【完結】女転生者ですが、親友(♀)がエロゲの主人公と発覚したので死ぬ気で貞操を守ります。# シスターアディと淫魔の恩寵_Append 作:家葉 テイク
「なんなら、友人価格で私が請け負っても良いぞ」
「え、ホント?」
思わぬ申し出に、私は食い気味でリアクションしてしまった。
これはツイてる。……エリーミンの好感度を上げておいてよかった!! 此処でエリーミンに探索関係を全部任せられるなら、当然それが一番理想的な展開だ。エリーミンの実力は折り紙付きだし、何よりアディを
が、
「いや。駄目ですよ、エヴァ」
当然、このお人好しがそんなラクを許してくれるはずもなく。
速攻で乗っかろうとした私を制するように、アディは冷静な声色で待ったの声をかけた。お人好しの聖女サマは困ったような申し訳なさそうなような表情を浮かべながら、
「『淫魔の恩寵』の件は、私の問題なんですから。それに、まだ糸口すら見つかっていないわけで、エリーさんの好意に甘えて終わりの見えない依頼を押し付けるのは良くないです」
「私
そこは釘を刺しつつ、私はエリーミンに答える。
「……ということだから、申し出は有難いけど遠慮しておくわ」
「そうか。うん、アディちゃんは立派だな! そういうことなら、何も言うまい。私は応援するよ」
くっ、千載一遇のチャンスが……。
いや、こうなるのは分かっていた。分かっていたんだ。
アディにも色々と考えがあるのは分かっているし。その辺は色々とのっぴきならない事情があるのも、『あまちょ』の筋書きを知っている私は理解している。
というのも──実はアディには、『未来予知』の能力みたいなものがある。
より正確には、『安寧を脅かす危機を予見する加護』だったっけ。『あまちょ』の筋書きでは、アディが探索者を目指すきっかけこそ『淫魔の恩寵』の解呪の為だったけれど、基本的にストーリーで厄介ごとに首を突っ込む理由の大半はこの『未来予知』によって大きな災厄を予見したことによる。
そうして段々と、物語の軸は『起きうる災厄の回避』へとシフトしていくのだ。
この件については、私も『そういう能力がある』と聞かされているだけで具体的にどういう未来を見ているかは知らないけれど──確かこの時点で『イーガシア森林神殿』でゴブリンの『氾濫』が起きるのを予見していたはず。お人好しのアディとしては、これは防ぎたいだろう。
アディには、『どこで誰かが聞いているか分からない以上、万一誰かに「未来予知」のことがバレたらアディの身が危ないので、基本的には「未来予知」の話はするな。伝えたい場合は行動で伝えろ。私はそれを見て察するから』──と釘を刺してある。
なので基本的に、『未来予知』関連で何かしたい時、アディは行動によって私にアピールしてくることが多い。これも多分、アディなりに『未来予知』の関係で探索者として活動したいという私へのアピールだと考えていいと思う。
しかしそうなってくると、『アディが見た未来の内容を知らない』ことになっている私としては、その動きを尊重してやるしかない。……まだ、こんなところで『私が未来の事実を知っている』という札を切る訳にはいかないからね。
……ああ、アディが裏に引きこもっているだけで全部の問題を解決できたらどれだけいいことか。何だかんだでそうはならないあたり、やはりアディはこの世界の『主人公』ってことなんだろうけど。
「じゃあ、せめて探索者資格交付を融通してやろうか。本来は手続きに数日かかるんだが、私が本部長に話を通して即日で交付してもらってくるよ。二人分で良いか?」
「それなんだけど、私はもう持ってるわ。アディの分だけお願いできるかしら?」
「了解」
「よっ、よろしくお願いします!」
ぺこりと頭を下げるアディに軽く手を振って、エリーミンはさらに歩を進めていく。
「あ、でも、何か情報があったら教えてね。……この子の受けている呪い、『淫魔の恩寵』って言うんだけど……『
「……そ、それは……! ……わ、分かった。それは大変だ……。何か情報が入ったらすぐに伝えよう」
ついでのノリで頼んでみたところ、思いの外深刻に受け止めてもらえたらしい。
やや頬を赤らめたエリーミンは、あっさりと快諾してくれた。そうなんだよ、本当に大変なんだよ……!
……ん?
あれ?
……なんてことだ。一つ目の目的を達成する前に、本題のつもりだった二つ目の目的『エリーミンと協力体制を構築する』が達成出来てしまった。ラッキー。
受付の間を通って二階への階段を登っていくと、二階は一階よりもオフィスビル然とした、廊下と個室だけの空間だった。
私たちは、資料室とか魔具保管庫とかがあったりするのだろう空間を迷いなく歩くエリーミンについていく。流石に此処に見るべきものはないらしく、エリーミンも特にこのフロアについて解説することはなかった。
ただ、物珍しそうにキョロキョロするアディが面白かったのか、エリーミンは楽しそうに振り返る。私は後ろからアディを小突いて、
「アディ。あんまりキョロキョロしないの」
「ハハハ、別にいいよ。見て困るようなものがあるわけじゃない」
破顔してから、エリーミンはアディに問いかける。
「興味あるか? 此処にはギルドの探索者もなかなか来ないからな。裏方仕事の事務員や私みたいなチーフくらいしか用がないし」
「すみません、つい。普段は丘の上から降りることってそんなになくって……」
「それはそうか。司祭サマは忙しいものな」
「それにしても、アディの好奇心の旺盛さは頭抜けてるけどね……」
「気にするな。好奇心の旺盛さは、探索をするときには長所になる」
エリーミンのフォローに、私は『そんなもんか……』とぼんやり納得する。こういうところは、RPGの主人公らしいところかもしれない。
RPGの主人公って、プレイヤーの都合でとりあえずマップをくまなく探索するし。そういう性格が現実に落とし込まれると、こういう感じなのかな。
「そうするとちょっと惜しいな。アディちゃんはきっと良い探索者になるのに」
フォローを受けてちょっと気を取り直したアディに笑ってから、エリーミンはそのまま近場にあった三階への階段を登っていく。
「通常の手順を踏むなら一階の受付で手続きすればいいんだが、今回は特例での資格交付だからな。本部長室まで行くぞ。軽く質問されるかもしれないが、素直に答えてくれればまず問題はないから安心していい」
「わ、分かりましたっ」
背中越しに気楽に言うエリーミンに対して、アディは心持緊張したような様子だった。
これで本番にはめっぽう強い子なんだけど、かといって緊張しないわけではないからなぁ……。思ったよりも物々しい空気になってきたものだから、多分焦っているのだろう。ボロを出しそうになったらフォローしてあげようか。
「さ、着いたぞ」
そう言って、エリーミンは心持他よりもしっかりしたつくりの木戸の前に立つ。
軽くノックをすると、エリーミンは返事も待たずに扉を開いた。背が低いせいか、つんのめるようにして扉を乱暴に押し開けるエリーミン。その後ろに立つアディの肩越しに、私は室内の様子をさっと確認してみる──。
「……だからね、エリー君。何度も言っているけれど、ノックをした後は返事を待ってだね……ん?」
そこにいたのは、気弱そうな雰囲気の、しかし人は良さそうな顔立ちをした初老の男だった。
しっかりとした作りの木机に向かっていたその男は、エリーの後ろに立つアディに気付くと、ぱっと立ち上がって困ったように頭を搔く。
「おや、教会のご来客とは珍しい。エリー君がそれを案内しているとなると、明日あたり『氾濫』でも起きかねないね……」
さて。
此処から先は、私もちょっと気を引き締めてかからねばなるまい。
「縁起でもないことを言うな、本部長。……こほん、紹介する。こちらシスター・アディステア。後ろのは付き添いのシスター・エーヴァンネーリジュ」
「どっ、どうも初めましてっ」
「…………ご無沙汰しています、本部長」
「いやいやどう……やや! 司祭長殿が何故此処に!? ──ああいや、まずはそちらのシスターさんにご挨拶をば……」
何せ、コイツは────
「お初にお目にかかりますね。ボクは、ガイルバルト=トレイルソン。一応、この探索者ギルドマニカナ教区本部の長を務めていましてね」
──『あまちょ』の序盤でアディに悪徳探索者を差し向けて『強制エロイベント』を引き起こした、憎き『ステージボス』の一人なのだから。