【完結】女転生者ですが、親友(♀)がエロゲの主人公と発覚したので死ぬ気で貞操を守ります。# シスターアディと淫魔の恩寵_Append 作:家葉 テイク
「……面倒をかけた」
トレイルソン本部長との話が終わったあとで。
話があるとエリーミンに声をかけられ、私はエリーミンと一緒にギルド二階の倉庫で話をしていた。さっきエリーミンが何かを唱えていたので、盗聴対策はばっちりだろう。よくわかんないけど。
そこまでして二人で内緒話をしたいとなれば──おそらく、エリーミンから私に対しての事情説明、といったところだろう。
エリーミンは少しだけ恥じ入るような態度で、話を切り出した。
「少し、昔話をしようか。私の過去についての話であり──私の弱みについての情報共有だ。……付き合ってくれるか?」
一応問いかけの形ではあったけれど……この流れで断れる奴は相当の愚か者だろう。
私は、黙って頷いた。
「私は、元々は農村の子どもでな」
エリーミンは、開口一番にそう言った。
そうだったのか。初めて知る情報だった。……知識が埃を被っているだけで、実は前世で聞いていた話かもしれないけれど。
「エーリエン教区近郊の、貧しい農村だよ。私が五歳の頃だったかな──その辺りで大きな飢饉があった。ちょうどエヴァちゃんが生まれるか生まれないかくらいのことだな」
エリーミンは懐かしそうに言う。
ただ、郷愁の念はなさそうに見えた。
「当時幼かった私は身売りに出された。よくある口減らしというヤツだ」
「……奴隷商人ってこと?」
「そこまで悪辣じゃない……が、似たようなものだな。
知ってる。前司祭長が女衒の黙認どころか保護までしていたからね。アレも例のゴタゴタの中でまとめてしょっぴいたっけ……。
「で、私はその女衒に買われた訳だ。故郷の村から馬車に乗ってゴトゴトと。私と同年代とか、年上の少女もいたよ」
「それは……さぞ辛気臭かったでしょうね」
「ハハハ! 言うじゃないか、エヴァちゃん。まぁそうだったかな。年長の子が、自分たちがこれから行く娼館がどういう場所なのかを話して回っていたからね。絶望している子を増やして自分の心を安定させようとしていたんだろうが」
うわぁ……。なんとも嫌な話だ。被害者の中で被害者・加害者の関係が生まれちゃうんだもんなぁ。人間の業について考えさせられる。
……で、何となく話の方も見えて来た。
「使えない子は焼いて食われるとか、綺麗な子は『堕落の』トーレイラ様への捧げものにされるとか、大人になる前に皆殺されるとか。……おそらく、それ自体あの子の絶望の裏返しでもあったんだろう。ただ、当時の私は本当に怖くなってしまってな……」
それ以来、『堕落の』トーレイラに関係するものが──性に関するものが苦手になってしまった、と。
そしてそうしたものを遠ざけて生活していったら、とんでもない生娘になってしまったという訳か。
「怖すぎて、当時の私は女衒の馬車から逃げ出したんだ。幸いその時に魔法に覚醒して、しばらく近辺の森で狩人の真似事をして暮らしていた」
「急に昔話の雲行きが怪しくなってきたわね」
そこからそんな流れになることあるんだ……。普通はそのまま娼館へGOじゃない? 私でもその流れは一旦娼館に行ってから火事で身元リセットの路線に行くぞ。
「で、偶然流れの探索者と出会って、その紹介でエーリエン教区の探索者として活動を始めて……エーリエン教区の娼館を牛耳っていたクズどもを潰して、娼館にいた子の生活の面倒を見る為にマニカナ教区に移り住んで……今に至る」
「待って。さらっと言ったけどなんで娼館関係者を潰したの?」
「なんでって、助けてやらないとだろ、
……ああ……。
自分と一緒に買われた子達も、この人の中では救う対象にカウントされていたってことね。今も消えないトラウマを遺した子も含めて。
な、なんというか、この人、私とは……見えている世界が違う。もっとこう、爽やかな冒険ファンタジーな感じの世界で生きている人だ、これ。
「もちろん、今となっては私もあの子の言っていたことが大袈裟な話だとは分かっている。ただ、どうしても『そういうこと』への苦手意識は拭えなくてな……。だから、さっきは本当に助かったよ」
エリーミンは苦笑する。
……私は、なんだか妙な長話を聞かされたな……という徒労感を味わっていた。意外な話ではあったけども。でも、エリーミンくらいの傑物ならこのくらいぶっ飛んだ過去があるのは何も不思議なことじゃないし。
エロが弱点っていうことはその前段階で分かっていたことだから、特に私に利のある新情報はなかったしな……。
いや、自分のプライベートな過去を語ってくれるくらい心を開いてくれたと考えればプラスな流れではあるのか。単に理解がありそうな味方に事情を共有したかっただけかもしれないけれど……。
「しかし、どうして私に話を合わせてくれたんだ? いや、あの一瞬で私の拒絶に何かしらの理由があると察したのも謎だが……」
「別に特段の理由があるわけじゃないけど」
前世で貴方のデザインをしていたから、ある程度の情報は知っているんですよ。
貴方をこれからも利用したいから、その弱みを他人に見せたくないんですよ。
……どちらも正直に言う訳にはいかないな。
「……
言外に、トレイル系
これなら実際に嘘ではない。トレイル系とかいうアディの教育に悪すぎる
だから、理由は違えどトレイル系
「それに、そういう事情を他人に話すのだって、嫌なものでしょう?」
そう言って微笑むと、エリーミンも釣られて苦笑した。
「……参ったな。こいつは随分な貸しを作ってしまったらしい」
「頼りにしているわよ、エリーさん」
良し! 言質取った!! これで一回なら最強の冒険者を好きに使える。
心の中でガッツポーズをしている私をよそに、エリーミンは密室を作っていた魔法を解除して、倉庫の扉を開ける。
……そういえば今気付いたけど、この状況でエリーミンが『過去を打ち明ける』じゃなくて『己の過去を察した者の口を封じる』という選択をとってたら、私はひとたまりもなかったな。エリーミンがそういうことをする人間じゃないことは分かってるけど……。
心の中でちょっと迂闊さを反省している私に、エリーミンは部屋を出ながらこう付け加えた。
「ああ、