ファミレスで色々と話し合った後、約束の時間になったので俺達はストレイビートの事務所へとやってきた。STARRYからは徒歩数分の所にある建物の二階で……建物自体はお世辞にも綺麗とは言えない年季の入ったマンションという印象だった。
姉貴とひとりは露骨にがっかりしたような顔をしてたけど、まだ夢見てたのか。小規模なインディーズレーベルだって言ったのに。
「あ、で、でもたくさんハムスターがいますよ~」
「ドブネズミだよそれ!! ばい菌だらけだから素手で触っちゃダメ!!」
とち狂ったひとりが敷地内にいるネズミを素手で掴むという奇行に出る。ネズミってマジでばい菌だらけだから病気になるよ!? いやでもひとりの体質なら変なばい菌にも抵抗できそうだけど。
そんなことを考えながら俺はひとりの手をアルコールティッシュで拭いてあげる。……事務所で手を洗わせてもらおう。
そんな風に入り口でひと悶着ありながらも事務所となっている二階のインターホンを鳴らすと、中から緑色の長髪をした綺麗な女性が出てきた。
「結束バンドの皆様、お忙しいところお越しくださいましてありがとうございます。ストレイビートの司馬都と申します」
「今日はよろしくお願いします!」
「こちらこそよろしくお願いします。では、中へどうぞ」
虹夏ちゃんが元気に挨拶をして頭を下げたので、俺達も倣って頭を下げる。この人が司馬さんか。やみさんや吉田店長に話を聞いていたけど、確かに真面目で仕事ができるしっかりした人に見える。
……だけどなんでだろう? 俺の長年の勘が言っている。この人も残念美人だと。
いやいや、まだそうと決めつけるのは早い。とにかくちゃんと話を聞かないとね。
「こ、こんにちは~。お飲み物どうぞ」
「え!? やみさん!?」
奥の部屋に通され、椅子に座るとなぜかやみさんが人数分の飲み物を運んできた。いやいや、こんなところで何やってんすか?
「やみさん……とうとうライターをクビに……お労しや」
「取材対象のバンドマンと寝て関係が拗れたんだ。そうに違いない」
「業界の闇に飲み込まれちゃったんですね。やみさんだけに」
「ぽ、ぽぽぽぽぽぽぽいずんしゃん……! え、ええええっちなのはいけないと思いますっ……!」
「ちっがうわよ!! ライターだけじゃ食って行けないからバイトさせてもらってんの!! あたしに変な設定つけないでくれる!?」
俺を筆頭に姉貴と喜多さんとひとりの流れるような発言にやみさんが全力でツッコミを入れる。でも、ライターだけじゃ食って行けないってどっちにしてもお労しい理由を抱えてるじゃないですか。
「ぽいずんさん、
「やめて!? 高校生から本気で同情されると泣きたくなるから!」
虹夏ちゃんの本気の心配にやみさんがショックを受ける。
「やみさんがSTARRYでバイトするとなると俺達全員の後輩になりますね。……おい愛子。俺のことは先輩と呼べよ」
「急に生意気な口調になりやがったなこのガキ! 誰があんたなんかを───」
そこまで言ってやみさんは余計なことを思いついたらしく、メスガキ面になってニヤニヤ笑いながら俺の腕にぎゅっと抱き着いてきた。おっぱい当たってますよ?
「レンせんぱ~い♡ あたしにお仕事教えてく~ださいっ♡」
「……はんっ」
「あたしの渾身の一撃を鼻で笑いやがったなこの男!!」
やみさんが俺の鼻を思い切り摘まんでくる。ほんとにいちいち反応が面白いなこの人。
「ずいぶん仲が良いのですね。佐藤さん、言っておきますが高校生に手を出すのは犯罪ですよ」
「出しませんよ!? こいつが生意気だからわからせようとしてるだけで……」
「逆にわからせられてる気がしますが」
司馬さんの言葉にやみさんは何も言い返せなかった。やみさんってくっころ適性とメスガキ適性が高過ぎるからね。
こんな感じで本題に入る前にぐだぐだしていたけど、良い感じに空気が和らいだみたいだからよしとしよう。ありがとうやみさん。
「それではそろそろ本題に入りましょうか」
「はい、お願いします!」
「あ、その前にちょっといいですか?」
司馬さんがそう言うと虹夏ちゃんが元気よく答える。だけどその前に、俺は司馬さんに確認しておきたいことが
「今から司馬さんに、ものすごく失礼なお願いとものすごく失礼な質問をしようと思います。不快に思ったのなら、俺を叩き出してもらってかまいませんので」
「あんた何するつもりなのよ?」
「……大事なことを確認したいんです」
「かまいませんよ、どうぞ」
「ありがとうございます」
やみさんがものすごく怪しむような表情で俺を見てくるけど、司馬さんがあっさり許可を出してくれたので俺はスマホを取り出してテーブルに置いた。
「まず一つ目、今回のお話……録音させていただいてもよろしいですか?」
俺の一つ目のお願い。後になって「言った」「言ってない」というトラブルを避けるため。ただ、相手に許可なく録音すると下手すると法に触れる可能性があるので事前に許可を取っておく必要がある。司馬さんにとってみれば「高校生のガキが生意気なことを」と思うかもしれないけど、俺にとって……いや、結束バンドにとっては人生を左右しかねない大事な話なんだ。
俺の申し出に対して司馬さんがどうリアクションするか……拒否するか受け入れるか、それだけで司馬さんがどういう人間で、結束バンドに対してどういうスタンスなのかを判断するのは難しいけど、材料の一つにはなる。
さて……司馬さんはどうするか。
「ああ、それくらいでしたら結構ですよ。昔から『言った言わない問題』は対処を誤ると信頼を失いますからね」
「ありがとうございます」
あっさり受け入れてくれた。やっぱこういうことを言ってくるバンドやアーティストって多いのか。
そう考えながら俺は遠慮なく録音アプリを起動させる。
「それと、もう一つの『ものすごく失礼な質問』というのは?」
「……それは、すごくシンプルです。どうして
俺がやみさんから話を持ちかけられた時に真っ先に思い浮かんだ疑問だそれだった。たしかに、結束バンドはTokyo Music Riseで結果を出した。だけど、冷静になってあの日の演奏を思い返してみればSIDEROSの方が一枚も二枚も上手だったんだ。
もしも俺がレーベル関係者だったら、どう考えても真っ先にSIDEROSに声をかけるだろう。だけど司馬さんは結束バンドを選んでくれた。その理由を聞きたい。
「業界のプロ相手に腹芸なんて馬鹿らしいですから、ストレートに聞きたかったんです。もちろん、プラスの理由でも
「私としては話すのはやぶさかではないのですが……みなさんはそれでよろしいのですか?」
「はい。あたし達は自分達の現状を自分なりに理解しているつもりです。ただ、それはあくまであたし達の主観に過ぎない。客観的に、あたし達のどこがどう評価されたのか……あるいは、
俺と虹夏ちゃんの言葉に、司馬さんはメンバー一人一人の顔を見て息を吐いた。大丈夫、みんな現実を受け止める覚悟はできている。
「本来であれば、あなた達くらいの年齢であれば聞こえの良い言葉を望むものですが……そこまでおっしゃるのであれば、腹を割って話しましょうか」
そう言って司馬さんはやみさんが用意した飲み物を一口飲んで俺の目を見てきた。
「ではまず、あなたの言う『マイナスの理由』からお話ししましょう。もしかすると、薄々感づいているかもしれませんが……私の
うん。それは別に驚かない。それだけ圧倒的だったからね、SIDEROSは。
「ですが、SIDEROSはすでにいくつかのメジャーレーベルが目をつけている。正直なところ、私達にはメジャーに対抗できるだけの力がなく、良い条件を提示できない。だから声をかけたところで勝算は限りなく薄い。でも、
「他のレーベルが目をつける前に、先んじて交渉のテーブルに着くことができる」
「その通りです」
俺の言葉を司馬さんが肯定する。ものすごく生々しくて現実的な話だった。
だって、司馬さんの話をめちゃくちゃざっくりかつ悪意的にまとめると「SIDEROSには手を出せないけど結束バンドならいけるっしょ!」ってことだから。
だけど、それについては
「そしてここからは、
さらに司馬さんは続ける。
「あなた達を佐藤さんに紹介していただいてから、あなた達の活動の軌跡をずっと調べさせていただきました。初ライブの動画から先日のファイナルステージまでを。メンバー全員が高い意識と共通の目標を持ち、真っ直ぐに走り続けるその姿勢。準優勝という結果に何一つ満足していない向上心。バンドとしての完成度は、
クールな表情ながらも雄弁に語る司馬さんの言葉には、確かな
ああ、この人はちゃんと結束バンドを見てくれているのだと。
「それに何より───あなた達の音楽に惚れ、あなた達と一緒に仕事をしたいと思った。それが一番の理由です」
そう言った司馬さんは優しく、優しく笑っていた。そんな彼女の顔を見て、言葉を聞いて、俺は涙が出そうになるのを堪えながらテーブルに置いたスマホを取り、録音アプリを終了する。
「よろしいのですか?」
「もう、必要ありませんから。司馬さんは俺達に本音を話してくれた。高校生だと侮らずに、一バンドとして扱ってくれた」
これだけで信じるには早いかもしれない。だけど……だけど……信じてもいいと、この人になら結束バンドを任せてもいいかもしれないと思わせてくれた。
今はそれで十分だ。
それだけで、今日、足を運んだ甲斐があった。
「改めて謝罪します。失礼な真似をして申し訳ありませんでした」
でも、けじめは必要だ。どんな理由があれ、俺が目上の人間に対して生意気な態度を取ったことは事実。
俺は司馬さんに深く頭を下げる。
「頭を上げてください。謝罪していただく必要はありません。むしろ安心しました。レーベルについて、いえ……ウチについてよくお調べになったようですね。最初から私達に対してどういうスタンスで接するかをしっかり決めていらっしゃるようですし、そういうバンドは私達としても安心してお仕事を任せられます」
「そうおっしゃっていただけると、こちらとしてもすごく嬉しいです……では改めて」
「はい。本題に入りましょうか」
そこから先はストレイビートについての具体的な説明だった。
まずはストレイビートの予算持ちで何曲か製作し、それを動画サイトやサブスクで配信する。曲の売り上げや再生数が多いようであれば次はCDやミニアルバムの製作にもつながるとのことだ。
形としては「専属実演家契約」
具体的な契約書をやみさんが持ってきてくれたので、その内容を一つ一つメンバー達と確認していく。
(レンくん、どう思う?)
(契約期間は一年……契約期間中は他のレコード会社から曲を出せなくなる包括契約。期間も極端に長いわけじゃないし、条件としてはごく普通だよ。報酬や商標についても想定内で特に問題らしい問題はないね)
(だよね。あたし達にとっては悪くない話だよね)
契約書を読みながら虹夏ちゃんと顔を寄せ合ってこそこそ話をする。他の三人もきちんと契約書は読んでいるみたいだ。特にひとりはやたらと目を血走らせている。真剣なのは嬉しいけどめっちゃ怖いよ。
他の契約条件に関しても、特に結束バンドが不利になるようなものはなかった。どの条件も事前にみんなで話し合った中で許容できる範囲内……どころか条件が良過ぎて逆に不安になるくらいだ。
ただ、この契約書の中には記載されていない事項で確認しておきたいことももちろんある。
「何か気になることやご質問があればお気軽にどうぞ」
「はい」
司馬さんがそう言ってメンバーを見回すと、虹夏ちゃんが挙手した。
「あたし達は未確認ライオットにエントリーしています。御社と契約した場合、出場しても問題はないですか? それとも、出場を辞退しなければなりませんか?」
「なるほど、日本最大の十代限定フェスにエントリーを……出場は特に問題ありません。こちらから活動を制限するつもりはないので。むしろ結果を出せばよい宣伝になるかと」
「わかりました。ありがとうございます!」
虹夏ちゃんが頭を下げる。俺もこの流れで聞きたいことを聞いておこう。
「それに関連してなんですけど、このまま順調に審査を突破した場合、御社が結束バンドに一番望んでいる楽曲製作よりも未確認ライオットが優先となります。それについて何か問題はありますか?」
「いいえ、特にありません。先ほど申し上げましたように未確認ライオットが終わるまでは特にこちらから活動を制限するつもりはありませんので。……ただ、これはレーベルの人間としてではなく、あなた達の音楽に魅了された一人の人間として言わせていただくと、未確認ライオットに向けて新曲を作った方がよいと思います」
「だってさ、姉貴」
「任せろ。実は最近ちょっと良い感じのインスピレーションが湧いてるんだ」
「わ、私も……えへへ、し、新曲の歌詞なんて私にかかればちょちょいのちょいですよ~(ほんとは全く何も思い浮かんでないけどこう言っておけばレーベルの人に大物っぽく思われるしレンくんに褒めてもらえるかもしれない!)」
姉貴はともかく、ひとりは多分嘘をついてる。そういう顔をしてるからわかる。ただ、ひとりもやる時はやる子だからね。俺はこの子が作詞に集中できる環境づくりをしてあげればいいだけだ。
(未確認ライオット……新曲……私ももっともっとがんばらないとダメね。今のままじゃ、また大槻さん達に負けて終わってしまうわ。でも、ひとりちゃんやリョウ先輩も自分の練習があるからこれ以上負担はかけたくないし……)
ふと喜多さんの方に視線を向けると、何やら思いつめた表情を浮かべていた。これは後で話を聞いてあげる必要がありそうだな。
「では、こちらからも一つ確認をしたいことがあります」
「なんでしょうか?」
未確認ライオットについて確認が終わると、今度は司馬さんが俺達に話を振ってきた。
「後藤さん」
「あっはい」
司馬さんはひとりに声をかける。バンドメンバー全員ではなく、ひとり個人に向けての話ということはつまり───
「あなたは───ギターヒーローという別名義で音楽活動をされていますね?」
やっぱりそうか。当然把握してるよな。
「あっはい」
「登録者数は十万人以上、再生数が百万回を超えている動画がいくつもあります。結束バンドにとって、これ以上ない宣伝材料でしょう。使わない手はないので、使っても問題はないですか?」
で、レーベルとしてはそういう結論になるよね。そりゃそうだ。無名バンドにプロレベルの腕を持つギタリストかつオーチューバーがいたら誰だってその存在を最大限活用しようとするんだから。
「ギターヒーローについてですが、
ひとりの代わりに虹夏ちゃんが力強く答える。
「こちらも慈善事業ではないので、使えるものは全て使っていきたいのですが……理由をお聞かせ願いますか?」
「はい。まず第一に、あたし達は全員の力で売れたいと思っています。ギターヒーローのネームバリューに頼ること、それは本当にバンドの力と言えるのか……もちろん、プロの世界で生きていくには綺麗ごとや我儘だけじゃやっていけないと、そういう現実的な売り方を受け入れる必要があるとは理解しています」
虹夏ちゃんの言葉を、司馬さんは静かに聞き入れていた。
「それに、ギターヒーローの演奏を聴いてもらったのならわかっていらっしゃると思いますが、ぼっちちゃんはまだギターヒーローとしての実力を十分に発揮できていない状態です。仮に公表したとしても、それを信じてもらえず逆に反感を買ってしまう可能性があります」
「なるほど。それは一理ありますね」
司馬さんが頷く。ただ、これだけだと納得してもらえないかもしれないので俺も援護射撃をする。
「逆に、信じられた場合にもデメリットが生じる可能性があります」
「というと?」
「さっきも虹夏ちゃんが言ったように、ひとりのバンドでの実力とギターヒーローの実力はかけ離れている。かけ離れているが故に、こう思う人が出てきたっておかしくない。『ひとりが実力を発揮できないのはメンバーのレベルが低いから』と」
やみさんも最初はそう思っていたみたいだし、そもそも結束バンドがガチになったきっかけは、俺が当てつけのように廣井さんとひとりのセッションをバンドメンバー達に見せたからだ。
そしてメンバー全員が廣井さんレベルとまではいかなくとも、それに近いレベルにまで成長しなければひとりが実力を発揮できないのは紛れもない事実。
「一般の人にそう思われるだけならまだマシです。ただ、ひとりの本当の実力が
「引き抜きをかけられるでしょうね。確実に」
「大変失礼な物言いになってしまって申し訳ないのですが……ストレイビートはメジャーレーベルに対抗できるだけの力がないと司馬さんは最初におっしゃっていましたよね」
つまり、契約期間が終わってしまえばストレイビートはメジャーレーベル以上の好条件を出せない以上、ひとりを引き止めることが非常に難しくなる。
まあ、実際にはひとりが極度の人見知りでコミュ障だからひとり自身が引き抜きに応じる可能性なんてほとんどないんだけどね。でも、こっちの要望を通すために
「なるほど……お二人の言うことはよくわかりました。公表は一旦やめておきましょう。弊社に大きなデメリットがありますし。それに、私自身が心惹かれたのは……後藤さんの演奏もそうですが、
司馬さんの言葉に俺と虹夏ちゃん、ひとりの三人はほっと胸をなでおろす。
これで条件は全部出揃った。
契約期間、報酬、商標、いずれも問題なし。
「未確認ライオットへの出場」「ギターヒーローを公表しない」いずれも問題なし。
あとは虹夏ちゃん達がどう判断するか、だ。
ストレイビートと契約するか。あるいは……
どちらも間違いではない。
ここまでの会話で司馬さんはかなり結束バンドの意向を汲んでくれる人だとわかったし、ストレイビートはインディーズレーベルのメリットや恩恵を最大限受けられるレーベルの可能性が高い。作詞作曲担当であるひとりや姉貴も、
だけど、未確認ライオットで結果を出せばメジャーレーベルからお声がかかる可能性が非常に高い。自由度こそなくなるものの、他の条件はストレイビートの比ではなく、ブレイクする確率が格段に跳ね上がる。
「持ち帰って検討させていただいてもよろしいですか?」
「もちろんです。みなさんの今後を左右する大きな決断ですから、しっかり話し合ってください」
虹夏ちゃんはこの場で結論を出すことはしなかった。司馬さんもそれを受け入れ、結束バンドの意思を尊重してくれるらしい……よかった。司馬さんがここで強引に契約を迫る、あるいは「ここで決断できないのなら契約をしない」なんてことを言う人じゃなくて。
まあ、そんなことを言う人だったら俺が絶対に契約させなかったけどね。
「じゃあ、今日のところはメンバー達と話し合って後日返答させていただきます」
「はい。本日はご足労いただきありがとうございました」
司馬さんとの話し合いが終わり、俺は大きく息を吐く。思った以上に緊張していたらしい。でも、本当に有意義な話ができたと、俺は充実感に包まれていた。
「あ、山田さんは残っていただけますか?」
「私?」
「俺ですか?」
「……弟さんの方です」
そして、事務所から帰ろうとしたところで俺が司馬さんに呼び止められた。
え? 何ですか一体?
「綺麗な成人女性が二人、イケメン高校生が一人、密室、何も起きないはずがなく」
「起きねえよ。さっさと話し合ってこいバカ姉貴」
姉貴が口元を押さえて怪しく笑っていたので尻を蹴っ飛ばして事務所から追い出す。でも、なんで俺だけ残されたの?
「それで、俺に何のご用ですか? あ、まさかさっきの話し合いで『バンドメンバーでもないのにでしゃばりやがってこのガキ』って感じで業界流のヤキを入れるとか?」
「そんなわけないでしょ!? あたし達はどこのヤクザもんなのよ!?」
やみさんが飛び掛かってきそうな勢いでそう言った。場を和ます冗談だったのに。でも、本当に俺だけ残される理由がわからないんだよね。
「山田さん、単刀直入にお聞きします」
「はい」
次に司馬さんの口から発せられた言葉は、俺が全く予想していないものだった。
「ウチでバイトする気、ありません?」
評価、感想、ここすき、誤字報告等ありがとうございました!
次回もよろしくお願いします!