【完結】女転生者ですが、親友(♀)がエロゲの主人公と発覚したので死ぬ気で貞操を守ります。# シスターアディと淫魔の恩寵_Append 作:家葉 テイク
「ええ、ええ。……そうなの。だから、イーガシア森林神殿に行くわ。……状況はあまりよくないわね。上手くいけば褒章は出すわよ。私を誰だと思っているの? これでも司祭長なんだからね。…………ええ、サポートよろしく」
通信魔具で連絡を送ってから、私は二人に向き直る。
マグノリアの野郎の援護射撃のせいで、アディも同行する流れになってしまったが……私がそんな流れを認める訳がない。
礼拝堂に連絡を送ったように見せかけて、今の通信は実はレルオーティエに対してである。あやつは私が自分の素性をアディに隠していることを知っている。この状況を見れば、何も言わずとも私の意図を汲んでくれるはずだ。
「これでよし。それじゃあ、行きましょうか」
二人に声をかけ、私達は一路イーガシア森林神殿へと向かって行く。
──さて、此処からが本当の土壇場だ。
ラシーダテラーを叩き潰すのは、最低条件。
引き際を弁えない無粋な過去は、この機に完全に消し去らせてもらう。
火急の事態ということもあり、私達は走ってイーガシア森林まで向かっていた。
マニカナ教区からイーガシア森林までは、歩いて三〇分ほど。走れば一〇分ほどで着く訳だが……事前にレルオーティエには連絡済み。ヤツには褒章をちらつかせておいたので、忠実に動いてくれるはずだが……。
……いるな。
私達の斜め右後ろの木陰。そこにレルオーティエが隠れている。他二人は尾行に対抗する方法なんて知らないみたいだから、気付いていないようだけれど……。……これでも私は裏街道の歩き方くらいは承知しているからね。
さて、私は隠れているレルオーティエに
「気を付けてね。イーガシア森林神殿に潜って行ったと推測はしているけれど、魔物は実際には追手を警戒して森の中に潜んでいるかもしれないから。見た目は人間そのものだから、騙し討ちをしてくる可能性もあるわ」
「……分かったです」
私の言葉に頷いて、アディは右手の掌を上に向けた状態で構えた。すぐにでも魔法を発動できるように、ということだろう。
……うん。良い対応。
「ヤツの能力は、おそらく……腐敗、かしら。触れた相手を腐敗させられるから、防御力を無視した攻撃ができる。……凶悪だけれど、アディの魔法なら打ち消せるはず」
私が補足すると、アディの肩に力が入ったのが分かった。
明確に人命を意識した証拠だ。……これで、お膳立ては完了。あとはレルオーティエにGOサインを出すだけだ。
「
そう
「
「あっ、お前確か……」
──
対価としてちらつかせた褒章で無理やり修道士の立場に押し込めてやれば『スラムの人間』ではなくなるので、アディに顔を知られても問題はあるまい、という計算もあるけれど。
私を呼び止めたレルオーティエは、縋りつくように言う。
「この先は危険です!! さっき、なんだかよく分からないヤツがやってきて……」
「……レルオーティエ」
横のアディが、『この人は?』と怪訝そうな視線をこちらに向けて来た。
レルオーティエはアディにとっては初対面なので、初対面の女に対して親友と男友達が既知の間柄に向けるような対応をすれば怪訝にも思うだろう。
「紹介するわ。彼女はレルオーティエ。下町の住人よ。救貧活動の時に知り合ったの」
私が悠長に紹介すると、レルオーティエはそれさえも煩わしいとばかりに首を振る。
そして私の肩に両手を置いて、さらに言い募った。
「そんなこと今はどうでもいいんスよ! それより重要なのは姐さん達ッス! 今すぐ、引き返してください!」
「落ち着いて、レルオーティエ。魔物の件なら知ってるわ。私達はそいつを偵察しにきたの」
肩に置かれた手を優しく取り除いて、私は諭すように言う。
うーむ、我ながら白々しい発言。でも、このやりとりをやることでレルオーティエの発言の信憑性が高まるからな。
「そんなの……! 無理ッス! ウチの出身の探索者が、何人かヤツと鉢合わせたんスけど……得体の知れない魔法で身体を腐らされて……! 死んではいないッスけど、重傷で……! 持続タイプの魔法っぽいから、手当もできないんス!」
「なっ……!」
悲痛そうなレルオーティエの言葉に声を上げたのは、アディだ。
──よし、
こうなれば、アディはもうその重傷者とやらを見捨てることはできない。これで──目論見通りだ。
当然ながら、スラム出身の探索者がラシーダテラーと遭遇して襲われて重傷なんて話は全部が全部嘘っぱちである。
スラム出身の探索者はそりゃあいるが、連中はみんな浄化によって身綺麗になって普通の探索者をやっているし、レルオーティエが把握しているはずもない。
ましてただでさえ人の少ないイーガシア森林神殿の近くで鉢合わせるなんてそんな殺人的な偶然は起こりえないのである。
これは全て、アディを誘導する為の芝居だ。
レルオーティエは私がアディに裏の顔を見せるのを忌避していることを知っているし、察しもいいから、この状況を見れば私の考えを理解してくれることは分かっていた。
だから、レルオーティエが出てくるまでにあえて前提条件を聞こえるように説明して、レルオーティエと『口裏合わせ』を行っていたわけだ。
というか、でなければこの私が『アディの魔法なら効果を打ち消せる』なんてアディの魔法に関する超重大情報をあんな声のボリュームで漏らすわけがなかろう。アレは周りに信頼できる人間しかいないことを確信していたからこその苦肉の策である。
だが、そんなことはアディには知る由もない。
「…………アディ」
「エヴァ、でも」
「アディ!」
珍しく明確な犠牲者を前にして躊躇するアディに、私は一喝する。
ゴブリンの『氾濫』なんぞはどうにでもなるのだ。どうせ実際に『氾濫』が起きてゴブリン共が地上に出てきたら、アディが干渉することになって『予知』が変わるし。
そんなことより、重要なのはラシーダテラーを始末すること。……その為に、今は貴方が邪魔なんだ。アディ。
「その人たち、このままだと手遅れになるわ。早く行ってあげて。で、なるべく早くに追いついてね」
「…………分かったです」
ついに折れたアディに微笑んでから、私はマグノリアと視線を交わす。
マグノリアは若干話の流れについて行けてなさそうだったが、『既に犠牲者が出ていたこと』と『アディならそれを治療できるかもしれないこと』は理解できているらしい。状況については、特に異論はないようだ。
「……ワイドさん」
先を急ごうとしたその時、アディがワイドに声をかけた。
同じく進もうとしていたワイドが足を止め、アディに向き直る。
「どうした? アディちゃん」
問いかけるワイドに対して、アディは苦虫を噛み潰したような顔で、しかし真っ直ぐに、ワイドを見つめて言った。
「エヴァを……エヴァを、よろしくお願いします。きっとすぐに、そっちに行きますから」
「…………お、おう。任せとけ」
……私がよろしくされる覚えはないんだけどな。
なんかアディ、私とマグノリアの関係を勘違いしてる節がない? 違うよ? 私は別にマグノリアのことなんて一ミリも意識してないよ? というか男は恋愛対象じゃないよ? 言ったことないけど。
……ヤベェ、まさかアディの挙動不審って、もしかしてそういうことか!? アディがマグノリアに対して嫉妬してくれているのだとしたら、それってつまりアディが私のことを大切に想ってくれているってことだから嬉しいけれど……嬉しいけれど!! 今はそれどころじゃないのだ!!
くっ……!
「行くわよ! ワイド!」
苦渋の決断をするような表情のアディに対し、私もまた苦渋の決断をしつつ──イーガシア森林神殿に向けて、私達は走り出した。
このボケカス、アディの感情理解が周回遅れなんだよなぁ……(ワイドに嫉妬しているのは正解)。
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次回から週一(毎週日曜20時更新)になります!