【完結】女転生者ですが、親友(♀)がエロゲの主人公と発覚したので死ぬ気で貞操を守ります。# シスターアディと淫魔の恩寵_Append   作:家葉 テイク

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第二三話 勝手に戦え

「これは……依頼の発注書?」

 

 

 差し出されたボロボロの紙に視線を落としながら、レルオーティエに問いかける。

 キツく折られてから広げられたような強い折り目が幾つもついた紙は、端がほつれており大分雑に扱われていたことが分かる。多分、何度も折りたたんでポケットの中に突っ込まれていたりしたんだろう。

 この紙を所持していた地下(ヤミ)の探索者の文書管理について、ちょっと想いを馳せてしまった。

 

 

「そうッスね。地下(ヤミ)探索者ギルドのものだから略式ッスけど……」

 

 

 レルオーティエは得意そうに頷く。

 確かに、正規のギルドと違って項目は大雑把だし、そもそも決まった書式すらないように感じる。申請とかいった事務仕事を考えたものではなく、本当に依頼主と雇用者の間で合意形成をする為だけの、非常に原始的な内容だった。

 

 これを見る限りだと……どうやら、マニカナ教区の北にある埋蔵神殿(ダンジョン)群のうちの一つ、『マニカナ第一淫堕神殿』の『採集依頼』ということらしい。

 詳しい内容については現地に着いてから話されるのだろう。後ろ暗い依頼ではよくある話である。

 ただ、これ……決行予定日は明後日か。多分もう受注は済んじゃってるだろうな。

 

 

「これ、依頼に捻じ込める?」

 

 

 何の気なしに問いかけて見ると、レルオーティエは途端に渋い顔をした。

 

 

「受注が終わってる依頼にッスか? それ、依頼を受けた地下(ヤミ)探索者を叩きのめして成り代われってことッスよね」

 

「いや、流石にそこまでは頼まないわ。居所を掴むだけでいい。その後は()()()()()()()()()()()

 

「おいおい」

 

 

 簡単に請け負うと、話の成り行きを見守っていたマグノリアが口を挟んで来た。

 マグノリアは呆れて……というよりは、少し不安そうな様子で語りかける。

 

 

「こっちでやっておくって、俺達でか? 裏街道を生きてる人間を相手にするんだぜ。そんなあっさり安請け合いしちまっていいもんなのかよ」

 

 

 ……ああ、そういう勘違いね。

 確かに、文脈だけで読み取ればさも私とマグノリアが地下(ヤミ)探索者ギルドの依頼を受けた輩のところに乗り込んで倒すと言っているように聞こえる。

 実際にそういうやり方でも全然問題なくはあるんだけれど……今回の場合は、それよりもっと分かりやすい解決策がある。

 

 

「違う違う。別に追い詰められているわけでもないのに、自分を駒として盤上に置くわけがないでしょ」

 

「……じゃあ、誰がやるって言うんだよ? まさか俺一人とか言わねえよな?」

 

()()()()()()()()()()()()()

 

 

 当たり前と言えば当たり前の回答を、私は答える。

 

 

地下(ヤミ)のギルドがマニカナ教区に入り込んできたって言えば、チーフのあの人の立場なら快く協力してくれるでしょ。今日一緒に探索したんだけれど、あの人の実力、本当にバケモノだったわよ」

 

「……あー……。……悪い、全く考えてなかった」

 

 

 私があっさり答えると、マグノリアは気まずそうに額に手をやった。

 多分、半分以上本気で、自分一人でやるハメになるとか思ってたんだろう。

 自惚れもいいところだ。人格はともかく、私はお前の能力をそこまで信頼してないぞ。具体的にどのくらい強いかとかは全く覚えてないし。

 

 

「了解ッス」

 

 

 こちらの方で話がまとまったのを見て、レルオーティエは話を進める。

 

 

「じゃあ、居所を特定した後のことはお任せするッスね」

 

「あとは何もないかしら?」

 

 

 腰を浮かせて、私は確認する。そうは言っても、私は半ば話はこれで終わりだと思っていた。

 決行予定日が明後日ということは、受注した地下(ヤミ)の探索者は明日中に始末しなくてはならない。今日はもう日が暮れるし、さっさとギルド本部に戻ってエリーミンに話を通しておきたいのだ。

 

 しかし。

 

 そんな私の思惑とは裏腹に、レルオーティエはピッと掌をこちらに向けて、席を立とうとする私を制止した。

 

 

「……何?」

 

「まだ一つ、見せるモノがあるッス。……っつか、姐さんにとっては多分こっちのが重要じゃないッスかね」

 

 

 言いながら、レルオーティエは懐から一枚の紙を取り出す。

 こちらもヨレヨレで、だいぶ粗雑に扱われていたらしいことが伺える。もっとも、そんな粗雑な管理だからこそレルオーティエに『写書の鏡(スペキュリプト)』であっさりコピーされてしまうんだろうけれど……。

 

 

 ……で、この紙は…………。

 

 

「これは……」

 

「おいっ、これ、手配書じゃねえか……!」

 

 

 私が具体的に言葉にする前に、マグノリアが当惑した声色で声を上げる。

 

 マグノリアが驚愕するのも無理はない。

 そこに載っていたのは────私とアディの写真だった。

 私の方は『絶対に殺せ(デッドオンリー)』、アディの方は『生死問わず(デッドオアアライブ)』と補足されている。私は懸賞金五〇〇〇ピニカ、アディは懸賞金一〇〇〇ピニカとなっていた。

 

 

 ……………………フゥー……………………。

 

 

「あ、あの、姐御……」

 

 

 その様子を見て、レルオーティエが困ったように眉を寄せる。

 機嫌を損ねたかと思われたかな。まぁ、一応自分の手配書が出回っていたわけだからそう思うよね。

 私も、流石に自分の手配書を見たのは初めてだ。前司祭長のジジイの時はヤツの子飼いを使ってきたし。

 

 私は心配そうなレルオーティエを落ち着かせるように、穏やかな声色を心掛けながら言う。

 

 

「……ああ、大丈夫。怒ってはいないわ。ただ、どうしようかなと思っていただけ」

 

 

 もう一度椅子に深々と座り直し、天を仰ぎながら眉間を揉んで……私は考える。

 つとめて冷静さを保ちながら。

 

 ……『アディを捕えたい』なら、まだ分かるけれど……生死問わず(デッドオアアライブ)……?

 

 『あまちょ』の黒幕は、アディを殺そうとは絶対に考えなかった。

 それはエロゲ的なお約束の面もあると思うけれど、アディに対して利用価値を感じていたからこそそういう判断になったという部分もある。

 『ラゲル・デザード』という類稀な魔法もそうだし、フィルマトの『加護』がある()()()という認識も、確か持っていたはずだ。だからこそ、『淫魔の恩寵』なんてものを持ち出してまでアディの精神を堕落させようとしたのだから。

 逆に言うと、黒幕はアディの才能について一通り知り尽くしているということでもあって、私としてはそれがまた厄介なんだけれど……。

 

 この依頼を出している人間はそうではない……? アディのことを、ただの雑兵程度に思っている……?

 ……私の方には明確な殺意を向けているというのに、アディに対してはそうでもない。

 単に私の側近として動く邪魔な人員として、手札を削る為に殺せれば良し/あわよくば捕まえてこちらの情報を絞れればなお良し……的なやる気のなさを、この手配書からは感じる。

 

 

 ……まぁ、アディを()()()()()()って考えているっていうのなら、どちらにしても同じことだ。

 たとえどんな事情があれど、どんな陰謀があれど、アディを傷つけようと考えるヤツはその時点で許さない。

 確実に、完膚なきまでに、この依頼主のさらに奥に黒幕がいる可能性まで想定して、完璧に叩き潰してやる。

 

 ……ちょうどいい。利害も噛み合っているようだし……。

 

 

「作戦変更。()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

「へ?」

 

 

 この地下(ヤミ)探索者ギルド斡旋野郎──()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 

「……そういうことなら、潰し合っていてもらいますか」

 

 

 カスどもめ。

 勝手に戦ってろ!

 

 

 

 


 

 

STAGE_02 / ダンジョン日和の昼下がり

[in マニカナ教区 スラム街]

 

第二三話 勝手に戦え

 

 




■あまちょ用語辞典
 『あまちょ』世界の通貨
 ピニカ金貨、ジェン銀貨、ラム銅貨の三種類がある。
 価値はだいたい一ピニカ=一万円、一ジェン=一〇〇円一ラム=一円くらい。
 つまり、五〇〇〇ピニカは賞金五〇〇〇万円。もちろん複数人でやったら山分けです。
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