【完結】女転生者ですが、親友(♀)がエロゲの主人公と発覚したので死ぬ気で貞操を守ります。# シスターアディと淫魔の恩寵_Append   作:家葉 テイク

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第三二話 死してなお、焦がれ

 私とマグノリアは古代神殿群のうちの一つ、とある神殿の屋上に降り立った。

 『移動結晶』による移動時には直前までの慣性はリセットされるので、物音の類は発生しない。本当に便利な特性だ。

 

 『クアゲル』を手元に引き戻して、神殿の屋上から慎重に地上の様子を伺うと──そこでは、トレイルソン本部長と中堅探索者が立ち止まっていた。

 堕落第一神殿はその先にある。止まる理由は本来ならないが──彼らが動きを止めていた理由はすぐに分かった。

 彼らの目の前に、赤髪を刈り上げ、側頭部に剃り込みを入れたチンピラ然とした男がポーチに手を突っ込んだ姿勢で構えていたからだ。

 

 ……コイツは……確か、レルオーティエの情報にあった『地下(ヤミ)探索者の依頼仲介をしていた男』だ。

 堕落第一神殿に逃げ込まずに此処で立ち止まったということは……一旦此処で処理をしたいと考えている、といったところか。

 

 

「おい、どうする。助けに行くか?」

 

 

 と、そこで横にいるマグノリアが少し焦ったように言った。……こいつ本来の目的を忘れたのか?

 

 

「何言ってんの。放置に決まってるでしょ」

 

「いや……お前さっき、『敵は埋蔵神殿(ダンジョン)に逃げ込もうとしている』とか『逃げるってことは大して戦力がない』とか言ってたじゃん。埋蔵神殿(ダンジョン)前で待ち伏せしてるってことは、お前の読みが外れたってことだろ? だったら助けに行かねえと負けるんじゃねえか? 本部長達」

 

 

 あー……。そういうことね。

 でも、戦局がブレそうだからといって下手に手を突っ込むのは火傷のもとだからな。

 

 

「忘れたの? 勝った方を潰すんでしょ。どうせどっちも私達の敵だから」

 

「いや、本部長……」

 

「言ってなかったけど、『アディに「淫魔の恩寵」を付与した黒幕』の手下だから。あのクソジジイ」

 

 

 口。──指差すと、マグノリアは叫ぶ寸前のところで口を押えた。

 それでよし。

 

 

「…………マジで???」

 

「大マジよ。ギルドのチンピラ連中の被害が多かったのも、あれはヤツが手駒を使って仲介の男を襲って、返り討ちにされてるからでしょ」

 

 

 マグノリアは私の説明に、流石に納得したらしかった。

 しかし少し黙った後、

 

 

「……なんで教えてくれなかったんだ? 教えるタイミング、あったよな」

 

「ギルドに行く前に教えたら、貴方絶対に顔に出るでしょうが」

 

「………………一理ある」

 

 

 自覚があるようで何より。まぁ、こんな重大情報を顔に出さないでいられる人間というのがそもそも少ないという話もあるのだけれど……。

 

 それに、そもそものところとして。

 マグノリアの洞察は()()()()()()()()。何故なら──

 

 

「あと、一応言っておくけど……あれ、応戦の構えじゃないわよ」

 

 

 まず第一に、向かい合っている割に仲介の男の腰は引けている。あれは腹を括って戦おうというタイプの人間のする構えじゃない。むしろ──隙を伺って逃げようと考えている者の動きだ。

 それに、表情に余裕がない。あれは罠にハメて圧倒的優位に立っている人間の表情じゃないだろう。私も腹芸の経験は積んでいるので、自分の思い通りに状況が進んでいる人間特有のムカつく表情はすぐに分かる。

 最後に──

 

 

「アイツ、ポーチに手を突っ込んでいるでしょ。レルオーティエの情報だと、アイツは魔書持ち。なら、本格的に戦闘態勢に入っているなら手は本を構えていないとおかしい。あれ、多分何かしらの魔具を出すつもりよ。魔具で時間稼ぎしている間に逃げるつもりなんじゃない?」

 

「なんでそんなことが──」

 

 

 私の適当な分析にマグノリアが言い返そうとした瞬間、仲介の男が、ポーチから()()を引きずり出した。

 そして。

 

 

 ズルゥ!!!! と。

 

 

 ──()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 

 


 

 

STAGE_03 / ボス戦は××の底から

[in マニカナ教区 古代神殿群]

 

第三二話 死してなお、焦がれ

 

 


 

 

 

「何あれ……魔物……!?」

 

 

 言いながら、『それはない』と考える。

 探索者達のよく使う拡張旅袋(エキスパック)は見た目以上の質量を収納することができ、その際の重みも感じさせないという優れものではあるけれど──生物を収納することはできないという制約がある。

 そして、魔物は地上の生態系とは異なる特徴を持ってはいるけれど、確かに生物ではあるのだ。つまり、拡張旅袋(エキスパック)に魔物を収納することは不可能。

 でも、だとするとアレは……死体を模したゴーレムとか? いや……。

 

 

「……わお、屍骸魔具(アンデッド)かよ。マジで言う通りじゃねえか」

 

 

 と、混乱する私の横で、マグノリアがうんざりした様子で言った。

 …………アンデッド?

 

 いや、意味は分かる。不死者だろう。『日本』ではありふれたモンスターだったし、今思い出したけど『あまちょ』でも登場していた気がする。今生に入ってからは、聞いたことも見たこともなかったけれど……。

 

 

「あん? 知らねえのか。意外だな。お前なら知ってるもんだと思っていたがよ」

 

「何となくニュアンスは分かるけど……何なの? アンデッドって」

 

「ああ……。簡単だよ。屍骸魔具(アンデッド)はな、()()()()()()()()()()()

 

 

 …………あ。

 

 そうか!!!! いや、何故今まで気づかなかった!?

 

 

 ──埋蔵神殿(ダンジョン)において、生物は魔性化すれば魔物になり、無生物は魔性化すれば魔具になる。

 

 生物の場合は内包している魔力の関係で著しく魔性化に抵抗が発生し、緩やかに、従来の生態に寄り添う形で魔性化が進行していく。

 その結果が()()()()()()()()()()()()()()だったり、()()()()()()()()()()()()()()()だったりするのだ。

 

 しかし一方で──()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()。条件に合致しさえすれば、簡単に、瞬時に魔具に変貌するのだ。──あんな風に、魔性化前の容貌(死んだ時の姿)を留めながら。

 

 

「自立型の魔具って言えばいいのか? あんな風に、勝手に動き回って目視した()()()()をやたらめったらに襲うんだよ。なのに自分たち同士は襲い合わねえと来た。面倒な連中だ」

 

「……魔具となって動く死んだ骸──屍骸魔具(アンデッド)ね。最悪だわ」

 

「全くだ。ある種の埋蔵神殿(ダンジョン)で死んだ探索者が偶にああやって屍骸魔具(アンデッド)になって這い出てくるからよお……マニカナ教区古代神殿群の風物詩だ。警邏騎士の俺はもう慣れちまったぜ。ありゃマシな方だ」

 

 

 それはご愁傷様だ。

 ……しかし、なるほど。屍骸魔具(アンデッド)はマグノリアを始めとした警邏騎士が片付けていて、一般人(探索者含む)の眼に触れないようになっていたのか。

 そりゃそうだな。『埋蔵神殿(ダンジョン)で死んだ人間は女神様の御許に旅立ったのだ』なんて信仰を持っている社会で、実は埋蔵神殿(ダンジョン)内で死んだ人間はゾンビになってるかもですよー……だなんて、探索者業とその周辺産業で成り立っているマニカナ教区にとっては最悪すぎる情報だ。

 

 …………ところで、司祭長である私にすら秘匿されていたってことは、これ多分ギルド本部側が都合が悪い情報を教会に伏せてたってことだな?

 多分、教会に知られたら治安維持の名目で神殿群の利用が制限されるから、報告を止めてたってところだろう。……あのクソ本部長め。

 

 そしてしれっとバラしちゃったマグノリアから察するに、警邏騎士もトレイルソン本部長の虚偽報告に惑わされている側だろう。まぁ、あの狸ジジイはどのみち今日中に始末をつけるので良しとしておくか。それに、私もマニカナ教区の探索者業収益が落ちるのは困るし。

 

 マニカナ教区の風物詩ということは、おそらくこの古代神殿群のどこかから繋がった埋蔵神殿(ダンジョン)特有の魔性化ってことのはず。ならば、すぐには露呈もするまい。

 

 

「……あ。あの野郎、……マジで逃げやがるのか」

 

 

 そうこうしているうちに、地上で動きがあった。

 仲介の男が、ゾンビを盾にしている間に奥の方──堕落第一神殿の方へ向かっているのだ。

 やはり私の読み通り。屍骸魔具(アンデッド)の存在は想定外だったけれど──ヤツは魔具を目くらましにして、その間に堕落第一神殿に逃げ込む腹積もりのようだ。

 ……うーむ、しかしこのままだと、かなり余裕を持って逃げられてしまうな。堕落第一神殿は、元々の仲介の男の目的地……あそこでヤツに時間を与えるのは、ちょっと避けたい。

 

 …………。

 

 よし、作戦変更。

 

 

「マグノリア。ちょっと下降りるわよ」

 

「は!? 留守の城攻めはどうした!?」

 

「方針としては継続。ただし──」

 

 

 私は眼下に広がる戦況を眺めながら、こう付け加えた。

 

 

「横槍を入れます」




■あまちょ用語解説
 屍骸魔具(アンデッド)
 ゲーム上では一部ステージで登場するレアなエネミーの一種だった。図書館にて魔具の一種であることが示唆されているが、そこまでゲームを細かくやっていた人は少数派だろう。
 この世界では表向きアンデッドは存在しないものとされており、存在を知るのはギルド上層部と警邏騎士のみ。
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