦めきれる』って言ってたよ」

「へー。そうなんですね。未練を残さない別れ方……ちょっと興味があります」

「まあ……長続きしないのはレンに大きな問題があるからなんだけど」

「大きな問題、ですか?」

 

 郁代が尋ねてきたので、私は頷く。ぼっちも興味津々という感じだ。いいぞぼっち。そのままレンについて色々勉強するがよい。

 

 レンの性格を考えれば……ぼっちがおっぱいを揉ませてキスすればレンは責任を取って付き合ってくれるぞ。

 

 おっと、思考がそれてしまった。レンの大きな問題点についてだったね。

 

「……レンは、恋をしたことがない」

 

 正確に言うなら、恋愛感情を持ったことがない。

 

 よく、付き合ってから相手を好きになって恋愛感情を持つようになることがあるという話を聞くけれど、レンは終ぞ、誰かに恋愛感情を抱くことがなかった。これまで付き合ってきた相手全員に対して、だ。

 

「よ、よくそれでレンくんは付き合おうと思いましたね……」

「愛はあったからね」

 

 そもそもレンは興味がない相手の告白を受け入れたり、同情心で付き合うということはない。歴代彼女達に対して、レンはレンなりの愛情を向けていた。

 

 そう。愛情を、だ。

 

 だけど、その愛情は、彼女達が本当に求めているものではなかった。

 

 レンが向けていたのは、あくまで家族に対するような愛情。

 

 それに対し、彼女達が求めていたのは焦がれるような恋愛感情。

 

 似ているようで、両者の間には大きな隔たりがある。その隔たりこそが、レンと長く付き合えない最大の理由だった。

 

 顔が良くて、背が高くて、頭が良くて、面倒見の良い優しい性格。だけど、恋愛をする上で根本的な感情のすれ違いがある。

 

 我が弟ながら……中々に罪深い。

 

「だから、レンと長く付き合える相手は……『レンに恋愛感情を抱かせることができる女』か『すれ違いの愛情を許容できる女』に限られる」

「でも、レンくんって『年上の巨乳お姉さんに甘やかされたい』ってよく言ってましたよね?」

「だけど、そういう相手に恋愛感情を抱いたことはない」

「えぇ……」

 

 まあ、そういう相手とあまり出会わなかったというのもある。

 

 ただ、姉としては弟がずっとそんな状態なのはよろしくない。だから、虹夏にはレンの初恋相手として結構期待していたんだけど……

 

 なんか知らん内にレンも虹夏もお互いに激重感情を向け合うようになってたんだ。これには頭脳明晰天才淑女な私もさすがに想定外。

 

 ただ、レンも虹夏もその感情を自覚しているから拗らせることもないし、それがバンドに悪影響を与えるという可能性は低いだろう。もし本当に悪影響なら、お互いに距離を取っているはずだから。

 

 そして、これに関しては、レンに一度相談されて話し合ったことがある。その時に、解決するための方法も三つ思いついていた。

 

 一つ目は「レンが恋愛感情を抱くこと」

 二つ目は「虹夏が幸せな恋愛をすること」

 三つ目は「レンと虹夏が付き合うこと」

 

 正直、三つ目は一番簡単な方法だけど、()()()()()()可能性は最も低いと思っている。

 

 そして、一つ目と二つ目は連動していて……レンが誰かに恋をすれば虹夏は安心して自分の恋愛に集中できるはずだ。お互いの重い感情も、素敵な相手が見つかれば時間が経つにつれて解消されていくだろう。

 

 ……そういう相手を見つけるのが一番難しいんだけど。

 

 でも、二人とも私にとってすごく、本当にすごく大切な人だから……二人には悲しい思いをしてほしくない。

 

 だからどうか、二人には素敵な恋をしてほしい。

 

「どうしてレンくんは恋愛感情を抱いたことがないんでしょう?」

「私を毎日甘やかして献身的に愛情を注いでお世話し続けたから」

「イケメンを射止めるための最大の障壁が姉という恋愛漫画のテンプレですね!」

「その通り。私への愛を超える相手が現れない限り、レンはこのまま」

「諸悪の根源のくせしてなんでちょっと嬉しそうなんだよ!?」

「だって、レンの一番は私だから」

 

 レンは私にいつも厳しいことを言ってくるけど、なんだかんだ言うことを聞いてくれるし、甘やかしてくれる。あんなにできた弟をそう簡単に手放すのは惜しい。

 

 かといって、情緒が発達しないまま大人になるのは問題だ。だから何とかして、レンには真っ当な恋愛をしてほしい。

 

 だから私はレンが恋する相手として大槻ヨヨコとぼっちにはかなり期待している。

 

 大槻ヨヨコは、レンが虹夏以外で純粋に甘えられる年上のお姉さんで、重い感情を向けているわけでもない。しかも大槻ヨヨコはツンデレで包容力があるし、レンも色々彼女に世話を焼いているから性格の相性もいい。

 

 ただ、大槻ヨヨコもレンと同じで恋愛感情を知らない人間っぽいのが問題。

 

 ぼっちはレンが介護してきた中でも「手がかかる女」歴代ナンバーワンで、レンの庇護欲センサーと甘やかしセンサーが常に全開で発動している。でも、ぼっちにも妹がいて、ぼっち自身は甘えたがりだけどいざという時には包容力を発揮できるだろう。

 

 しかもおっぱいが大きいからレンの好みにも一致する。さらに、この前の花火大会でレンはぼっちのことをかなり強く意識した。

 

 レンに知らない感情を発生させたという点で、現時点では大槻ヨヨコよりぼっちが優勢に見えるけど……

 

 ぼっちも恋愛感情を知らない人間なのが問題。

 

 あれ? 私の周り……恋愛感情を知らない人間が多過ぎない?

 

「私の一番もリョウ先輩ですよ!」

「ふっ、モテる女は辛いぜ」

「私のリョウ先輩に対する愛はレンくんに負けてないし……いえむしろ、血の繋がりがないから勝っていると言っていいわ! あれ? そうなると、さっき先輩が言っていた『先輩への愛を超える相手』ってつまり私がレンくんと付き合うということ?」

「リョウが言ってた『超える』の解釈が全然違うと思うよ?」

「あ、あ、あ……(山田くんと喜多ちゃんが付き合う? つまり私は喜多ちゃんの彼氏とずっと隣の席になるわけで、喜多ちゃんの彼氏と一緒にお勉強するわけで……こ、これがNTR!? ま、まずい……私のせいで結束バンドの絆が崩壊してしまう!!)」

 

 ぼっちがガタガタ痙攣し始めた。なるほど、レンが郁代に取られるかもしれないという危機感を抱いたか。そのまま情緒を成長させてくれ、ぼっち。

 

「大丈夫。レンが郁代と付き合うことはない(まな板だし)」

「そうですね。レンくんと付き合ったら先輩の娘になれませんから」

「そんな理由なの!?」

「でも、レンくんと結婚したら自動的に先輩の家族になれる……それはすごく魅力的ね」

「もっと他にたくさんレンくんの魅力あるでしょ!?」

「お、お、お……(け、結婚!? さ、さすがに結婚相手をNTRしたら慰謝料が発生して……ど、どうしよう!? はっ! 確か腎臓って二つあるから片方を売ってお金にすれば何とか……)」

 

 ぼっちの顔色が悪くなっている。

 

 あれ? なんか私が思っているのと違う反応? もしかして、全然違うことを考えてる?

 

 ぼっちだし、ありえるな。変な方向に妄想が爆発しているんだろう。……でも、そういう面白いところがぼっちのいいところだ。

 

 たとえそれが、とんでもない妄想だとしてもレンは受け入れ───

 

「き、喜多ちゃん……慰謝料はいくら必要ですか?」

「私が知らない間に慰謝料払うようなことしたの!?」

 

 ふー……とりあえず大槻ヨヨコに嫁ポインツを+10しておこう。

 

 ぼっちはまあ……ぐっどらっく。




 レンくん掘り下げ回その2。

 鈍感でも難聴でもないけど姉の介護ばっかりやってたせいで、女の子に対して家族愛しか向けることができず付き合っても長続きしない男の子。

 だからヒロイン候補達はがんばってレンくんに恋愛感情を芽生えさせないとね。

 ただ、そのヒロイン候補達も恋愛感情知らない系ガールだから全然前に進まないという不具合。

 あと、前回の虹夏激重感情に対する反応が想像以上でビビりましたが、虹夏を不幸にする気はありません。

 お互い激重感情に自覚していて、解決策もちゃんとあるので最終的に幸せになると思います。

 次回こそ喜多ちゃん回!

 レンくんと喜多ちゃんがいちゃいちゃ……になるのか? この二人で?

 では、感想、評価、誤字報告、ここすき等ありがとうございました!

 次回もよろしくお願いします!

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