【完結】女転生者ですが、親友(♀)がエロゲの主人公と発覚したので死ぬ気で貞操を守ります。# シスターアディと淫魔の恩寵_Append   作:家葉 テイク

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第二一話 その生い立ち

「……あの、司祭長サマ? これは一体どういうことで???」

 

 

 マグノリアの、困惑して震えた声が面白かった。

 私は九〇度の角度で腰を折って私に挨拶するゴロツキの顔を上げさせながら、

 

 

「あら、ワイドは知らないのね。私、ヒラ司祭時代から此処で救貧活動をしてたから。司祭長になった今は、ちょっとした顔役みたいになってるのよ」

 

「……ッス。ここでエヴァに口答えしねえようにしとこ……。

 

 

 畏怖するマグノリアに表向き苦笑しながら、私はスラムをゆっくりと歩いていく。

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STAGE_02 / ダンジョン日和の昼下がり

[in マニカナ教区 スラム街]

 

第二一話 その生い立ち

 

 


 

 

 

 ──私の今生(こんじょう)は、このスラムから始まった。

 

 

 思い返せば、今世の私の生い立ちはなかなかのハードモードだったと思う。

 母は避妊してなくて客の子を妊娠してしまった娼婦、父は日雇いの肉体労働者。母の方の血の遺伝が強かった私はそれなりに見れる顔立ちのガキとして生まれ育ったのだけれど──人格的には母も父もどっちもカスで。

 私のことは、いずれ成長したら娼館にぶち込んで金を稼がせる道具かなんかとしか思っていなかっただろう。

 しかもこの世界、一応『規律の』フィルマトが提唱した人権の概念はあるらしいけれど、当然明日の命も知れないスラム街のガキに適用されるほどしっかりしたものではない。冬には隣の小屋のガキが凍死してただの、そういうことが当たり前にある環境である。

 ただでさえ親がカスなのに、環境が私を守ってくれることはない。いや、本当にハードモードだったな。よく頑張ったと当時の私を褒めてやりたい。

 

 で。

 私も前世では二〇年とちょっとの社会経験がある大人の精神を持ち合わせているわけで、こういうのは生まれ育った環境というデバフでその後の人生に多大な影響が出るのが最初から分かっていた。

 このまま馬鹿正直にスラムで暮らしたとしても、私はならず者以上の社会的地位を得ることはできない。精々が娼館の上役とか、スラムの元締めの情婦とか、ろくな老後は送れない感じだ。

 なので、私はズルをすることにした。

 

 幸いなことにこの世界には生まれのデバフを()()()()()()()()()()()塗り潰せる仕組みがある。

 それが、修道院附属の孤児院だ。

 この孤児院は事故などで引き取り手のない子どもを引き入れて、最低限の教育と引き換えに教会に従順な人材として洗脳して、教会に都合の良い労働力として使い潰すという素敵な組織である。……悪し様に言っている訳ではなく、マジで。

 本来であれば内心と信教と職業選択の自由諸々の自由権に中指を立てているこの組織のご厄介になることを良しとする現代人はいないと思うけれど、私にとってはこの『教会の人員』という安定した将来を確定させてくれる要素はむしろメリットですらあった。洗脳教育も、既に確立した自我を持つ私には無意味だしね。

 使えなければそりゃあ一生下働きだろうけれど、孤児院の中で有能さをアピールして出世街道に乗っかる自信はあったし、何より衣食住と社会的身分を保証してくれるというのがスラム生まれからしたらあまりにもデカすぎるメリットだった。

 

 ただ、問題は孤児院に入る条件が()()()()()()()()()()()()()子どもという点で、私にはカスではあれどちゃんとした両親が存在してしまっている。

 だからといって、流石にカスでも両親を殺せるほど私も冷血ではないので──私は一計を案じて、()()()()()()()()ように見せかける偽装工作をした。

 当然、戸籍調査みたいなものも存在していないこの世界でこの偽装工作を見破ることはできない。私の『死』は恙無く成立し、公的には存在しない人間として身分をリセットに成功したのだ。

 

 そういう感じで、スラムのカスの娘としての私は『事故』で死亡して、『氾濫』によって家族を失った不幸な孤児として生まれ変わり、無事に修道院附属孤児院に潜り込むことができた。

 本当に孤児かどうかを確認しようにも、既に死んだことになっているスラムのガキなんて教会からしたら存在していないも同然。確認のしようがない。仮にスラム時代の知り合いが私を陥れようとしたとしても、スラムのゴロツキの証言に証拠能力なんて認められないしね。

 スラムのガキに人権などないに等しいことを逆に利用した訳だ。

 

 その後は、御覧の通り。

 修道院で頭角を現した私は教都で一年間司祭過程を学んで正式に司祭となり、生まれ故郷のマニカナ教区で司祭として働き──前司祭長の陰謀を暴いた功績で司祭長となったのだった。

 

 ただし、だからといってスラム時代の繋がりが失われたという訳でもなく。

 

 スラム連中の証言に証拠能力がないのをいいことに、司祭長となった今もこうやってスラム時代の人脈を利用して色々やっているのである。

 スラムが浄化されているっていうのも、簡単に言ってしまうと、私がスラム時代の繋がりを使って権力関係を()()()()()()()()()()調整した、っていうのが正しい。

 一応、カモフラージュの為に河川の整備とか雇用状況の改善とかもやったりしたけれど、そっちはついでなのでそんなに手はかけなかったし。

 

 

 そういう事情もあるので、今までスラムのことは完全に私が掌握できていたんだけれど……どういう訳か、今回、スラムの中に私の暗殺依頼を仲介したバカがいる疑念が出てきてしまった。しかも、マニカナ教区の中に解散させたはずの地下(ヤミ)ギルドまで作っているという情報付きだ。

 これはもう、私自らそのバカについて探りを入れないといけないよな……というのが、今回の『査察』の主目的である。

 

 もちろん、スラム全体が寝返って私の敵となっている可能性も考慮している。何かヤバイ事態になったらすぐさま『移動結晶』を使ってエリーミンのところに帰還する予定だ。

 その場合は、スラム全体がなんか企んでいるということで、大規模な大捕り物が始まるだろう。スラム浄化第二弾である。……めんどくせぇな。

 

 

「で、今回の査察ってのは?」

 

 

 木でできたあばら家が立ち並ぶ道を歩きながら、マグノリアが問いかけてくる。具体的にどこを査察するつもりなのか、ということだろう。スラムの奥に行けば行くほど、治安としては悪くなるのが普通だから当然の疑問だ。

 問われて、私は自分たちが歩いている道の先を見やった。

 道は下り坂になっており、こんなところにまで家を建てないといけないスラムの人口過密具合が容易に見て取れた。……浄化のお陰で、不衛生さはだいぶ軽減されているんだけれどね。

 まだ見えないけれど、坂を下りきった先には川がある。マニカナ教区のスラムは、この川を起点として広がった貧民街なのだ。

 

 マグノリアの問いに私は頷いて、

 

「そうね、今回は河川管理官と話をするつもり。河川の汚染状況は此処の暮らしぶりを直接左右するから」

 

「なるほどな……」

 

 

 マグノリアは真剣に感心しているけれど──当然、河川管理官というのは表の顔に過ぎない。

 河川管理官(コイツ)の裏の顔は情報屋で、河川の管理状況を査察するという建前で、情報屋から色々と裏の情勢を確認するのだ。

 

 坂を下りきって川辺に降り立つと、そこはやはりスラムの外とは別世界だった。

 小石がごろごろ転がる川辺に挟まって、幅三メートルくらいの細い川が流れている。歩きづらい川辺をさらに挟むように河川敷があり、そのすぐそばに木製のあばら家が敷き詰められたように立ち並んでいる。

 ──此処だけ見ると、『日本』の風景のように見えなくもない要素が並んでいるけれど、厳密には違う。河川敷の上に立ち並ぶあばら家の群れなんて風景は私の中の『日本』のイメージにはないし、それは他の日本人に聞いても同じだろう。

 コラージュめいた違和感という意味では、私にとって此処は埋蔵神殿(ダンジョン)の中とそう変わらない雰囲気を帯びている。

 

 ……異国情緒の中に、どこか漂う『異質な郷愁感』。

 自分の将来の為に捨てた『故郷』には相応しい印象だろうか──と言うと、ちょっと自虐が過ぎるかな。

 

 

「エヴァ? どうかしたか?」

 

「ああ、いや。何でもないわ。さっさと済ませちゃいましょう」

 

 

 いけない。『日本』の記憶を強く意識した後に初めて此処に戻って来たものだから、思わずセンチな気分になってしまった。

 気分を切り替えながら、私は川辺に設置された石造りの小屋へ近づき、比較的しっかりした造りの木扉を叩く。

 この時間なら、アイツは此処にいるはずだけれど……。

 

 

「エーヴァンネーリジュよ。レルオーティエはいるかしら」

 

 

 返事はなく、ガタゴトと小屋の中で物音がして──しばらくしてから、のっそりと扉が少しだけ開かれる。

 扉の隙間から顔を出したのは、警戒した野犬のような印象を感じさせる、逆立った赤い長髪の女だった。

 ……イメチェンしたのか、それまでは伸ばしっぱなしだった長髪を一丁前に整えてポニーテールにしている。そのせいか、余計に犬っぽい印象が加速していた。

 

 女の名は、レルオーティエ。苗字はない。スラムではかなり優秀な部類の情報屋で、同年代ということもあり、彼女のことは私も贔屓にしている。──スラム当時から付き合いのある、数少ない『信頼できる駒』の一人だ。

 レルオーティエは、脇にいるマグノリアを一瞥してから私のことをじいっと見上げる。

 

 

「……査察ッスか。びっくりするんで抜き打ちはやめてほしいんスけど──」

 

 

 言いながら、レルオーティエはこちらを招くように扉を完全に開ける。

 探索者でもないのに革の装備を身に纏ったレルオーティエの褐色で筋肉質な体躯を見て、私はふと気づく。

 

 そういえば。

 髪型が違うから今まで気づかなかったけれど、私、コイツのこと描いたことあったわ。

 

 そうだ。思い出した。

 確かコイツは、アディがメインクエストを幾つかクリアしてスラムに入れるようになった後に登場するサブキャラクターで、ストーリーの進行に必要な情報を教えてくれる、エリーミンとは別タイプの姐御系お助けキャラ。

 そして──

 

 ──酒に酔った勢いでアディを押し倒して、そのままレズレイプに及びやがったんだった。

 

 

 ………………。

 

 ……っとによぉ……。

 

 この世界(テメェら)はよぉ……。

 

.アディの貞操を脅かすことしか能がねぇのか、あァ!?!?!?!?




 一応レルネキのフォローをしておくと、当該イベントが発生する頃にはアディの淫乱度もまぁまぁ高いので、結構なし崩しではありました。
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