【完結】女転生者ですが、親友(♀)がエロゲの主人公と発覚したので死ぬ気で貞操を守ります。# シスターアディと淫魔の恩寵_Append 作:家葉 テイク
とはいえ、第一優先を見誤ってはいけない。
私の第一優先はアディの貞操だから、あくまでもエリーミンのことはその為に使い倒せるだけ使い倒させてもらう。
さしあたっては、メインクエスト①でも発生していたゴブリンの『氾濫』だ。
まだ『氾濫』の前兆となるゴブリンの目撃情報すら出てきていないけれど、アディへの襲撃が起きたということは、黒幕の計画も『あまちょ』と同程度に進行していると見ていいと思う。
そもそも、今回の『氾濫』は通常の自然発生的なものではなく、人為的な計画の影響で発生している。
発端は、現在この
──
『あまちょ』の筋書きでは、黒幕は探索者ギルド本部であるこの
ただ、黒幕にも計算外はあった。ドラゴンの魔性化による
その為に、『あまちょ』ではドラゴンの活動によってゴブリンが住処を追われたことで『氾濫』が起きて、イーガシア森林神殿の異常がバレてしまう──という流れになっていた。
アディが襲われたということは、もうドラゴンの魔性化自体は済んでいて、深層では既に生態系の変動自体も起こっていることだろう。
今はまだ『氾濫』の前兆すら起きていない状況なので、手札を温存する意味でもこちらからは動きようがない。ただ、この時に黒幕が魔性化させたドラゴンはいずれ──メインクエスト⑤で『氾濫』を起こして大変な大事件となることは分かり切っている。
もちろんこれもアディが矢面に出て……その、大変な思いをして解決したのだけれど、そんなものは当然私が許さない。
……っつか、なんでアディがわざわざドラゴンと戦わなくちゃならないんだよ。おかしいだろそんなの。ほんの二〇歳くらいの女の子に一人で全長何十メートルの巨大モンスターと戦う殿を押し付けるってどういうことだ。そしてそのドラゴンまでアディに欲情するって何事だ。いくら『堕落の』が関わってる案件だからって万能すぎるだろ『淫魔の恩寵』。ふざけんのも大概にしろよ
……こほん。
まぁ、なので──エリーミンにはその辺の絡みで、十分活躍してもらおうと思う。
頼むよ、ベテラン探索者。
「二人とも、一旦休憩にしませんか?」
モナッポルの収穫をあらかた終えた頃、アディがふと問いかけて来た。
……表情に疲労の色は見えない。むしろ、朗らかな笑みが浮かんでいる。とすると、何か気を遣ってくれているのかもしれないな。
正直疲れてはいないけれど、アディに何か考えがあって、気遣いで提案してくれているのであれば無碍にするのも悪い。
私は一旦エリーミンの方へ視線を向けてから、
「私はいいけれど……エリーさんはどう? 何か用事があるって話だったような」
と確認した。
急ぎの用事があるから此処でサヨナラっていうのでも別にいいんだけども。その場合、私はアディと二人でゆっくり休憩の時間をとることができるし。
ただ、エリーミンは気楽そうに首を横に振って、
「そこまで急ぎじゃないから別に良いよ。──『トルザン』。じゃあ、此処に腰かけて休憩にしようか」
台詞の途中で木が切り倒されて、丸太の椅子が出来上がった。
もう大概メチャクチャさに慣れた私は、ぱちぱちと気のない拍手をしてから丸太に腰かける。
アディはポカンとしていたけれど、私が特に気にしていないのを見るとすぐに気を取り直して私の隣に腰かける。やっぱ可愛いなこの生き物……。
「えへへ、実はお弁当を作って来てたんです。久々に街に出るから、公園ででもと思って。二人分しか作ってないからちょっと少ないかもですけど、どうかなって……」
……はァァ~~……。
何、この子は。
あ~…………好きだ…………。
「良いね。…………あーでも、そうすると私がいただくのは悪いか。元々は二人の分だしな」
おっ、弁えてるじゃないか。
でもまぁ、此処は流石に私も一歩譲ろう。三人で休憩するというのに一人だけ何もなしではあまりにも感じが悪すぎるし。アディの手料理は、別に逃げないしな……。ああ、私は心が広い。
「エリーさんには今回凄くお世話になったし、遠慮しないで。ね、アディ?」
「はい!」
そんなこんなで、私達は三人並んで丸太の上に座って休憩を始めた。
休憩中の食事はバスケットに入ったサンドイッチだ。中にはハムトマトとかたまごとかチキンカツとか。……この世界の食文化の充実具合には本当に助かっている。これがなかったら、私は生涯を食文化の進化に費やしていたかもしれない。
──ちなみに、サイズ的にはアディのウエストポーチにこのサイズのバスケットは入らないはずなのだけれど、そこはそれ。魔具のポーチなので、容量は見た目以上にあるのである。
なお、保温・保冷効果もあったりするので、本当に便利だ。此処については下手をすると『日本』の基準の上を行っているんじゃなかろうか。
「ん、温かくて美味しい。まさに
「言えてるわね」
このポーチは『
アイテムの必需品は『回復薬』と『移動結晶』だけれど、装備の必需品と言ったら武器よりもむしろこの『
「そういえば、エリーさんは今回どのあたりまで潜る予定なの?」
「ああ、顔馴染みの魔具屋はここからもう少し潜ったところにいるからな……。大体一三、四層まで行くつもりだ」
「もう少しってレベルじゃないですよね?」
そのへんはもう、ツッコミを入れたら負けだと思う。
その後もとりとめのない話をして──だいたい一五分くらい経った頃だろうか。
「今のうちに、教えておきたいことが一つある」
ふと、最後のサンドイッチを呑み込んだエリーミンが思い出したように話し始めた。
不意に真面目な表情になったので、お茶を飲んでいた私はその手を止める。隣のアディも、背筋を正したのが分かった。……何の話だろう。この
「
「……? 急にどうしたんです?」
「いいから聞け。……少し、気がかりなことがあってな」
そう言って、エリーミンはぺろりと指に着いたソースを舐めとる。
……気がかりなこと? ベテランのエリーミンが『気がかり』って言うと、それだけで一定以上の重みが感じられるけれど……。
「
私の懸念をよそに、エリーミンは話を始める。
話に聞いた
その
「これを応用すると、
「……伝承の通りの、現象?」
「ああ」
首を傾げるアディに、エリーミンは頷く。
……何となく分かったかもしれない。
要は、具体的な魔具への変質を促す魔性化という方向性ではなく、『ある状態』への変質を促す魔性化という方向性の
『炎の力を帯びた魔剣ヴォアルディウス』へ変質させる
「それはまた、技術の進歩が著しいのは教会としては喜ばしいことだけれど……」
言いながら、私はそういう話でもないんだろうなぁ、と半ば察しつつあった。エリーミンの話のトーンからして、おそらくこれは……、
「……善人が使ってくれるなら、その通りなんだがな」
警告、ということだろうから。
さっきの話で言えば、自分の武器を強化する為に
少なくとも、それを想定するのとしないのとでは大いに生存率に差が出るだろう。
「最近の話なんだが、どうにもきな臭い探索者がちらほらいてな。流石に此処にはいないと思うが…………
「ありがとう。注意するわ」
私が神妙な面持ちで頷くと、エリーミンは徐に丸太から立ち上がった。
ぱっぱと座っていた尻の辺りを叩いて木の皮を落とすと、エリーミンはこちらの方に向き直る。
「サンドイッチごちそうさま。じゃあ、私はそろそろ向かうとするよ。二人とも気をつけてな」
「ええ。色々ありがとうね。また」
「ありがとうございましたっ!」
日は既に傾き始めている。
「アディ、どうだった? はじめての探索は」
歩きながら、隣のアディに問いかけてみる。
その横顔を見るだけで感想はもう分かったも同然だったけど、私は何も言わずにアディの答えを待った。アディは弾むように笑いながら、
「すっごく楽しかったです。最初は不安だったけれど……来て良かったと思いますっ!」
その言葉を聞いて、私も『ああ、アディを連れて行ってよかったな』、と素直に思えた。
こうして、私とアディのはじめての探索は幕を下ろしたのだった──。
────という感じで、終われれば良かったのだけれど。
私は程なくして思い出すことになる。
何をって?
決まっているだろう。
クソったれの運命ってヤツは、この世界のそこかしこで口を開けて待っていやがるってことをだよ!!!!