ありふれぬ狩人は祝福をその手に   作:カチカチチーズ

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6.訪れる不安

◇─────

 

 

 

 結果として、メグミのアーティファクト探しはメグミにとって実に残念な結果となってしまっていた。三日間の宝物庫内のアーティファクト整理もといリストとの照らし合わせは、宝物庫内の半分程度では終わってしまった。

 普通に考えれば、まだ半分しか探せていない。そうであれば、まだ何か使える武器があるかもしれないはずだが、そうは問屋が卸さなかった。

 宝物庫を後にし、訓練に参加したメグミはいつも通り訓練後はいったん、夕食までの自由時間を使い王立図書館や城内の書庫に足を運ぼうとしていたのだが伝える事があるとメルド団長に他のクラスメイト共々引き止められながら、すわ何事かと耳をたてれば伝えられたのは明日から実践訓練として『オルクス大迷宮』へと赴くという発表だった。

 つまり、メグミは自分の武器を見つけられていないのにも関わらず、明日から実戦訓練の為に宝物庫に入れない。

 

 

「は?嘘だろ」

 

 

 そんな愕然とした言葉を溢しながら、メグミは結局夕食までの時間を自室で過ごし、夕食も何とも言えぬ空気を纏いながらもしっかりと食べきっていたが。

もしかすれば、その胸をメルド団長に伝えればある程度の便宜を図って、参加せずに残れるかもしれない、とメグミは考えたがそんな事を本当に口にできるわけもない。

 結果、メグミの手元にあるのは宝物庫をあさり始めた当初に見つけた耐久性が高い槍のアーティファクト。切れ味はアーティファクトらしく高水準、勇者である天之河の持つ武器と比べれば見劣りはするものの、特筆すべきその頑強さは今のところメグミが強く握り振るっても揺るがないほど。

 満足は出来ないが、妥協はできるソレを自身の武器として、メグミは明日クラスメイトらと大迷宮へと行くしかない。

 

 

「不満しか、ない。だが、いまある手札でやるしかない」

 

 

 自室のベッド、その傍らに置かれた槍へと向けられていた視線を切り、自分の手元へと移しながら呟くメグミの手には半透明な手のひらサイズのキューブが浮かんでいた。

 そこにある筈なのに、そこにはない。何もない筈なのに、そこにある。そんな半透明なキューブに手を這わせながら、まるでルービックキューブで遊ぶように指を動かせば、切れ目などない筈なのにキューブはメグミの指の動きに従う様に何度も何度も動いていく。

 手慰みにキューブを弄り回しながら、メグミはその思考を既に宝物庫の件から実戦訓練の先である、『オルクス大迷宮』について王立図書館や、城内書庫で集めた情報を反芻していく。

 

 

「……七大迷宮。トータスにおける、代表的な危険地帯。『グリューエン大火山』、『ハルツィナ樹海』……明確に言われてるのはこれとオルクスの三か所だったよな。後は、南北に大陸を横断している『ライセン大峡谷』と南大陸の『シュネー雪原』にあるらしいが……まあ、どうでもいいか。他の二つはどこにあるのか、わからなかったが……創作脳で考えれば、そういう事だな」

 

 

 異世界に存在する七大迷宮。

 そんな文言を聞けば誰だって、考えるが現実だから考えもしないだろう。

 

 

「……迷宮の奥底にある何らか、少なくともオルクスはまだ攻略が途中らしいし……あ?南大陸の迷宮らしい雪原の洞窟、最近起きた異常事態……普通使役できても一、二体の魔獣使役が戦争で使える程度に出来るようになった魔人族……あ??」

 

 

 そこまで思考を回して、メグミは思い至った可能性を放棄する。

 もしも、その可能性が正しければ、実に強化フラグが立つものだがそのフラグを回収する気にはメグミはなれない。何よりも、まだ自分の目の前にある山札にどんなカードがあるのかを知り切っていないのに、どうして新しいカードを加えられるだろうか。

 まず、重要なのは今ある手札を見極めていくこと。

 

 

「アーティファクトは残念だが、実戦訓練が終わってからまた探せばいい。それに、まあ、技能もある程度進展は出たしな」

 

 

 未だに愛の狩人はわからんが……。

 そう呟きながら、手元のキューブを弄繰り回していく。例の祝福以外の技能、それらを訓練で確かめていき、いくつか分かったことがあった。

 まず、メグミは基本的にこの世界の魔法が使えない。他のクラスメイトの技能についてそれとなく探った中で、メグミには魔法の適正についての技能が存在していなかったからだ。代わりに、『空間魔法』という技能。それは他のクラスメイトどころか、メルド団長の知る限りでも持っている人間は知らない魔法の技能だった。

 自分が魔法を使えない理由は理解している。

 

 

「アビサルハンターは、源石に対する耐性を有するが、アーツの適性が欠落している。この世界に源石があるわけもないが、アーツも普通ならない筈だ。だが、どういう訳か魔法が使えないという形で俺の肉体に現れている。……メリットが消えてデメリットは残っているのはどういうわけなのか、ね」

 

 

 しかし、その代わりに何故か『空間魔法』は使うことが出来た。

 理由は定かではない。

 だが、逆に言えば、一点集中でメグミはその魔法を扱う事に集中が出来たとも言えた。それの成果が、いまこの状況だ。

 掌に作りあげた半透明のキューブ、空間をそのサイズで切り取り固形化、そしてそれを指先で触れながらどういうものなのか、どういうふうに空間を認識すればいいのか、空間を切り取るのに、空間に壁を作るのに、間の空間を削り取るのに、どう触れてどう操作すればいいのか、ひたすらソレを行っていく。

 最初は無いモノをどう認識してどう切り取ればいいのか、と頭にはてなばかり浮かべていたが、それも実際にやってみてから百八十度変わっていった。

 目が、鼻が、耳が、触覚が、周囲の空間を認識していく。

 メグミの天職が狩人だからか、それとも他の技能による影響なのか。

 まだ、粗削りだが既にメグミの空間認識能力は、足音で誰のモノなのかを感じ取る程度には高まり、こうして指先に集中する事無く最初からそこにあるモノを手慰みに弄繰り回すという認識程度で空間を切り取りキューブにできるようになっていた。

 まだ、そこまでの技量ではないが、このまま習熟していけば空間転移という夢のある魔法も使えるかもしれない。そんな目標を胸中で掲げ始めていた。

 

 

 

だが、それでも、きっと足りないだろう。

 

 

「嫌な予感しかしない」

 

 

 手札は何も足りない。

 狩人としての、アビサルハンターとしての肉体が察知しているのか、明日からの実戦訓練に強い嫌な予感を抱きながら、自室の窓より見える夜空を見上げた。

 

 

 

 

 

─────◆

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