【完結】女転生者ですが、親友(♀)がエロゲの主人公と発覚したので死ぬ気で貞操を守ります。# シスターアディと淫魔の恩寵_Append 作:家葉 テイク
「だが、どうすんだ!? 横槍入れるっつってもよ……流石に本部長達に俺達が介入してることを勘づかせるのはマズイだろ!」
天井から階下に続く階段を下りながら、マグノリアは声を殺して問いかけてくる。
余裕はなさげだけれど、実際マグノリアの懸念は的を射ていた。私達がこの場で姿を現してしまえば、当然向こうは『どうして此処にアイツらが?』と思う。もちろんその場で誤魔化すことも可能だけれど、ただでさえ葬る予定の敵に余計な疑念は与えたくない。とすると──
「
マグノリアに語り掛け、私は『クアゲル』を操って水塊を移動させる。地を這い、ゾンビどもの足元に這い寄る水は──水が透明であることも相まって、トレイルソン本部長達には視認しづらい。
というか、トレイルソン本部長達は狭い通路の中でゾンビどもの両腕による攻撃を警戒しないといけないので、とても足元まで気を配っていられないのだ。
ただし、ゾンビどもは違う。
ゾンビの
結論は、YESだった。
トレイルソン本部長に向かって攻撃行動を取っていた三体のゾンビ達は、足元を水塊が
そして、ただでさえ狭い遺跡の通路でその行動の乱れは致命的だった。
互いが互いともつれ合い、明らかに隙が生まれる。そして、トレイルソン本部長も三人の中堅探索者も、その隙を見逃すほど場馴れしていないはずもなく。
声すらなく、四人は連携の乱れたゾンビの群れを突っ切って堕落第一神殿の方へと走って行った。
『クアゲル』は間一髪水塊を通路脇にズラすことに成功しており、水音で何者かの介入を疑われる心配もこれでないだろう。トレイルソン本部長達からしたら、呼び出されたゾンビが狭い通路ゆえにもつれあって隙が生まれた、という通常ありえる範疇の幸運にしか見えない。
ただ、問題は──
「で、次はあのゾンビをどう処理するかなんだけども。流石に放置したら、緊急時に入り口で出待ちされるとかありそうだから嫌だし」
「何も考えてなかったのかよ!?」
トレイルソン本部長達が
人聞きが悪いな。何も考えていなかったのではない。
「考える必要がないでしょ。警邏騎士としてゾンビを退治した経験のある貴方がいるんだから、退治はお任せします」
「ぐう……。そうやって頼られると、男としては無碍にできねえ……!!」
問題は、マグノリアが私の想定より使えなかったら、私が頑張ってゾンビを始末しなくちゃならなくなるというところか。マグノリアはまだ何か言いたげだったが、私がヨイショしてやると苦虫を嚙み潰したような顔で黙った。男はこういう話に持っていけば勝手に逃げ道を断ってくれるので助かる。女でよかったね、私は。
そんな感じで私が内心ほくそ笑んでいる横で、マグノリアはポーチから一本の槍を取り出す。
……まぁ、今まさにその脅威を『
「警邏騎士は、剣・槍・斧・弓・盾、五種類の武具を保持することができてな」
へー。
そうなんだ。確かに
「それぞれに、チンケなもんではあるが、魔具が仕込まれている。各人の適正や好みによって、ある程度カスタムできるんだが、俺の場合は──」
そこまで言うと、マグノリアは槍を短く構えたまま遺跡街の通路に飛び出して、ゾンビの一体に素早く槍を突き立てた。
当然、通常であればそんなものでは
ボウッ!! と。
突如、マグノリアが槍を突き立てたその箇所から火の手があがる。死後長い間経過しているのか、水気の失われた死体は見る間に炎に包まれていく。
そして数秒も経たないうちに、魔具として成立する最低条件でも失ったのか、ぴくりとも動かなくなってしまった。
「『発火』。攻撃した対象を燃やすことができるわけだ。こういう死体みたいなのなら一発だし、魔物でも炎で怯ませたり、火傷を負わせることもできるから便利だぜ」
「おおー、すごいわ」
いや、本当に便利なものだ。攻撃にプラスして炎の攻撃とか、衣服を纏う人間なら大ダメージ不可避だし、魔物でも毛皮がある生き物なら一定のダメージは与えられる。
素直に拍手して称えると、マグノリアは気持ち胸を張りながら、
「一応、これでも『地上』の治安維持が管轄の警邏騎士なんでな。分かりやすく脅威を感じられるような魔具のビルドになってるって訳だ。お前もこれでちったあ……」
「私がその気になればすぐに消し止められるってところも含めて、とても便利だわ」
「…………マジで、悉くお前は俺の天敵になりやがるな……」
はっはっは。
私としては、マグノリアみたいなタイプに戦闘で優位を取られると非常に面倒なのでこのくらい相性有利があると安心して利用できるから助かるぞ。
──その後は、流れ作業だ。
私が『クアゲル』を足元で動かすことでゾンビの動きを乱し、マグノリアがコンパクトに握った火の槍でゾンビを火葬する。
ものの数分もする頃には、魔性化して現世を彷徨っていた哀れな死者達は女神の御許へと旅立っていた。
私はさっさと意識を堕落第一神殿に向けて、マグノリアに言う。
「さ、行くわよ。早くしないと向こうで状況が進展しちゃうわ」
焼け焦げた死体を無視して進んでいく私にドン引きしているらしいマグノリアの反応を無視しつつ、私は堕落第一神殿への『ゲート』がある区画へと、足を速めた。
風化しつつある石造りの街並みは、奥へと進むごとに真夜中の墓地のただ中にいるようなプレッシャーが深まっているようだった。
そして──。
そこは、世界の終りのような情景だった。
天蓋は崩壊し、上層からは空色の瓦礫が降り注ぐ。川の只中にある湿地は燃えて枯れ果て、白々しい灰混じりの大地がまるで皮を裂いて出て来た肉のように顔を覗かせていた。
地には巨大な漆黒のドラゴンが倒れ伏しており、大きく目を見開き、口から冷気を白いモヤとして垂れ流しながら事切れている。
その、喉元。大きく切り開かれた龍の喉から引きずり出されていたのは、漆黒の髪を赤黒い体液で染めた一人の女だった。
音もないのに、誰かが泣き叫ぶ声が聞こえたような気がした。
漆黒の長髪を振り乱したその女は、身体の半分が凍りついたまま息絶えていた。おそらく、ドラゴンに食われたあと、体内で魔法を使ったのだ。その余波で自分が命を落とすのも構わずに。
修道服を身に纏った女の暗紫の瞳が何かを映すことは、もうない。虚ろな眼は、何も映さない。
──此処に、『規律』の加護を授かったとある女の安寧は永久に失われた。
「……という、感じで……」
口で説明するのも、正直苦しかった。エヴァが死ぬ光景の説明なんかは、言葉を濁したのにそれでも喉が詰まるかと思った。
でも、必要な説明だった。エリーさんはわたしの協力者だ。予知の詳しい状況を説明するのは、前提条件ですらある。
「なるほど。……説明から察するに、ヴィーン系の
その甲斐あってか、エリーさんの態度は大分柔らかくなった。というより、わたしに対して目に見えて協力的になってくれたというか。
「……しかし辛い加護だな。私は君を尊敬するよ、アディちゃん」
「そんなっ。このくらい、何でもないです」
優しく言うエリーさんに、私は手を振って否定した。
このくらい、本当になんてことない。
「でも、解せないな。なんでこの話をエヴァちゃんにしない? エヴァちゃんなら、最悪の事態を教えればそれを計算に入れて行動してくれるだろうから、未来も簡単に変わると思うが」
エリーさんは話を切り替えるようにして首を傾げる。
……うん。そう思うよね。確かに、エヴァはとっても頭がいいし、先の物事を見通すのも得意。ただ……長くエヴァと一緒にいるわたしにだからこそ、分かることもある。
「……教えて、未来が良くなったらそれでいいんですけど」
物事は、そう単純じゃない。
わたしが行動した結果、未来がより悪い方向に進んでしまったことも……今までにはあった。その時は、エヴァにもっと慎重に動きなさいって叱られたっけ。
そして、最大の問題はその次にある。
「わたしがエヴァに未来を教えたことで、最悪の未来が回避できるかもしれない。でも、最悪の未来が回避できないかもしれないし……エヴァの代わりに大勢の人が死ぬ未来になるかもしれません」
「……でも、そこからさらに改善していけば……」
「一番の問題は、
エリーさんの言葉が、止まった。
そう。そこが、わたしの一番気にしているところ。
エヴァは賢くて優しいけれど……それだけに、優しすぎるところがある。私が予知した最悪の未来にしたってそうだ。きっとエヴァは、わたしの『淫魔の恩寵』を解除する為に必死になって色々考えてくれている。
その中でドラゴンとぶつかってしまって……わたしのせいで、ドラゴンと戦って死んでしまうことになるんだ。
「『予知』の加護は、わたしが直接関与しない限り結果を変えられません。つまり、エヴァがわたしを安全な場所に隔離した段階で、未来は変えられなくなってしまうんです」
わたしが関わらないと未来は変えられないのに、エヴァに未来を教えたらわたしは未来に関われなくなってしまう。
これが、わたしがエヴァに未来を教えられない理由だった。……まぁ、そうは言ってもわたし一人ではどうしようもなかったんだけど。そういう意味では、エリーさんがいてくれて助かった。
エリーさんほどの人がいれば、ドラゴンを倒す道筋ができる。正直言って、わたしはエリーさんを味方につけることができて安心していた。
「承知した。そういうことならば、アディちゃんの方に理があるな。私でもエヴァちゃんに未来を教えるのは危険だと思う。それは最終手段にしておこうか」
でも。
エリーさんは、既に先のことを見据えていた。
「なら、此処から先は私の流儀でやらせてもらうが……早速、急ぐぞ。
…………?
「え、待ってください。確かに明日にも起きるかもしれませんけど、今日……? それはないですよ。だってさっき、エヴァの服は探索者さんのそれだったじゃないですか。『予知』のエヴァは、修道服を着てました。一旦戻って着替えでもしない限り──」
「──まぁ、そうなんだが」
エリーさんは頬を掻きながら、どこか呆れすら滲ませて言う。
「昨日の一件を思い出して、気付いたんだ。
「あの、どういう……?」
エリーさんはどこか勿体ぶった調子というか、戦慄した様子になっていた。
何に気付いたのか分からないけど、エリーさんの中ではエヴァの予知での服装と昨日の一件が繋がっているってことなんだろうか……?
周回遅れの私を優しく引っ張り上げるように、エリーさんは結論を教えてくれた。
「──
……………………。
……
さて、エヴァはどんな
分かったら凄いです。