【完結】女転生者ですが、親友(♀)がエロゲの主人公と発覚したので死ぬ気で貞操を守ります。# シスターアディと淫魔の恩寵_Append   作:家葉 テイク

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第三七話 一三階段を登りながら

 とはいえ──敵の計画に察しがついたのは良いことだ。

 敵の狙いが分かれば、こっちもそれを計算に入れて作戦を練ることができる。

 

 

 神話の道具立てを応用するならば、『女神の夫』になるには必要な要素が三つある。

 

 一つは肉体。肉体もないのに女神と交わることはできないからね。これは万全の骸(イデアルホール)によってクリアした。

 ……今にして思うと、おそらく堕落第一神殿への依頼、地下(ヤミ)の探索者を生贄にする為の罠依頼だなあれ。ホントに悪辣だ。

 

 一つは清らかな魂。『試練』に失敗した、資格を持たない人類は女神と交わることはできない。これは貞淑薬で解決する。

 確保している様子は見られなかったけれど、ラシーダテラーがあそこに潜伏していたことを考えると、おそらく相当量を確保していると考えて間違いないだろう。

 

 そして最後の一つが、『試練』。

 神話から考えるに、この『試練』は埋蔵神殿(ダンジョン)の踏破で間違いないだろう。ただし、この埋蔵神殿(ダンジョン)の踏破は難しい課題も孕んでいる。

 

 たとえば──さっき私達がラシーダテラーと遭遇した堕落第一神殿。あそこで私達を逃がしたラシーダテラーがそのまま埋蔵神殿(ダンジョン)の奥へと潜って行った可能性なんかは、あり得ないと断言しても良いだろう。

 何故って、エロトラップが多すぎる。

 

 トレイル系埋蔵神殿(ダンジョン)は基本的に女狙いのトラップが多いけれど、だからといって男にとってノーリスクというわけではない。

 たとえば浴びればサルの様に発情させて敬虔なフィルマト教徒でもレイプ魔に変えるようなドギツイ発情ガストラップだってあるし、モノによっては()()()()()()()()()()()()()トラップもあると聞いたことがある。

 魂の穢れについては最奥に到達したタイミングで貞淑薬を使えばいいにせよ、女性化なんてした日には目も当てられない。ヤツの目的はあくまで『女神の夫』になることだろうから、女になる可能性のある埋蔵神殿(ダンジョン)は避けるだろう。

 

 そして、仲介の男が死んだので、死人であり屍骸魔具(アンデッド)であるラシーダテラーは最早追加の人員を獲得することはできない。

 こうなったら、ヤツももう策謀もクソもない。時間が経てばこちらが教会勢力・警邏騎士といった公権力の力で援軍をバシバシ投入できる以上、ラシーダテラーも時間がないことは自覚しているハズ。

 

 とすると、一刻も早く残る『試練』をクリアしようと考えるはず。

 マニカナ教区近辺で、難易度が低く、『女神の夫』の策が損なわれる可能性もなく、なおかつ人が少なく邪魔される可能性も低い埋蔵神殿(ダンジョン)────。

 

 

 そう。

 

 

 ()()()()()()()()殿()()

 

 

 


 

 

STAGE_03 / ボス戦は××の底から

[in マニカナ教区 北区]

 

第三七話 一三階段を登りながら

 

 


 

 

 

 そういうわけなので、一応ではあるが、詰所にも情報連携はしておいた。

 

 かつて追放刑を受けたオーヴィエル=ラシーダテラーと思しき人間が屍骸魔具(アンデッド)となって意思を持ったまま暗躍している、トレイルソン本部長と中堅探索者はそいつらとの戦いの中で戦死した、と。流石に屍骸魔具(アンデッド)と相対することの多い役職だからか、戸惑いはしていたものの私の忠告はおおむね受け入れられた。やっぱり大事だね、社会的地位。

 

 ただし──それ以上のことは望めなさそうでもあった。

 状況を理解し動き始めると宣言した警邏騎士団ではあったけれど、やはり組織として本格的に戦力を回すのには時間がかかるとのこと。

 それでも一、二時間で兵を回すと言うのだから有能は有能なのだけれど──生憎、そんなスピード感では話にならない。兵を出したらちょうど埋蔵神殿(ダンジョン)から『女神の夫』と化したラシーダテラーが出てきて一掃されましたとか、そういうレベルである。

 

 やはり、動きが鈍重な公的組織の力はアテにはできない。精々取りこぼした時の保険として考えておいて、私自身が独自に行動して処理するしかないな……。

 

 一応引き続きマグノリアを借り受ける交渉は成立したので、通信魔具で教会にいるメドリーネ(修道士の一人。『あまちょ』には出ていない)にも話をつけておきつつ、私はマグノリアを伴って詰所を出る。

 

 

 ──帰還場所を詰所に設定しておいたのは、前にも言った通りラシーダテラーが追いかけて来たときに埋蔵神殿(ダンジョン)の入り口に移動しただけでは追いつかれる可能性があったからだけれど、他にも理由がある。

 

 アディだ。

 

 アディは明らかに私の言動を怪しんでいた。何せわざわざ尾行までしてくるくらいなのだ。アディは基本的に私の言うことは信じてくれるのに、あそこまでして怪しむというのは相当のことだ。

 そしてアディは、その優しい言動からは想像もつかないかもしれないけれど、ものすごく意志が強い。だからああなったアディは本当にしつこい。たとえば、私が詰所に入ったのを確認してから、詰所ではない場所から現れれば──アディは必ず私が『移動結晶』を使って別の場所に移動し、何事かをしていた可能性にまで行き着く。

 そうなれば、堕落第一神殿やラシーダテラーに辿り着くのは時間の問題である。……その結果、私の謀略がアディにバレることだけは絶対に回避したい。

 …………ラシーダテラーは、私がガキの頃から司祭長としてマニカナ教区を牛耳っていた。

 当時修道院附属の孤児院にいた私達にとって、ラシーダテラーは父親代わりでもあったのだ。それは結局は未来の自分の性奴隷を見定めるマーキング行為でしかなかった訳だけれど、純粋なアディはそのことを知らない。

 反乱幇助の件も『行き過ぎた正義感が暴走してしまった結果』だという風に私は伝えているし、ヤツのことを謀殺したのが私であることも伏せている。

 ……だって、育ての親を、間接的とはいえ……殺したのが私だなんて知られたら……。……、…………。

 

 ……ともかく、今回の黒幕がラシーダテラーである以上、アディを決着の場に居合わせさせる訳には絶対にいかない。

 アディを遠ざけるのは、絶対条件だ。

 

 だから、アディの疑念を完全に断ち切る為にも、私達は堂々と詰所から入って詰所から出るという行為をしなくちゃいけない。

 逆に言えば、そこまでちゃんとやっていれば、アディも私に対する疑念を薄れさせてくれるはずだ。

 

 

 ──果たして。

 

 

 やはりというべきか、私の予想は寸分違わず当たっていた。

 

 

「あっ、エヴァ!」

 

 

 詰所から出て、すぐ。

 私は、道路の角を曲がったところから顔を出したアディ、それからエリーミンと鉢合わせた。

 おそらく、角で待ち構えていたのだろう。微笑ましい尾行だけれど、私達が詰所に入ってから今までずっと待っていたと考えると健気でもある。

 疲れただろうに。こんな状況でなければ頭を撫でてねぎらってあげたい。

 

 

「アディ、エリーさんの授業はもういいのかしら?」

 

 

 表向き、アディはエリーミンに探索のいろはを教えてもらうということだったはずだ。この分ではやっていないのだろうけれど、一応聞いておく。

 アディは少しだけ気まずそうな表情をしながら、

 

 

「は、はい……。まぁ。あんまり順調ではないんですけど……」

 

 

 と答える。表情もぎこちない。本当にこの子は嘘がつけない性格だなー……。

 ……でも、今回については私が裏事情に大体察しがついているから看破できているだけだとは思う。何も知らなければ、純粋に『意気揚々と師事したのに結果が出なくてバツが悪い』という風に見えるだろうしね。

 

 アディは話を切り替えるようにぱんと手を叩いて、

 

 

「そうだ。エヴァはどうでした? 警邏騎士の人達とお話をするらしかったですけれど……」

 

 

 ああ、そういえばそういう建前だったね。

 私は頷いて、

 

 

「さっき、追加の情報を聞いたわ。なんでも、知恵を持った()()()()()が堕落第一神殿で『氾濫』を起こして、そのままイーガシア森林神殿に向かったんだとか……」

 

 

 もちろん、大嘘である。

 ただ、結論として『イーガシア森林神殿が危険』という部分は変わらない。そして──

 

 

「……聞いた話だと、トレイルソン本部長と、彼と一緒にいた探索者は、状況的に……」

 

 

 と言って、私は目を伏せた。

 ……こう言えば、エリーミンはギルド首脳が消滅したことを悟るだろう。必然的に、エリーミンはギルド本部で事後処理に縛られるという訳だ。

 

 ──私を怪しんでいるアディと一緒にいるということは、エリーミンはアディ側についたということだろう。

 あの戦力は惜しいが、それが私の陰謀をアディに暴かせる為に使われるとなれば話は別。アディを安全な場所に隔離するまで、エリーミンとアディの連携は断たせてもらう。

 

 ……と、思っていたのだけれど。

 

 

「そうか……。なら、現場判断で動くしかないな。イーガシア森林神殿だったか。よくよくあそことは縁があるな……。どうせエヴァちゃんとワイドも行くんだろ? 私もついていくぞ」

 

 

 エリーミンは驚くほどあっさりと、ギルドの中枢機能の回復を後回しにした。

 ええ……? いや、防御よりも先に原因を叩き潰せば首脳が死んでいるリスクも踏み倒せる……って考えか……? にしても、ハイリスクすぎると思うけれど……。

 

 

「……エリーさん、戻らなくていいの? 流石にギルドがこの状況でチーフが外に出るのは……」

 

 

 別に、チーフ=ナンバー2というわけではなくて、エリーミン以外のチーフ探索者はいるにはいる──が、緊急時の陣頭指揮を取れる人材という意味であれば、エリーミンを置いて他に適任はいないだろう。

 通常の判断であれば、エリーミンだってそう考えるはずだ。……とすると、やはりアディに何か吹き込まれているのか?

 

 

「いや、私は戻るより現場で暴れていた方が全体の利益になるだろう。それにこの状況で戻れば、次期本部長にされそうだしな。現場に出られなくなるのは御免だ。腕が鈍る」

 

 

 ……退く気はない、か。面倒だな。

 こうなったら仕方がない。多少強引だけれど、エリーミン特攻の札を切るしかないか。

 

 私は少し気まずそうに視線を横合いに逸らしながら、

 

 

「ただ……その」

 

 

 と、勿体ぶって話を切り出す。さも、『今まではエリーミンを気遣って伏せていたけれど』という感じを匂わせて、だ。

 

 

「……知恵を持った()()()魔物って、何が厄介かって──『堕落の』の加護を受けているのよ」

 

 

 ──無敵のエリーミンを撃退する為には、どうすればいいか。

 そんなのは簡単だ。ヤツの弱点を突いてやればいい。トレイル系の現象にめっぽう弱いエリーミンなど、こうやって情報を提示してやるだけで簡単に突破できる。

 ちなみに、この情報も嘘とは言えない。実際にラシーダテラーは神殿模倣(ロア=ミメティクス)を使って生み出したトレイル系の魔具に憑依しているわけだからな。

 それに……多分ヤツ自身が生まれたのも、トレイル系の埋蔵神殿(ダンジョン)での魔性化由来だろう。血腥い現象は大抵トレイル系だしね。そう考えたらトーレイラの加護を受けていると言ってもいいと思う。

 現に、内情を知るマグノリアも私の言動自体には違和感を持っていないみたいだ。……マグノリアはエリーミンの『弱点』については知らないから、なんで急にその話を? とは思っていそうだけれど。

 

 そして、私が切った札の効果はてきめんだった。

 

 

「………………っ」

 

 

 エリーミンが、明確に怯む。それでも何かを言おうとしたので、私はエリーミンが実際に何か言い返す前にさらに言葉を続けた。

 

 

「だから、倒し方が結構面倒でね。多分だけれど……エリーさんの魔法だと相性が悪いと思う。まだ、私の方が適任だと思うわ。エリーさんは気にせずギルドの方に行って」

 

「…………悪いね。じゃあ、お言葉に甘えて一旦ギルドに戻って状況を確認してくる」

 

 

 大分渋ったようだったけれど、エリーミンは結局折れて、ギルドへと向かって行った。

 

 ……ふぅ。エリーミンから弱点を聞かせてもらっておいて本当によかった。

 他のヤツらもいる手前、魔法の相性とかについてはかなり適当ぶっこいた(そもそもエリーミンの魔法で相性が悪い敵なんているのか?)けど、エリーミンには私の意図が通じているだろう。

 

 

「じゃあ、私とワイドは警邏騎士と教会の連携の為に、一旦現場の下見に行ってくるから。アディは教会に戻って、修道士達の指揮を執ってくれないかしら? メドリーネに臨時の指揮を任せてあるけれど、アディがいた方がいいだろうから」

 

「いや、わたしも一緒に行きます」

 

 

 目下最大の障害がクリアできたな……と考えてアディに指示をしたところ、そこで即答を返されてしまった。

 

 

「教会との折衝はメドリーネさん一人でも問題ないはずです。それより、わたしも助司祭としてエヴァと長くやってきたんですから、埋蔵神殿(ダンジョン)の偵察なら一緒に行動した方がその後の連携確認もスムーズに済ませられると思います。多分、重要度はこっちの方が高いんじゃないですか?」

 

 

 …………(すこぶ)る正論だ。

 メドリーネは古株の修道士なので教会との折衝くらいなら問題なくこなせるだろうし、実務的にもアディが私の側にいることには意味がある。偵察とはいえ、埋蔵神殿(ダンジョン)に行くことを考えても、戦力が多いに越したことはない。

 ……ただ、アディがこういうところで私の方針に異見を唱えるのは珍しいな。やはり『予知』関連で何かあるのか。……ゴブリンの『氾濫』が近いから焦っているんだろうか?

 

 

「アディちゃんの言う通りだな。エヴァ、此処はアディちゃんを連れて行った方がいいんじゃねえのか? それとも……何か連れて行けない理由でもあるか?」

 

 

 さてどう答えようかなと逡巡していたら、なんかマグノリアのヤツがアディに援護射撃をし始めた。

 は? 急に何言い出すんだコイツ。お前は私の事情を知ってるだろうが……! ……あの野郎は私が謀殺したから、アディを連れて行ったら私の裏の顔を暴露される可能性が高いから連れて行けないんだっつーんだよ!

 

 くそっ、こう言われたら変に言い返してもしこりが残るな……。マジで余計なことしやがって……。

 あとでタイミング作って何でこんなこと言ったのか問い詰めてやる。考えなしだったら本気でボコろう。

 

 しかし、此処からどうするか……。

 ……この流れでアディの同行を拒否すれば、ただでさえ高まっているアディの疑念をさらに強化するだけだからな……。

 

 ……………………。

 

 

 ……仕方ない、アイツを使うか。




■あまちょ用語解説
 シスター・メドリーネ
 マニカナ教区礼拝堂に所属している修道士の一人。礼拝堂近くの修道院で暮らしており、日中は礼拝堂で仕事をしている。
 エヴァは『あまちょ』には出ていないと言っていたが、これは記憶違い。実際には修道院の台所で話しかけると『今は忙しいからちょっと待ってね』と答えてくるモブがシスター・メドリーネという名前である。
 そんなもん覚えている訳がない? それはそう。

支援イラスト紹介
描いてくださった方柴猫侍さん
柴猫侍さんより表紙イラストも頂きました!!実は既に反映されているので、気になった方は読了ツイートしてみてください。どちらが使われているかは内緒です。
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