【完結】女転生者ですが、親友(♀)がエロゲの主人公と発覚したので死ぬ気で貞操を守ります。# シスターアディと淫魔の恩寵_Append   作:家葉 テイク

17 / 48
第一七話 はじめての探索 ②

 最初に感じたのは、魔物の気配だった。

 

 といっても、先ほどのゴブリンのように魔物が私達を取り囲んでいる──という感じではなく、何か私達ではない何かを意識して動いているような、そんな微妙な距離感だ。

 あたりは腰の高さくらいの草で覆われていて、先行した探索者が踏み固めてくれた道幅三メートルくらいの歩道の他は、屈んでいれば熊くらいの大きさの魔物でも隠れられそうな草原が広がっている。

 

 埋蔵神殿(ダンジョン)の中には魔物達の生態系があり、その結果によっては『氾濫』が起きたりするというのは既に話した通りだけれど──そうなると当然、魔物同士の縄張り争いなんかも起きたりする。

 人間の手が比較的多く入っている浅層では魔物の個体数も少ないので滅多にないけれど、それでも浅層での魔物の縄張り争いが全くない訳ではない。

 縄張り争いが起きたのか……? と怪訝に思いつつ、巻き込まれないようにアディを先導して声から遠ざかろうとして──私の背筋を冷たいものが走った。

 

 違う。

 『金属音』がする。ガチャガチャと、探索者が装備を揺らして移動してくる金属音が!

 

 ──こんな浅層で探索者が探索者を襲うなんてリスクの高い行為をはたらく可能性は低いけれど、こちらにはバカを自動で引き寄せる『淫魔の恩寵』を持ったアディがいる。

 低レベルなカスがアディを目の当たりにして魔がさしてしまって……という可能性は、十二分にあるのだ。警戒しておくに越したことはない。

 

 

「……アディ。誰か来る。警戒しておいて。『移動結晶』をすぐにでも使えるように」

 

 

 アディにそう言って、私は音からアディを遮るような立ち位置を取る。

 幸いにも、相手はこちらを包囲するようには動いていない。取り囲むような人数がいないのか、取り囲もうと考える頭がないのか、あるいは敵対意思がないのか……どういう意図かは分からないけれど、どちらにせよ私達にとっては都合がいい。

 

 

「どちら様かしら!」

 

 

 左手で魔道編章(ランクスキル)のウインドウを展開しながら、私はその場に屈み込んで足元に水の入った瓶を握っておく。

 『移動結晶』で埋蔵神殿(ダンジョン)から逃げることは簡単だけれど、相手だってそれを考えていない訳がない。

 埋蔵神殿(ダンジョン)の中で襲い掛かって来た相手が囮で、埋蔵神殿(ダンジョン)の入り口に襲ってきた連中の本隊が待ち構えていた場合、臨戦態勢に入っていなければ隙を突いてその場でお陀仏だからだ。

 

 そこまで事前に準備を終えて相手の出方を待ち構えていると、自分たちの動きがバレていると悟ったのか、あるいは射程内だと判断したのか、音の主たちが現れた。

 

 

「……意外だな。平和ボケしたシスターと聞いていたのだが」

 

 

 リーダー格らしき男が、開口一番にそう言った。それを見て私は静かに確信する。

 

 ──確定。コイツらは敵だ。

 そしてまだ、私が魔法を使う態勢に入っているとは認識していない! だからこそ悠長に『開口一番』という時間を消費する余裕がある!

 

 

「『クアゲル』!!」

 

 

 叫びながら瓶を勢いよく振る。空中に撒き散らされた水はそのまま広がった状態で固定化され、アディと男達の間を遮る壁となった。

 ──『移動結晶』によって移動した場合、発動している魔法とその操作対象となる物質も一緒に転移するのは検証済みだ。これで移動先での待ち伏せ対策も完璧、

 

 

「『()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 

 直後。

 リーダー格の男が突然、茶色く塗り潰された骨董品めいた杯を掲げ出した。

 

 何を──あ、まさか、エリーミンが話していた、神殿模倣(ロア=ミメティクス)!?

 そう考えてみると、確かに他の男達の配置も何か等間隔で、まるで儀式を行う神官みたいな動きだ……!

 

 気付いたけれど、その時にはもう遅かった。

 私が何か具体的な行動を取る前に──

 

 

()()()()()()()()()()()()()()()()!」

 

 

 ──後ろ腰のポーチで、何かが粉々に砕け散ったのが分かった。

 

 

「……アディ!!!! 『移動結晶』!!!!」

 

 

 左手を構えて『ラゲル・デザード』を発動しかけていたアディを制するように大声で叫ぶ。

 

 

「あっ、エヴァは……、」

 

「私もすぐ行く! 水の盾張ってなきゃ移動の隙に何されるか分かんないでしょ!!」

 

「……! はい!!」

 

 

 困惑するアディだったけど、追撃するように言い募ると、その剣幕に押されたのか一瞬後には『移動結晶』を発動してその場から消えた。

 それを確認して、私も『移動結晶』の発動を念じてみるけど……。

 

 

「…………アイテム破壊の神殿模倣(ロア=ミメティクス)ね」

 

 

 どうやらさっきの一撃で破壊されてしまったらしい。

 もしもの為の予備の『移動結晶』も含め、全く反応はなかった。ポケットから『移動結晶』を取り出してみると、予備も含め粉々に砕け、そしてどこか煤けて古びた感じの『移動結晶』の姿があった。

 

 ……厄介なことをしてくれる。

 っていうか、アイテムをじかに破壊してくるとかゲームならバグ確定の最悪仕様だからね。本当にナメてんのかって感じだ、この世界。

 ただ、考えようによってはプラスと言えるかもしれない。最初にまず帰還用のアイテムを破壊してくるってことは、コイツらの戦術には『移動先で待ち伏せ』という選択肢はないということだ。

 つまり、アディは確実に無事。それが一番重要だ。私はまぁ、なんか適当に上手くやればいい。

 

 私はバラバラになった『移動結晶』の残骸を横合いに放り捨てて、

 

 

「でも、あの子を帰されたのは誤算だったんじゃない? 水の壁が邪魔で神殿模倣(ロア=ミメティクス)が通用しなかったのかしら」

 

「……構わない。こちらとしては、こちらの仕事を済ませるだけだ」

 

 

 ……あ? アディ目当てじゃないのか? だとすると……私の素性を知っている人間か? カネ目的? 司祭長って言っても権限に伴う待遇が約束されるだけで、私有財産という意味では大したものはないんだけれど……。

 ……食うに困った探索者あたりが半端に知識をつければ、そのあたりの事情は知らなくても当然か。

 

 っつか、アディが逃げた=追手が追加でやって来る可能性があるってことを一切考慮していないのはどう評価すべきかな。

 ①私を確実に捕縛して自分達も追手を撒ける自信があるほどの実力者。

 ②そこに頭が回っていない愚者。

 ③そもそも捕まることまで織り込み済みの捨て駒。

 ………………まぁ、死にたくなければとりあえず①だと考えて動いた方がよさそうだ。

 

 こちらの手持ちは……今展開した一リットルの水塊の他は、一リットル入りの瓶が二本に、『回復薬』と『清廉薬』。『移動結晶』の残骸は今捨てた。

 ただし、こちらについてもさっきの神殿模倣(ロア=ミメティクス)の一撃で割れている可能性は否定できない。もし割れてしまっていた場合、内部で混ざってしまうので『クアゲル』の操作強度は著しく低下してしまうだろう。……一応それでもまだやりようはあるけれど、なんとかして余裕を見つけて、道具確認をするタイミングを作る必要がある。

 

 この場で一番に私が取るべき状況は何か……。

 そこまでさっと考えた私は、すぐに結論を叩き出した。

 

 

 ……逃げるか。

 

 

 


 

 

STAGE_02 / ダンジョン日和の昼下がり

[in イーガシア森林神殿 浅層]

 

第一七話 はじめての探索 ②

 

 


 

 

 

 『クアゲル』で自分の背後に水の壁を張りつつ、私は埋蔵神殿(ダンジョン)の出口へと走っていく。

  男達は即座に追いかけ始めたので──この時点で強力な遠隔魔法持ちの線は消えた。……雷とか撃ってきてくれたらワンチャン感電で一網打尽にできて楽だったんだけれど、そう甘くはないか。

 というか、おそらく発想の流れとして、魔法の才能を持っていないヤツがその穴を埋める為の異能として神殿模倣(ロア=ミメティクス)を扱っているという流れだろうから、神殿模倣(ロア=ミメティクス)をメインに運用している時点で魔法はないと考えていいかもしれない。

 

 

「『クアゲル・レード』!」

 

 

 とりあえず、私は水を地面全体に垂れ流し、それから凍らせる。

 道幅三メートルの全体を覆うような氷の床だ。薄く張ったので、長さは三メートルくらい用意できた。

 男達はそのまま走ろうとして滑りそうになり、一旦足を止めてくれた。よし、まぁこれでちょっとは距離を稼げるだろう。焼け石に水だろうけれど。

 

 多少余裕ができたのを見て取った私は、次に後ろ腰のポーチに手を突っ込んで中身を確認してみる。

 幸い──というべきか、手触りから察する限りでは、他のアイテムはまだ破壊されていなかった。

 おそらく、敵の神殿模倣(ロア=ミメティクス)の対象設定は一度に一種類とかそういう感じで決まっているんじゃなかろうか。せめて一度に一個とかにしてくれたらよかったのに。

 

 

「……『奉還』!!」

 

 

 と、そこで氷の床を踏み越えてきたらしいリーダー格の男が、何事かを叫ぶ。

 同時に、私の後ろ腰のポーチから何かモヤのようなものが抜けて、男が掲げる杯へと戻っていくのが分かった。

 男達の配置は──先ほど私の『移動結晶』を破壊したときと同じだ。

 

 

 ……読めてきたな、相手の扱う伝承が。

 

 おそらく、ヤツ……いや、ヤツらの扱う伝承は『アルプの宝』だ。

 『アルプの宝』。……祭事として演武をして『鍛錬の』ビーアルプスに鍛錬を捧げた過去の風習に起因して、努力が実を結んだ時には『アルプの宝をお借りした』と表現する文化だけれど……それって多分、大本としては『()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()言い回しなんだよね。

 

 つまり……この風習って、拡大解釈したら『任意のタイミングで過去の鍛錬(経験)をダウンロードする儀式』という風にも捉えられるんじゃないだろうか?

 

 

 そして、術者本人にしろ、神殿模倣(ロア=ミメティクス)のキーらしきあの杯にしろ、ヤツらが用意した都合の良い『鍛錬』をこちらの持ち物にダウンロードさせたら、一体どうなるだろうか。

 本来は『鍛錬の結果』を獲得することで己を高める為の風習だったんだろうけれど、『鍛錬』というのは根本的に物理的破損だ。人間の身体はそこから回復するからこそ強くなるのであって、生物ではない無生物に『鍛錬の結果』を与えても、(これは伝承の解釈にもよるだろうけど)別に強くなったりする訳ではない。

 それどころか、多くの場合、その『鍛錬』は破壊を伴うだろう。つまり、『鍛錬』をダウンロードされた──そういう形に『魔性化』された相手の持ち物は、破壊される。

 …………なるほど、問答無用で『移動結晶』を破壊して数で囲んで叩くための戦法と考えたら、理にかなっている。

 

 

 …………ああ、よかった。

 

 

 あの時、咄嗟にアディのことを庇っておいて本当に良かった……!

 

 私が咄嗟にアディのことを水壁で庇っていなかったら、最悪の場合アディもこの修羅場に巻き込まれていたかもしれない……!!

 目の前の危険に対する危機感よりも、その安堵感の方が強かった。

 

 それに。

 

 ……正直、()()()()()()()()()()()()()()()()()

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。