【完結】女転生者ですが、親友(♀)がエロゲの主人公と発覚したので死ぬ気で貞操を守ります。# シスターアディと淫魔の恩寵_Append   作:家葉 テイク

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第一五話 一理ある

「なんで、魔法を見せてくれたのかしら?」

 

 

 先行するエリーミンの背中を見ながら、私はそんなことを問いかけていた。

 

 我ながら仲間甲斐のないことを聞いている自覚はあるけれど……当然の疑問でもあると思う。

 アディはともかく、私とエリーミンはまだ出会って一日目だ。確かにそれなりに打ち解けることはできたけれど、互いに手の内を明かすほど親しくなった訳じゃない。

私の魔法に大体想像がついた──つまり警戒に値しないと判断したとしても、それでわざわざ自分の魔法のタネを明かすメリットもない。

 

 総じて、此処まで親切にしてもらう理由が思い浮かばない。

 

 司祭長という私の立ち位置に起因する気遣いという可能性は低い。第一、エリーミンはそういうのを気にするタイプではないだろう。

 気にするタイプならば、エリーミンは教会に何度も足を運んでいるはず。そうすると、既に面識ができていなければおかしい。

 エリーミンはそういうことができる立場だし、そうしていないということは教会勢力へのおべっかに必要性を感じていないということだ。

 

 理由の分からない親切というのは、非常に気持ち悪いものだ。大抵、そういう場合は私の認知の外で利害計算に釣り合いが取れていて──その『害』は私の承服していないタイミングで、想定していない角度からやって来るものだから。

 

 

「流石に用心深いな、エヴァちゃんは」

 

 

 そんな私の内心の不信を察したのだろう。エリーミンは大して気にした様子もなく笑って、

 

 

「なんで……と言われたら、探索者としての勘、だな」

 

 

 そんな、よく分からない回答を口にした。

 

 

「経験上、探索者として頼れる相手っていうのは新人(ルーキー)の時点で分かるものなんだ。信頼、知性、意欲、それから伸びしろ……要は、私はエヴァちゃんのことを買ってるんだよ」

 

「……アディじゃなくて?」

 

「アディちゃんも十分買っているが、アディちゃんは別に魔法を見せなくてもこちらを信頼してくれるからな。さっきのサービスは、エヴァちゃんの信頼を得る為だ」

 

 

 エリーミンは『トルザン』と小さく唱えると、手の先に延びた風の刃でまだ残っていた背の高い草を刈りつつ先へ進んでいく。

 使い慣れ方からして、アレが一番普段遣いしている魔法なのだろう。遠距離の槍に近距離の刃か……。情報屋を押しつぶしたアレも合わせると、風だけなのに本当に隙が無い魔法の構成だ。

 

 

「エヴァちゃんは、アディちゃんと利害が一致する相手なら積極的に利益を守ってくれるだろうと踏んだからな。アディちゃんと良い関係を築けている限り、私の情報を伝えるのはリスクになり得ない」

 

「それはまた…………」

 

 

 『アディちゃんみたいな子と敵対するようなことはまずないしな』、と笑うエリーミンに、私は思わず呆れてしまった。

 買い被り……というには、結構私の性格を的確に言い当てているので何とも言えない。

 でも、納得はした。エリーミンなりに私を買ってくれているから、打算もありつつで情報を開示してくれたということらしい。

 

 得心した私の目を真っ直ぐに見据えて、エリーミンは最後にこう付け加えた。

 

 

「探索者をやっていると──一番重要なものは、依頼のゴールよりも前に見つかることが多くてね。そういうものを取り溢さないようにしようとしているんだ」

 

 

 ……なるほど、含蓄の深い言葉だ。

 私もこの出会いは、大切にしようと思った。

 

 

 


 

 

STAGE_02 / ダンジョン日和の昼下がり

[in イーガシア森林神殿 浅層]

 

第一五話 一理ある

 

 


 

 

 

 先程のエリーミンの魔法──『ベタ・トルドス・ミリオ・ゲルグリル』は、ベタ級とは思えないほどの威力を発揮していた。

 

 魔法には初級・中級(ベタ)上級(ヴェル)最上級(マグナ)というランクづけがあり、『ベタ』というのは、威力の目安で言うと『軽自動車の正面衝突』くらい、といったところだ。大怪我は免れず、当たり所が悪かったら即死する。

 ただ、エリーミンの魔法による破壊の範囲は少なくとも前方一〇〇メートル以上には及んでいて──軽くヴェル級はありそうな威力だった。私もヴェル級以上の魔法は数えるほどしか見たことがないから、見立てにはあまり自信がないけれど……。

 

 

 ただ、そんな風の槍で作り出された街道も無限には続かない。大体二〇〇メートル近く歩いた頃にはもう既に道は途切れて背の高い草が前を覆ってしまっていた。

 『トルザン』を振るって草を刈りつつ先を進むエリーミンの背中を追いながら、私はぼんやりと周辺の様子を伺って──そして後ろ腰に忍ばせていたポーチに手を伸ばした。

 

 考えるより先にポーチから()()()()()()を取り出すと、そのまま地面に叩きつけて瓶を砕き割る。

 そして、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 

「──『クアゲル』ッ!!」

 

 

 叫びと同時、瓶から溢れ出た水がまるで先ほどのスライムのように重力に逆らい、そしてアディの方へと襲い掛かる。

 

 

「ひやっ?」

 

 

 咄嗟のことに、アディは反応することすらできない。そんなアディ目掛け──そのまま通過し、その後ろに潜んでいたゴブリンの顔面に直撃した。

 

 

「アディ、下がって」

 

「はっ、はい」

 

 

 短く言って、私は改めて周囲の様子を伺う。

 気が付けば、周囲には数体のゴブリンらしき魔物の気配があった。……群れとしてはちょっと少なめだな。『氾濫』とは関係ないだろう。

 おそらく、はぐれゴブリンの群れと偶然遭遇してしまった、といったところか。

 

 エリーミンは……ああ、もう既に戦ってる。

 後ろの方をちらりと見てみると、既に三体のゴブリンを倒していた。これ、私が確認できた気配が数体なのは、エリーミンが早々に片付けたからだった説もあるな。

 残っているのは……二、三体か。一体は既に()()()から、残りは二体。

 

 

「エリーさん。こっちは何とかできるから、伏兵がいないかの確認をお願いしても良い?」

 

「任せろ」

 

 

 エリーミンに呼びかけて、私は目の前のゴブリンに集中する。

 同時に、ごぼぼぼぼ! と盛大に気泡が漏れる音が響いた。

 最初に攻撃したゴブリンの口元にまとわりついた水が、ゴブリンのことを窒息させた合図だった。

 

 

「……やっぱり魔物でも、窒息は怖いものかしら」

 

 

 怖気づいたように私との距離を伺うゴブリンを見ながら、私は誰に言うでもなく呟く。

 

 

 ──ご覧の通り、私が使う魔法『クアゲル』は水を操る魔法だ。

 水を操るといっても水をゼロから生み出して操ったりできる訳ではなく、その場にある水を操るというやや使い勝手の悪い代物。

 対生物戦においては窒息という強すぎる決め手があるものの、操作のパワーやスピード自体はさほど高くはない。なので、フィジカルの強い探索者なら転がって振り払ったり、魔法で弾き飛ばしたりで、何だかんだ対応できてしまう。

 操作単体では大した威力は出せないので、汎用性はそれなりにあるものの、総合的な決め手には欠ける魔法だ。

 まぁ、そこを工夫でどうにかするのが面白いところでもあるのだけれど──ゴブリンのような知能の低い魔物相手なら、工夫をする余地もあるまい。

 

 ……ああ、思い出す。メインクエスト①の敗北CG。

 道中戦で敗北すると、コイツらは力尽きたアディに群がってその粗末なモノで………………、

 

 ……許さん。絶滅させてやるからな、この淫獣ども。

 

 

 私は窒息して事切れたゴブリンの顔面から水塊を飛び上がらせるよう操作する。すると、放物線を描く軌道で襲い掛かる水塊を見て、襲われた方のゴブリンは身構えるが──もう一匹のゴブリンは狙われていないのを好機と見て、こちらの方に突進を仕掛けて来た。

 仮に、水塊に襲われた方をゴブリンA、こちらに向かってきた方をゴブリンBとしようか。

 

 ゴブリンBの判断は最低限適切だ。

 何せ、水塊は今別の方を襲っているわけだからね。その間、私本体のガードはフリーと考える。ゴブリンにしては考えた方だ。

 

 

 ──ただし、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 

 こちらの方に向かってきたゴブリンBは、その途中の地面で()()に足を取られて派手に転倒する。

 あまりのことに受け身を取るのが精一杯なゴブリンBの足には──水の塊が巻き付いていた。

 

 

 実は、先ほどゴブリンAに打ち上げた方の水はブラフだ。

 『クアゲル』で操作している水の塊の一部を切り離し、切り離した方を母体の力で射出、その後で残りの水は地面に広がってゴブリンBを待ち受けていたわけである。

 つまり、ゴブリンAの方へ向かった水はなんの操作もされていないただの打ち上げられただけの水。本命は地面に残った水なのだった。

 ゴブリンBはまんまと私の策に乗って、地面に広がった水塊を踏み──そしてそのまま足をからめとられてしまった訳だ。

 

 恐れからか、ゴブリンBはぎゃあ、ぎゃあと喚き声をあげて足に手を伸ばし、水を取り払おうと試みる。

 実際、ゴブリンの膂力でも水塊を払うことはできるだろう。ただし──それは水塊が動いていなければの話だ。

 

 

「『クアゲル・レード』」

 

 

 ウインドウをなぞって追加で魔法を唱えると、ゴブリンBの足に纏わりついていた水が瞬時に氷柱の形に固まり、一瞬で冷却される。

 これが、私の扱う第二の魔法。クアゲルの発展形で、水を瞬時に凍らせ操る魔法である。

 

 ……そう。

 水を瞬時に凍らせ、()()ことができる。つまり。

 

 

 ヒュドッッ!! と。

 そのまま加速した氷柱が、ゴブリンBの口の中へと深く突き立った。

 

 

「二体目」

 

 

 そして私は、視線をゴブリンAへと戻す。

 水を高めに打ち上げていたお陰で、ゴブリンAはまだ打ち上げた水塊へ意識を向けているらしい。……これが対人戦ならとっくに私の狙いには気づかれていたんだろうけど、相手はゴブリンだ。この程度のブラフでも面白いくらいに乗っかってくれる。

 

 ぎぎぎ、とゴブリンAは両腕を構えている。どうやら、水を弾いて散らして『クアゲル』の脅威を此処で完全に払ってしまおうという考えらしい。

 ……まぁ、『クアゲル』だけなら下手に躱せばそのまま追尾できるから、その判断自体は正しい。

 ただ、お前は見ていないだろうけど、私には他にも『クアゲル・レード』があってね……。

 

 

「『クアゲル・レード』」

 

 

 何が言いたいかというと、お疲れさんということだ。

 

 水を受けるつもり満々だったゴブリンAは、どういう原理で水の塊が突然氷の槍に姿を変えたのか、そして自分が何をされたのかを理解する間もなく喉笛を貫かれ、死んだ。

 

 ……『クアゲル・レード』の操作威力は『クアゲル』とさほど変わらない。ボウリングくらいの玉を人の頭にぶつけても即死はしない程度だ。

 ただ、それでも私の精神に余裕があれば、形状を鋭くするなどして十分致命傷を与えることはできる魔法である。

 

 そして此処が私の一番の強みなのだけれど──転生者ゆえか、私の魔道編章(ランクスキル)の書物は空中に現れるウインドウの形をとる。

 魔道編章(ランクスキル)全般の弱点として、片手に本を持つ形になるので常に片手が塞がってしまうというのがあるのだけれど、私は書物が空中に浮いているのでそれがない。

 しかも、手の動きも比較的自然なので魔法の使用を疑われにくいという利点がある。……まぁ此処については、『クアゲル』が下準備の必要な魔法なので利点を打ち消しているけれど。

 

 

「いや、鮮やかだね」

 

 

 魔法を解除して氷の凶器を消していると、背後からエリーミンの声がかけられた。

 振り返ると、横に心配そうにしているアディがいた。たぶん、自分だけが一方的に守られた形になったので申し訳なく思っているのだろう。

 アディの魔法は対魔法特化なので、さっきのスライムのような存在維持に魔法を使っているタイプはともかく、ゴブリンのような生命活動自体には魔法を用いていない連中の相手は難しい。だからそんなに申し訳なさそうな顔はしなくてよろしい。

 実際、魔法で生命が成り立っている魔物なんかにはアディの魔法は特効も良いところだし。

 

 

「どう? 私もやるもんでしょう、アディ」

 

 

 そう言って、私はアディを安心させる意味も込めて頭にポンと掌を乗せてやる。

 アディは少し落ち着いたのか、少し表情を綻ばせながら、

 

 

「はい。前々からエヴァが強いのは知ってましたけど……こんなにだとは思ってませんでした」

 

「アルプの宝をお借りしたわ。ヒラ司祭時代までは埋蔵神殿(ダンジョン)にもよく潜っていたし」

 

 

 そう言って、私はエリーミンの方へ視線を向ける。エリーミンも頷いて、

 

 

「周辺に魔物の気配はなかった。おそらく、このあたりを縄張りとするゴブリンの群れだったんだろう」

 

「さっきのベタ級は連中からしてみればたまったものじゃないって感じだったのね」

 

「襲ってきた時点でお互い様だ。彼我の戦力差も分からないようなヤツらが寿命で死ねる場所じゃないよ、ここは」

 

「完全に天敵の言い分なのよね、それ──」

 

 

 そこまで言ってから、冗談めかして笑うエリーミンに追従するような形で、私も笑ってしまった。

 状況が落ち着いたことによる安堵──という側面もあるとは思うけれど、どちらかというとそれよりも、あるものを見つけたから、と言った方がいいかもしれない。

 

 背の高い草が生えそろった緑の絨毯のさらに向こう。草葉の隙間から覗くようにして、遠くに見えるものがあった。

 今回の依頼の、ゴール。

 それを目にしたから、自然と私の表情にも笑みが浮かんだのだった。

 

 

()()があるから、ゴブリンたちは此処を縄張りにしていたのかもしれないわね」

 

 

 私の視線の先では──幾つかのモナッポルが()った一本の木が伸びていた。

 

 私の言葉を聞き、エリーミンとアディもお互いに目を合わせる。

 私もまた、二人と視線を交わす。

 

 ……なるほど。『一番重要なものは、依頼のゴールよりも前に見つかる』ね。

 やっぱり、一理ある言葉だったみたいだ。




■頻出(予定)魔法解説
クアゲル
 水操作魔法。操作(ゲル)型。
 自分の周囲にある水を自在に操作することができる。操作のパワーとスピードはそこまで高くなく、パワーは女性の腕力程度、スピードは小動物が走る程度。ただし液体としての性質を保ちながら操作できるので、絡みついたりされた場合、逃れるのはかなり難しい。
 操作できる水には一定の純度が必要で、別の液体を混ぜられたり砂を混ぜ込んで泥水にされたりなどした場合には、操作の威力が著しく低下する。また、あまりにも純度が下がった場合は操作不能になる。水が凍ったり蒸発した場合でも、操作対象外になる。
 操作できる塊は最大で一つ。射程距離は最大で三〇メートル。持続時間は最大で三〇分。
クアゲル・レード
 水冷却操作魔法。操作(ゲル)型。
 基本的な仕様は『クアゲル』と同じ。ただ、操作対象の水の温度を下げてマイナス五〇度まで下げられる。凍った水も操作でき、形状も自在に変更可能。
 ただし移動の自在さと持続時間は大幅に低下しており、この状態では射出くらいしかできない。また、操作の持続時間は二〇秒程度。
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