【完結】女転生者ですが、親友(♀)がエロゲの主人公と発覚したので死ぬ気で貞操を守ります。# シスターアディと淫魔の恩寵_Append   作:家葉 テイク

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第三四話 未来は収束していく

 堕落第一神殿──。

 そこは埋蔵神殿(ダンジョン)群に七つあるトレイル系埋蔵神殿(ダンジョン)の中で最も早く発見された、歴史ある埋蔵神殿(ダンジョン)だ。

 

 一説には、マニカナ教区の古代神殿群にある埋蔵神殿(ダンジョン)の『ゲート』の数は、全部で一〇〇以上と言われている。

 その一つ一つに名前をつけていられないので、基本的に、埋蔵神殿(ダンジョン)は最も影響を受けている女神の権能と番号をつけた名称でよばれることになっている。

 今回入る『堕落第一神殿』は、トレイル系埋蔵神殿(ダンジョン)で一番最初に発見された埋蔵神殿(ダンジョン)なので『堕落第一神殿』、といった具合だ。

 

 こういった呼び方の埋蔵神殿(ダンジョン)を『未踏神殿(ナンバー)』と呼ぶ。しかし未踏神殿(ダンジョン)の名称ではやはり分かりづらいのか、埋蔵神殿(ダンジョン)内での新発見などで明確に他と差別化されると、差別化に足る特徴を発見した探索者によって名称がつけられることがある。

 そうした埋蔵神殿(ダンジョン)は『踏破神殿(ネームド)』と呼ばれて区別され、『踏破神殿(ネームド)』を()()することは探索者にとってはかなりの栄誉……ということらしい。私は知らんけど。

 

 ちなみにこれは余談になるけれど、エリーミンは既に五つの踏破神殿(ネームド)を命名している。

 マニカナ教区の全体の二%弱の埋蔵神殿(ダンジョン)を命名している訳なので、めちゃくちゃな偉業である。あの人本当にすごいね。

 

 

「……うっへぇ、気が滅入るところだぜ。埋蔵神殿(ダンジョン)ってどこもこうなのか?」

 

 

 ぐるりと通路の中を見渡してから、マグノリアが口をへの字にして呻く。

 無理もない。何せ辺りは()()()()()()()()()()()()になっているのだから。踏み込んだ地面はねちゃりと弾力のある泥のような感触。広さは地下鉄のホームくらいあるので圧迫感はそれほどでもないけれど、壁も天井もピンク色の肉だし、何か表面をてらてらと光る粘液が垂れている。

 そもそも、太陽もなく照明の類もないのに全然前方を見通すことができる明るさが確保されているのも謎だった。

 ……埋蔵神殿(ダンジョン)のディティールに対して疑問を抱いていたらキリがないのは分かっているけれどね。何せ神々の城と現世の位相の歪みである。むしろ、呼吸できる空気があるだけ感謝すべきなのかもしれない。

 

 もっとも、此処では呼吸もしたくはない……かな。

 トレイル系埋蔵神殿(ダンジョン)への嫌悪感という意味ではなく。

 純粋に──臭いのだ。

 

 

「なんだこの臭い。肉が腐ったみてえな、ひっでえ臭いだ。真夏の殺人現場か?」

 

「私もトレイル系の埋蔵神殿(ダンジョン)は何度か入っているけれど、此処までの悪臭は初めてね……」

 

 

 手で口元と鼻を抑えながら、私とマグノリアは埋蔵神殿(ダンジョン)の先へと進んでいく。

 細長い肉の道は、まるで巨大な生物の体内のようだった。こうして歩いていると、まるで自分が何か巨大な生物に呑み込まれたような不安を感じる。

 

 かと思えば、たまに壁に入っている亀裂(何故かその周辺だけピンク色のまま硬質な質感になっているから不思議だ)を覗き込むと、その向こうには星のような煌めきが点々とあるばかりの、宇宙のような広大な闇が広がっていた。

 ……外側がどうなっているのか無性に気になったけれど、流石にこの亀裂に何かを突っ込んだりするような度胸は私にはなかった。こちとら、『恐怖の』ヴィーンティオには生まれる前から誘われ済みである。

 

 

「うわっ、気をつけろよ。こっちの床、勝手に沈み込んだぞ」

 

「最悪すぎる攻略情報だわ……」

 

 

 トレイル系埋蔵神殿(ダンジョン)、こういうところがあるから嫌なんだよな……。

 しかもそれだけでなく──

 

 

「っ!」

 

 

 私が踏みしめた床がカチリと音を立てた瞬間、ブシャア!! と頭上から謎の液体が私の頭に降り注いできた。

 躱す間もなかった。おそらく、このタイミングではあのエリーミンだって液体を回避することはできないだろう。

 ──そして。

 

 

「……あーあーあー」

 

 

 謎の液体を浴びた私の服は、火をつけた紙のように溶けていた。剥ぎコラ……じゃないな。まだ服全部消えてないし。

 これだから嫌なんだよ、トレイル系の埋蔵神殿(ダンジョン)。エロだかなんだか知らないけど、服がダメになる。この世界には衣服修繕アイテムとかないんだぞ。

 

 

「『リクイゲル』」

 

 

 私が『リクイゲル』を発動すると、体中に浴びせられていた液体が一か所にまとまってバレーボールくらいのサイズになる。ただ、服の方のダメージは甚大だ。なんていうか……もう襤褸布を辛うじて纏ってますというレベル。スラム街にだってこんな粗末な格好の人間はいないというくらいに。

 ……これほど瞬時に服が溶けるほどの酸性(?)を持っているのに髪とか皮膚が溶けないのって不思議だよな。最早女を剥くためだけに存在しているとしか思えない。

 しかも、隣を歩いていたマグノリアには一滴もかからない徹底ぶりだ。いっそ見事とまで言えるほどの女狙いである。この液体マグノリアにかけても何も効果出ないんじゃないかな。

 

 集めた液体を横合いに捨てていると、マグノリアがあからさまにあらぬ方を見ていることに気付いた。……何やってんだあの馬鹿?

 

 

「……どこ見てんの?」

 

「いっいや!! 見てない!! 何も!!」

 

 

 はぁ? ………………ああ!! 私か! 服溶けたから四分の三裸くらいになってんだ! ……いやもっと早く気づけよ私。羞恥心死んでるのか?

 でも、なんかマグノリアに紳士ぶられるとムカつくな……。そこはジロジロ見て私に呆れられるところなんじゃないか? なんかガチ感があって嫌だ。……流石にそれは理不尽か。

 

 ──ただ、この程度はどうということもない。

 

 

「ちょうどいいわ。そのまま別のとこ見て警戒しといて」

 

 

 私はマグノリアに伝えてから、ポーチに手を突っ込んで()()()()()を取り出す。

 コジャーブ=アルプスライザ(昨日私を襲った地下(ヤミ)探索者)が使っていたものだ。ただ、神殿模倣(ロア=ミメティクス)というのは奥が深いもので……。

 

「『鍛錬の』ビーアルプスの居城に捧げ奉りし我が身の鍛錬。今人の世にて、我が身の為に拝借致す」

 

 

 杯を持ちながら、昨日聞いた詔を平坦に唱える。

 

 ()()()()()()()()()()()()()()()()()調()()()()

 

 元々の逸話──『アルプの宝』という慣用句の元ネタになった文化は、そもそも『自分が困難に直面したときに、過去ビ―アルプスに捧げた鍛錬の力を借り受ける』というもので、徹頭徹尾個人的な祈りの範疇である。

 奮励起債(アルプスリース)はこの祈りを複数人で行うことによって自己と他者の境界を曖昧にして、自分以外の他者への経験のダウンロードという解釈を実現したのだろうけれど……これはつまり、()()()()()()()()

 

 神殿模倣(ロア=ミメティクス)では、こうした『伝承の曲解』がそこそこ行われるのだ。

 

 たとえば『焼ける大地(溶岩のこと)に突き立った剣を引き抜いた。これこそかの有名な魔剣ヴォアルディウスである』という伝承を再現しようとすると、わざわざ溶岩に剣を放り込んでさらにその後抜かなくてはいけなくなるわけだけれど、それはほぼ不可能に近い。普通の剣は溶岩に放り込めば溶けるからだ。

 だから伝承を曲解して、普通の大地に剣を刺した後、その周辺の地面を焼き払うことで伝承の舞台を『本当にただの焼けている大地』と解釈する。……なんと、これでも(ある程度劣化はするけれど)神殿模倣(ロア=ミメティクス)は成立する。

 

 これが成立する理由については教会でも諸説あるけれど、一応今のところは『魔性化は神々によって齎されているもので、神々が似たようなシチュエーションに似たような効果を施してくれているのでは?』という説が有力とされている。

 私はなんやねんそれ……と思うけれど、まぁ世界の真理みたいなものに興味はないので、別に本当のところを知りたいとは思わない。多分、Avintyrさんに前世で教えてもらっていたかもしれないけれど……。

 

 話を戻すと、奮励起債(アルプスリース)は伝承の曲解によって複数人で儀式を行い、他者に自分の経験(ダメージ)をダウンロードさせていたけど、別にそんな小難しいことをする必要はない。たとえば──

 

 『自分が今まで服を着た経験』をダウンロードするだけならば、一人でも実現可能ではないだろうか?

 

 

「……これでよし」

 

 

 瞬きするよりも早く、襤褸布以下だった衣服は消え去り、代わりにいつもの修道服に変化した。

 これこそが私が調整した新たな術式だ。

 『自分に経験の恩恵をダウンロードする』というアルプの宝の伝承を曲解し、『着たことのある衣服』を瞬時にダウンロード──つまり着替えることができる。

 曲解の補助線として『祭祀を行った経験』を使っているから、厳密に言うと着られるのは祭祀の時に着用したことのある衣服、即ち修道服しかないけれど……そこについては致し方ない。

 

 ……ではないだろうか、と言いつつ、昨日の尋問の間に実験済みではあるんだけどね。

 今後アディの代わりにトレイル系の埋蔵神殿(ダンジョン)に潜るにあたって、衣服へのダメージは容易に想像できた。だから、今のうちに私の手札で対策できないかと考えた時に思いついて、試したら上手くいったというわけだ。いやー、この感じだと大分使えそうだ。

 ただ、無から服を生み出せるわけではないので、やっぱりやられすぎると服の在庫がなくなってしまうのが難点だけれど……。

 

 

「……あれ、なんで服着てるの」

 

 

 私の声に反応したのか、視線を戻したマグノリアがぼけっとした顔でそんなことを言った。私が服を着てちゃ悪いか?

 

 

「昨日襲ってきた連中の神殿模倣(ロア=ミメティクス)の道具立てを拝借しといたのよ。で、術式の解釈を変えてこう……着替え術式に」

 

()りい、意味が分からねえ

 

 

 なんでだよ! めちゃくちゃ簡潔な説明だっただろ!

 ……まぁいいや。別にマグノリアに理解してもらおうとも思わないし。

 

 

 


 

 

STAGE_03 / ボス戦は××の底から

[in 堕落第一神殿 浅層]

 

第三四話 未来は収束していく

 

 


 

 

 埋蔵神殿(ダンジョン)を進むにつれて、自然と口数も減っていった。何せ臭い上にこのギミックである。注意深く進もうとすれば、当然口数も減ってくる。

 そうしながら歩いていると、私の表情を見咎めたのだろう。マグノリアが遠慮がちに口を開いた。

 

 

「……ちと潔癖すぎじゃねえか?」

 

 

 私の嫌そうな表情を『堕落の』権能に対する悪印象から来ていると推察したのだろう。

 実際にフィルマト教では『規律』を尊ぶ傾向が強いので、『堕落の』トーレイラのことは忌避する文化がある。『導典』にだって一人だけ名前が記されずに『堕落の』彼女とか書かれてるしね。

 

 

「なんだいエロ坊主」

 

「やめろやぁ!!」

 

 

 ……ここで過剰反応するあたり、どうもコイツは今の沈黙を私の脱衣による気まずさと捉えているっぽいな……。

 ……………………あれ? ということは、私は今コイツに対して羞恥してると思われてるのか? あ、潔癖すぎっていうのもそういうこと!?

 

 

「別にさっきのは引きずってないから気にしないで。純粋に……ほら、『堕落の』が関わっている神話って、血腥(ちなまぐさ)いのが多いじゃない」

 

 

 そう言って、私は人差し指を立てる。

 これは事実だ。どうもこの世界において『堕落の』トーレイラというのは、『地球』の宗教で言う悪魔やトリックスターの悪神に似た役割を担っているらしく、伝承もけっこう悪そうなものが多い。属性で言ったら闇だ。

 

 

「たとえば、万全の骸(イデアルホール)にしてもそうでしょ」

 

「……そうなのか? 俺、万全の骸(イデアルホール)がどんなもんなのかは知ってるが、具体的な成り立ちの神話なんて知らねえんだけどよ」

 

「知ったらもう万全の骸(イデアルホール)が欲しいなんて思えなくなるわよ」

 

 

 冗談めかしてそう言って、私はさらに講釈を続ける。

 

 

万全の骸(イデアルホール)はスィラスの王が『堕落の』トーレイラに願って授かった魔具と言われているけれど……『導典』にはその『願い方』が記されてるのね。……三人の命を生贄に捧げて、その命を以て対価とする、って。つまり、三人殺してその代わりに万全の骸(イデアルホール)が手に入るのよ」

 

 

 ね? そんなもの欲しくならないでしょ? と問いかけると、マグノリアもげんなりした顔で頷いていた。

 いくら理想の肉体で性行為に励めるとしても、スる時に犠牲にした生贄の顔がちらつくような魔具では理想の性行為なんて夢のまた夢である。

 

 ……でも、あー。

 

 

「そう考えると、さっき『地上』で倒したゾンビの屍骸魔具(アンデッド)は儀式用だったのかもしれないわね。三人分の死体さえそろっていれば、『三人の生贄』っていう条件は曲解でクリアできそうだし」

 

「うお! ってことは俺達、めちゃくちゃファインプレーだったんじゃねえか? それなら敵はもう神殿模倣(ロア=ミメティクス)できねえってことじゃん」

 

 

 私の気付きに大して、マグノリアは気楽そうに言った。

 ……何を言っているんだお前は。

 

 

「そんなわけないでしょ。トレイルソン本部長、探索者組、仲介の男、この中の三人以上が死んで黒幕が生きていれば、三人分の生贄なんて簡単にカバーできるわよ」

 

「………………」

 

 

 当たり前のことを教えてやると、急速にマグノリアの顔が萎びていった。

 

 な? 血腥くていやだろ、トレイル系の神話。




 作中で出て来た神殿模倣(ロア=ミメティクス)の曲解の原理ですが、あくまで作中世界で『こうじゃないかな?』と言われているだけなので、真実かどうかは謎です。

   ◆ ◆ ◆

■エロRPGあるある
 エロRPGにおいては、プレイ中右側に主人公の立ち絵が表示される場合が多い(『あまちょ』もこのタイプ)。
 この立ち絵は敵の攻撃やギミックによるステータス変動によって表情や状態が変かしたり、衣服が破損することがある。
 脱衣状態では入れない場所があったり、淫乱度が一定以上ないと街中で脱衣状態になれなかったりする設定を行っているエロRPGも多い為、その場合は衣服を修繕する為のアイテムが必要となる。
 『あまちょ』の場合はHPの減少に応じて衣服の破損が発生するタイプだったため、衣服修繕アイテムは存在しない。
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