【完結】女転生者ですが、親友(♀)がエロゲの主人公と発覚したので死ぬ気で貞操を守ります。# シスターアディと淫魔の恩寵_Append   作:家葉 テイク

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第一八話 はじめての探索 ③

 こちらの装備を問答無用で破壊する神殿模倣(ロア=ミメティクス)

 

 流石にこれでおしまいとは思えないので、おそらく連中の次の手としては私の他のアイテムに『鍛錬』をダウンロードさせて破壊してくるか、あるいは私自身に『鍛錬』をダウンロードさせて行動不能にしてくるか、だろう。

 ただ、相手が現状で同じ一撃を連発してこないのは……おそらく、敵の陣形に秘密がある。

 

 あくまで、この伝承は『祭事』。つまり、奴らは道具立てとして『奉納の為の儀式をしている』必要がある訳だ。

 だから小難しい台詞を唱える必要があるし、複数人で一定の陣形を保つ必要がある。加えて、おそらくある程度の距離まで近づかなくてはいけない。もしも距離の制限がないなら、こちらの認識できないところで儀式をしてアイテムを破壊しつくして相手を丸裸にしてから近づけばいいからだ。

 ただ──先ほど水を消費してしまった関係で、襲撃者の男達の方も段々と動きが大胆になってきていた。

 このあたりで、少し相手の動きを牽制する必要があるな。

 

 たとえば──こちらから攻撃を仕掛けて隊列を乱すことで、神殿模倣(ロア=ミメティクス)の道具立てを機能不全に陥らせることを匂わせる──とか。

 

 私は両手で以てポーチから残りの瓶を取り出す。

 この態勢からでも、ウインドウ形式の書物になっている私の魔道編章(ランクスキル)なら隙なく魔法を発動することも可能だ。そして──

 

 

「『クアゲル』!!」

 

 

 瓶を振り、盛大に水を出したタイミングで『クアゲル』を唱えた。魔法の発動に伴って、瓶の外に出た水が一匹の大蛇のようにうねって私の側に(はべ)る。

 同時に振り返った私は、敵の位置を視認する。儀式の中心となる男を先頭に、後ろで陣形を組んでいる襲撃者の男達は、私が魔法を発動したことで一気に八方に散って距離を取り出した。

 

 ……流石に瓶二つ分の水を見たら脅威にも感じるか。おそらく、魔法の発動限界時間切れを狙っている動きだろう。あるいは、そういう動きに見せてこちらの動きを制限しようとしているのかもしれない。

 

 まぁ、時間を稼ぐ動きは悪手なんだけれども。

 

 

「そんな見え見えのフェイントに引っかかるほど初心(ウブ)だと思われてるの? 私って」

 

 

 流石にバカにしすぎだろ、お前ら。

 

 神殿模倣(ロア=ミメティクス)が『アルプの宝』という風習の元になった祭の再現なら、その『型』が一つしかないなんて話は考えられない。

 幾つかの型を用意しておいて戦況に応じて適宜使い分けるくらいはやって当然だ。最低でも三パターン。多かったら一〇パターンってところか。()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 大方、四方八方に散った後は私を取り囲む形の『陣形』を作って、油断している私に何かしらの攻撃を仕掛けるつもりだったんだろうけれど──流石に私も、そんな見え見えのブラフに引っかかるほど平和ボケはしていない。

 

 

「いちいちまともに取り合う訳、ないでしょ!」

 

 

 敵の動きを確認し終えた私は、そのまま殆ど足を止めずに走り出す。

 敵が勝手に変な陣形を作って時間をロスしてくれるならそれでもいい。私としては、相手の勝ちパターンにハマらなければいいだけだし。

 

 

 …………しかし参ったな。

 このままだと、あまりよろしくない事態になりそうな気がする。

 

 まずそもそも、現状ではアディがこの埋蔵神殿(ダンジョン)の入り口にいるわけなんだけれども……そのアディが此処からどう動くかを最初に考えなければならない。

 私としては、さっさとギルドまで戻って応援を呼んで、アディ自身は安全圏に避難してくれているのが一番有難いんだけれど……果たして本当に、アディがそんな選択肢を取ってくれるかという問題がある。

 だって、()()アディだぞ? そんな、ともすれば私を見捨てるような選択を良しとするような女か? あの子は。

 

 ──否。断じて否。

 

 アディなら、私がすぐに戻って来ないことに気付いて、私の『移動結晶』が何らかの形で破壊されたと考えるだろう。

 あるいは、何らかの理由で私が埋蔵神殿(ダンジョン)に自分の意思で残ったんだと思うかもしれない。

 

 そしてそういう時、あの子は間違いなく自分だけ逃げたりはしない。むしろ来た道を戻って、たとえできることが少なかろうと自分にできることをやろうとするはずだ。

 

 で…………その場合、このまま私がコイツらを引き連れて逃げていると、どうなるか。

 そう。

 せっかくアディを安全圏に避難させることに成功したのに、結局アディを戦闘に巻き込むという最悪の事態が発生してしまうのだ。

 

 

 つまり、おそらくこちらへ戻ってくるだろうアディと合流する前に、コイツらを無力化しておくのは必須条件。

 まぁこれは最初からそのつもりだけれど……それに加えてアディが来る前に()()()()()尋問も済ませておかないといけない。アディが来たら、人道的な尋問しかできないからね。引かれたくないし。

 

 現在位置から入り口まで……だいたい走って二〇分ってところか。ここまで多少時間をかけてしまったので、多分アディがこっちに来るまではあと一〇分もない。

 つまり、それまでにコイツらを無力化させて尋問まで済ませる必要がある。

 

 ……できるだろうか?

 

 私は、ようやく眼前に迫って来た大きな橋を前にしながら自問し──

 

 

 


 

 

STAGE_02 / ダンジョン日和の昼下がり

[in イーガシア森林神殿 浅層]

 

第一八話 はじめての探索 ③

 

 


 

 

 

 そこで、私は足を止め、徐に男達の方へ振り返る。

 

 私の背後には、先ほどアディやエリーミンと渡った、橋の架かった雄大な川。

 

 

「さて、問題です」

 

 

 ()()()──()()()()()()

 

 

「私の魔法──『クアゲル』は、いったい最大でどれだけの量の水を操れるでしょうか?」

 

 

 直後。

 台詞の中に忍ばせた魔法の名を合図にして、透明な川の流れが大蛇のように鎌首をもたげた。

 私は、用をなくした二つの瓶をその場に落とす。

 バリン、と軽々しい音を立てて瓶は砕け散り、私の側に侍る川の流れの中へと呑み込まれていった。

 

 

「持っている武器全部、こっちに黙って投げ渡すなら、ちょっとだけ穏便に済ませてあげるわよ」

 

 

 川の流れを渦巻かせながら、私は襲撃者の男達に告げる。

 ……まぁ、全員半殺しにしてから尋問開始のところを、溺れさせながら尋問で勘弁してやるという意味だけれど。

 

 

「……随分と余裕だな」

 

 

 対する襲撃者の男達は、立ち止まり陣形を作ってこちらの方を油断なく注視している。

 こちらにはもうコイツに破壊されて困るようなアイテムはないんだけれど……おそらく向こうにも奥の手があるのだろう。

 

 まぁ、この川に到達した時点で私の勝ちは確定しているんだけれど。

 

 

「貴方達は、危機感が足りていないわよ」

 

 

 会話を断ち切って、私は川の流れを男達に叩きつける。

 その直前に。

 

 

「『鍛錬の』ビーアルプスの居城に捧げ奉りし我が身の鍛錬。今人の世にて、我が身の為に拝借致す!!」

 

 

 儀式の中心となる男がそう宣言し、

 ()()()()()()()()()()()()()()

 

 その時、私の脳裏に先ほど破壊された『移動結晶』の記憶が過ぎった。あの『移動結晶』は粉々にされただけではなく、どこか煤けて古びた感じになっていた。あれは……過去の鍛錬に紐づいた破壊だけでなく()()も付加された、ということなのだろう。

 

 

「──ハハハハッ! 油断したな、シスター・エーヴァンネーリジュ!! 『奮励起債(アルプスリース)』の対象がアイテムだけかと思ったか!?」

 

 

 ──『クアゲル』は、操作対象となる水の純度によって操作のスペックが大きく左右される。

 もしも大量に不純物を混ぜ込まれたりした場合、その量によっては操作ができなくなることもある。

 

 

「『奮励起債(アルプスリース)』は術式の核となる私の経験を対象に『貸し与える』神殿模倣(ロア=ミメティクス)!! そしてその経験による影響は、何も負傷だけとは限らない!! ()()()()()()()()()()()を一生分かき集めれば、お前の操作上限の水を濁らせることくらいは容易いぞ!!!!」

 

 

 男の言葉の横で、制御を失った川の流れがゆっくりと地に落ちていく。完全に地面に頭を垂れた川の流れは、ただの泥水となってゆったりと地面に広がり、儀式の中心となる男の足元まで垂れた。

 男はそれを苛立たし気に蹴り飛ばす。

 

 

「──また魔法を使うか? もう無駄だがな。何度やろうが同じことの繰り返しだ。そしてお前が水を操作して俺達を攻撃するよりも先に、」

 

 

 その、言葉の途中で。

 

 

 ()()()()()()()()()()()()

 

 

 『クアゲル』の中を通って男の足元まで転がっていた『移動結晶』のもとへと転移した私は、そのまま男の手にある杯を掴むと、そのままさらに『移動結晶』を発動させて元いた位置へと戻る。

 男は一拍遅れて、自分の手から切り札となる杯がなくなっていることに気付いた。

 

 

「こち、……あ? あれ?」

 

「こちらがお前を追い詰める方が早い──とでも思った?」

 

 

 なわけねーだろ。

 

 

神殿模倣(ロア=ミメティクス)は、別に貴方達だけの専売特許じゃない。たとえば──『移動結晶』なんかは『導典』の一節が法則性(レシピ)であると広く知れ渡っていて、探索者が生活の為にそこらで作成しているくらいだし。ええと、どんな法則(レシピ)だったかしら?」

 

「は……? な、何、」

 

 

 私は顎に人差し指を当てながら、こう続けてやる。

 

 

「『()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()』──川の水の量云々以前に、ガラス瓶と水を操る魔法っていう取り合わせを見た時点で、神殿模倣(ロア=ミメティクス)による『移動結晶』の生成を警戒すべきだったんじゃない?」

 

「……………………ば、かな」

 

 

 ──私の想定していた『詰め』の手は、これ。

 『クアゲル』によってガラス瓶から『移動結晶』を生成し、それを使って相手の杯を強奪。完全に無力化した上で川の水を使った『クアゲル』でトドメを刺す、だ。

 

 相手の神殿模倣(ロア=ミメティクス)──『奮励起債(アルプスリース)』とやらの対象選択が一度に一種類の物品しか選べず、『クアゲル』の水を貫通しないことは、アディを逃がした時の挙動で既に分かっている。

 だから『クアゲル』の中で生成した『移動結晶』が破壊されることはないと分かっていたし、これを詰めに使う絵図は最初の段階で描けていた。

 

 わざわざ川の水を使ったのは、圧倒的火力を見せることで相手の意識から『移動結晶』を逸らしたかったのと、手持ちの水だけでは水量が少なくて、『短時間の窒息も覚悟で水塊の中に突貫し、「移動結晶」を破壊される』『相手の足元まで「移動結晶」を運べない』などといった負け筋があり得たからだ。

 『奮励起債(アルプスリース)』によって水を濁らされて『クアゲル』が無効化される可能性については、最初に破壊された『移動結晶』が煤けて汚れていた時点で想像できたからね。

 元は地形構造物の(地上のものでない)川の水を魔性化させられるのかで微妙に判断を迷ったけれど……おそらく私の魔法の制御下に置かれた時点で『地上の物』扱いで魔性化できるのだろう。『多分、魔性化できるな』と想定して動いていて良かった。

 

 結果、無事に相手の……術式? とやらの核であるヤツの杯を無事に奪い取ることができた訳だ。

 

 そして。

 

 

「『クアゲル』。…………いい? 貴方達の敗因を一つ教えてあげる。それはね、アディとの『はじめての探索(デート)』を邪魔したことよ

 

 

 せっかく良い感じでアディの経験値も上げることができていて、アディも楽しそうにしていて、楽しい思い出が作れそうだったってのに……!

 このクソ野郎ども、『あまちょ』に何か関係あるならまだしも、何の関係もねぇ完全な別件の厄介ごとを持ち込んで台無しにしてくれやがって……絶対に許さない

 

 指揮棒の様に右手の人差し指を高く振り上げ、振り下ろし──同じように川の流れを操りながら、私は最後にこう告げた。

 

 

「や、やめッ」

 

()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 

 どちゃり、と。

 まるで湖面のような蒼の空が降り注ぐみたいに、川の流れが空気の読めないバカ共に降り注いだ。




 ちなみに、クイズの答えは『五トン』です。
 水がないとクソ雑魚な分、水がある場ではそこそこ強いんですね。
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