【完結】女転生者ですが、親友(♀)がエロゲの主人公と発覚したので死ぬ気で貞操を守ります。# シスターアディと淫魔の恩寵_Append   作:家葉 テイク

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第三六話 強欲は死んでも治らず

「ワイド!!」

 

 

 判断は一瞬だった。

 私とマグノリアは、即座に『移動結晶』を発動して埋蔵神殿(ダンジョン)から脱出する。移動先は埋蔵神殿(ダンジョン)の『ゲート』──だと向こうも同じように脱出してきそうなので、警邏騎士の詰所だ。

 此処の屋上に、前以て緊急脱出用の『移動結晶』を隠しておいたのである。

 

 

「ハァ、ハァ……なんだあれ……。お前、仲介の男の中にいた()()と知り合いかなんかなの……?」

 

「まぁ……そんなところかしら……」

 

 

 私はマグノリアに答えながら、状況を整理していく。

 

 仲介の男の中にいた者……あれは間違いなく、ラシーダテラーだ。私がかつて反乱幇助の証拠を暴き、そして『追放刑』になって死んだ男。埋蔵神殿(ダンジョン)へ潜っていった目撃情報を最後に消息不明ということだったけれど……。

 ……クソ。屍骸魔具(アンデッド)の話を聞いた時点で、警戒しておくべきだった……!

 

 おそらくラシーダテラーは、ゾンビとは違う形の屍骸魔具(アンデッド)となっている。ゾンビと違って確かな自我を保持しているのもそうだけれど……どうやら、人体への憑依が可能らしい。

 生きている人間への憑依が可能ならもっと活発に活動していそうなので、おそらく死者への憑依しかできないのではないかと思うけれど……そこのところは不明だ。万全の骸(イデアルホール)には憑依できるっぽいし。……何か条件があるのかもしれない。

 

 おそらく、今のラシーダテラーは霊体のようなものなのだろう。…………アディが良い感じに天敵だな。絶対に会わせらんねぇけど。謀略のことバラされそうだし。

 そして、そう考えると──万全の骸(イデアルホール)も、肉体を失って霊体のみになってしまったラシーダテラーが憑依の性質を使って新たな肉体を手に入れる為の魔具だったはず。

 問題は『貞淑薬』の意味だけれど……。……何だろうね。

 

 

「おい。とりあえず下に降りようぜ。団長には既に話ついてるんだろ? まずは作戦会議しなきゃあな。アディちゃんとエリーさんを巻き込むかどうかも含めて」

 

 

 思索に耽っていると、マグノリアが声をかけてきた。

 確かに、いつまでも詰所の屋上にいる訳にもいかない。とりあえず屋内に入って、じっくり腰を据えて考えた方が良いだろう。

 

 

「そうね、じゃあ、一旦下に降りましょうか」

 

 

 私はそう言って、詰所内へと続く階段を下りて行った。

 

 

 


 

 

STAGE_03 / ボス戦は××の底から

[in マニカナ教区 警邏騎士団詰所]

 

第三六話 強欲は死んでも治らず

 

 


 

 

 

 警邏騎士団の私に対する対応はかなり篤く──といっても私は司祭長だからある意味当然だけれど──作戦会議にはそこそこ広めの会議室を一室丸々貸し出してもらえた。

 もっとも、未曽有の災害の可能性を仄めかしたからこそというところもあるだろうけれど……。こういうところは、公務員というよりはヤクザのような対応のフレキシブルさがある。普通、公務員が別部署の会議室をアポなしで借りられたりなんてしないからね。

 

 

「で、アイツは一体何者なんだよ?」

 

 

 開口一番、マグノリアはそう問いかけて来た。

 うん。当然の疑問だ。そしてこの期に及んで、私もコイツに対して事実を隠そうとは思わない。

 

 

「……死んだ仲介の男を操っていた存在、アイツは生前の名をオーヴィエル=ラシーダテラーと言って……私の前に司祭長だった男よ」

 

「あん? オーヴィエル=ラシーダテラーっつったら……反乱幇助の大罪人じゃねえか!! アイツのせいでマニカナ教区の司祭連が解散させられかけたとかって聞いたことあるぞ!?」

 

いやもうほんと当時は大変で……じゃなくて! ……そう。その本人よ。多分、どこぞの埋蔵神殿(ダンジョン)に潜った末に死亡して、そこで死体が魔性化したんだと思うわ」

 

「すっげえ執念……」

 

 

 これは私もマグノリアに同意だ。

 魔性化したときの環境もあったんだろうけれど、同じ屍骸魔具(アンデッド)でも自我のないゾンビとは違って、あの時のラシーダテラーは明確に意思があった。そういう特性の屍骸魔具(アンデッド)なのかもしれないけれど、そこに生前の執念……というか私への恨みを感じずにはいられなかった。

 

 

「そういえば、ラシーダテラーの目的は、結局万全の骸(イデアルホール)の入手と……お前の殺害で良かったのか? お前を殺して、司祭長に返り咲く的な」

 

「……正直、まだ分からないわ」

 

 

 私を殺すことも目的には含まれているだろうけれど……それは万全の骸(イデアルホール)を獲得する流れとはあまり関係があるとは思えない。ヤツが死人を操れるなら、純粋に私を殺して憑依すればいいだけの話だ。

 アディについても……私の姿をしているのであれば、ヤツの攻撃なら殺すのは……容易い。……あ~、死んだらその場で爆発する爆弾を心臓に取り付けてえ~……。

 ……ともかく。

 だとすると、わざわざ万全の骸(イデアルホール)……それと貞淑薬を持ち出してきた動機は私を殺すこととは別のところにあるような気がする。

 

 ただ……『憑依先』っていう分かりやすい使い道が提示された万全の骸(イデアルホール)と違って、貞淑薬の役割がなぁ……。

 もう、この際ブラフの可能性なんて考えなくていいだろう。ここまで練った計画なんだ。きっと何か意味がある。……んー、魂を清らかにする、淫乱度を下げる……。

 

 

「……そりゃあ、いくらエヴァでも分かんねえか。貞淑薬にしたって、魂を清らかにしたところで、現世じゃ何の得にもならねえしなあ」

 

 

 と。

 マグノリアも、私と同様に困ったような声を上げた。そうだ。貞淑薬を使って魂を清らかにしたところで、現世じゃ何の得にも……、

 

 ……ん?

 

 ()()()()

 

 

 そこに思考が至った瞬間、私の脳裏で情報が閃いた。

 あれは──そう、『創世記』だ。『導典』に記された創世記、その第六段。そこで語られた女神──トーレイラにまつわる創世神話。そして、人の人としての完成の物語。そこでは確か、こんな神話が語られていたはずだ──。

 

 

 


 

 

 

 かつて、世界には不毛の大地が広がっていた。

 そこに六名の(たっと)き方々が降り立ち、それぞれの権能を以て荒野の世界に豊かな生命を齎して下さった。

 

 降り立った方々のうち一人が、荒れた大地を見て木々をお作りになられた。木々は生えては朽ちて肥やしとなり、やがて肥沃な大地と鬱蒼とした森林が生まれたという。そのうち森の中で木々ではない新たな生命が生まれ、彼女はこれを獣と名付けられた。

 これを行ったお方こそ、一番目の姉女神『規律の』フィルマト様であり、我々の造り主である。

 

 しかし、増えすぎた木々はやがて互いに大地の栄養を奪い合った。鬱蒼とした森林は次第に枯れ始め、獣も森を追われるようになった。多くの獣が森の外にもいるのはこのためである。

 そこで、降り立った方々のうち一人が、枯れ始めた森を見て川をお作りになった。すると奪い合っていた栄養は川を通して大地を巡り、森はかつての豊かさを取り戻したという。この時、獣のうちの幾らかは川に住み魚となった。現在の海は、この川の水が低地に溜まったものだ。

 これを行ったお方こそ、二番目の姉女神『恐怖の』ヴィーンティオ様である。

 

 季節が巡ると、生まれた命達は寒さに凍えるようになった。寒さに耐えかねた獣達の幾らかは地面に穴を掘って寒さを耐えることにした。穴の中へ逃げた獣は毛が抜け落ち、身体も固く小さくなっていった。この獣達の末裔が虫である。

 これを見て、降り立った方々のうち一人が、獣の為に火をお作りになられた。これにより獣は寒さに凍えることがなくなった。一方、穴の中へ逃げた獣はこの慈悲を受けることができなかったので、明るいものを見ると近寄っていくのだという。この時の貴き方の行いを見て学んだ獣が人の祖となった。

 これを行ったお方こそ、三番目の姉女神『信愛の』ティナーリタ様である。

 

 火によって冬の寒さに凍えることがなくなった人の祖は、獣達を率いて暮らしの領域を広げるようになった。その勢いは凄まじく、いつしか獣たちが大挙して降り立った方々の居城に到達しそうになったので、彼女達の間で問題になった。

 そこで、降り立った方々のうち一人が巨大な山々をお作りになられ、この山によって獣の行き来はそこで制限されることになった。土地によって生き物の種類が違うのはこの為である。しかし、完全に行き来できなくなるのは不便とのお考えで、山を越える苦労を背負ったものは、降り立った方々の館の戸を叩くことを許された。

 これを行ったお方こそ、四番目の妹女神『鍛錬の』ビーアルプス様である。

 

 そうすると、人の祖は降り立った方々に一目会おうと、危険を承知で山を越えようとするようになった。しかし山は険しく、試練に挑戦した人の祖は悉く傷ついてしまったという。

 これを見て悲しんだ降り立った方々のうち一人が、人の祖の傷を癒して下さった。傷が癒されたことで人の祖は少ないながらも降り立った方々の館まで辿り着くことができ、降り立った方々とお会いする栄誉を得ることができた。この時の慈悲深き行いから学んで、医療が生まれた。

 これを行ったのは、五番目の妹女神『休息の』プラシーデ様である。

 

 山を越え、降り立った方々と謁見した人の祖だったが、欲深き彼らはそれだけでは満足できなかった。降り立った方々と謁見して憧れを強めた彼らは、やがて彼女達の姿に近づき、そして彼女達と交わりたいと願うようになった。

 過ぎたる願いを降り立った方々がお叶えになることはなかったが、唯一人だけ、六番目の妹女神である『堕落の』彼女だけは別だった。彼女は人の祖に誓いと引き換えに、ある提案をなさった。

 

『あなた方がその浅はかな欲望に打ち勝ち、そしてわたし達の前に現れるのならば、わたし達もまたあなた達を受け入れましょう。その時は、あなた達と交わりましょう』

 

 かくして、獣たちは降り立った方々と交わることができる姿を手に入れた。しかし同時に、彼女は獣たちの半数を、獣達と交われる──より女神に近い姿に変えた。この為、人間は男と女の区別がはっきり分かれているという。オスとメスで姿の違う生き物も、みな彼女の試練を受けた獣の末裔である。

 男と女に別れた人間達は、降り立った方々と交わる為に野を越え山を越えた。しかし結局は降り立った方々の許へ辿り着くまでに欲望を抑えきることができず、それぞれで交わり、子を成すようになった。その為人間は降り立った方々と謁見する資格すら失い、降り立った方々の館はこの世とは違う場所に移されてしまった。

 

 しかし降り立った方々──慈悲深き女神様方は、今も人間が彼女達と逢う為の試練を用意してくれている。それこそが埋蔵神殿(ダンジョン)であり、試練を乗り越え埋蔵神殿(ダンジョン)の最奥に到達した者には女神と謁見する資格が与えられるのだ。

 

 

 


 

 

 

「……『創世記』第六段。『堕落』の章」

 

 

 私は、茫然と呟いた。

 何故気付けなかったのか。ヤツが模倣しようとしている神話の正体を……!

 

 『創世記』第六段によれば、人間は女神の試練の途中で欲望を抑えきれずに人間同士で交わってしまい、女神と交わる資格を失った。()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 それは……『あまちょ』の文脈で言えば、淫乱度が上昇した──即ち『魂に穢れを受けた』と言い換えられるのではないだろうか? そして貞淑薬を使えば、その穢れを清めることができるんじゃないか!?

 

 この仮定が正しいとすれば、ラシーダテラーの目的は単純明快になる。

 

 つまり、万全の骸(イデアルホール)を使って理想の体を得て。

 つまり、貞淑薬を使って理想の魂を得る。

 

 

「あの野郎…………死んで少しは性欲が収まったかと思ったら」

 

 

 そして──その状態で()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()殿()()()()()()()()()()()()()!!




 実は、感想欄で約一名、今から九話前(二七話)の時点でラシーダテラーの陰謀を考察していた方がおりました。
 ……す、素直にすげぇ……。
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