【完結】女転生者ですが、親友(♀)がエロゲの主人公と発覚したので死ぬ気で貞操を守ります。# シスターアディと淫魔の恩寵_Append 作:家葉 テイク
その後、私はアディと別行動をとることにした。
というのも、アディは今回のことでもっと探索者として知識を蓄える必要があると痛感した……とかでエリーミンに色々教えてほしいということで、そっちの方にくっついて行ったのだ。
おそらく、予知関連で色々とやりたいことがあるのだろう。
『あまちょ』本来の流れではけっこう立て続けにゴブリンの『氾濫』が起きたりしていたのでアディも状況に流されるがままだったけれど、今回はゴブリンの『氾濫』が起きるまでに若干のラグがあるからね。
私としても、アディがエリーミンと一緒に行動することで色々な学びを得るのはいいことだと思う。アディが離れていくようで、少し……いやかなり寂しい思いはあるけれど、あの子のことを思えばこそ、ここは笑って送り出すべきだ。エリーミンと一緒ならアディが誰かに襲われたりする心配もないしね。
それに──私は私で、単独でやりたいことがあったので渡りに船だった、ということもある。
理由は、襲撃者の男達から尋問で得た情報が関わってくる。
アイツら──主犯格の男はコジャーブ=アルプスライザというお隣エーリエン教区のチンピラ探索者さんだった──の話によると、今回の襲撃は
まぁ、私も
ただ……この
では具体的に誰が
……いや、アルプの宝をお借りしたというかね。
経緯については、今は関係のないことだ。とにかく重要なのは、アルプスライザは
だから、仲介してくれるような組織がもうないのだ。なのに何故か、現実に仲介は発生している。
これは、おかしなことだ。スラムの連中が私を裏切りでもしていない限りは、道理に合わない。
「……あの馬鹿ども……」
私は呟きながら、警邏騎士の詰所に歩を進めつつ思う。
まさかとは思うが。
──あの野郎ども、私のことを裏切ってはいないよな?
というわけで、私は警邏騎士の詰所でマグノリアを回収してスラムへ足を運んでいた。
「……っつかよ、一つ聞いていいか?」
「駄目だけど……」
「聞かせろよ!! なんで俺スラムまで連れていかれてるわけ? やっと警邏のシフトが終わって休憩中だったんですけど!!」
「司祭長が緊急査察をするのよ。付き添いの警邏騎士を連れてないと私が怒られちゃうわ。あと
「なんで緊急査察をするのかってのも聞きてえんだがよ……」
──マグノリアを選んだのは、何だかんだ言っても言うことを聞いてくれる便利な人材だからである。
一応私は司祭長なので、スラムに査察に行くときには護衛として警邏騎士を連れて行かないとちょっと問題になる。ただ、今回のスラムでの用事は少しばかりガラの悪い感じになるので……普通の警邏騎士を連れて行くと、ちょっと面倒くさいのだ。
そこで、今日出来たマグノリアとの縁が活きる。
マグノリアはガサツでいい加減なタイプの男だけれど、それは裏を返せば融通の利く男ということでもあるからね。アディとの純愛ルートでも、杓子定規になりがちな警邏騎士の中にあって常識にとらわれない柔軟な選択ができるみたいな感じの描写があった気がするし。そういうところにアディが惚rウグ、脳が……!!
……クソ、マジでこのへんの記憶だけ都合よく消えてくれねぇかな……。
……端的に言うと──必要なときに自由に扱える治安維持組織側の駒候補として、スラムという
ぶつくさ言っているマグノリアを連れて歓楽街を抜ける。
普段一人で歩いていると流石に一度や二度は声をかけられるんだけれど、流石に今回は警邏騎士がいるからか一回も声はかけられなかった。こういう手間を省くのもマグノリアを連れた理由だったりする。警邏騎士という札を首から下げておくのはかなり有効なのだ。
歓楽街を抜けると、坂道が続き──そしてその先に、大きな川が流れている。この川がマニカナ教区の生活用水を担う川であり、そしてこの川沿いに広がる町並みがマニカナ教区のスラム街である。
数年前は、それこそシスターだろうとなんだろうと女が一人で歩いていたら襲ってくださいと言っているようなものという治安最悪の場所だったのだけれど……今なら、女が一人で歩いていたら怖いお兄さんが注意してくれる程度には治安の良い場所になった。あと、私は顔パスになった。
「……ったく、こっちはただでさえエヴァが司祭長だったっていう大ニュースでぶっ飛びそうだってのに、単独で護衛とかマジで胃に穴が空きそうだぜ……」
「ふふふ、プラシーデ様のお世話にならないようにね」
『プラシーデのお世話になる』というのは、この世界の慣用句である。
『休息の』プラシーデはこの世界では医療を司る女神として信仰を集めており、病人や体調不良者が快復するのはこのプラシーデに治してもらったからだ、と考える俗信がある。
そこから転じて、軽い体調不良等(治る見込みが明白な事象)で寝込むことを『プラシーデのお世話になる』と表現するのだ。
まぁ、私に関してはスラムの護衛で心労とか、する必要一切ないと思うけどね。
「どの面下げて言ってやがんだか……」
そんな感じで適当に言い合いながらマグノリアを連れて歩いていくと、やがて足音を聞きつけたのか、一人の男が建物の陰からぬっとあらわれた。
体格のいい、ガラの悪い男だ。流石に専門的に鍛えているマグノリアよりは細身だけれど、人相の分で威圧感は互角だ。
思わず身構えそうになるマグノリアを手で制してやると、男は私の目の前までやってきて、こう言ってきた。
「ご無沙汰してやす、姐御ッ!!!! 本日はどういった御用向きでッッッ!!!!」
「……………………は?」
マグノリアの素っ頓狂な声が、なんだか面白かった。
■あまちょ用語辞典
プラシーデ様のお世話になる
慣用句。体調不良で寝込むこと。
『休息の』プラシーデは六女神の一人で、『医療』の権能を持っている。寝込んでるうちに体調不良や病気が治るのは寝ている間にプラシーデが治してくれたのだ、という俗信から生まれた言い回し。
深刻な症状の時には使われないので、本気でプラシーデが治してくれていると信じている人はいない模様。