【完結】女転生者ですが、親友(♀)がエロゲの主人公と発覚したので死ぬ気で貞操を守ります。# シスターアディと淫魔の恩寵_Append   作:家葉 テイク

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第三一話 加護と恩寵の間に揺蕩う

「エヴァはこの後、どうするんです?」

 

 

 トレイルソン本部長が中堅探索者と共にギルド本部を後にするのを見送った後。

 私・アディ・エリーミン・マグノリアが残ったテーブルで、アディがそんなことを問いかけて来た。まぁようやく合流できた訳だし、アディとしては私と一緒にいたいと思うよね。何せ昨日の今日だし。

 ……でもなぁ、この状況でトレイルソン本部長の後を追って堕落第一神殿に行くって行ったら、絶対にアディもついて行くって言うよなぁ……。アディはそういうことを言う子だ。私ばっかりが危険な場所に行くことを良しとしないというか。

 そして、実際にアディのその判断自体は合理的でもあるのが厄介なところ。アディは戦闘慣れしていないけれど、私の指示通りに『ラゲル・デザード』を撃つ固定砲台として運用すれば、魔法・魔物両面に対策を取れるからね。

 ただし前にも言った通り、私はたとえ国が滅ぼうとアディをトレイル系の埋蔵神殿(ダンジョン)に行かせるつもりはない

 なので此処は──

 

 

「警邏騎士の詰所に行くわ。今朝、マグノリアを借りて色々やってたからね。その報告書を書かないといけないの」

 

 

 と、しれっと真っ赤な嘘を吐いておく。

 横でマグノリアが『こいつ……』という目で見ているのが伝わってくるが、さっき肘鉄を入れたので今度は余計なことは言わないらしい。

 アディはちょっと視線を横にずらしてから一瞬だけ眉をひそめて、

 

 

「……分かったです。わたしもエリーさんにまだまだ色々と教わらないといけないですし……いってらっしゃい、エヴァ」

 

「ええ。いってくるわね。……エリーさん、アディのことよろしくお願いします」

 

「ああ、任された」

 

 

 去り際にエリーミンに声をかけてから、私はマグノリアと共にギルド本部を後にする。

 ギルド本部を出た私は、()()()()()()()()()()()()()()()

 

 

「……おい、堕落第一神殿に行くんじゃないのか?」

 

 

 迷いなく警邏騎士の詰所に進む私の隣に追いついて、マグノリアが問いかけてくる。

 確かに、当初の予定ではそうだったよね。堕落第一神殿に向かって手配書の依頼主とトレイルソン本部長が潰し合うのをきちんと確認する。それが当初の私の方針だった。

 ただ……、

 

 

「アディの様子がおかしかったからね」

 

 

 前を見て歩きながら、私はそう答えた。マグノリアが反射的に振り返ろうとしたので、私は速攻で裏拳をマグノリアの太腿(板金ではなく革なので打撃が通る)に叩き込む。

 

 

「振り返らないで。アディがいたらバレるでしょ」

 

「……ッス」

 

 

 迂闊な奴め……。

 まぁ、説明はしてやろう。アディのことを知り尽くしている私だからこそ分かったアディの微細な変化を。そしてお前にアディとの間に入り込める隙などないことを思い知れ。

 

 

「アディ、さっき私の説明に納得するときに若干間があったでしょ。あれ、多分何か納得がいっていないけれど、それを隠そうとしたのよ」

 

「…………? そうなのか?」

 

 

 全く……ちゃんと見ろよ。私の言葉を聞いてから一瞬視線を横にズラしていただろうが。

 これはマグノリアには言わないが、アディは『淫魔の恩寵』の副次効果で自称大淫魔・レイラから接触を受けることがある。『あまちょ』でも何回かあったからな。アイツは腹黒だから、このタイミングで『アイツの言ってること、なんか怪しいなぁ~』とか言ってアディのことを惑わせる可能性は大いにある。

 

 ただでさえ、昨日の一件で私はアディの信頼を若干削っているからね。『また自分に黙って何か危険なことをしているのかもしれない』とか思っているかもしれない。

 

 

「そうなの。だから一旦本当に詰所に行って、アディの疑念を煙に巻く。堕落第一神殿に行くのはそれからよ」

 

「まぁそれならそれで良いがよ……。だが、詰所に寄ったらかなり時間ロスだぜ? 同じ北区内だが埋蔵神殿(ダンジョン)群の方とは真逆だし、本部長達には追い付けねえんじゃねえか?」

 

「あー、そこについては大丈夫」

 

 

 私はあっさりと答える。

 そんな初歩的な問題、対策していない訳がないだろう。この私が。

 

 

「貴方も知っている『アレ』があれば、距離の問題は簡単に解決できるわ」

 

 

 ()()()()()()で、大幅ショートカットと行こうじゃないか。

 

 

 


 

 

STAGE_03 / ボス戦は××の底から

[in マニカナ教区 北区]

 

第三一話 加護と恩寵の間に揺蕩う

 

 


 

 

 

「うおおォォあああああああああああああああああああああああッッ!?!?!?」

 

 

 それから一〇分弱あと。

 私とマグノリアは、上空一〇〇メートルを飛行していた。

 

 

「叫ばない! 上空とはいえ街の人に気付かれたら厄介よ!」

 

「いやおかしいだろ! 何でこんな──」

 

「無駄口叩かない! はい次!」

 

「チクショウクソッタレ()()()()()()()!!!!」

 

 

 叫ぶと共に、私とマグノリアは瞬時にその場から()()──()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 『移動結晶』は埋蔵神殿(ダンジョン)から脱出したり、前以て場所を決めておくことで限りなく隠密した待ち伏せをしたりできるけれど──昨日私がやったみたいに、直近の『移動結晶』目掛け転移することだって当然できる。

 『移動結晶』が大量に手元にある場合なんかは、さらにそれを繰り返すことで高速移動もできるのだ。

 さらに、『移動結晶』による移動時には発動中の『クアゲル』は位置関係含めて固定された状態で移動が行われるので、たとえば『「クアゲル」を斜め上一五メートル先まで伸ばし、その先に「移動結晶」を保持した状態で転移する』という行動を取ると、『クアゲル』を斜め上一五メートル先まで伸ばした状態で斜め上一五メートル先に瞬間移動できる。

 あとはそれを何度も繰り返せば、空を『移動結晶』で高速移動できるという訳だ。

 

 ──ちなみに、『堕落の気まぐれ』とは『地球』風に言うと『オーマイゴッド』である。

 

 

「確かにすげえけどよ……! でもこれ大丈夫か? アディちゃんはこっちの手の内を知ってるんだから、こんな便利な移動方法真っ先に警戒しねえかよ?」

 

 

 移動しながら、マグノリアが懸念を表明する。

 次、転移。

 

 ──まぁ、私がこの移動方法をアディの前で何度もやっていればその通りかもしれないけれど。

 

 私はちらりと眼下に視線を向ける。

 ……あぁ、やっぱり。エリーミンとアディがギルドと詰所の間の道を歩いている。私の勘は正しかったらしい。──ただし、アディはこちらを見てはいない。

 

 

「大丈夫よ。この移動方法、今初めて使ったから。アディもまさかこんな方法で移動するとは思わないでしょ」

 

 

 いや、さっき思いついたんだけれど、意外と便利だ。

 『移動結晶』は埋蔵神殿(ダンジョン)の中に入れば無限に作り出せるんだから、これは今後も多用していこう。位置を瞬間的に変えられるのは戦略の幅をめちゃくちゃ広げるし。

 

 内心でちょっと悦に浸っていると、マグノリアは私のことを信じられないものでも見るような目で見て、

 

 

「ぶっつけ本番で上空一〇〇メートルを空中散歩させられてんのか俺は!?」

 

「平気平気。私ぶっつけ本番で失敗したことないし」

 

「この女、何でも計画通りみたいな顔しておいて、さては意外とアドリブまみれだな……?」

 

 

 人聞きの悪い男だな……。

 ちゃんと(その場で)計画した通りに事を運んでいるでしょうに。

 

 そこで私は一旦会話を打ち切って、再度視線を下に向ける。

 

 

「無駄話は終わり。目的地が見えて来たわ!」

 

 

 そこに見えるのは、昨日イーガシア森林で見たような遺跡の断片、

 

 ……ではなく。

 あの埋もれた神殿の断片そのものが時を巻き戻されたような、()()()()()()()()()()だった。

 

 

 ──マニカナ教区北部・古代遺跡群地帯。

 

 その遺跡の街並みの中に見覚えのある壮年の男の一団を認めて、私は言う。

 

 

「さぁ。留守の城を、攻めるわよ」

 

 

 


 

 

 

「なぁ、アディちゃん。やっぱり詰所に行ったし気にしなくていいんじゃないか? 確かに昨日は大変だったとは思うが、アレはエヴァちゃんだって非常事態で──」

 

「そうじゃないんです」

 

 

 エリーさんは、本当に凄かった。

 わたしがエヴァの後を尾行したいと無理を言ったら、ズブの素人であるわたしを連れているのにあのエヴァに気付かれず尾行を遂行してくれた。

 ただ、エヴァは頭が良いから、わたしがエヴァの言っていることを疑っていることだってもうとっくに分かっているかもしれない。もしもそうだったら、エヴァならなんとかしてわたしのことも誤魔化しちゃうだろう。

 

 

「昨日、埋蔵神殿(ダンジョン)でエリーさんは『周囲に魔物や人の気配はない』って言ってましたけど、()()()()()()()()()()? お願いです。あれを使って詰所の中のエヴァとワイドさんを探知してもらえませんか」

 

「……あのな、アディちゃん。そいつは一線を越えてるぞ。まぁ尾行も大分そうなんだが、要は仲間の発言を疑って魔法まで使うってことだ。エヴァちゃんに知れてみろ。いくら幼馴染だってな……」

 

()()()()()()()()()()()()()()()

 

 

 真剣な表情で言ったら、エリーさんは口を噤んだ。

 ……あまり、この話はしたくないんだけど……でも、エリーさんにはしょうがないよね。エヴァの為にも、エリーさんにはこの件で協力してほしいし。

 

 

『あらぁ、言っちゃうのぉ?』

 

 

 ……そこで、横合いから楽し気な声が聞こえて来た。

 視線だけを向けると、そこには体の正中線にあたる部分がごっそり削られたワンピース水着のような、とにかくとんでもなくえっちな黒い衣装に身を包んだ女性が。

 わたしのそれよりも暗くて鮮やかな桃色の長髪の隙間から黒い羊のような角を覗かせたその女性は──レイラさんはその黄金色の瞳をゆっくりと細めて、

 

 

『今まで誰にも言っていなかったんでしょう? 昨日知り合ったばかりの探索者なんかに教えちゃって……本当に良いのかしらぁ?』

 

 

 ……迷いを誘うようなその言葉を無視して、わたしは左目を抑えた。

 私の一言で事態の異常さを察してくれたんだと思う。エリーさんは怖い顔をしながら、わたしのことをじっと見ている。

 

 

「……エヴァちゃんの命が? ちゃんと説明してくれ」

 

「──あ、周りに人が」

 

「『トルセグ』。……私達の周辺にうっすら風の壁を展開した。盗み聞きをされる心配はなくなったな」

 

 

 ……す、すごいな、この人……。

 うん、でもこれで心置きなく話せる。

 

 わたしは頷いて、

 

 

「わたしの左目。……フィルマト様の加護を受けていて。未来が──未来における『安寧の崩壊』……平たく言うと、すごく危険なことが起きた場合の未来が見えるんです」

 

 

 今も、こうやって左目を瞑って手で抑えると、そのヴィジョンが見える。

 考えうる限りで、最悪の未来が。

 

 わたしはそのヴィジョンを振り払うように目を開けて、横でじっと私の顔を見つめるエリーさんの視線を見据える。

 

 

「……疑ったりしないんですね」

 

「アディちゃんのことを信頼しているからな。それに、嘘っぱちだと思うにはアディちゃんの行動に迷いがなさすぎる」

 

 

 ……わたしの言うことを信じてくれるのは、本当に助かる。

 こんな荒唐無稽なことを証拠もなしに信じてくれるのは、エリーさんの他にはエヴァくらいのものだったから。

 

 緊張で乾いた唇を舌で湿らせてから、

 

 

「──『予知』は、ある未来を示しています。明日か、明後日か。長くとも数日中の近い未来に、埋蔵神殿(ダンジョン)内で巨大なドラゴンが現れて」

 

 

 わたしは、その最悪の未来を口にする。

 

 

「………………そのドラゴンとの戦いで、エヴァが、命を落とします」

 

 

 絶対に認めてはならない、未来を。




 オラァ! 死亡フラグ(予知)!
 だからアディは、エヴァが単独行動しようとすると嫌がってたんですねぇ。

   ◆ ◆ ◆

■あまちょ用語解説
 堕落の気まぐれ
 慣用句。意味は『オーマイゴッド』『クソったれ』『チクショウ』。
 下品な言葉遣いなので、あまり言わないようにしましょう。
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