【完結】女転生者ですが、親友(♀)がエロゲの主人公と発覚したので死ぬ気で貞操を守ります。# シスターアディと淫魔の恩寵_Append   作:家葉 テイク

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第一三話 その手に本を広げて

 私達はその場に留まり、周辺の様子を伺う。

 敵の正体は、すぐに分かった。

 

 

「……どうやら、さっき見つかってからずっと尾行()けられていたようだな」

 

 

 右方向一〇メートルほど先の、茂みの陰。

 そこに、半透明の生き物が蠢いていた。…………先ほど発見したスライムだ。

 

 スライム。

 よく水辺で活動している魔物で、核となるピンポン玉くらいの本体が自分の周囲の水を操るという生態を持っている。

 水を操るのでその部分に対して殴る蹴る斬るといった直接攻撃は通用しないけれど、本体は簡単に狙えるし動きもそこまで素早くないので、わりと簡単に倒せる部類の魔物である。実は核以外の水部分は魔法で操っているだけの普通の水なので、泥とかを大量にぶち込めば『操作対象の純度』っていう操作タイプの魔法ではありがちな条件から外れて動きが鈍くなるし。

 

 さて……別に私が倒してしまってもいいんだけれど。

 

 

「アディ、やれそう?」

 

「えっ、わたしですか!?」

 

 

 此処は、アディに戦闘経験を積ませるっていう意味でも、アディに任せた方がいいだろう。

 多分、エリーミンがわざわざ私達を止めてまでスライムと向き合わせたのもそういう意図があるんだろうし。

 

 

「そりゃ、私やエリーさんだって簡単に倒せはするけれど……アディは埋蔵神殿(ダンジョン)初めてじゃない? 敵が弱いうちに、経験は積んだ方が良いわよ」

 

「ああ、エヴァちゃんの言う通りだな。やってみなよ。大丈夫、もし危なくなっても私やエヴァちゃんが助けてくれるさ」

 

 

 私の魔法はあんまり使いすぎても良くないんだけどね。

 もうちょっと水辺の多いところだったら存分に使えたんだけれど……。

 

 

「う、う~ん……。……分かりました! 頑張ってみます!」

 

 

 アディはかなり不安そうだったけれど、気を取り直して頷くと、さっきまでの逡巡が嘘みたいに凛々しい表情になった。

 真っすぐに遠方のスライムを見据え──そして、右手を構える。()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 左手でスライムの方へ指を向け、慎重に間合いを測りながら──アディは叫ぶ。

 

 

「『()()()()()()()』!」

 

 

 


 

 

STAGE_01 / ダンジョン日和の昼下がり

[in イーガシア森林神殿 浅層]

 

第一三話 その手に本を広げて

 

 


 

 

 

 アディの叫びと同時。

 アディが向けた指の先に、バレーボールくらいの大きさの光の玉がぼうっと浮かび上がる。

 

 

「へぇ、()()()か」

 

 

 生み出された光の玉を見て、エリーミンは感心したように呟く。

 

 

「じゃあ、お手並み拝見と行こうか」

 

「はいっ!」

 

 

 元気よく頷いたアディは、そのまま人差し指を指揮棒のように振るう。そしてその動きに沿うように、アディが生み出した光の玉も動いていく。

 ゆらゆらと蛇行してスライムを惑わせつつ、光の玉はまるで格闘技で言うところのフックのような横合いの軌道を描きながら、スライムの横っ面に着弾する。

 瞬間。

 

 ドジュウッ!! と、熱したフライパンに卵を落としたときのような音と共に、光の玉が爆散し──スライムの身体を構成していた水の半分が()()()()()()()()()()()()()()()

 突然己の操る水が失われたことで動揺したのか、その場で右往左往するスライムを横目に、アディはさらに唱える。

 

 

「『ラゲル・デザード』!」

 

 

 ──あとは、もう特筆することもない。

 未だ態勢の整わないスライムに再度光の玉が衝突し、今度は核までが爆散に巻き込まれ──そして、死滅した。

 

 

「……凄いな。魔法を相殺するのか、アディちゃんは」

 

 

 感心したように頷きながら、エリーミンはスライムがいたところに近寄って、そして小石くらいのサイズの何かを拾い上げた。

 何か……というか、スライムの屍骸、いや『核』である。

 

 

「エリーさん、それは……?」

 

「スライムの核だよ。魔物の屍骸は武器や薬品の素材として使えるからな。シスターのアディちゃんからしたらちょっとおぞましいかもしれないが、これも立派な探索者の収入源なんだ」

 

「おぞましいなんてこと、ありませんよ」

 

 

 苦笑するエリーミンに、アディは優しく微笑んだ。

 そしてスライムがいたところに歩み寄って、屈んで小さく祈る。

 

 

「こういうやりとりによって、探索者の人達は生計を立てて、そして埋蔵神殿(ダンジョン)の中で生命が巡っている。……なんだか私もその一部になれたような気がして、嬉しいんです」

 

「アディちゃん……」

 

 

 素朴に答えたアディに、エリーミンが頬を綻ばせる。

 こういうことをさらっと言えてしまうから、アディは凄いんだよね……。そりゃあ、誰だってアディの味方をしてやりたくなる。

 ……まぁ、何の抵抗もなく魔物を殺すし屍骸から戦利品を奪い取る私みたいなのが横にいると、感動も半減してしまうけれど。

 

 

「にしても驚いたな。まさか魔法の力を相殺する魔法が使えるなんて」

 

 

 回収したアイテムをアディに渡したあと。

 エリーミンは改めて感心したように、アディに話を振った。

 

 

 ──知っての通り、この世界には魔法が存在する。

 ただし、それは体系立ったものではなく──むしろRPGではありがちな、個々人によって覚える種類が違うタイプのものだ。

 

 『魔道編章(ランクスキル)』。

 この世界では、魔法を使える者は()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()を手元に出すことができる。

 書物の形式は大きな図鑑のようなものもあれば、雑に纏めた紙束のようなものもあり、人によって千差万別。

 たとえば、アディは今、何かを掌の上に載せているかのように右手を構えているけれど……アディ自身の目には彼女の掌の上に小さな本が載っているように見えているし、掌もそう感じているはずだ。

 そして魔法を扱える者は、使いたい魔法の名前が書かれたページを開いてからその名前を読み上げることで、魔法を発動することができる。

 この書物には最初から全部の魔法が描かれている訳ではなく……その人が経験を積むと、少しずつ魔法の数も増えていく。

 名前からも分かる通り、ゲームにおける『レベルアップで魔法を覚える』というシステムが現実に落とし込まれた形なんだろう。

 実際、ゲームではこういう魔法の細かい仕様部分はほぼ描写がなかった。私がアディの一件で思い出すまで、この世界が『あまちょ』の世界だと気付けなかったのも、こういう細かい部分が一因な気がする。……いや、一番大きいのは私が忘れてるからだと思うけど。

 

 

「あはは……。まだあれ一つしか使えないんですけどね」

 

「馬鹿、アディ」

 

 

 照れ臭そうに笑うアディの後頭部を、私はぺしっと軽くはたく。

 何を急に自分の手札をバラしているのだ。いやエリーミンは一応信頼できる相手ではあるけれど、どこで誰が聞いてるか分からないというのに。

 

 

「何するんですかいきなり!」

 

「自分の持ち魔法の数をバラす人がいますか! せっかく魔道編章(ランクスキル)の書物は他人には見えなくなってるのよ。そのアドバンテージを考えなさい」

 

「うぐぅ……エヴァは考えすぎですよ……」

 

 

 アディが平和ボケしすぎなのだ。

 アディの魔法は対魔物でも対魔法でも圧倒的な性能だから、ちょっとくらい平和ボケしていてもある程度は戦えるんだけれども……。ただ、その場合でも武器を揃えて囲めば対魔法の効果はほぼ無意味になるからね。対策なんていくらでも取れてしまう。

 

 それに、さっきエリーミンが『操作(ゲル)型か』なんて言ったりもしたけれど……魔道編章(ランクスキル)は発動に魔法名を唱えないといけない上に、魔法の名前にはある程度の法則性があるから、名前を聞かれたらそれだけである程度魔法の方向性を知られてしまう。

 さっきのアディみたいに魔法の名前を叫ぶように宣言するのは、見栄えはするけれどあまりやらない方が良いやり方なのだ。

 

 ちなみに、操作(ゲル)型というのは『発動した魔法を術者の任意で操作する』タイプに多い。取り回しはしやすいけれど、その分魔法の威力自体は低いことが多いのが弱点だ。

 ……とこんな感じで、『操作(ゲル)』という一言からでもこんなに多くの情報を読み取られてしまうのである。私なんかは三つしか魔法のレパートリーがないから、本当に情報の取り扱いには気を配って……いや、さっきはカッとなって衆目の前で魔法を使いかけたけどさ。

 

 

「ハハハ。このあたりにはさっきの魔物以外には誰もいないから、安心していいぞ。ただ、エヴァちゃんの言っていることは正しいから、アディちゃんも気を付けような」

 

 

 笑いながら仲裁して、エリーミンは再び埋蔵神殿(ダンジョン)を歩き始める。

 流石に多くの探索者が活動している浅層の第一層だからか、草原は踏み固められて何となくの歩道めいたものができている。

 そのおかげか、私達も草に足を取られたりすることなく安全に歩を進めることができた。

 

 

 ……ふと思ったんだけど、なんで誰もいないって断言できるの?

 やっぱり気配探知の魔法とか使えるのか? ベテラン探索者、こわ…………。




■エロRPG豆知識
 実は同人エロRPGにおいてレベルアップで魔法を覚えるシステムは言うほど多くない。
 スキルポイントを振り分けてスキルを覚えるタイプ、装備によってスキルが変わるタイプ、最初から大体揃っているタイプなど、割と千差万別ある。

■頻出(予定)魔法解説
ラゲル・デザード
 対魔灯魔法。操作(ゲル)型。
 自分の手元にバレーボールくらいの大きさの光の玉を発現し、操る。光の玉は何かに着弾すると爆発して眩い閃光を放つが、この爆発にダメージはない。ただし、爆発に巻き込まれた魔法現象は全て相殺されてしまう。
 爆発は物理的な障壁を無視して浸透する為、何かで隠していたとしても爆発の範囲内なら関係なく相殺する。魔法が関わっていれば魔物でも魔具でも関係なく、存在維持に関わっていれば直撃した段階で崩壊したり、消滅したりすることもある。
 操作スピードはそこまで高くなく、人間の早歩きくらいの速度しかない。
 操作可能な数は最大で一つ。射程距離は最大で一〇メートル。持続時間は最大で一分。
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