「着きましたね~。今から何しましょうか?」
「あたし、しらす丼食べたーい!」
「幽々は暑いので冷たい物を食べたいです~」
「やっぱり海だよ! 海に行こ~!」
八月三十日、結束バンドとSIDEROS、そして俺の九人は予定通り江の島に来ていた。姉貴は最後まで駄々をこねていたけど、俺達だけで楽しく遊んでその写真をグループロインに載せたりしたら拗ねるから無理矢理連れてきたんだよな。
我が姉ながら本当に面倒な女ですね。
「じゃあ、とりあえず海に行こうか。海の家だったらあたしが食べたいしらす丼とか、他にも色々あるだろうし」
「さんせーでーす!」
「喜多ちゃん、ナビよろしく!」
「お任せください!」
そんな会話をしながら陽キャ組(虹夏ちゃん、喜多さん、ふーちゃん、幽々ちゃん)の四人は先に歩き出す。
そこから少し離れて陰キャ組という名の要介護組(姉貴、後藤さん、大槻先輩)の三人がのろのろと重たい足取りで歩き始めた。
そして、俺とあくびちゃんの介護士二人は両グループの中間を歩いていた。役目は主に要介護組が前の陽キャグループに極端に遅れないようにバランスを取るためである。
「暑い……なぜこんな日に外を歩き回らねばならんのだ」
「あっあっあっ……と、溶けそう……」
「ぎゃーーーっ!? 後藤ひとり!! 顔がすごいことになってるわよ!?」
後藤さんが物理的に溶け始めている。毎週の路上ライブとこの前の別荘で暑さに耐性が出来てたと思ってたけど……SIDEROSの人達もいるから緊張してるのか。なるほど納得。
「そういえば、レンさん。この前はヨヨコ先輩がお世話になりました」
「……あの後、めっちゃ大変だったからね?」
「聞いたっす。なんでもあのライターさん、年齢詐称してたらしいっすね」
「あの顔で二十三歳だったからな。俺、初対面でふつーに中学生扱いしてた」
「二十三であの恰好はやばいでしょ?」
「恰好で言うなら……大槻先輩のライブ衣装もかなり際どくない?」
「やっぱレンさんもそう思います?」
「正直、目のやり場に困るところがある」
「それ、ヨヨコ先輩に言ってみたらどうっすか? 多分、面白いことになると思うっすよ」
「リアクションが簡単に想像できるんだけど。それに、気まずくなりそうだからやだ」
今日は胸元全開の服じゃないけど、動きやすさを重視してて体のラインが浮きやすい服装になってるんだよね。後藤さんは大槻先輩の胸元をめっちゃガン見してるし。……いくらなんでも見すぎでしょ?
「ヨヨコ先輩、スタイル良いっすもんね。容姿も抜群だし、あれでもうちょっと面倒臭さがなくなればいいんすけど」
「でも、あの面倒臭さが大槻先輩の可愛い所でもあるんだよなぁ」
「レンさんもだいぶ手遅れっすね」
「あくびちゃんって結構ズバズバ言うよね?」
俺と違って甘やかし系介護士じゃなく、性格は佐々木さんに近いサバサバ系介護士だ。でも、ふーちゃんに対しては俺もあくびちゃんも共通して過保護になるんだよな。
「陰キャ三人でクソ暑い中ただ歩くのは苦痛。ぼっち、何か面白い話して」
「お、面白い話ですか? あ、あ、じゃ、じゃあ……次のライブでやろうと思うモノボケを……」
「七月のライブでド滑りした悪夢を忘れたのかしら!?」
「あれは武田信玄がわかりにくかったので、今度は誰でも知ってる戦国武将にしようかと……」
「あなたはギターだけ弾いていればいいのよ! どうして自分から魅力を下げていくの!?」
「み、魅力……(今日の大槻さんは露出の多さじゃなくて体のラインで勝負を仕掛けてきてる!! こ、これで山田くんを誘惑して、どさくさに紛れて抱き着いておっぱいを押し付けたりして夜のロックフェスを開催する気だっっ!! 『あなたの未確認なところをライオットしちゃうわよ?』とか山田くんに囁いちゃうに違いない!!)」
「ぼっち。何考えてるかよくわかんないけど、これだけは言っておく。おまいう」
意外と陰キャ組の会話が盛り上がってるな。もっとお通夜みたいな雰囲気になって俺達が話題提供しなくちゃいけない羽目になるかと思ったけど、変な化学反応を起こしてる。
「ふーちゃん達は多摩川花火大会に行ったんだ~?」
「そうですよ~。これがその時の写真です!」
「幽々達みんなで浴衣を選びに行ったんですよ~」
「わ~、みんな髪形がいつもと違ってて可愛い~!」
「喜多ちゃん達は海で遊んだんだよね? レンくんに写真見せてもらったよ~」
「虹夏さんが埋められてました~」
「実はね、とっておきの写真があって……」
陽キャ組はきゃっきゃとはしゃぎながら仲良さそうに喋っている。圧倒的平和!
放置して問題ないな。ただ、喜多さんが言ってた「とっておきの写真」とやらが気になるけど……
まさか、溺れかけていた後藤さんを助け出して抱き合う形になった時の写真じゃないだろうな?
「ぼっち、次は何か涼しくなるような話して」
「す、涼しくなるような話……といっても、夕暮れ時に知らない声に呼ばれて気づいたら墓場にいた話くらいしか……」
「それでいい。詳細を」
「やめなさい!! 私はそういう話が苦手なのよ!!」
「……ほう、それは良いことを聞いた。次はより親睦を深めるためにホラー映画鑑賞会を───」
「絶対参加しないからね!!」
「大丈夫。レンも怖がりだから。上映中は二人で抱き合っていればいい」
「観なかったら抱き合う必要もないでしょ!?」
「だ、抱きっ……!? (や、やっぱり大槻さん……山田くんを抱くつもりなんだ……!! いや待てよ? 抱く必要がないって言ってたよね? ……はっ!? つ、つまり抱くまでもなく山田くんを前〇のみで骨抜きにできるということ……!! も、もうSIDEROSじゃなくて
後藤さんが何やらすごい形相で大槻先輩を凝視しながらホラーな話をしてるけど、今の俺には彼女を気にかける余裕がなかった。
「大丈夫すか?」
「……怖いから手、繋いでもらっていい?」
「レンさんってそういうとこあざといっすよね」
「下心なんて微塵もないんだけどね!!」
ついでに余裕もありません。後藤さんの話が普通に怖かったので、俺はしばらくあくびちゃんに手を握ってもらうのだった。
「うーみだーっ!!」
「海は何回見てもいいですね!」
「私は海に来るの今年初です~」
「幽々も~!」
駅からしばらく歩いて江の島の海水浴場へやって来る。さすがに八月の終わりも終わりなので、泳いでいる人はほとんどいなかった。クラゲがいっぱいいるもんね。刺されたらマジで大変なことになるから。
「山田とあくび……なんで手を繋いでるのよ?」
「ぼっちさんの怪談が怖かったらしいっす」
「俺はホラー映画を観る時は何かに抱き着いていないとダメな人種なので」
「えー……気持ちはわかるけど……」
大槻先輩が不満そうな表情をしている。先輩は後藤さんの話を間近で聞いてて縋れる相手もいなかったからね
もしも俺と先輩が二人っきりでホラー映画を観たら……多分終わるまでずっと抱き合ってぎゃーぎゃー悲鳴上げてるな。で、二人とも寝れないから朝まで起きておくコースになる。
「はーちゃーん! レンくーん! こっち向いてー!」
「いえーい」
ふーちゃんが俺達を呼んできたのでそちらを向くと、スマホのカメラでパシャリ。あくびちゃんはピースしてて、俺はとっさのことだったので、多分間抜けな顔になっていると思う。
「良い写真だよ~。レンくんとはーちゃんが仲良くおてて繋いでる~」
「まずいっすね。これは秀華高校の女子に女子特有の陰湿な嫌がらせをされるっす」
「俺もあくびちゃんのファンに石を投げられるかもしれない」
でも、写真自体はすごく良いから俺のロインに送ってもらおう。
「みんなー! 早くおいでよー! 一緒に写真撮ろー!」
気付けば虹夏ちゃんと喜多さんが砂浜の方へ走って行っていた。元気だな~あの二人。でも、喜多さんはともかく虹夏ちゃんは絶対帰りに電池が切れて電車で爆睡するな。
「行くぞ。私について来い。レン、ぼっち、あくび、楓子、幽々、生足魅惑のヨヨメイド」
「なんで私だけ変な呼び方するの!?」
「大槻ヨヨコの生足がえっちだから」
「どこがえっちなのよ!? 後藤ひとりもうんうん頷くな!!」
(は、長谷川さん……い、いや、はーちゃんも山田くんと手を繋ぐだなんてえっちすぎる!! 山田くんがホラーが苦手っていう弱みに付け込むなんて……こ、これが噂に聞く卑しか女!?)
大槻先輩の生足は確かにエロいけど……後藤さん、あなたのおっぱいも人のこと言えないからね?
「何よ山田。あなたも言いたいことがあるの?」
「先輩の今日の髪型、ちょい高めの位置で結んだゆるふわポニーテールじゃないですか」
さらに、いつものベレー帽とは違って、キャップを被っているのでデニムパンツも相まってアクティブに見える。
「それが何?」
「太ももよりも、俺はうなじの方が色っぽいと思います」
俺がそう言うと先輩は顔を真っ赤にしてべしべし叩いて来るのだった。それに合わせてポニーテールがゆらゆら揺れているのが最高に可愛い。
もっと言うなら、キャップの後ろからポニーテールを出してるのほんと好き。
さすがにそこまでは口にしないけどね。
こんな感じで大槻先輩達とじゃれ合いながら、可愛い女の子達と砂浜で写真をたくさん撮っていく。
「レン、ここは姉弟の絆を見せつける場面。山田式組体操『サボテン』の出番」
「あれ腰が痛くなるから嫌なんだけど」
なんで砂浜で姉貴と組体操せんといかんのだ。と主張しても姉貴がどうしてもやりたいと駄々をこねるので仕方なく付き合ってやることにする。
「今の私は───風になっている」
「ぐぎぎぎぎぎぎ!! こ、この体勢結構きついな!!」
姉貴が俺の太ももの上に立ち、両手を広げて恍惚の表情で何事かほざいている。久しぶりにやったから腰に……腰に来る!!
「リョウ先輩、目線こっちにお願いしまーす! あ、今度はこっちの角度から……」
「喜多さん……まだ……?」
「もうちょっとがんばりなさい、レンくん。男の子でしょ?」
「最近はそういう発言すると、すぐ……炎上するよ……?」
「意外と余裕あるじゃない」
喜多さんの写真撮影が無駄に長引いたせいで腰がめっちゃ痛くなった。姉貴は満足そうだったけど……しばらくやんないからな!!
「レンくん、一緒に写真撮ろ~!」
俺が腰をトントン叩いていると、ふーちゃんがぱたぱたと駆け寄ってくる。ふーちゃんはほんと癒し。見てるだけで心が穏やかになるね。
「いいよ。どんな感じで撮る?」
「高い高いチャレンジしたい!」
マジか……あれ、結構難易度が高かったと思うんだけど。
「ウチが撮ってあげるっすよ。ふーちゃん、スマホ貸してください」
「任せたよ~、はーちゃん」
「高い高いチャレンジなら写真より動画の方がよさそうっすね」
ふーちゃんはやる気満々みたいですね。まあ、体重は軽そうだし大丈夫でしょ。上手くふーちゃんがジャンプするタイミングに合わせて彼女を持ち上げればいいだけだし。
「じゃあ、いくよふーちゃん」
「おっけー!」
「せーのっ!」
掛け声とともに、ふーちゃんがジャンプしたので俺は彼女の腰を両手で支えながら勢いよく持ち上げる。
ふーちゃん軽っ!
と、思った瞬間だった。
ふーちゃんのジャンプの勢いが強すぎたのか、俺が彼女を持ち上げる力が強すぎたのか……両方だな。
俺は思い切りバランスを崩して後ろに倒れ込んでしまった。ふーちゃんが怪我しないように咄嗟に彼女を抱き締めて砂浜に転がる。下が柔らかい砂浜でよかった。
「あはは、レンくんを押し倒しちゃった~」
「ふーちゃん、怪我……ない?」
「うん。大丈夫だよ~。レンくんは?」
「俺も大丈夫」
ふーちゃん、めっちゃ良い匂いするな。サイズ感もちょうどいいし。抱き枕にしたい。
「この画は撮れ高が高いっすよ~。ふーちゃん、お手柄っす」
あくびちゃん……仲間内で楽しむのは良いけど拡散するのはやめてね? まあ、この子は比較的常識人だから大丈夫だと思うけど。
「次はあくびちゃんの番だね~」
「そっすね。レンさん、ウチもお願いします」
「よしきた! ふーちゃんでコツを掴んだからもうさっきみたいな失態は起こさない」
「起こしてくれた方が面白いんだけどね~」
「あと『ふーちゃんでコツを掴んだ』って表現がエロいっす」
というわけで、あくびちゃんも同じようにしてあげると、幽々ちゃんもやってほしかったらしく、SIDEROSの陽キャっ子達全員に高い高いチャレンジをしてあげるのだった。
「ほらほら、次はヨヨコ先輩の番っすよ」
「嫌よ! なんでこの歳になってまで高い高いされなくちゃいけないの!?」
「最近のトレンドですよ~。TikTokにもたくさん上がってます」
「え? そ、そうなの?」
「今の女子高生はみんなやってるんです~。幽々のお友達の間でも流行ってますし~」
「そ、それなら……」
いや、騙されてる。騙されてるよ大槻先輩。確かに、ちょっと前に流行ったけど今はもうあんまりやってる人はいないから。というかこの流れ、前にも新宿FOLTで見た気がするな。
大槻先輩はちょっと……一度身内認定した相手の言うことを簡単に信じすぎるところがあるね。
そして、言いくるめられた大槻先輩にも高い高いしてあげるのだった。
(ふ、ふふふふふふふーちゃんが山田くんを押し倒してた!! あ、あんなに人畜無害な癒し系キャラみたいな容姿なのに、な……中身はとんでもないえっち少女!! お、男の人はああいうギャップに弱いって聞くから、や、山田くんがえちえちに染められてしまう!! やっぱりSIDEROSじゃなくてSI-EROSだよ……)
「レンくん。SIDEROSの人達だけずるいわよ! 私達にもやってちょうだい」
「えー……結構疲れるんだけど」
「ダメ?」
「しょうがないにゃあ……」
喜多さんがおねだりしてきたので結束バンドのみんなにもやってあげることにする。俺、めっちゃ酷使されてるな。
で、順番に高い高いチャレンジをやってあげてて虹夏ちゃんの番になったんだけど……何を思ったか、虹夏ちゃんはジャンプと同時に俺に思い切り抱き着いてきたんだ。
完全に予想外だったので俺は何とか受け止めることはできたんだけど、その場に尻もちをついてしまう。
「……虹夏ちゃん。危ないでしょ?」
「えへへ。でも、レンくんならちゃーんと受け止めてくれるって思ってたんだー」
虹夏ちゃんが悪戯っぽく舌をペロッと出してそう言ってきたので、鼻をつまんでおきました。
後藤さんにもやってあげようかと思ったけど、例によって首を高速で横に振りながら「むむむむむむむむむむむむむ!」と「イヤイヤぼっちちゃん」になっていたので、一緒に写真を撮るにとどめておくことにする。
二人で写真を撮れるようになっただけでもものすごい成長だけどね。
「山田さ~ん、幽々とヨヨコ先輩と一緒に撮りましょうよ~。すんごいのが写りますよ~」
「絶対良いヤツじゃないよね!? あと、そのお札何!?」
「これは~この前ヨヨコ先輩が連れてきた霊を除霊するのに使ったお札で~」
「大槻先輩……良い人だったな」
「ちょっと! 露骨に距離を取らないでよ! 普通にショック受けるじゃない!」
その後も大騒ぎしながら、各々のバンドの楽器ごとだったり一年生組だったり先輩組だったり陰キャ組だったり陽キャ組だったりと、色んな組み合わせでたくさん写真を撮るのだった。
「いっぱい写真撮れたね~」
「こうしてみると、山田姉弟の美形っぷりが際立ってますね」
「レンくんはともかく、リョウも顔だけはいいからな~。変なファンも多いし」
「リョウ先輩! 変なファンに困ってたら私に言ってくださいね!」
「変なファン筆頭がなんか言うとるわ」
「……レンくん?」
「後藤さん、大槻先輩、何食べますか? 王道のしらす丼?」
ひとしきり海ではしゃいだ後、海の家でお昼ご飯タイムに突入する。生しらす丼にも興味があったけど、海の家だと釜揚げしらす丼しか売ってないみたいだ。残念。
「あ、大槻さん。遅れちゃったけどTOKYO MUSIC RISEの優勝おめでとう!」
「曲聴いた。すごくよかった。おめでとう」
「おめでとうございます! 次は私達も負けませんからね~!」
「お、おめでとうございます」
八月二十六日に最終審査が行われ、SIDEROSは見事に優勝を勝ち取り、TOKYO MUSIC RISEのホームページにも詳細が記載されていた。予選を通過した他のバンドの動画も観たけど、やっぱりSIDEROSが頭一つ抜けている。
今のSIDEROSのメンバーが集まった時期と、結束バンドのメンバーが集まった時期はほとんど同じなのに、二つのバンドの間には大きな実力差があった。
それに悔しさを感じつつも、結束バンドは地に足をつけた活動を続けていて、着実に実力を伸ばしていっている。今はまだ、SIDEROSのみんなには勝てないけど……次の舞台では彼女達と肩を並べるくらいにはなっておきたい。
「ありがとう。でも、あのくらいのレベルなら優勝して当然よ。ここで躓くようなら未確認ライオットの優勝なんて夢のまた夢だわ」
「あたし達は予選落ちだもんね~」
「あれは結構ショックだった」
「予選落ちした日、みんなで(スタジオで)大暴れしましたね」
「し、七月や八月のライブはかなり良くなってたでしょ!? そ、それに、音源審査ギリギリに曲が完成して練習時間が満足に取れなかったって聞いたわ! あ、あれがあなた達の本来の実力って私はちゃんとわかってるから……」
「大槻さん、私達の八月のライブ動画もチェックしてくれてたんだ」
「大槻さんって優しいのね」
「ツンデレ」
「う、うううううるさいっ!! 山田っ! 店員さんを呼んでちょうだい!! もう注文は決まったから!!」
大槻先輩が顔を赤くしながら捲し立てる。他のみんなはニコニコと温かい笑顔で彼女を見ていた。後藤さんですら、妹のふたりちゃんに向けるような優しい表情になっている。
ほんとに大槻先輩ってこういうところがあざといよなぁ。
「レンさんも人のこと言えないっすからね?」
「俺のおばけ怖い怖いはガチだから。狙ってないから」
「だからっすよ」
「幽々がお守り代わりにこのお札をあげますよ~」
「……なんか思いっきり『呪』って字が書かれてない?」
「レンくんとヨヨコ先輩を二人でおばけ屋敷に放り込んでみたいね~」
「笑顔でなんて残酷なこと言うの!?」
富士急ハイランドのおばけ屋敷になんかに放り込まれたら……俺は五分ももたないからな!! はっきり言って、泣かない自信がない!!
「大槻さん。TOKYO MUSIC RISEで優勝してから、どこかから声がかかったりした?」
「昨日、レーベルに話を聞きに行ったわ。ただ、私達の方針と合わなかったから断ったけど」
「こ、断っちゃったんだ!? もったいない……」
「レーベルだからと言って、無防備に話に飛びついたら危険よ。中にはこっちのことなんて搾取対象としか思っていない悪徳レーベルだっているわ。あなた達も、気をつけなさい」
「大槻さん……私達がいつかレーベルに声をかけられるくらいのバンドになれるって思ってくれているのね」
「だ、誰もそんなこと言ってないでしょ! 都合よく解釈しないでちょうだい!」
「うーんこの大槻ヨヨコとかいう絵に描いたようなツンデレヒロイン。こんな面白生物なのになぜ昔はメンバーの入れ替わりが激しかったのか」
「それは多分、昔はツンツンツンツンツンツンツンツンツンツンデレだったからじゃないすか」
「お姉ちゃんより酷いことになってる!?」
俺と出会った頃もかなーりツンツンしてたからなぁ。今はもう、すっかり正体がバレてるからどんな発言をしても温かい目で見守られてるんだよね。
「つ、ツン……デレ……?」
「お? 後藤さん、興味ある?」
「あ、はい……(こ、これをマスターすれば山田くんともっと仲良くなれるかもしれない……よーし!)」
後藤さんのツンデレとか……ちょっと想像ができない。後藤さんはちょっと褒めたらデレデレのデロデロになるから……いやこれだとデレの意味が全然違うな。
(はっ!? ちょっと待って! ツンデレって……冷たいことを言った後に甘い言葉を囁いて相手の心を支配するってことだから……実質DV!? お、大槻さんはえっちなDV女だった!? つ、冷たく突き放した後にえっちな服と体で山田くんに迫ってあまあまにしても身も心も虜に……)
『大槻先輩はね。本当は優しい人なんだ。俺はそれをよく知ってる。先輩が冷たいことを言うのだって、全部俺のためなんだよ? ちゃーんとわかってるから。大丈夫、辛くなんてない』
(ぐわああああああああああっっ!! や、山田くんが……山田くんがクズ男に引っかかるダメ女みたいになってしまうううううううううう!! わ、私が……私が守ってあげないと……)
「ぼっちさんが一人で百面相してますけど、大丈夫っすか?」
「大丈夫。多分『ツンデレ』をおかしな方向に解釈して変な妄想を脳内で暴走させてるだけだから」
「あ、あ、あ……し、SIDEROSのDはドメスティックのD……」
「なんか怖いことを呟きだしたっす!?」
「どんな妄想をしたらツンデレとドメスティックが繋がるわけ!?」
「あー……なるほどな。ツンデレをDVだと拡大解釈しちゃったか~」
「この子の拡大範囲はどうなってるの!?」
「それよりレンさんの理解力に驚くべきっすよ」
これは理解力というか……これまでの彼女の奇行と妄想と暴走の傾向から推察したに過ぎないんだけどね。彼女の脳内を本当に理解しようとするなら、常人ではいられないと思うよ。
「後藤さんの理論でいくと、ツンデレな大槻先輩はDV女だということに……」
「ちょ!? 後藤ひとり!! 帰ってきなさい!! 誰がDV女よ!? 私はちょっときついことを言っちゃって人に誤解されやすいだけなんだからね!?」
「大槻さんはきつい女……おおきつさん……おおきつつきさん……ぐふっ、キツツキさん可愛いね」
「山田ァ!! 何とかしなさい!!」
後藤さんの好きな唐揚げを注文して食べさせてあげるか。それで元に戻るでしょう。
「虹夏さん、結束バンドって面白いですね~」
「SIDEROSも人のこと言えないでしょ!?」
ふーちゃんと虹夏ちゃんのそんな会話が聞こえてくる。八人とも全員キャラ濃いんだよなぁ。この中だと俺が一番まともな常識人だから相対的に埋もれてしまう……
うん。埋もれたまんまでいいや。
こうしてみんなで仲良くしらす丼を美味しくいただきました。
江の島回一話目!
順調に行けば次で終わるかなー?
ノリと勢いでSIDEROSを連れて来ちゃったけど、キャラが多くて捌ききれない。これは大きな反省点です。
ぼっちちゃんが会話に参加できないから存在感がなくなるし、わちゃわちゃさせるのも考えものですね。
そしてぼっちちゃんの中でSIDEROSがどんどんえっちな集団になっていく……
この女、レンくんと青春花火デートしたのと本当に同一人物なのか?
では、感想、評価、誤字報告、ここすき等ありがとうございました!
次回もよろしくお願いします!