「中間順位十五位か……まあまあじゃない?」
「いやいや、百組いて十五位なら上出来でしょう」
結束バンドが無事に音源審査を通過してウェブ審査が始まってから一週間、俺はストレイビートで結束バンドの近況報告も兼ねてやみさん達と話していた。
「この順位ならウェブ審査の通過も問題ないでしょうね」
「そうなんですか?」
「十五位くらいまでは得票数が頭一つ抜けているのよ。逆に中間層……三十位から五十位くらいは団子状態で順位がひっくり返りやすいわ」
「はえー……」
俺の疑問にやみさんが答えてくれる。司馬さんも言ってたし、とりあえず結束バンドはほぼ確実にライブ審査までは進めることができると思っていいな。
ただ、次のライブ審査が鬼門中の鬼門なんだけど。
「SIDEROSは一位、ケモノリアは七位……さすがですね」
「この二つはしょうがないわよ。結束バンドよりも活動期間が長いからその分知名度もファンの数も多いんだから」
「ライブ審査も会場に来た人達と審査員による投票でしたよね? となると……やっぱり多少は不利か」
「確かに、山田さんの言う通りSIDEROSとケモノリアの人気は上位陣の中でもさらに頭一つ抜けていますが、当日の演奏の出来次第で順位がひっくり返ることなんてよくあることです。本番でどれだけ観客の心を掴めるか、結局のところ勝負はそこですよ」
「ですよね。ウジウジしてても仕方ないし、俺はいつも通りできることを精一杯やるだけですね」
「とはいえ、本番で中途半端な順番を引いてしまうと大幅に不利になりますが」
「梯子外さないでくださいよ!?」
ただ、司馬さんの言うこともよくわかる。こういう審査における演奏順って本当に重要なんだよな。Tokyo Music Riseでは結束バンドはトップバッターだったから観客にかなり良い印象を残せていたんだし。
でも、虹夏ちゃんってくじ運はあんまりよくないんだよね。それを言ったらヨヨコ先輩もなんだけど……あと、ケモノリアのリーダーさんもあんなキャラだしくじ運悪そう。おいおいどーすんだ? くじ運悪い三銃士の熱い抽選バトルとか見たくないんだけど。
「ふふ~ん♪ 任せなさい山田! あたしにいい考えがあるわ!」
「えー……なんかダメそう」
「そんな残念な物を見るような目を向けるなっ! あたしが結束バンドの追い風になってあげるんだから!」
「追い打ちの間違いじゃないですか?」
「あんたあたしのこと嫌いなの!?」
やみさんがぎゃーぎゃー言いながら俺のほっぺたを引っ張ってくる。この人って確かに頼りになる時は頼りになるんだけど……最近は情けない姿しか見てないから信用度が下がってて……
「一応聞いてあげますけど……何するつもりなんです?」
「山田、あたしの本職を忘れたのかしら?」
「本職……ああ、ぶりっ子モードでおっさん達から金を巻き上げるんですね」
「そうそう『おじ様、イイコトしてあげるからやみにお小遣いちょーだい♡』……って違うわアホ!! 誰がいただき女子じゃ!!」
「そこまで言ってないでしょ!?」
今度はやみさんが俺にヘッドロックをしてきた。ちょっとちょっと。めっちゃ良い匂いするしおっぱい当たってますから。
「結束バンドの記事を書くのよ。それで一気に順位を上げてトップ10入りさせてあげるわ!」
「そんなに上手くいきますかね。最近のやみさんはおとなしいですけど、前はアンチが多かったじゃないですか」
「昔はキャラ付けに試行錯誤してたの!」
まあ、今のやみさんはバンドに対して真摯になってくれてるから大丈夫か。記事についても事前に虹夏ちゃん達に軽く相談して内容を確認してもらえばいいし。あとでロインしておこう。
「話は変わりますが、結束バンドのみなさんの調子はどうですか?」
「かなりいいですよ。最近は新曲の練習に比重を置いてて、ひとりも初めてのバックコーラスですけどがんばってます。喜多さんのギターもこの調子なら安心して見ていられますね。姉貴と虹夏ちゃんはいつも通り安定してます」
「それはよかった。新曲についても歌詞と音源を確認させていただきましたが、実に彼女達らしい……いえ、
あと報告することとしては……ひとりの様子が最近おかしいことは別にいいか。なんか挙動不審になって避けられてる気がするけど。うん、別に避けられてショックじゃないよ……嘘ですちょっとショックです。
みんなでよみ瓜ランドに行ってから様子がおかしいんだよな。確かに、よみ瓜ランドで俺とひとりが二人で行動することが多かったし、なんなら最後の方は
ただ、ひとりって俺がこれまで付き合ってきた女の子と違って、奇行だらけの不思議生命体だから、
今のところバンド活動に支障が出てるわけでもないし、下手に刺激することもないか。それに、いい加減俺も自分の気持ちに整理をつけなくちゃいけないと思ってたし。
うん。未確認ライオットが終わったら、だな。今はそれ以外のことにかまけてる余裕なんてないんだから。
「じゃあ俺、夕飯の買い出しに行きますね。司馬さん、今日は何を食べたいですか?」
「チキン南蛮がいいです。タルタルソースは手作りでお願いします」
「あ、山田。味噌がなくなってたから買ってきてちょうだい」
「わかりました。いつもの赤味噌でいいですよね?」
そして俺は買い物リストを作って、司馬さんの健康を守るために今日もスーパーへと買い出しへ行くのだった。
「す、すみませんささささん……無理言って残っていただいて……」
「いいよいいよ。どうせウチは暇だったし。でも珍しいね、後藤がウチに相談なんて」
ある日の放課後、私はさささんにお願いして教室に残ってもらっていた。今日は喜多ちゃんがシフトに入っていて、私は休みだった。
「あ、あの……ささささん……」
「うん」
ど、どうやって話を切り出そう。相談したいことはたくさんあるのに……い、いざ言葉にしようとすると上手くできない。頭の中がぐちゃぐちゃしちゃって……考えがまとまらない。う、うぅ……でも何か……何か言わないと。せっかくささささんが厚意で私なんかのお悩み相談に付き合ってくれてるのに。
で、でも何て言えば……
「ごとー」
「は、はひぃっ!?」
私が悩んでいるとさささんがクスクス笑いながら声をかけてきた。ああごめんなさいごめんなさいウジウジ悩んじゃってごめんなさいやっぱり無理ですこんなこと相談なんてできませんだから今日のことは忘れてくださいささささん!!
パニックになった私はそんなことを言おうとしたんだけど……
「山田のこと?」
「svぃjchblん:うおぴよfちどkp@!!!???」
「あはは。わっかりやすいなー、後藤は」
ささささんがツンツンと私のほっぺたをつついてくる。ど、どうして私がレンくんのことで相談したいってわかったんですかぁ!?
「だって、最近の後藤……山田に対して明らかに挙動不審だったじゃん」
「きょ、挙動不審っ!? わ、私はいつも通り冷静でクールを装っていたはずなのにっ……」
「冷静やクールって言葉の意味を辞書で調べてみたら?」
そ、そんなバカな!? わ、私の態度ってそんなにわかりやすかったの!? 喜多ちゃんは全然気付いてなかったのに!!
「喜多はあれで鈍感なところがあるから。後藤のいつもの奇行だって思ってたんじゃない?」
「い、いつもの奇行……」
そんな風に思われてたんだ……でも確かに喜多ちゃんって変に鈍感で気持ちが空回りすることがよくあったような……
そ、それにささささんに最初に相談したのは、喜多ちゃんだとこういう話題で陽キャオーラ全開になって私が死んで相談どころじゃなくなると思ったからだし……
「で、山田と何かあったの? あんな風に露骨に態度が変わってて何もなかったってことはないでしょ?」
「にゃ、にゃにもないわけじゃないですけど、何かあったと言われれば……どう説明していいか……」
「あったことは認めるんだ。まあでも、
「は、はいぃ……」
あの日から───みんなでよみ瓜ランドに行ったあの日から。私がレンくんに抱いている感情を自覚しちゃったあの日から。私はなんだか自分が自分でないような不思議な感覚に陥っていた。
これまではレンくんと普通にお喋りできていたのに、今は顔を見るだけで恥ずかしくなって……上手くお話しできなくて、レンくんのことを避けちゃって……
「ウチ、まどろっこしいのは苦手だし、そーゆーのは後藤のためにもならないからズバッと聞くけどさ───山田のこと、好きになったんでしょ?」
「ふぉちゅcぎh;いおpk:おぴうゆptyふぉぐい;ほjp:!!??」
「いや『なんでわかるんですか!?』って顔されても……あんたの様子見てたらわかるよ」
あ、あ、あ……あおうひおgydfぎpほ;うhぴgh;おjp:k!!?? さ、ささささんにあっさりバレていた!? そんな……そんなバカな……私はこの感情をがんばってがんばって誰にも気付かれないように隠し通そうとしていたのに!!
ま、まさかレンくんにも気付かれて……
「山田は……どうだろう? あいつは別に鈍くはない、というかむしろ人の感情の機微には鋭い方だけど……後藤だからね」
「ど、どういう意味ですか?」
「喜多と同じで、後藤のあの態度をいつもの奇行だと思い込んでる節がある」
「あ、な、なるほど……それなら安心ですね」
「いや安心するとこじゃないからねそれ」
ささささんが呆れたように言う。と、とにかくレンくんに気付かれてないみたいでよかった。もしも気付かれてたら……あ、あうぅ……き、気まずすぎるよ。そもそもレンくんだって迷惑だよね。私みたいな人間に「好きだ」って思われちゃうなんて……
うん。そうだよ。私なんか……私なんかに好かれたって……
「それで、どーするの?」
「ど、どうする……とは?」
「後藤が山田のことを好きなのはわかった。じゃあ、そこからどうするのかって話。ぶちゃけ、告るの?」
「こ、こくっ!? こくまろカレー!? あ、ああ……こ、告発するってことですよね! だ、ダメですよささささん悪いことしちゃ……」
「こらっ。そーやって誤魔化さないの」
「あうっ……!」
ささささんにデコピンされちゃった。う、うぅ……都合が悪くなるとすぐに誤魔化そうとしちゃう……私の悪い癖だ。こ、告るってそういうことだよね? 告白するって意味だよね。
私が?
レンくんに?
む、無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理!!!!!!!
そんなことをしたら!!
確実に!!
私は死んでしまう!!
「こ、告白なんて……私には無理です……レンくんだって、私に告白なんてされても困るだろうし、そ、そもそも私みたいな人間に好意を持たれても迷惑で……だから……」
「だから?」
「こ、この気持ちは……ずっと、隠しておこうと思います」
うん。それがいい。それがきっと、一番平和で……誰も不幸にならない決断だ。そうだよ……私がちょっと我慢すればいいだけのこと。今は初めての感情に戸惑ってるだけで、慣れてしまえば……この感情を心の奥底に閉じ込めておくことだってできる。
大丈夫。自分の殻に閉じこもることは得意だから。
だって私はずっとずっと独りぼっちだったから。
「後藤」
「は、はい……」
ささささんが私の名前を呼んだ。
「自分の気持ちにさ、嘘つくの……やめなよ」
その言葉に、私の心臓がドクンと跳ねる。
「べ、別に嘘なんて……」
「ずっと隠しておくつもりだったんなら、ウチに相談する必要なんてなかったでしょ?」
「それは……」
ささささんの言う通りだ。本当にそのつもりなら、私は誰にも相談しないで自分だけで抱え込んでおくべきだったんだ。でも、そんな思いとは裏腹に、私はささささんに話を聞いてほしかった。
どうして……どうしてそんな矛盾した行動を取ってしまったんだろう。
わからない……私は、自分で自分のことがわからなくなっていた。
「いいんですよ、これで。私みたいなギターしか取り柄がない根暗なコミュ障女がレンくんみたいな男の子を……誰かを好きになること自体がおこがましかったんです。そ、それに……バンドのことだってありますしっ……! い、今はすごく大事な時期で……私の個人的な、
ああ、私って最低だ……結束バンドを……大切なみんなを、自分の本音を隠す言い訳に使っちゃってる。うん、そうだよ。こんな最低な女の恋愛感情なんて……早くなくなってしまえばいい。大丈夫。この感情も、時間が経てば薄らいでいくはず。それまで……それまでの辛抱だから……
「あのさ、後藤」
「は、はい……」
「後藤がさ、こうやって恋愛相談してくれて……すっごく嬉しかったんだ。ウチは後藤にそこまで信頼されてるんだなーって。だから、ウチも本気で言わせてもらうよ」
ささささんが、今まで見たことがないくらい真剣な表情で私を真っ直ぐに見てくる。
「ウチも山田のことが好き───って言ったらどうする?」
その瞬間、私は胸にズキンと鈍い痛みが走り、頭が真っ白になってしまった。
ささささんも、レンくんのことが好き?
そういえば、一年生の頃からささささんとレンくんはすごく仲が良くて……去年は違うクラスだった喜多ちゃんを迎えに行っていた時に二人でよく話してて……結束バンドのライブも大体二人で一緒に観てて……今年は同じクラスになってもっと距離が縮まって……
ああ、そうだよね。
なんで……なんでこんな簡単なことに気付かなかったんだろう。
私以外にもレンくんのことを好きな女の子がいるかもしれない、ということに。
だって、レンくんってこんなダメダメな私にもずっと優しくて、一緒にいるとすごく楽しくて、安心して、心が温かくなって……
私なんかが好きになっちゃいけない男の子。
私はただ、彼の優しさに甘えているだけで、彼と釣り合いが取れるような人間じゃない。
「そ、そうだったんです、ね……あ、お……お似合い、だと……思い、ます。さ、さささんはこうやって私なんかに気遣ってくれるくらい優しくて、コミュ障な私でも気後れしないでお話しできる……明るくて、話しやすい人で……すごく、可愛い人で……私、私……なんか……と、ちがっ……違って……」
話しながら、私は自分の頬を温かい何かが伝うのを感じていた。
あれ? なんで……なんで涙が出てくるんだろう……だって、本当のことなのに。私なんかより、ささささんの方がずっとずっと……ずーっと素敵な女の子で……レンくんには、こういう人がお似合いだって……思ってる、のに……
「ごめんね、後藤。意地悪だったね」
ささささんが優しく涙を拭ってくれた後、私をぎゅっと抱き締めてくれた。
「こうでもしないと、後藤の本音を引き出せないと思ってさ」
「私の……本音……」
ささささんが優しい声色でそう言いながら私の頭を撫でてくれる。
「後藤はさ、許せる?」
「何、を……です、か……?」
「ウチが……いや、ウチじゃなくても、例えば喜多とか、結束バンドの誰かとか……
想像してみる。
レンくんの隣に私以外の女の子がいて……二人はすごくお似合いで、誰が見ても幸せそうな笑顔を浮かべてて……でも、君がその笑顔を私に向けてくれることはないんだ。何があっても。決して。絶対に。
そしてレンくんが嬉しそうに……
「俺、この人と付き合い始めたんだ」
レンくんはお友達だ。人生で初めてできた、大切な……本当に大切なお友達。
そんなお友達に恋人ができた。
嬉しいことじゃないか。喜ばしいことじゃないか。
きっと私は、その報告を聞いて……二人のことを祝福するだろう。
自分の本音を奥底に閉じ込めて押し殺したまま。
偽りの笑顔で。
「いや……だっ……!」
私はささささんをぎゅっと抱き締め返して彼女の胸に顔を埋める。
そんなの嫌だ!! 耐えられない!! たとえ大好きな虹夏ちゃんや喜多ちゃんやささささんであっても……レンくんを取られたくない!! 私が……私がレンくんの隣にいたいんだ……!! 私以外の女の子に……そんなに幸せそうな笑顔を向けないで……!!
「それが後藤の本当の気持ちだよ」
ささささんは私を抱き締める腕の力を強めて耳元で優しく囁いた。
「後藤はさ、自分のことを『ギターしか取り柄がない』って言ってたけど、そんなことないよ。後藤はバンドもバイトも苦手な勉強も運動もすごくすごくがんばってる。確かに、人と話をするのは苦手だけど……あんたはそうやって、
ささささんのその言葉に、私はまた涙が出そうになってしまった。その言葉が嬉しくて、嬉しくて……やっぱり我慢できなくて……私はそのままささささんを抱き締めたまましばらく泣き続けるのだった。
「落ち着いた?」
「あっはい。す、すみません。制服……汚しちゃって……」
「いいよいいよ。このくらいどーってことない。ごとーの可愛い姿が見れたからウチは満足」
ささささんはそう言いながらクスクス笑っていた。さっきの醜態を思い出した私は顔が急激に熱くなり、俯くことしかできない。
さっきの……醜態……
あ……あ……ああああああああああああああああああああああああああああああっっっっっっっっ!!!!!
恥ずかしい恥ずかしい恥ずかしい恥ずかしい恥ずかしい恥ずかしい恥ずかしい恥ずかしい!!!!
穴があったら入りたいどころかそんなの穴に失礼だ最早私自身が穴になればよいのでは!!??
「ほんとに可愛いなー後藤は。ウチが男だったら絶対好きになってた」
「か、からかわないでくださいっ……!」
ささささんは普段は優しいけど、時々こうして意地悪になる。それで、私が困ってるといつもレンくんが助けてくれて……
レンくんの顔を思い浮かべたら、引いたはずの熱がまた顔に集まってきてしまった。
「後藤の本音は引き出せたけど……問題はここからだよね。ねえ後藤、山田に『好き』って言える?」
「無理です」
「即答かい。いやわかってたけど」
自分の気持ちに正直になれたとはいえ、それを伝えられるかどうか……行動に移せるかどうかは別問題なんだ!!
「だとすると……やっぱり山田側の意識を変えるしかない、か」
「あ、あの……ささささん」
「うん?」
「わたっ、私……もう、レンくんへの気持ちを誤魔化す気はありませんけど……でも、やっぱりその……い、今の関係が壊れるのが怖い……です……」
レンくんのことは好き。だけどレンくんの隣に私以外の誰かがいるのは嫌だ。
でも、でも……もしレンくんに私の思いを気付かれてしまったら、彼との関係が全部全部、壊れてしまうかもしれない。レンくんがもう、私に笑顔を向けてくれないかもしれない。
そうなるくらいなら、何もかも失ってしまうくらいなら……ずっとこのままでもいい。
そんな矛盾している我儘な私の気持ち。
あまりにも自分勝手すぎて、私は自嘲してしまいそうになる。
「わかるよ。心地良いもんね、今の関係」
怒られちゃうかと思ったけど、ささささんも私の気持ちに共感してくれた。
「ただ、このまま何もしないでいると……それこそ誰かに奪われちゃうよ?」
「そ、それはやだっ!」
「じゃあ、少しは後藤からも行動しないとね」
「む、無理っ!」
「……山田、取られちゃうよ?」
「いやっ!」
「自分から行動……」
「むりぃ……」
「このやろー、さっきから我儘ばっかり言うのはこの口か? え? この口かっ?」
「ひぃん……!」
ささささんが私のほっぺたをムニムニしてくる。だ、だだだだだって自分から行動するって、お、男の子のことを好きになったことなんて初めてなんだからどうしていいかわかんないんだもん……
「後藤、やっぱりさ……結束バンドのメンバーにも話しておくべきじゃない?」
「そ、そうですかね?」
「だって、山田は結束バンドのみんなとも仲が良いじゃん。もしも後藤と山田が付き合うことになったら……」
「ふ、ふへへっ……」
「……後藤が玉砕する可能性もあるけど」
「おごぉっ!?」
感情の落差が酷い!! さ、ささささん……上げて落とすのは、な、なしですよ……
「どっちにしても、少なからずバンドには影響が出ちゃうと思うんだ。だからさ、今の後藤の素直な気持ちをバンドメンバーにちゃんと話して、相談すべきだと思うよ」
「そ、そうですよね……」
「もしも後藤以外のバンドメンバーで山田のことを好きな子がいたら……修羅場だね」
「あっあっあっ……!?」
ち、痴情のもつれで結束バンドが解散!? 確か店長さんも言っていたはず……バンドが解散する一番の原因は「恋愛絡み」だって!
「まあ、喜多は
「に、虹夏ちゃんが抱いているのは恋愛感情を超えたナニカです」
「お、おう? なんかよくわかんないけど……」
私もよくわかりません。虹夏ちゃんはレンくんのことを「大好き」って言ってたけど、恋愛感情じゃなくて……親愛をもっともっと重くしたような感情で……うん、やっぱりささささんの言う通りみんなに相談しよう。虹夏ちゃんがレンくんのことをどう思ってるかもちゃんと聞かなくちゃ……
虹夏ちゃんは私をバンドに誘ってくれた恩人で、大好きなお友達だから不義理なことはしたくない。
「ありがとうございます、ささささん。お話しできてすっきりしました。明日、結束バンドのみんなに相談しようと思います」
「うん。その方がいいよ。もし付き合うことになったらお祝いしようか。フラれた時は……残念パーティーで」
「あっあっあっ……」
ささささんがまたクスクスと意地悪く笑ってる。で、でも……こうやってお話しできて、ささささんとももっと仲良くなれたから嬉しいな。えへへ……
「よーし、後藤の初恋記念に飴ちゃんをあげよう。チェリーとストロベリーミルク、どっちがいい?」
「あ、えっと……チェリーで……」
ささささんが鞄から棒付きキャンディを二本取り出して、私が選んだチェリーの包装を解いて差し出してくれる。私はそれを受取ろうとしたけど、その時私は思い出してしまったんだ。
ささささんにどうしても、聞いておきたいことがあったことを。
「あの、ささささん……」
「んー?」
ささささんはキャンディを咥えながら首をかしげて私を見てくる。
「さ、ささささんは……レンくんのこと、好きなんですか?」
私が尋ねると、ささささんは目を丸くして何度も瞬きしていた。かと思うと、さっきの意地悪い笑顔……とはまた違った小悪魔みたいな色っぽい笑顔になって、私の口にもう一本のキャンディを押し込んでくる。
そして
「───内緒だよ」
ささささんは唇に人差し指を当てて、妖艶に笑ってただ一言、そう言った。
その頃のストレイビート
「なんで胸肉なのよ! あたしはもも肉の方が好きなのに!」
「胸肉の方がカロリー低くて疲労回復効果やアンチエイジング効果があるんです! 司馬さんの健康を考えた結果です!」
「あ、山田さん。タルタルはもう少しマヨネーズ多目でお願いします」
ぼっちちゃんのお悩み相談回ささささんverです。
レンくんが年上のお姉様達にチキン南蛮を作ってる裏でしっかり話が進んでいました。
中間順位も原作とは違い、この時点でネット審査の通過がほぼ確定しています。
あれだけ成長させればね……
次回はぼっちちゃんのお悩み相談結束バントverです。
喜多ちゃんが暴走します。多分。
ではでは、評価、感想、ここすき、誤字報告等ありがとうございました!
次回もよろしくお願いします!