【完結】女転生者ですが、親友(♀)がエロゲの主人公と発覚したので死ぬ気で貞操を守ります。# シスターアディと淫魔の恩寵_Append 作:家葉 テイク
このエリーミン=アルプスドータという女は、
年齢や性格が──という意味ではない。
そういう意味では、エリーミンは非常に成熟した大人だと言えるだろう。
面倒見も良く、我慢強い。人当たりもいいので交友関係も広いし、本人の人格も高潔だ。
二六歳にして最大ギルドであるマニカナ教区本部のチーフを任され、本人も深層に潜り続けるベテランエリートなのだから、成熟していなければおかしいといった方が良いかもしれないけれど。
ただし──彼女は私よりも五つ年上のくせして、『そういうこと』についてはその小学六年生の幼女そのものな見た目相応で、はっきり言って性経験・性知識共にゼロに等しい。
いや──むしろ、マイナスの域に到達していると言ってもいいだろう。
なので、『そういう事態』を目の当りにしたら普段の凄まじい強さや冷静さが一気に彼方まで吹っ飛んでしまう。
性的な話題を振られただけで挙動がややおかしくなるし、直球でセクハラを振られれば一瞬フリーズする。
トレイル系
エリーミンがまともに冒険者をやれている理由がこの世界でロリコンが非常に少ないからなのは、誰の目にも明らかだろう。
……そうなんだよ、この世界、おっぱい星人が多いんだよ。どいつもこいつもアディの胸ばっかり見やがってよォ、テメェらは丸太にくくりつけた風船にでも欲情してろや……!
……こほん。
しかし──此処はエリーミンがエロ耐性皆無の純情乙女であることを余人に悟られてはならない。
エリーミンは私にとっての切り札な訳で、此処でトレイルソン本部長に彼女の札としての弱みを見せてしまったら、今後彼女を使うときにその弱みを突かれる可能性がある。最強には最強でいてもらわないと、利用する私が困るのだ。
幸い、多分弱みを隠したい利害はエリーミンとも一致しているはず。此処は──
「……そうね。エリーさんの参加は、私もやめた方がいいと思うわ」
「今お前『え゛』っておぐッ」
──肘鉄を一撃。
「……出すぎたことを言いました……」
黙れバカ。話が混線するだろうが。
もう余計なことを言うんじゃないぞ。
「──恥ずかしながら、私もエリーさんが断るまで堕落第一神殿にはエリーさんの参加が当然とまで思っていたんだけれど……」
バカを黙らせた私は、気を取り直して話を続ける。もちろん、私がうっかり漏らした声も含めて不自然にならないように、だ。
「そうじゃないわ。この相手の動きが誘いである可能性を考慮しないといけない」
実際にはスライカとナーディに襲われて尻尾巻いて逃げたから誘いである可能性は皆無なんだけれども。
「たとえば、勇んで堕落第一神殿に足を踏み入れた矢先に、ガードが緩くなった本部を襲撃する可能性だってある。向こうは多分、
「…………一理、ありますね……」
ただ、そのへんの敵の事情はトレイルソン本部長には分からない。私が話していないから。
情報がない以上、トレイルソン本部長は勝手に頭の中で敵の実像を膨らませてくれる。こちらに都合の良い形で。
──いやぁ、けだし情報アドバンテージは大事だな。
「此処は、エリーさんを地上に残しておいた方が総合的には良いはずよ」
もちろん、これは結論ありきの辻褄合わせだ。
冷静になって考えればいくらでも反論は思い浮かぶ。敵が余力を残したまま逃げているフリをしている可能性とか、そもそも堕落第一神殿に逃げ込んだという情報が罠である可能性とか。
ただ、そんなことを言い出したらまず私の証言の是非を疑うことになるし、何より今私が相手をしているのは
「……でもエヴァ、そしたら
そこで、アディが当たり前と言えば当たり前の疑問を口にした。
うん。場の空気と私の話術に呑まれずちゃんと冷静に状況を判断してる。えらいぞ。そして私は困るぞ。
確かにアディの言う通り、既にギルドの人間が(チンピラとはいえ)倒されまくっている状況なのだから、戦力的には不安が残るのは事実。だからこそ、本部長もエリーミンをアテにしていた訳だからね。ただし。
「それは大丈夫。相手が余力を残しているにしても、本気で逃げているにしても、堕落第一神殿に突入する方の危険はそこまで高くないはず」
「それは……どうしてです?」
「そもそも、
これは事実だ。
下手に罠を仕掛けようとすると、魔性化の条件を満たしてしまって意図しない魔具が発生する──なんてケースがあり得るからね。
だから、真っ当に策謀を張り巡らせるなら
例外は──この間の連中のように
「にもかかわらず
「なるほど……」
実際には、自分の扱う
仮に圧倒的戦力差を簡単に覆せる
それがないということは、まだまだ
……あれ、そう考えると私のカタログスペック自体は敵にバレている可能性もあるのか? アディ以外に私の魔法を知っていて生きてるのは、少数の信頼出来る駒しか今は生きていないはずだけれど……。適当にあたりをつけてるだけでそこまで正確じゃない可能性もあるか。
──今はそれは置いておこう。
ともかくこういう感じで、このくらいの懸念は、実情を隠したまま丸め込むのも容易である。むしろ、アディの疑問は私の提案の説得力を上げる良いサポートになった。ナイスアシスト。
「分かりました。エリーミンさんには待機しておいてもらいましょう。堕落第一神殿には、私を含む中堅探索者パーティで向かうことにします」
トレイルソン本部長は頷いて、納得したようだった。
素早くエリーミンの方へ目配せをして、きちんと恩を着せておくのも忘れない。これでエリーミンには『貸し一』だ。それも、まぁまぁデカイ貸しが。
「では、私は該当の探索者さんと打ち合わせをしてくるので、これにて失礼します。……シスター・エーヴァンネーリジュ、本当に助かりました。この借りはいずれ何かで」
「私の情報が助けになったなら幸いです」
借りなら黒幕同士で共倒れしてくれれば、それでいいよ。