【完結】女転生者ですが、親友(♀)がエロゲの主人公と発覚したので死ぬ気で貞操を守ります。# シスターアディと淫魔の恩寵_Append   作:家葉 テイク

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第四話 波乱の船出

 私は、一瞬にして硬直しかけた脳を気合で再起動させる。

 落ち着け……。冷静になって、まずは一旦どうするか考えるんだ。どうやって殺す……? ……いや『殺す』じゃない! 殺すな! そうじゃなくて、マグノリアをどうフォローするかだろ!

 

 此処でフォローしなかったら、エリーミンは間違いなくマグノリアを追撃してやりこめようとするはずだ。小競り合い程度とはいえ、正当性はエリーミンにあるわけだし、相手を一方的に子ども扱いするっていうかなり失礼な言動になってしまっていたし。

 ただ……そうなってくると、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 教会、ギルド、警邏騎士。この三者はそれぞれ微妙な関係性なのだ。

 

 私達が住むこの街が『マニカナ教区』と呼ばれているあたりで勘のいい人は不穏な気配を感じたかもしれないけれど……現在、この国では教会が定める行政区分が広く適用されている。

 ただ、政府としてはちゃんとしっかり王政が敷かれているし、治安維持の面では警邏騎士が中央から派遣されてきている。『ヴェルニア領』という王国としての行政区分だってきちんと存在している。つまり、教会と王国でなんというか……区分が二重管理になってしまっているのだ。『日本』の基準で言うと、『千葉にあるあの巨大テーマパークは名前に「東京」とついているから実質東京です』みたいな与太話が本当に実効力を持ってしまっている状態……と言えば何となくイメージできるだろうか。

 で、ギルドが主に活動している埋蔵神殿(ダンジョン)というのは、その名の通り教会の管轄である。というかそもそも、ギルドの始まりは埋蔵神殿(ダンジョン)に無断で入り込む探索者の管理を教会から委託された組織、というところからスタートしているくらいだし。

 そういう意味で、行政区分の面では教会とギルドは同じ勢力に所属している。

 

 では、教会と警邏騎士が完全に対立しているかというとそういうわけではなく……探索者というのは得てして問題を起こしやすいので、治安維持という点で言えば教会と警邏騎士はお互いに協調して活動している部分もある。

 反対に、治安の面ではギルドは教会と警邏騎士の両方からせっつかれていて、微妙に立場が悪い。

 

 これで完全にギルドが教会の下部組織なら良かったのだけれど──長い歴史の中で、今や埋蔵神殿(ダンジョン)の管理組織としてギルドは無視できない存在感を放っている。しかも此処マニカナ教区にはギルドの総本部があるので、此処では特にギルドの勢力が強い……という事情もあり、ギルドが一種の独立勢力として成立してしまっているのだ。なので、教会としては余計に舵取りに気を遣う必要性があったりする。

 

 つまり、ギルドと警邏騎士は互いに反目し合っており、教会はそのどちらとも部分的には協調し部分的には対立している。だから、警邏騎士が治安維持の為に活動していたこの場で『教会がギルドの肩を持つ』と、警邏騎士的には面白くない、ということになる。

 マグノリアがそこで不満に思う性格かどうかは(興味がないので)忘れたけれど、此処でわざわざ印象をマイナスにするような手を打つメリットも存在しない。……いやウソ。メリットはめっちゃある。恋敵滅殺的な意味で。でもそれ以上に、無駄に障害を増やすことによるデメリットの方が多い。

 

 そういうわけなので、私は話が変な方向にブレる前にさらに続ける。

 

 

「ただ……教会に押し入ってきた強盗のせいで、今は色々と街が殺気立っているのも事実。警邏騎士の方も、純粋に貴方を案じている気持ちがあってこその制止だったのでしょう」

 

「……むぅ」

 

 

 私の取り成しの言葉に、エリーミンは渋い感じで呻いた。まだ若干感情の置き所に困っているのだろうけれど、一応頭は冷えたと見える。これはあと一押しって感じだな。

 さらに話を纏める為に、私は続けてマグノリアの方へ話を振る。

 

 

「警邏騎士の方も、これでお分かりいただけたでしょう? こちらのエリーミン様は素晴らしい探索者で、身の危険を心配する必要はないと。むしろ此処に留め置く方がギルドの業務に支障を生んでしまいます」

 

「そうッスね、知らないこととはいえ『ギルド』のチーフをガキ扱いしてたとは思わなかったッス。改めて考えたら、()()()()()()()()()ような真似だったな……。悪かったよ、エリーミンさん」

 

「……分かればよろしい」

 

「ふふふ、()()()()()()()()()良かったですね」

 

 

 ぶるりと身震いしてみせるマグノリアに、エリーミンは胸を張って頷く。彼女の方は完全に留飲を下げたようで、もうマグノリアに対して含むところはなさそうだった。さっきまでかなり不承不承って感じだったのに、凄い切り替えの速さだ。

 勝ち気な割にこういうところはサッパリしてる人なんだなー。如何せん細かい性格については覚えていないから、何か新鮮な気分だ。

 

 ちなみに、『女神様に割って入る』というのはこの世界の神話を元にした慣用句である。

 由来はこうだ。その昔、農耕の女神フィルマトと航海の女神ヴィーンティオが大事な話をしていた時に、身の程知らずの男が二人の会話を遮り、空気の読めない求婚を二人の女神にした(せめてどっちかに絞れよ)。無礼な行いをした男に怒った二神はこの身の程知らずの男を船に変えてしまう。これが後に様々な伝説で活躍する魔法の船『ヴィルマーヴィス』の誕生秘話で、無礼で身の程知らずな男も女神様をたくさん乗せることが出来たのだからきっと本望だろう──という神話らしく多方面に酷い話である。

 そこから転じて、(特に身の程を弁えない)命知らずな行動をとることを『女神様に割って入る』と言うようになったとか。『船になる』というのはそれに合わせた、まぁ、ブラックユーモアだ。船になればいいのに。

 

 

「詫びに……そうだな、ギルド本部まで案内させてもらえるか? 警邏騎士がついてたらある程度はこの人混みを突っ切れるから、だいぶ近道できると思うぜ」

 

「ん、それは有難いな。頼むよ」

 

 

 マグノリアに向かって脳内で邪念を投げかけていると、ヤツはすっかり気を取り直した様子でエリーミンに先導を持ちかけていた。こういう気安さでアディを垂らし込んだのかな……。やっぱ今からでも始末すべきか……?

 ……もとい! 私達の目的地もギルド本部なんだし、此処は……。

 

 

「でしたら、ちょうどいいですね。実は私達もギルド本部に用事がありまして……そこまでご一緒させてもらえますか?」

 

「よろしくお願いしますっ」

 

「そうだったのか。誤解をといてもらったお礼もしたいし、私は全然構わない。何か用があるなら口利きしてあげるよ」

 

「それは心強いです」

 

 

 にこやかに請け負ってくれたエリーミンに、私もまた笑顔で応える。──よし、言質とった。これで当初の目的は達成できたね。

 これで後はマグノリアに先導させて、ギルド本部にゴールすればヤツはお役御免だ。いや、最初こそ脳が破壊されて思考が止まったけど、蓋を開けてみれば何てことはなかったな……。ギルド本部に到着したら、後はエリーミン経由で『淫魔の恩寵』の情報入手に向けて協力を取り付ければ準備は万端だ。

 

 

「いつまでも『警邏騎士』って呼ばれるんじゃあ決まりが悪いんで自己紹介させてもらうがよ」

 

 

 と。

 

 

「俺の名前はオッズワイド=マグノリア。気軽にワイドって呼んでくれ」

 

 

 人垣を分けて私達を先導しながら、マグノリアはふいにそう言った。ああ、そういえばなんだかんだでマグノリアの自己紹介とかまだされてなかったっけ。あの時点ではただの絡んできてた警邏騎士ってだけだったしな……。

 でも、愛称で呼ぶのは嫌だよ。なんで今日初めて会ったばかりのお前を愛称で呼ばないといけないん、

 

 

「よろしくお願いします、ワイドさん。私のことはアディって呼んでください。アディステアって呼ばれるの、慣れてなくって」

 

 

 あ!?

 

 あ、あああああああああああああああああああああああ!?!?!?!?

 呼ぶなアディ!! その男を愛称で呼ぶな!! そしてアディって呼ばせるなあああああああああああああああああああ!!!!

 

 ……クソったれ……。の、脳が半壊した……。この野郎、順調にアディとの距離を詰めやがって……。

 いや、冷静に考えればアディの交友関係なんだし誰と仲良くなろうが私が口を挟む筋合いはない……ない……んだけど……でもさぁ、ソイツは純愛ルートがさぁ……! かつて描いたウエディングドレス姿で頬を赤らめつつ幸せそうに微笑むアディの横顔の一枚絵(スチル)が…………ウッ!!!!

 ……はぁー……はぁー……。

 これ以上は許さん。許さんからな。こうなれば、これ以上アディとの距離が詰まる前に私が間に入るしかねぇ……!!

 決心した私は、笑みを顔に張り付けたままスッとアディの前に出て、二人の『射線』を遮るように動く。完璧に二人の間を遮った私は、完璧な笑みのままマグノリアに笑いかける。

 

 

「ええ、よろしくワイド。私も、エヴァと。あまり畏まられても肩が凝るから、もう少し楽に話してくれていいわよ」

 

 

 笑いながら言うと、マグノリアは少し困惑して、いかにも弁えたような調子でこう返してきたのだった。

 

 

「そうかぁ? 司祭サマ相手に砕けた口調ってのも、それこそ女神様に割って入るような感覚だがよ……」

 

 

 ………………。

 

 今まさにテメェが割って入ってんだよ……! アディと私の間によ……!

 船にしてやろうかテメェ……!!

 

 

 


 

 

 

STAGE_01 / アイテム選びは入念に

[in マニカナ教区 北区]

 

第四話 波乱の船出

 

 


 

 

 

 ──ちなみにこの後、五回くらいコイツのことを船にしたくなる瞬間があったけれど、長くなるので割愛しておく。




■あまちょ用語解説
 女神に割って入るような
 慣用句。(特に身の程知らずで)命知らずという意味。最近は単に命知らずという意味でも使われる。
 『規律の』フィルマトと『恐怖の』ヴィーンティオが大事な話をしていた時に、ある男が二人に対して求婚をして、二人の女神の怒りを買って船に変えられてしまった神話が由来。
 ちなみにその船は『ヴィルマーヴィス』と呼ばれ、神々の船としてその後の神話に度々登場する。
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