【完結】女転生者ですが、親友(♀)がエロゲの主人公と発覚したので死ぬ気で貞操を守ります。# シスターアディと淫魔の恩寵_Append 作:家葉 テイク
第一一話 遠足の準備は万端
実は、本来の『あまちょ』では、司祭長という立場の人間は登場していない。
というのも、本来存在しなかった役職がこの歴史には存在しているといったSFチックな話ではなく──単純に、マニカナ教区の司祭長は『あまちょ』の物語開始ちょっと前の時点で病死しているのだ。
だから、『あまちょ』では教会関係者はモブしかいなかったし、教会でのエロイベントは主に信者との交流で、教会の上司から迫られて……みたいなことも一切なかった。
そういう事情もあって、『あまちょ』におけるマニカナ教区の勢力図はかなりしっちゃかめっちゃかだったんだろうな……と思う。何せ、三つの勢力の一角のトップがすっからかんな訳だし。
ひょっとしたら、アディの『あまちょ』での孤軍奮闘っぷりもそれが原因かもしれない。
では、この歴史では前任司祭長の死によって私がスライドして司祭長になったのかというと──それがそういう訳でもない。
私が現在の地位に立ったのは今から五年前。当時セクハラ三昧だったエロジジイの司祭長を失脚させる材料を集めていた時に、偶然前任司祭長が計画していたクーデターの証拠も見つけてしまったのだ。
あの時は口封じ目的の襲撃とかで色々大変だったけれど、その辺はなんとか乗り切って──結果的にクーデター計画も阻止できたので、その功績によって出世した形だ。
エロジジイの方は、『追放刑』という──痛めつけられ、装備も装飾品も全て剥奪され、罪人の烙印を押された上で郊外に放逐される刑を受けた。
風の噂では、死にかけのままどこぞの
ただ……この目で死亡を確認できていないのは、やっぱりやや不安ではある。
だからだろうか。
「そういえば、持ち物の準備は大丈夫なのか?」
木漏れ日差す森の中を歩きながら、エリーミンが問いかける。
色々あったからか、日は既に高く昇っていた。いや、むしろあれだけ色々あったのにまだ昼、と言った方がいいかもしれない。私はもう体感的には三日分くらいのアクシデントを経験した気がするし。
「えっ」
流れで此処までやって来たアディが、『持ち物の準備は当然してきているよな?』と言わんばかりのエリーミンの問いかけに青い顔をする。
確かに、此処までそんな話はしていなかったからね。でも、大丈夫。
「一応、ギルド本部に行く前に二人分の準備してきているわ。アディは忘れていたみたいだけど」
「お、ちゃんと準備していたのか」
私がこともなげに答えると、エリーミンは意外そうに声を漏らす。私は
……いや、違うか。エリーミン視点だとそもそも『今日
私は事態がどう転がろうと、トレイルソン本部長にゴリ押しして即日交付させてその日のうちに
「ちなみに、何を持ってきた?」
「『
『
ちなみに、原料は今回取りに行くモナッポルで、モナッポルの需要の高さの理由の一つでもある。
『移動結晶』というのは、いわゆるテレポート用のアイテムだ。テレポートの触媒として機能するのと同時に、テレポート先のマーキングとしても機能する。
使い方はシンプル。『移動結晶』を所持している者が念じると、存在を認識している『移動結晶』の元へ瞬時に移動できる。使い捨てではあるものの、危なくなったら念じるだけで使用できる優れものだ。
前者は言うに及ばず、後者についても
「流石は経験者。基本は抑えているみたいだな。じゃあ、これは必要なかったか」
ピン、とエリーミンは『移動結晶』を指で弾いて、そのままポーチにしまう。
見た目は、ビー玉サイズの歪なガラスの塊だ。それだけなら何の変哲もないものなのだけれど、『移動結晶』の場合は土星の環のような水色の円環が火花のように迸っているので、一目見ただけですぐ分かる。
今までは気にしていなかったけれど──多分これは、『あまちょ』にも登場した脱出用アイテムだ。
正直、てっきりファンタジー特有のよくあるものだと思っていて全く気付かなかった。でも、この形状は多分『あまちょ』で何度もお世話になったアレそのものである。……記憶が曖昧な上に、アイテムアイコンはドット絵だったから微妙に自信はないけど。
「代わりに……先輩からはこれを贈呈しよう」
そう言って、エリーミンは小さな小瓶を二つ手渡してきた。これは…………何だ? 見たことのない薬だな……。
「それは清廉薬『リフレシア』。腐ったものを新鮮にする薬だ。
「あー、なるほどね」
それは考えたことがなかった。言われてみれば確かに、必要かもしれない。
「じゃあ、アディにも渡しておくわね。『移動結晶』も」
言いながら、私はアディに『清廉薬』と『移動結晶』を手渡す。
「わっ、なんだか緊張しますね」
「材質はガラスだから気をつけて。落としたら割れて使い物にならなくなるから」
「プレッシャーかけないでくださいよぉ!」
私が意地悪を言ってやると、アディは困ったような表情で憤慨する。
ハハハ、愛いやつめ。でもこうやって釘を刺しておかないとアディは本当にうっかり落としちゃうタイプのドジっ娘だからね。釘を刺したら流石に気をつけるんだけども。
「あとは武器だが……なにかあるか?」
「私はなし。魔法主体だし。アディも魔法主体だからないでしょ?」
「はい。一応護身用に杖術は使えますよ!」
杖持ってきてないから意味のない報告だけどね。
ちなみに私も本当はブーツの中に護身用のナイフを仕込んではいるけれど、これを使うのは本当に追い詰められたギリギリの時なので、此処では黙っておく。切り札は伏せておかないと意味がないのだ。エリーミンレベルの強者には既に見破られていそうだけれど。
「二人とも魔法が使えるのか。それはいい。武器を使っても良いが、魔法主体の方が安上がりだからな!」
冗談めいてそう言って、エリーミンはゆっくりと歩みを止める。
エリーミンは眼前に広がる光景を指差しながら、こう付け加えた。
「──さて、ようやく見えて来たぞ。『ゲート』だ」
──そこは、遺跡のようだった。
木々に覆われて狭かった道が一気に広がったかと思うと、森の広間とでも言うべき広い空間の中央に、ポツンと石造りの建造物の一部だけが生えかけの歯のように顔を出している。
そしてスポットライトのように当たる陽光に照らされて白く輝く遺跡の一部から、まるで血液が流れるように透明な『歪み』が溢れだして、周辺に池のような領域を作り出していた。この歪みこそ──
あそこに足を踏み入れると、
「なんだか、ワクワクしますね」
「大抵の探索者は初探索前は緊張と不安でガチガチなんだけどな。アディちゃんは将来大物になるよ」
「アディの場合は豪胆というより能天気って言った方が良いと思うけど」
「何をーっっ!?」
詰め寄るアディをどうどうと落ち着けたりしつつ、私達は透明な歪みの池へと足を踏み入れた。
歪みの中は本当の池のように少しずつ深くなっており、足を踏み入れるとその分下へと沈み込んでいく。そのたびに地面が水の様に揺れるのに、土が掘り起こされるようなことは全くなかった。
奇妙な光景に息を呑むアディの息遣いを後ろに感じながら、私達はさらに歩を進める。そして、歪みの境界が目の高さくらいになるまで深くへと足を踏み入れた直後。
景色が、捻じ曲がる。
一瞬の立ち眩みから意識が回復した時、そこにあったのは──
──異界の、草原。
それまであった鬱蒼とした森林など、どこにもない。
朝の湖のような透明な水の蒼に染まった大空と、どこまでも広がる緑の絨毯だった。
| 支援イラスト紹介 | |
|---|---|
| 描いてくださった方 | 柴猫侍さん |
| 柴猫侍さんよりアディのイラストを頂きました!ありがとうございます!! | |
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■あまちょ用語解説
イーガシア森林
礼拝堂のある丘よりもさらに西にある森林。おそらくイースト+東がネーミングの由来(同人エロRPGではしばしばこういう安直なネーミングが採用される)。
この世界において森林は『規律の』フィルマトから人類へ管理を委託された女神の財産とされているため、『地球』における山や川のように地形の一つとして扱われ、地名もついている。
管理はフィルマト教会の森林管理部(司祭連の下部組織)が担う。