【完結】女転生者ですが、親友(♀)がエロゲの主人公と発覚したので死ぬ気で貞操を守ります。# シスターアディと淫魔の恩寵_Append   作:家葉 テイク

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第四五話 女神の間に割って入る ①

 ()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()殿()()()()()()()()

 

 

 ラシーダテラーの幸運を挙げるなら、それは二つあった。

 

 一つは、彼がドラゴンの光線を受ける直前に『腐敗』を地下に巡らせていたこと。

 エヴァも既に推測していたが、彼は『清廉薬』に対抗する為に、瓦礫による物理的な破壊を考えていた。

 その為に地下に『腐敗』を張り巡らせることでまずエヴァの移動を制限しようと考えていたのだが、それによってバラバラになった瓦礫が直撃前に吹っ飛び、結果的に威力を減衰することに成功したのだ。

 

 二つ目は、彼を襲った光の柱が『魔法』によるものだったこと。

 ドラゴンが放った光は、その名を『ドラルグナ・アネマギタ・ティタ・ディーシファイ』という最大(マグナ)級の魔法である。

 大気を頭部の先で圧縮し、その際の圧縮熱によってプラズマ化した大気を放出する──最大(マグナ)級の名に相応しい超魔法だ。

 だが、『腐敗』は魔法を無条件で腐敗させることができる。流石に最大(マグナ)級の一撃を完全に腐敗させることはできなかったが、ある程度減衰させることで『自分が乗っている瓦礫が吹き飛ばされるまでの時間稼ぎ』を行うことには成功した。

 

 こうしてあの一撃から命からがら逃げ伸びたラシーダテラーは、そのまま『腐敗』で地中に潜行し、最深層へと到達した──というわけだ。

 

 

「……ハァ……ハァ……。……ようやくだ。ようやくここまで来たのだよ」

 

 

 既に片腕を失った美青年は、息も絶え絶えに一歩一歩踏みしめるように歩く。

 

 そこは、氷でできた祭壇だった。

 

 道幅十数メートル程度の通路の先に鎮座する、どこか和風な意匠も感じさせる祠。

 石の壁も、十数メートルごとに段差になっている緩やかな上り坂も、行き止まりの土壁も、そこに掘られた小さな穴も、その中に置かれた地蔵のようなモニュメントも、全てが全て氷でできている空間。

 天井の高さは最早見通すことすらもできないほどに高いのが、此処が埋蔵神殿(ダンジョン)であることを如実に示していた。

 

 冷えた空気が肺の奥を刺すような感覚すらあるその空間を、ラシーダテラーはゆっくりと歩いていく。

 

 

 ここが、この神聖な空間こそが、イーガシア森林神殿の最奥である。

 

 

 ──戦闘は、確かにエヴァに敗北した。

 腕一本を失い、あのまま行けば殺されていたかもしれないくらいに追い詰められていた。

 

 ──ドラゴンからも、なす術なく逃げた。

 あの一撃から生還できたのは単なる幸運で、おそらく二発目があれば躱しきれなかったであろうことは想像に難くない。

 

 だが。

 生き残り、そして野望を成就させたのはラシーダテラーだ。

 エヴァはラシーダテラーの生還を認識できず、そして埋蔵神殿(ダンジョン)の最奥に到達した。

 

 ラシーダテラーは、喉の奥から漏れ出てくる笑いを抑えることができなかった。

 困難はあった。敗北もあった。想定外の事態によって、計画はズタズタに破壊された。ただし──

 

 

「最後に勝ったのは、」

 

「私だ──()()()()()()?」

 

 

 直後。

 

 魔女の囁きが、耳元から放たれた。

 

 

 

 ──ラシーダテラーの不幸を挙げるなら、それは一つあった。

 

 シスター・エーヴァンネーリジュを、敵に回したことだ。

 

 


 

 

STAGE_04 / バッドエンドなんて認めない

[in イーガシア森林神殿 深層]

 

第四五話 女神の間に割って入る ①

 

 


 

 

 

 ドラゴンを倒した私は、既に思い至っていた。……ラシーダテラーが、まだ生きている可能性に。

 その推測に辿り着くまでの材料は、既に場に用意されていた。

 

 魔法を『腐敗』させる機能、地形構造物を『腐敗』させるという読み。

 そして、()()()()()()()()()()()()()()()殿()()()()()()()()()()()()()

 

 

 

 少し歩くと、ドラゴンの一撃が空けた下層からの大穴はすぐに見つけることができた。

 今のところは、ドラゴンの息遣いは聞こえないけれど──それでも臭いはする。()()や、爬虫類の臭いだ。大穴の存在もあって、浅層の雰囲気はそれまでとは全く別物になっていた。

 

 

 

 

 あの時は気が動転していて全く気付かなかったけれど、ラシーダテラーがドラゴンの一撃で消し飛ばされているならば、あそこで腐臭を感じるのはおかしいのだ。

 だって、残らず滅却されていたら臭いなんて感じるはずがないからね。

 あそこで腐臭が感じ取れたということは即ち、『腐敗』によってかなりドラゴンの一撃を打ち消すことができており、その残りが浅層まで届いた、ということだ。

 ……あのドラゴン、扱う魔法からしておそらく風……っていうか大気そのものを操る感じだったからね。あの魔法を腐敗させて防御した──でも完全に消しきれず押し流された断片が浅層にまで押し流されたとかなのだろう。

 

 

「…………お司祭様が、生きてるの?」

 

 

 私の推測を伝えると、アディが面持ちを固くしながらそう問いかけて来た。

 私は、何も言わずに頷くことで応えた。厳密にいえば死んでるというか死に損なってるけど、そういうところは大事な部分じゃない。

 

 

「それでね、私はこれから決着をつけに行くから……アディにも着いてきてほしいのよ」

 

 

 『移動結晶』を見せながら、私はアディにそう付け加えた。

 もう、アディをのけ者にして決着をつけるのはやめにしたからね。……それに、これからやる策にはアディも必要になる。

 

 そこで、頭を掻きながらマグノリアが口を挟んできた。

 

 

「お前らで決着をつけるのは、俺も良いと思うけどよ」

 

「は? 何言ってるのよ。アナタ達にも当然ついてきてもらうけれど」

 

 

 当たり前だろ。

 『光の女神』がいるとはいえ、私もアディも近接戦闘能力についてはさほど高くない。ラシーダテラーがヤケを起こして自滅覚悟で突貫すれば、最悪相打ちまではあり得る状況なのだ。

 斬ったら炎上する魔具を持つマグノリアと、単純にフィジカルが強いレルオーティエを護衛として起用するのは規定路線である。いちいち確認を取らなかったのは、お前達は既に頭数に数えていたからだよ。

 

 

「……間違いなく信頼されてるってことのはずなのに、釈然としねえ……」

 

「姐さんからの信頼を素直に受け取れないなんて、警邏騎士は心に余裕がないんスね」

 

「そしてお前はなんで俺に辛辣なんだよ!?」

 

 

 それは多分、レルオーティエが私に近しい男であるお前に嫉妬しているからだと思うけれど……。

 これまでは気付けなかったけれど、レルオーティエが私に対して慕情を向けているという前提が分かれば、まぁそのくらいは想像がつく。私はアディ一筋だから答えられないけれどね。利用はするつもりだけれど。

 

 

「……こほん。で、『いいと思うけどよ』、の続きは?」

 

「ああ……。そこなんだがよ。『移動結晶』は既に目視したことのある『移動結晶』にしか転移できないんだろ? ラシーダテラーの野郎が『移動結晶』を持ってるとこなんて見てねえが、手立てはあんのか?」

 

 

 正論だ。

 確かにマグノリアの言う通り、私はラシーダテラーが所持している『移動結晶』なんて見たことがない。というかそもそも、ヤツが『移動結晶』を持っているかどうかも不明だしね。まぁ、私の見立てが正しければ一個も持ってないと思うけれど。

 

 

()()()()()()()()()()()()

 

 

 まぁ、持ってないなら持たせておけばいいだけの話だが。

 

 

「……は? どうやってだよ? 俺達が戦っていた間で、そんなタイミングなんてなかっただろ」

 

「あったじゃない。たった一度。私が『クアゲル』をラシーダテラーに叩き込んだ瞬間が」

 

「………………あ」

 

 

 

 

「があああああああッッ!!!!」

 

 

 燃え上がった炎を消し止める為か、ラシーダテラーは無様にその場で転がる。

 切り落とされた腕ともども、網目状に張り巡らされた川のお陰ですぐに消し止めることはできたようだけれど……、一発入れておくか。

 

 

「『クアゲル』ッ!」

 

 

 火を消し止めて安心したその隙を突くようにして、『クアゲル』でラシーダテラーに水流のボディブローを叩き込む。

 

 

 

 

 あの局面での『クアゲル』による攻撃は、正直無意味だ。『クアゲル』の純粋な操作パワーは、所詮女性一人分程度。質量攻撃をすれば多少意味はあるけれど、ただボディブローを叩き込むなんてのは無意味も良いところだ。

 

 あの局面で何故『クアゲル』を撃ったのかといえば、その理由は『移動結晶』をヤツの所持している『拡張旅袋(エキスバッグ)』の中に突っ込むことにあった。

 

 マグノリアの機転によって、ラシーダテラーの片腕を切り落とすことに成功したのは良かったけれど、炎上してしまったせいで、あの時は『リクイゲル』は追撃に使いづらくなっていたのだ。

 川の上をゴロゴロ転がって消化していることもあり、連撃が一旦途切れてしまうことになったから、数秒ほどヤツが独自に動ける時間が確保されてしまった。

 

 ヤツが苦し紛れに『腐敗』を地形破壊に使ってくることで『清廉薬』を無効化してくることは策を思いついた当初から考えてはいたので、そういう場合には、地形破壊をして私の策を打ち破ったと思い込んでいるヤツの傍らに転移し、『リクイゲル』できちんとトドメを刺す──という勝ち筋を残しておく意味で、あそこで攻撃に見せかけて『移動結晶』を仕込んだというわけ。

 二重三重の勝ち筋を残しておかないと、何でもありな埋蔵神殿(ダンジョン)での戦闘で勝ちを確信することなどできないのだ。

 

 

「……あの一瞬でやってたのか」

 

「こう見えて、意外と手癖が悪いのよ」

 

「流石は我らが姐さんッス」

 

 

 スリはやったことないけど、コツなら色々聞いたことがあるからね。

 それはともかく。

 

 

「そういうわけで、ラシーダテラーが生きているなら、ほぼ間違いなく『拡張旅袋(エクスバッグ)』もその中の『移動結晶』も生きてるわ。私の読みが正しければ、おそらくヤツは最深層近くにいる。アイツの計画を成就させたら、ここまでの攻防が完全に無意味になるわ。だから、此処で叩き潰す」

 

「……うん、分かったよ」

 

 

 私の宣言に、アディはこくりと頷いてくれた。

 ……アディからしたら、死んだと思っていた育ての親の陰謀を阻止するという形になるわけなので、複雑な心境なのは間違いないだろう。それでも、アディは決断してくれた。ヤツではなく、私の方を取ってくれた。

 それだけで、私に怖いものはもう何もない。

 

 

「まずは私が、ラシーダテラーの元に転移するわ。その後で『クアゲル』を使って移動用の『移動結晶』をヤツの背後に配置するから、貴方達は私が移動してから二秒後に転移してきて。それで挟み撃ちにして、アイツを倒すわ。……どう?」

 

 

 そう言ってから、私はアディに問いかける。

 アディはその言葉を聞いてからゆっくりと右目を瞑って、

 

 

「……うん、大丈夫。行けると思う」

 

 

 そう、しっかりと答えた。

 

 ……いやぁ、便利だなぁ『予知』の加護。

 アディの『加護』が私の死を映し出すと分かったということは、私がアディと行動を共にしていて、なおかつ私の計画によって状況が進むようなロケーションであれば計画の成否を判断することができるということ。

 だから最初に計画を説明してからアディに『予知』を使わせれば、その計画が上手くいくかどうかを判別できてしまうのだ。しかも、成否を私に伝えることで『予知の改変』の条件も満たせるから、成功する未来を引き当てるまで何度でも計画ガチャが引ける。

 使える状況は限定的だけど、あまりに便利すぎる……。

 

 私は『移動結晶』を一つずつアディ達に渡し、私は『リクイゲル』を操作して全身に薄く張り巡らせておく。転移したら至近距離にラシーダテラーがいるわけだからね。速攻で『腐敗』をぶつけられる可能性も警戒しておかないと。

 

 

 ──全ての準備を終えて、私は最深層にいるであろうラシーダテラーの元へと転移した。

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