【完結】女転生者ですが、親友(♀)がエロゲの主人公と発覚したので死ぬ気で貞操を守ります。# シスターアディと淫魔の恩寵_Append 作:家葉 テイク
その後、私たちは歓楽街を後にして、東区の喫茶店を訪れていた。
テーブル間の距離が空いており、テラス席は日除けのパラソルのお陰で声がこもっていて……と、実は意外と密談向きの穴場スポットである。
そこで、私とマグノリア、そしてレルオーティエが同じテーブルを囲んでいる形だった。
「早速だけれど」
私は開口一番に本題を切り出す。──レルオーティエには私たちが現場で検分している間に、手下の
これから、その調査結果を教えてもらおうというわけだ。
ちなみに、情報を聞くのにスラムに立ち入らないのは依頼主の居場所がスラム内である可能性が高いと踏んでいるから。
レルオーティエなんかは縄張り意識が強い
そしておそらく、それはどのスラムも同じこと。むしろ外のスラムの方が余計に他者への注意は薄いかもしれない。よその教区から来た人間なら、好んでスラムに身を隠したがるだろう。
「はいッス」
私の声に応じて、レルオーティエは一枚の写真を取りだして、テーブルの上を滑らせるように私に寄越した。
……驚いた。まさか写真があるとは思わなかった。
「
「ええ、十分よ」
写真に映っていたのは、一人の男だった。
赤髪を刈り上げ、側頭部に剃り込みを入れているガラの悪い風貌だ。ヘアスタイルのガラは悪いのに、服装は場違いな礼服。手に
こんな格好でスラムに潜んでいればめちゃくちゃ目立つだろうに、今まで見つかっていなかったことを考えると、おそらくかなりの手練れなのだろう。
「……予想以上ね。凄いわ、レルオーティエ」
「ま、まぁ……それほどでもないッス。それに、まだまだ他にも情報はあるッスよ」
え、まだあるんだ。
本当に有能だなレルオーティエ。えらいぞ。
感心する私をよそに、レルオーティエは幾つかの紙を取り出した。節々に焼け焦げた跡があることから察するに、燃やして証拠隠滅を図ったのだろう。それでも燃えていないことを考えると……どうやら火をつけてすぐに依頼主が逃げて、そこをすぐにレルオーティエが駆けつけて消し止めた、といったところだろうか。
「ずいぶん無茶をしたわね」
「姐さんの頼みッスから」
だけど、その無茶のお陰で大分助かった。やはり持つべきものは便利な情報屋だ。
心の中で感謝しながら、私はレルオーティエが取り出した追加の資料に目を滑らせる。見た感じ、魔具についての報告書のようだった。
こういう書類は教会の会合で見たことがある。
私が司祭長を務めるマニカナ教区は教会では『
他にも、アングラな魔具屋の連絡先のようなものがまとめられた紙が一枚、堕落第一神殿の攻略情報が一枚入っていた。
そして、資料に書かれていた魔具は二つ。
一つは、『
一つは、『
後者の魔具……いや、魔性薬については、私はよく知っている。多分、この世界で誰よりも、その価値を知っていると言っても過言ではない。
この魔具は────
──淫乱度減少アイテムだ。
………………いや、なんで???
『
私も現物は見たことがないほど貴重で高価だけれど、実際に使われた記録もあったりするので確かに存在する魔具である。
見つけて売れば数百どころか数万ピニカはくだらないであろうこの魔具は、何かというと────使用者の『理想の身体』に変化して、変化したこの魔具を自在に操作できるというもの。
といっても、別に魔法を使える身体を用意できるわけでもなければ、人間の限界を超えた身体を用意できるわけでもない。魔法は使えないし、身体能力も一律である。
ただ──
たとえ使用者がどこにでもいる平凡な男だったとしても、国一番の美男子に変化させることができるし、それどころか傾国の美女に変化させることだってできる。
そして、そうして変化させた
まぁ、操作するにはかなりの集中がいるから、眼を閉じてその場でじっとしていないといけないけどね。それでも使用者から二〇メートルくらいしか離れられないし。
ここまで説明したらわかるように、凄まじくはあるものの、そこまで悪辣な使用はできない。ではこの
──
年老いてもう
聞いてみればなんて低俗な……と思うかもしれないけれど、こういう部分のコンプレックスは人には言えない割に切実な場合が多い。神話でも、スィラスの王がめちゃくちゃ大掛かりな手順を踏んで『堕落の』トーレイラに祈ってまでようやく手に入れたっていう逸話があるし。
私も大概、性欲関連のことについては悪態を吐いているけれど……決してこういう部分の悩みを馬鹿にしようとは思わないしね。
「……
資料を見ながら、マグノリアは気まずそうに頬を掻く。
マグノリアも何かしらの悩みは抱えているんだろうか。私なんかはわざわざ自分じゃない身体を使ってアディと結ばれる意味が全く分からないので、ハンディのない人間にとってのこの魔具の存在意義が分からないのだけれど……。
「この
マグノリアの困惑はそこらしかった。
貞淑薬は、ゲームにおいては『淫乱度』を下げる便利アイテムだった。
既に説明したように、エロRPGでは大抵『淫乱度』によってエンディングが分岐する。
『あまちょ』もそうしたタイプのエロRPGで、淫乱値上限一五〇の中で、〇~四が淫乱度0、五~二九が淫乱度1……といった感じで、全部で最大淫乱度5まであり、エンディングもそれぞれの淫乱度別に存在する作りになっていた。
そして、この淫乱値の上昇というのは、強制エロイベントによっても発生する。
アディは強制的に淫乱値が上昇するので、普通にプレイした場合、どんなにエロを回避しても淫乱度が……本番、乱交、前戯、前戯、乱交、獣姦、乱交、特殊だから……最低でも三まで上がってしまう。
つまり、淫乱度0、1、2のエンディングを見る為には、貞淑薬を使ってやらないといけない。
そして此処からが『あまちょ』の悪辣なところなのだけれど──貞淑薬は店や商人から買うことはできず、トレイル系の
つまり、
──とまぁ、ゲーム的にはとても大事なアイテムではあるんだけれど、それはエンディングのフラグ管理とステータス画面という概念の存在するゲームではのお話。
この世界において、貞淑薬は『使うと魂が清らかになる』という触れ込みこそあるものの、別に飲んでも性格が良くなるわけではないので眉唾扱いされている。
貴重は貴重だけど、さりとて世界に数個しかないとかいう話でもなく、大体一ピニカくらいで買うこともできる程度の代物だ。
私も、なんでこんなもんが資料として用意されているのかは分からない。
「……ブラフ、かしら? 何でもないトレイル系の魔具を見せておくことで、こちらの狙いをブレさせる目的があるのかも」
「にしても、それならもうちょい別のチョイスがあると思うがな……」
それは私も同感。
でもまぁ、意味の分からないことについて考えても仕方がないしね……。一旦これは思考の脇に置いておいて、意識だけしておくことにしよう。
「それに加えて、堕落第一神殿の攻略情報。間違いなく、向こうの目的はトレイル系の
「考えられるのは、
「それで私を殺して成り済ますって? なくはないかもね」
ただ、その可能性は低いように感じる。もしそうなら、まずは
でないと、
そもそも、なりすまし系は難易度が高すぎるだろう。見た目は全く同じにできても、操作するのは全くの他人なのだ。近しい人にはすぐにバレてしまう。
……あるいは、
……うーん、こちらの意味づけについても、今は考えても答えが出なさそうだ。
「じゃあ、私とワイドはこれからギルドに行ってこの情報を共有してくるわ。今日は朝からアディもギルドにいるはずだから」
「あ、じゃあアタシもついて行っていいッスか?」
「駄目よ」
急に何を言い出すんだこやつは。
「……やっぱりお嬢に悪影響を与えるからッスか?」
「違う違う。……あー……」
……理由は説明してもいいんだけれど、マグノリアに聞かれるのはな……。
「ワイド、耳塞いでてくれる?」
「なんでだよ? 俺に聞かせてくれてもいいだろ。別に構わねえが……」
不承不承ながら、マグノリアは両手で耳を塞いでくれた。うん、ちゃんと塞がっているな。
……お前が聞いたら、ギルドに行った時に絶対顔に出るから嫌なんだよ。
私は身を乗り出してレルオーティエに顔を近づけながら、声を落として話す。
「ギルドに、『アディに「淫魔の恩寵」を付与した黒幕』に近しいヤツがいると睨んでいるのよ。こっちの情報屋の顔をみすみす敵に見せたくないわけ」
「あっ……。…………、…………あの、すんませんした」
「? 別にいいけど」
姿勢を戻して椅子に座り直す。あれかな、レルオーティエもいい加減スラム外のコネが欲しいのかもしれない。
確かに彼女は情報屋としては優秀だし、このままスラムで小さくまとまるのは不服だろう。……ただ、今のこいつの立場だから便利に使えてるってところもあるからなぁ……。
……うん。この先ずっとこのままって訳にもいかなさそうだし、レルオーティエが勝手に動いて私が困ることになる前に、色々準備して誘導できるようにしておこう。そうしたら恩も売れるし、私の想定外が発生して困ることもなくなる。
「もういいか?」
聞く前に、私が座ったのを見て勝手に手を離したマグノリアが皮肉っぽく問いかけてくる。はいはいご協力ありがとう。
適当に手を振って答えてから、私は席を立つ。レルオーティエに一ピニカ金貨(もちろん、情報料とかではない。単なるお小遣いだ)を渡してから、
「じゃあ、私達は行って来るわね。今日はありがとう、レルオーティエ。正直、とても助かったわ」
「ウッス。姐さんの助けになれたなら、光栄ッス」
見送るレルオーティエに手を振りながら、私とマグノリアはギルドへと向かった。
さぁ──私の謀略も仕上げの段階だ。
現時刻を以て架空原作杯が終了しました。
それに伴って、当SSの定期更新も終了しますが、お話は全然続いていきます。これからもエヴァの物語をよろしくお願いします!
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