【完結】女転生者ですが、親友(♀)がエロゲの主人公と発覚したので死ぬ気で貞操を守ります。# シスターアディと淫魔の恩寵_Append 作:家葉 テイク
「着いたな」
先導していたマグノリアが、そう言って足を止める。
木造土壁がメインの民家と違い、彼の背中越しに見える建物は全面石造りになっていた。
窓の数から分かる通り三階建て。入口がガラス戸になっていたり、内装も機能的で整然としていたり、全体的なヴィジュアルは石造りのオフィスビルといった感じの様子だった。
なんというか、此処だけタイムスリップしたような異物感がある。私も聖務で近くまで足を運んだことはあるけれど、何度来ても周囲の景色とのギャップには慣れないな。
此処が、探索者ギルドマニカナ教区本部だ。
「ありがとうね、ワイド。じゃあまた」
「おう、またな。エヴァ、エリーさん、アディちゃん」
さっさと帰れ──という念を込めて手を振って別れを告げると、マグノリアの方も手を振ってさっさと自分の業務に戻っていった。
私の必死の妨害工作の甲斐あって、マグノリアとアディの仲があれ以上接近することは避けることができた。代償としてマグノリアの私への好感度が若干高くなった気がするけれど……そのへんはエリーミンの愛称呼びも解禁させたことでバランスが取れているだろう。エリーミンなら別にマグノリアとくっついても(どうでも)いいし。
「じゃあ、中の案内はお願いするわね。エリーさん」
「ああ。分かったよ」
先導役をエリーミンに変わってもらいながら、私達はギルド本部へと入っていく。
エリーミンとも、この道中でそれなりに親しくはなれた。私が司祭長であることを明かすと立場の差で心の距離が生まれそうだったのでそこは伏せているが、その甲斐あってかエリーミンは大分私達に対して打ち解けてくれたと思う。
そんなエリーミンの背中を追ってギルド本部に入っていく途中で、
「エヴァ、随分ワイドさんと仲良くなりましたね」
アディが急にそんなことを言い出した。どことなく、不思議そうな様子を感じさせる声色だ。無理もない。基本的に、私の交友関係って相当狭いからね。友人と呼べる人間はアディしかいないし、私個人の交友関係は(悪影響なので)アディの前では見せないようにしているし。
アディと会話させない為に意図的にかなり会話を弾ませたから、そういう印象にもなろうというもの。私は深く考えずに、
「言われてみれば。確かに、警邏騎士にしては気安くて話しやすかったものね。脇が甘いからアディの護衛なんかは任せられなさそうだったけれど」
挙動を不自然に見せないようにそれらしい理由を話しつつ、アディからマグノリアへの好感度が落ちるような評価を冗談まじりに付け加えることも忘れない。このあたりの自分の思惑を隠す手管はもう慣れたものだ。純粋な善人ではこの年齢で司祭長なんてやれないのである。
私の計算通り、アディは若干テンションを落としながら、
「あー、そうなんですね……」
と苦笑して頷いた。
よし。まだ油断はできないけれど、これでアディがマグノリアと恋仲になる未来はだいぶ遠のいたはず。
ただでさえ私はクソッたれのエロフラグを全部ブチ折る為に戦わねばならないのだ。あんなガサツ男相手の好感度調整なんてカッタルいことをやっている暇はない。
あの野郎がエンカウントしたせいで、予定よりもだいぶ苦戦したけれど──ようやくこれで、本題を進めることができる。
ギルド本部の中は、想像していたよりも現代的だった。
見渡した限り、大きな正方形のフロアの両側奥に受付があり、その中央に上階への階段がある。手前側には探索者用なのか依頼者用なのか分からない待合席と売店のようなブースがごろごろ点在している。
このあたりはゲームでも見慣れた光景だったのだけれど、実際のところこの目で見るまでは大まかなヴィジュアルすら忘れていた。実際に見てようやく『あ~そういえばこんな感じだったな~』となった程度である。
……どうでもいい記憶なんてこんなものだ。所詮は埃の被った記憶ということか。
さて、此処での私の目的は、『あまちょ』での筋書きと同様に『淫魔の恩寵』解除の為の素材・情報集めの為に探索者としての活動を開始することと、その為の協力体制をエリーミンに約束させることだ。
そして実は、前者の目的は(私については)既に探索者資格を持っているので完了していたりする。
──ちなみに、教会関係者の探索者資格取得のハードルは意外と低い。
探索者資格というのは別に身の安全を守る為の足切りという意味合いではなく、身元も知れないヤツが
その代わり
ともあれ。そういう事情があるので、今回は後者の方が重要になってくる。
本来の未来では、アディは此処で悪徳情報屋に多額の料金を吹っ掛けられ、あまつさえその値引きを身体で支払うよう持ち掛けられる。ただし、この私がそんなクソったれな展開を許す訳がない。だからそもそも悪徳情報屋とはかかわりを持たず、エリーミンに作ったコネを使って情報収集の体制を作ってやるのだ。
「そういえば、お前達の用件を詳しく聞いてなかったな。教会の人間がギルドにってことは、依頼か?」
ギルドの中を歩きながら、エリーミンがこちらに問いかけてくる。
先程の道中の会話の甲斐あってか、エリーミンはだいぶ気安い感じで私達と話すようになった。本来の私の立場を考えたらだいぶおかしなことになってはいるわけなんだけど、エリーミンにはまだ私が司祭長だってことは話してないからね。ただの司祭と本部のチーフだったら、格的には同じと言っていいだろうし。
「いえ。実は、この子が厄介な呪いをかけられてしまって。解呪にまつわる情報を集める為に、探索者資格を取得したいのよ」
「呪いだと……?」
私の説明に、エリーミンは思いっきり怪訝そうな表情を浮かべた。
無理もない。おそらく今、彼女の頭の中では礼拝堂への押し込み強盗と呪いの話が結びついて、ものすごい勢いで推論が導き出されていることだろう。
私としても、そこは最初から隠すつもりはない。
「……想像の通りよ。だから、通常のルートとは違う情報網が欲しいの」
つまり、この呪いにまつわる一件には、明確な黒幕が存在しているという暴露。
そして誰かが何らかの意図を持っていることが明確な以上、
得心がいったのか、エリーミンは頷いて、
「……なら、被呪者がわざわざダンジョンに行く必要もないんじゃないか?」
「……え?」
と、そんなことを言い始めた。
「なんなら、友人価格で私が請け負っても良いぞ」
そんな──全ての前提を覆す一言を。
■あまちょ用語解説
女神の御許へ旅立つ
慣用句。概ね『死ぬ』と同義。
この世界では、