【完結】俺の姉貴はやべーヤツ   作:わへい

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#48 めいどのめいど

「喜多ー、山田の髪は巻かないの?」

「毛先をゆるーく巻くわ。あと、前髪は右に流して右目を隠す感じで……そうそう! で、こめかみ辺りで髪を束ねて黒のヘアゴムで……喉仏はチョーカーで隠しましょう」

「喜多さん、俺をとことん姉貴に近づけようとしてない?」

「そうだけど?」

 

 文化祭当日、俺は一年二組の教室で生まれ変わろうとしていた。主に喜多さんと佐々木さんの手によって。

 

 なんでこの二人がいるのかというと、一年五組は教室展示だけだからやることがないらしい。だから二組に遊びに来て俺の体を好き放題にしているんだ。

 

 あとさ、喜多さんってこの前の姉貴引きこもり騒動の時に俺を姉貴っぽくしてたよね? あれで満足できなかったの?

 

「あの時の完成度を七十パーセントとするなら、今回は九十五パーセントよ! はぁ~、さすが姉弟ね。うっとりするくらい顔が良いわ! ね、ねえレンくん……リョウ先輩の声で『大好きだよ』って言ってもらえないかしら?」

 

 喜多さんが頬を赤らめてもじもじしながらそう言った。仕草だけは可愛いな。発言はドン引きするほど気持ち悪いけど。

 

「喜多さん、気色悪い」

「リョウ先輩の顔でそんなこと言わないで!」

「俺をこんな風にしたのは喜多さんじゃん!」

 

 俺達のやりとりに佐々木さんは爆笑している。良い空気吸ってるなほんとに。

 

「喜多、メイクはどうする?」

「リョウ先輩ってあまりメイクしないのよね。お肌があれだけ綺麗だから、する必要がないのよ! さすがリョウ先輩!」

「いや、面倒臭がりなだけ」

「そんなことない! リョウ先輩はすっぴんでも美しいのよ! 顔色が悪い時もあるけど」

 

 実際、朝は時間がないからすっぴんで出ていくか、虹夏ちゃんにやってもらってるか、俺がやるかの三択だ。姉貴は基本的に自分でやらないし。

 

「山田もメイクできるの?」

「虹夏ちゃんに教えてもらって、姉貴にやってたら自然とできるようになった。まあ、姉貴の場合は時間をほとんどかけない簡単なメイクだからっていうのもあるけど」

「ふーん。なら、このままノーメイクで出すのもありか?」

「いいえ。ここはあえて、普段リョウ先輩があまりやらないようなメイクにしましょう! 本物のリョウ先輩にやるのは恐れ多いけど、レンくんになら気兼ねなくできるわ!」

「俺のことなんだと思ってるの?」

「(都合の)良い実験体(ひと)よ」

 

 うーん、この女……悪意がないのが余計に性質が悪い。とはいえ、今日の俺に人権なんてないので喜多さんにされるがままだった。まあ、喜多さんだし変なことにはならないでしょう。

 

「ウチはごとーの様子見てくるね」

「お願いね! すっごく可愛くなってると思うわ! さあレンくん、私達も最後の仕上げに入るわよ!」

「もう好きにして」

「い、今のセリフ……リョウ先輩の声でお願いっ……」

 

 言うか!!

 

 はぁ……なんかもう、怒りとか悲しみじゃなくて哀れみしか出てこないよ。よく今まで正体がバレなかったね。でも、この前の姉貴引きこもり騒動で喜多さんの奇行が学校でも目立つようになって「喜多ちゃんってバンド始めてからおかしくなったよね」ってちらほら噂されてたような……

 

 どんまい喜多さん。

 

「やまだーっ! こっちこっち、ちょいこっち来て! 後藤がすんごいことになってるから!」

「なんぞね」

「おぉ……山田もついに完成したか。可愛い可愛い」

「どうもありがと」

 

 佐々木さんが笑いながら俺の頭を撫でてくる。この子、俺のことを年下かペットかなんかだと思ってるよね?

 

 俺は佐々木さんに手を引かれて衝立で仕切られた準備スペースから引っ張り出される。すると、教室の中心で女子生徒に囲まれてきゃーきゃー言われている後藤さんの姿があった。

 

 クラスのみんなとこんなに打ち解けるなんて……後藤さん、よかったね。

 

「山田、今全然関係ないことで感動してない?」

「なんでわかったし」

「あんたって意外とわかりやすいよ」

 

 まあ、姉貴と比べたら俺は感情表現豊かだから。

 

「それよりほら、後藤ー! 山田連れてきたよー!」

「ま、まままままままってくださいささささささささささん!! や、山田くんにこんな姿を見られるのは恥ずかしい……!!」

「いや俺の方が恥ずかしい恰好してるから」

「あ、山田くん……か、可愛いですね。ふへへっ」

 

 佐々木さんが声をかけると、後藤さんは仲の良いクラスメイトの後ろに隠れようとするも、俺が姿を見せるとニヤニヤ笑いながら俺を褒めてくれる。うん、なんか複雑な気分。

 

「ありがとう。後藤さんもすごく可愛いよ。シックな大人っぽい服もよかったけど、こういう可愛い系の服も印象が変わってよく似合うね」

「あ、ぐふへへっ。しょ、しょうでもないですよ~。わ、私なんて所詮冥土に案内することしかできないんですから~」

「後藤、嬉しそうだね~」

 

 褒めてあげると後藤さんはニヘニヘとだらしなく笑いながら俺の腕をツンツンつついてくる。お世辞抜きにマジで可愛いな。元の素材が超一級品のはもちろんだけど、メイド服がここまで似合うとは。

 

「う~ん……クラス一のイケメンが内気な女の子を褒めるっていう割とアオハルなシーンだけど……」

「二人ともメイド服だとなんか雰囲気壊れるよね」

 

 クラスの女子達がそんなことを言っているけど、そもそも俺をメイドに起用したのは君達だからね?

 

「後藤の甘い感じもいいけど、山田のお姉様スタイルもいいね。背が高いから余計に映える」

「そうなのよ! わかるさっつー!? 山田くんの男の子特有の筋肉を隠すために長袖とロングスカートに黒タイツにしたけど英断だったわ! 喉仏もチョーカーで上手く隠れてるし、どこからどうみても高身長お姉様メイド長よ! 眼鏡をかけるのもいいかもしれないわね!」

「胸には何も詰めてないの?」

「───必要ないでしょ?」

「こっわ」

 

 佐々木さんが俺の胸をぺたぺた触りながらそう言うと、喜多さんの表情が一瞬でなくなって目から感情が抜け落ちてしまった。佐々木さん、板ちゃんに胸の話は禁句だよ?

 

「二人とも、写真を撮ってあげるわ! ほら、そっちに並んで並んで!」

「あ、ええっ!?」

「後藤さん、素直に言うこと聞いておこう。ああなった喜多さんは誰にも止められないから」

「や、山田くんがリョウさんの声で命令すればいいんじゃ……」

「それは最終手段。安易にやっちゃうと喜多さんの評判が地に落ちる」

「な、なるほど……」

 

 ついでに俺の評判も落ちる。メイドの格好をして学年の人気者である喜多さんに命令する男子。字面が酷すぎる。

 

「ひとりちゃん、もっと顔を上げて! 山田くん、手は横じゃなくて前で重ねるように! そうそう! あら~いいわね~! そのままよそのまま! 撮りまーす!」

 

 ほんとに良い空気吸ってんな喜多さん。ウチのクラスの女子以上に満喫してやがる。

 

「そうだ。喜多ちゃんもメイドやりなよ~。衣装余ってるし、五組は展示だからやることないんでしょ?」

「いいの? 実はすごく可愛いから着てみたかったのよね~。あ、もちろんさっつーも着るわよね?」

「ウチはいいよ、遠慮しとく」

 

 へえ。佐々木さん、そんなわがままが許されると思ってるの? 俺ですら抵抗の余地なくメイドにさせられたのに?

 

「佐々木さん?」

「ウチは絶対着ないから」

「次子」

「お、お姉さんの声で囁くなっ!」

 

 俺は佐々木さんの肩をポンと叩き、姉貴の声真似をしながら耳元でそっと囁く。

 

「あ゙ーっ! あ゙ーっ! ダメよレンくん! それをやっていいのは私だけなんだからっ! 他の人にはやっちゃダメ!」

「どんなところで独占欲を発揮してんの!?」

「セリフだけなら可愛い嫉妬で済まされるのに……」

「喜多ちゃんってやっぱりちょっとおかしくなったよね」

「もしかして、山田くんのせい?」

 

 いや、姉貴のせいです。俺はなんもしてません。むしろ俺は喜多さん暴走の被害者です。

 

「ほらほら。喜多がおかしなことになってるから、ちゃんと宥めてあげないと……ね? 山田」

「そうやって逃げようとしても無駄だよ? 今の俺は最強だから」

「……待って。何する気?」

 

 俺は逃がさないように佐々木さんの手を掴んでニッコリと笑う。

 

「郁代、次子を可愛いメイドにしてあげて。ちゃんとできたら褒めてあげる」

「はい! わかりましたリョウ先輩! さっつー行くわよ! 私の全身全霊を込めて可愛いメイドにしてあげるわ!」

「や、山田ぁ!!」

「いってら」

(や、山田くんがあっさり最終手段を使っちゃった……)

 

 喜多さんの評判が落ちるからやめておこうと思ったけど、よく考えたら俺が真似する前から喜多さんの評判はだだ下がりだから問題ないな、ヨシ!

 

 それから佐々木さんの準備ができるまで俺は何をしていたかというと、後藤さんと一緒に「美味しくなる呪文」の練習だ。メイド&執事喫茶で出すのは冷凍のオムライスオンリーだけど、そこは本物のメイド喫茶っぽい呪文を女子達が考えたらしい。

 

「ふ、ふわふわ~……ぴゅ、ぴゅあぴゅあ~……や、ややややっぱり私には無理ですぅぅぅ!! むむむむむむむむむむむむ!!!」

 

 あらら「いやいやぼっちちゃん」になっちゃった。首を高速で左右に振るのに合わせて、長い髪も一緒にゆらゆら揺れている。和むわー。ずっと見てられる。

 

「山田くん、ほっこりしてないで後藤さんを助けてあげてよ」

「そーだよ。ひとりちゃんが困ってるでしょ?」

「……困らせたの君らじゃん」

 

 とはいえ「いやいやぼっちちゃん」の良さがわかっているのはどうやら俺だけのようなので、彼女をどうにかその気にさせないといけない。

 

「後藤さーん。俺と一緒に練習しよ? 一人だけだったら恥ずかしいけど、二人なら平気でしょ?」

「あ、あ、あ……や、山田くんと一緒なら……が、がんばります……」

「じゃあいくよー? ポーズ取ってー」

「は、はいぃっ!」

「せーのっ!」

 

 ということで、後藤さんと一緒に「美味しくなる呪文」の練習をする。正直なところ、俺は恥じらいなんて感じなくなっていた。いざ本気でこういう恰好をさせられた時点で、色々な覚悟が決まってしまったからだ。

 

 変に冷めた態度でやっても、クラスのみんなに申し訳ないのでここから先は、全力でメイドになろうと思います。あと、俺の二日目の自由時間を少しでも確保するために。

 

「わぁ~! 喜多ちゃん可愛い~!」

「すごく似合ってる~! ねえ、一緒に写真撮ろうよー!」

 

 そんなこんなで、良い感じに後藤さんの緊張をほぐしつつ練習していたところで喜多さん達のお着替えが完了する。喜多さんも、性格はともかく見た目は明るい美少女なのでこういうメイド服がよく似合う。

 

 俺が言うのもなんだけど、顔が良い人って何を着ても様になるよね。

 

「ほら、さっつーも来なさいよ。すごく可愛いわよ?」

「ちょ……マジで無理。ウチ……こーゆーの、ほんと……ダメだから……」

 

 衝立の向こう側で佐々木さんが抵抗しているのか、一向に出てくる気配がない。見かねた喜多さんが佐々木さんの手を強引に引っ張っている。佐々木さんも美人さんだから絶対似合うと思うんだけどな。

 

「レンくん! レンくん! さっつーをここから引っ張り出してちょうだい!」

「え~?」

「さっつーのメイド姿、見たくないの?」

「見たい」

 

 それは見たい。ものすごく。なので俺は喜多さんの言葉にほいほい釣られて後藤さんと一緒に衝立の方へ向かった。

 

「おぉ……」

「さ、ささささん……」

 

 俺と後藤さんが覗き込むと、珍しく……本当に珍しく、顔を赤くして恥じらいを前面に押し出し、スカートの裾をぎゅっと掴んでいる佐々木さんがいた。

 

「さ、ささささん! す、すごく可愛いですっ……!」

「でしょでしょ? 普段さっつーはこんな服なんて絶対着ないからすっごくレアなのよ!」

 

 後藤さんの言葉に佐々木さんは顔を逸らしてぷるぷる震えている。はえー……本当に見たことない反応。佐々木さんもそういう表情ができるんだね。めっちゃ得した気分。

 

「ほら、レンくんも! いつもみたいに気の利いたことを言いなさい」

 

 まーたそうやってすぐ無茶振りする。……うーん。気の利いたことなんか言わなくても、率直な感想言えばよくない?

 

「見た目も仕草も普段とのギャップも全部可愛い」

「う、うっさいっ!」

 

 なんか俺だけぺしぺし叩かれました。素直に褒めただけなのに。普段なら「佐々木さんって可愛いね」って言っても「だろー?」って感じの返事が返って来るのに。

 

 なるほど、よっぽど恥ずかしいのか。でもね、その恥じらいが余計に可愛く見えるんだよ?

 

 さすがにそこまでは言わなかったけど。

 

 メイド長の俺! ぼっちメイド! キタキタメイド! サッツーメイド! メイド四天王が揃ったな! ヨシ!

 

 

 

 

 

「ぼっち、レン、もてなせ」

「二人とも~。来たよ~」

 

 メイド四天王を筆頭に(後藤さんもがんばって接客していた)客引きや接客を色々がんばっていると、姉貴と虹夏ちゃんがやってくる。ウチのクラスは文化祭が始まってからかなり評判がよく、喜多さんの友達や俺を笑い者にしようとする男子連中で賑わっていた。

 

「おぉ~! ぼっちちゃんはともかく、レンくんも気合い入ってるね」

「一番気合い入ってるのは喜多さんだけどね。俺のメイクやヘアセットは全部喜多さんがやってくれたんだ」

「……リョウにそっくりだね」

 

 虹夏ちゃんは苦笑しながら俺と姉貴を見比べる。俺も自分で思ってはいたけど、ほんとに似てるよな。

 

「ぼっち……ついにおっぱいメイドという反則生物に成り果てたか。安易に谷間を露出しないところにこだわりを感じる」

「お前どこ見てんの?」

 

 姉貴の言葉に後藤さんは恥ずかしそうに俯く。お前……普通にセクハラ発言だからな? まあでも、言わんとすることはわかる。だから俺も後藤さんが接客する相手はかなり慎重に選んでるし。

 

 ないとは思うけど……変なのが来たら面倒だもんな。

 

「レーン! ぼっちちゃん!」

 

 そんなことを考えていると、教室の入り口でイライザさんがものすごく良い笑顔で大きく手をぶんぶん振っている。……え? 一人で来たんですか?

 

「志麻と廣井は明日のライブを観に来るって。でも私はメイドさんが大好きだから遊びに来たヨ~! いっぱい貢いであげるからネ~!」

 

 そういやこの人、日本のアニメが大好きでアニソンコピーバンドをやりたいがために英国からはるばる海を越えて日本にやってきたんだったな。……もしかして秋葉のメイドカフェとかにも通ってるのかな?

 

「通ってるヨ~! メイドカフェに限らず、コンカフェは日本が生み出した素晴らしい文化の一つ!」

 

 イライザさんはそう言って胸を張る。……日本を気に入ってもらえて何よりですよ。

 

「ふんふん……レンはお姉様メイド長スタイルでぼっちちゃんは初々しい内気な照れ屋さん新人メイドで喜多ちゃんは元気いっぱいノリノリ陽キャメイド。三人ともコンセプトが違ってていいネ~! 写真撮っていい?」

「どうぞ」

 

 というわけで、イライザさん、俺、後藤さん、喜多さんの四人で写真を撮る。いつになくイライザさんが饒舌だな。可愛いから許されてるけど、これがキモオタだったら地獄絵図になってましたよ?

 

「じゃあ後藤さん、三人を四番テーブルに案内してもらえるかしら」

「は、はいっ! メイド長!」

「変な上下関係が出来上がってる!?」

 

 俺が姉貴の声真似をしながらそう言うと虹夏ちゃんにツッコまれた。今日の俺は一日メイド長だからね。それに、顔はメイクで誤魔化せるけど身長とガタイでよく見たら男ってバレるし。

 

「佐々木さん? 恥ずかしがらずにちゃんと接客しないといけませんわよ?」

「うるせー。メイド長のくそばばぁ」

 

 性別はじじぃやぞ。

 

「……あっちで一緒に美味しくなる呪文の練習しましょうね~!」

「あ、待って! うそうそ! ウチが悪かったから!」

 

 佐々木さんが反抗期に入ってしまったので、わからせようとしたら全力で抵抗されてしまう。佐々木さんもいい加減観念すればいいのに。

 

「あんたのその適応力の高さはなんなの?」

「佐々木さんもウチでバイトすればわかるよ」

「ぜってーやらない」

 

 佐々木さんが舌をべーっと出してくる。あら可愛い。

 

「あ、ほんとにぼっちさん達がメイドになってますよ」

「後藤ひとりや喜多郁代はわかるとして……山田まで何やってるのよ!?」

 

 俺が佐々木さんに「メイドとは何たるか」ということを教育していると、次にやってきたのはSIDEROSご一行だった。

 

 あの大槻先輩が……去年まで文化祭になんて全く縁がなかったアクティブぼっちの大槻先輩が来てくれるなんて……

 

 これは全力でおもてなしするしかあるまい。

 

「おかえりなさいませぇ♡ お嬢様ぁ♡」

「あなたどこから声出してるの!?」

「わぁ~! リョウさんにそっくり~!」

「山田さん、その衣装……手作りですかぁ?」

「めちゃ似合ってるっすね。顔だけ見たら完全に女っすよ」

 

 SIDEROSっ子達の評判は上々。大槻先輩だけは律儀にツッコミを入れてくれてるけど。

 

 さてさて、この四人もテーブルに案内しようかな。場所は……虹夏ちゃんグループの隣でいいな。

 

「ふ、ふわふわ……ぴゅあ、ぴゅあ……みらくるきゅん……オムライス、美味しく……なぁれっ……!」

「いいヨー! いいヨー! ぼっちちゃん、その恥じらいが素晴らしいネ! 演技じゃなくて本当に恥ずかしがっているところが最高に可愛い!」

「あ、そ……そうですか? え、えへへ……が、がんばって練習しました」

「虹夏、やはり結束バンドの資金問題を解決するにはぼっちの顔出し水着演奏動画で収益を得るのが一番だと思う」

「レンくんを説得できるならやってみれば?」

「……それは無理」

 

 大槻先輩達をテーブルに案内している隣で姉貴がふざけたことを言っていた。後藤さんの顔出し動画とか……ギターヒーローがこんな可愛い女の子だってバレたらどうなると思ってんだよ。

 

「レンさん、ウチらにもあれやってください。美味しくなる呪文ってヤツ」

「いいけど、俺よりも喜多さんがやる方がすごいよ?」

「どうすごいんすか?」

「……百聞は一見に如かず。喜多さーん! こっちのお客様に美味しくなる呪文をお願いできる?」

「あ! 大槻さん達じゃない! 任せてちょうだい! 大槻師匠のためならキタキタパワー百倍の美味しくなる呪文を……」

「キタキタパワーって何!?」

「ヨヨコ先輩の苦手な陽キャパワーだと思いますよ~」

「あの子は師匠の苦手なものを思いっきりぶつけるつもりなの!?」

「悪気はないんですよ、悪気は」

 

 喜多さんは基本的にやることなすこと全部悪意がないからね。その割に平気で毒を吐きまくるからSTARRYではナチュラル畜生になってるんだよな。学校ではそういう部分はかなり抑えてるみたいだけど。

 

「それじゃあみなさんいきますよ~? ふわふわぴゅあぴゅあミラクルきゅん♪ オムライスさん美味しくな~あれ♡」

「目が……目が焼かれる……」

 

 喜多さんのあまりの眩しさに大槻先輩が目を覆ってテーブルに突っ伏してしまう。先輩と喜多さんの属性は正反対だからな。他の三人は平気そうだけど。

 

「大槻さん……泣くほど感動してくれたのね! だったらもう一回───」

「やらなくていい! 一回で十分だから!」 

 

 善意で大槻先輩においうちをかけようとする喜多さん。ほんとそういうところだからね?

 

「今の喜多さん……魔法少女に変身できそうだったっすね」

「ニチアサ枠だね~。結束バンドのみんなは髪色がプリキュアっぽいし」

「じゃあ、幽々達は髪色や衣装が比較的暗いからダークプリキュア枠です~」

「大槻先輩よかったですね。念願のダークヨヨキュアになれますよ」

「なりたくないわよそんなもん!」

 

 でも、大槻先輩って敵対しながらもなんやかんやでラスボスを倒すために共闘して最終回で仲間になるツンデレ魔法少女っぽさがあるんだよな。

 

「レンく~ん。オムライスを食べさせてくれるサービスってないのかなぁ?」

「もちろんございますよ。お嬢様」

「ほんと~? じゃあ、私に食べさせてほしいな~、なーんて……」

「幽々もあ~んってしてほしいですぅ~」

「かしこまりました。それでは楓子お嬢様、失礼いたします」

 

 そんなサービスないけど、でもふーちゃんにこうやっておねだりされたら断れないよね。露骨な贔屓だけどそこはメイド長(自称)という権力を行使しようと思う。

 

 ふーちゃんと幽々ちゃんに食べさせてあげると、二人はすごく喜んでくれた。ほんとに二人とも可愛いなぁ。癒される。

 

「大槻さん! 私が食べさせてあげるわね!」

「べ、別にいいわよ!? というか、あなた私に対してグイグイ来すぎじゃない!?」

「あれだけ熱心にボーカルのイロハやフロントマンとしての心得を教えてあげたんすから慕われるのも当然だと思いますよ」

「し、慕われ……(悪くないわね)」

「大槻先輩。可愛い弟子の頼みだと思って、ここは師匠の心の深さを見せてあげる場面ですよ」

「しょ、しょうがないわね~。い、()()……そのくらいなら───」

「あ、名前で呼ばないでください」

 

 喜多さんがいつものスンとした表情になる。大槻先輩でも名前で呼ぶのはアウトなんだね。

 

「急に突き放されたんだけど!? あなた本当に私を慕ってるの!?」

「慕っています。尊敬してます。感謝してます。でも、名前で呼ばれるのは嫌です」

「何この面倒臭い生き物!?」

「ヨヨコ先輩も面倒臭い生き物っすよ」

「あくび、うっさい! 山田、説明!」

「実は喜多さんは自分の名前にコンプレックスを持っていて───」

 

 俺が事情を説明すると、大槻先輩は納得してくれた。でも、先輩的には結構勇気を出して名前を呼んだのにこの仕打ち。うーん……さすがはナチュラル畜生の喜多さん。

 

「山田メイド長~! ちょっと予想外にお客さんが多くて人手が足りないです~!」

「マジか!? あ、いや……ごほん。本当ですか? 仕方ありません。ここは新たな労働力を投入する場面ですわね」

「でもメイド長、クラスの女子は全員フル稼働で……喜多ちゃんやさっつーにも手伝ってもらってるのに、他の助っ人なんて……」

「任せなさい。私に良い考えがあるわ」

「め、メイド長……」

「ほんとになんで山田はあんなにノリノリなのよ……」

 

 大槻先輩、他人事みたいに言ってるけど……これから先輩も当事者になるんですよ? 俺がそう考えてあくびちゃんにアイコンタクトを送ると、俺の意図を察した彼女が大槻先輩を拘束する。

 

「え? あくび!? いきなり何!?」

「すみませんヨヨコ先輩。メイド長の命令っすから」

「リーダーの私よりぽっと出メイド長を優先するの!?」

「ヨヨコ先輩のメイド姿、楽しみです~!」

「幽々がいっぱい写真を撮ってあげますね~」

「なんで私だけなのよ!? あなた達もやりなさい!!」

 

 大槻先輩確保。次は……

 

「虹夏ちゃん。可愛いメイドさんになってください!」

「いいよ~。えへへ、実は私もメイド服着てみたかったんだ~」

「レン! 私もメイドさんになりた~い!」

「イライザさん……心強いです! お願いします!」

 

 虹夏ちゃんが快諾してくれて、イライザさんは自分から申し出てくれる。ありがたい。この金髪陽キャコンビは絶対に大活躍してくれることでしょう。

 

 大槻先輩? 先輩の接客とか嫌な予感しかしないけど、俺が個人的に先輩のメイド姿を見たいからいいんだよ。あとでちゃんと埋め合わせもするつもりだし。

 

「レン、私は?」

「姉貴に接客とか期待してないから。隅っこでおとなしくしてて」

「……しょぼーん」

「……看板持ちやってくれる?」

「がんばる」

 

 姉貴が露骨に落ち込んだ表情を見せたので、そう提案するとぱぁっと表情が明るくなった。姉貴がメイドになって媚びを売りながら接客なんて……限界まで追い詰めてキャパオーバーさせて脳みそバグらせればできるかもしんないけど、失敗する可能性の方が高いしな。

 

 さて、これで姉貴を除いて三人の労働力は確保できた。あと一人くらいは欲しいところ。誰か手頃な労働力になりそうな人は……

 

 そう思ってふと入口の方を見ると、見覚えのあるピンク色のパーカーを羽織った人影が見えたので、俺は急いで廊下に飛び出した。

 

「やみさん、確保!」

「あ、え……誰!? ……って、山田ァ!? あんたほんとにメイドになってんの!?」

「良いところに来てくれました。こっちですやみさん。結束バンドとSIDEROSとイライザさんが大集合してますよ!」

「そうなの? じゃあ、まとめて話を聞く良い機会ね。山田、案内してちょうだい」

「喜んで!」

 

 そして俺は、メイドにさせられるとは微塵も思っていないやみさんの手を引いて教室へと戻ることにする。

 

 二十三歳の最年長メイドか……胸が熱くなるな! ヨシ!

 

 あと、やみさんがメイド服になって初めてわかったんだけど……

 

 やみさんって結構おっぱい大きかったんですね。よきかな。




 ぽいずんのおっぱいの大きさはぼざろ5巻のアニメイト特典でわかります。

 持ってない人は「ぽいずんやみ おっぱい」でググろう!

 ロリ顔であのおっぱいは反則。

 あと、前回の最終回うんぬんに関してですが、本作は文化祭が終わったところで一旦完結とします。

 詳細は完結したあとにお伝えできればと思いますので、よければ最後までお付き合いください。

 では、感想、評価、誤字報告、ここすき等ありがとうございました!

 次回もよろしくお願いします!

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