【完結】女転生者ですが、親友(♀)がエロゲの主人公と発覚したので死ぬ気で貞操を守ります。# シスターアディと淫魔の恩寵_Append 作:家葉 テイク
「い、いや待て、待て! エヴァちゃん、司祭長ってどういうことだ!?」
トレイルソン本部長の自己紹介に被せる形で、エリーミンは驚愕しながらこちらに向き直ってくる。
うん。このリアクションは想定通りではある。
「どういうことって、言葉の通りよ。私、マニカナ教区の司祭長なの。アディは助司祭ね。でも、別に私達の間柄には関係ないことじゃないかしら? 教会とギルドって、建前上はともかく実務上は全く別の組織だし」
「いや、そういう問題じゃなくてだなぁ……!」
せっかく好感度を上げたのに、立場の話でコミュニケーションが白紙になっては敵わない──ということで、私はゴリ押しで『そんなのどうでもいいから』路線を突き進む。
エリーミンの方は、困ったように表情を歪めながらも、それ以上は何も言えないようだった。
「たとえ司祭長でも、
「ハハハ、シスター・エーヴァンネーリジュは気さくな方ですねぇ。ボクもエリー君にあやかりたいものですよ」
「本部長とは、互いに組織を代表する者同士、折り目正しい関係性を築いていきたいものです」
「あ、すみません。ボクちょっと調子に乗ったね……」
エリーミンにかこつけて距離を詰めて来たトレイルソン本部長へ『個人的に親しくするのはエリーミンだけだよ』と言外に宣言して、笑みを返す。トレイルソン本部長は出鼻を挫かれて苦笑するばかりだった。意外とジョークの分かるヤツである。
……さて、冗談を交わして司祭長ショックをなぁなぁにしたところで……。
「本題に入りましょう。と言っても、そんなに時間のかかる用事ではありませんが」
そう言って、場の主導権をエリーミンに返す。
残る目的は、アディの探索者資格の交付のみ。黒幕の手先となっているトレイルソン本部長からしたら、このタイミングで司祭長と揉め事を起こしたら計画に不都合が出る可能性があるから、まず妨害はすまい。
──ガイルバルト=トレイルソンは、『あまちょ』におけるいわゆるステージボスである。
『あまちょ』では全部で七つのメインクエストがあるんだけれど、コイツはそのうちの最初のメインクエストのボスだ。
メインクエスト①では、アディは加護によってイーガシア森林の
そして『氾濫』の被害を抑える為にギルドの探索者と協力していく。ただし、実はこの『氾濫』自体が黒幕の計画の影響で発生しており、黒幕の手下であるトレイルソン本部長は、アディの干渉によって計画が明るみに出るのを恐れて、手駒の悪徳探索者を使って
これが『あまちょ』に八つある強制エロイベントの二つ目なのだけれど──これは事件自体を起こさないと既に決めているので今のところは考えないことにする。状況が悪化したら随時対策を練ろう。
トレイルソン本部長そのものは、実際のところ大した脅威ではない。でも、コイツは追い詰めると黒幕から貸与されている『堕落の』の系統の魔具で自らを強化して暴れ出す。
『あまちょ』においては、アディは
タイミングから言って、おそらくトレイルソン本部長が『クロ』なのは『あまちょ』とは変わらないはず…………だけれど、断定してコイツを始末するのは流石に拙速が過ぎる。
私の存在で、少なくとも教会の勢力図は『あまちょ』とは全然変わっているしね。黒幕の計画がそれによってどこまで変わっているかが、まだちょっと読み切れていない。
つまり、私の当座の方針としては『トレイルソン本部長の調査』と『なるべく低リスクでの「氾濫」の鎮圧』ということになるわけだ。
「──はい、ありがとうございました。エリー君の紹介だけあって、非常に安定感のあるいい子だったね。うん。これなら、特例で即日交付しても良いです」
「ありがとうございますっ!」
──と、状況を頭の中で整理しているうちに、話の方は無事に纏まったらしい。
アディが頭を下げてお礼を言っているのを尻目に、私はエリーミンに話しかける。
「探索者認定証の現物が届くの自体は後日……ってことになるわよね」
「ん? 多分明日あたりになると思うが……それがどうかしたか?」
「せっかくだし、アディの腕鳴らしにイーガシア森林に行ってみようと思ってて。でも、認定証がなかったらクエスト受注ってできないわよね? どうしましょ」
「ああ、それくらいなら私が口添えしてやるよ。……しかし、イーガシア森林ね。よく初心者向けの
「私は前に資格を取っていたって言ったでしょう? これでも、当時はそこそこ潜っていたのよ」
「ほう……。行動派な司祭長サマもいたもんだな」
「必要に駆られてね。あと、当時はヒラの司祭」
適当に話していると、アディが駆け寄って戻ってくる。
アディは首をかしげて、
「何の話をしていたんです?」
「
「神学的だなぁ」
感心したように言うエリーミンと共に、私達は一階へと降りていく。
──ちなみに、アルプの宝というのはこの世界でいう『昔取った杵柄』みたいな意味の慣用句だ。
かつて、『鍛錬の』ビーアルプスという開拓の女神への信仰が今よりも盛んだった時代は、大きな杯の前で演武を披露することで信徒達の鍛錬を奉納する大きな祭があり、そうして奉納した努力が実を結んだ時には『アルプの宝をお借りした』という風に言ったらしい。
そこから、積み重ねてきた鍛錬や経験が役に立った時には『昔取った杵柄だよ』と言うノリで『アルプの宝だよ』と言うようになったそうだ。
……もっとも、こんなものは子どもでも知っている有名な神話なのだけれど。どこが神学的だよ。
「私とエリーさんは受付でクエストの受注をしてくるから、そっちの待合所で待っててくれるかしら? 何か欲しいモノがあったら見ていてもいいわよ」
「は~い。分かりました」
アディに言ってから、私はエリーミンと一緒に受付に行く。と言っても、手続き関連は全部エリーミンにお任せするので、私がやるのは受注するクエストを選ぶくらいだ。
ちなみに私が選びたいのは、『イーガシア森林神殿に関する依頼』。
何故なら──今はそこが、一番安全だから。
そもそも、イーガシア森林神殿で『氾濫』が発生するというのは──実の所、黒幕にとっても想定外の事象だった。これは、『あまちょ』で語られていたことだ。
原因は黒幕の陰謀によるところだったけれど、その影響として『氾濫』が発生したのは予想外。だから、加護を持つアディが『氾濫』に関わる依頼を受けようとしたのを確認して黒幕の下請けであるトレイルソン本部長は大焦りしたという流れだったのだ。
この流れを踏まえると、イーガシア森林神殿の依頼を受けるのは危険なのでは? と思うかもしれないけれど──それは違う。
現状、黒幕側は『氾濫』が起きるということを
そんな状況でわざわざアディを襲えば──こちらに何か後ろ暗いところがありますと宣言しているようなものである。リスクがないと思っている人間が、そんなリスクのあることをしでかさないという当然の推論だ。
そして、『あまちょ』本来の筋書きのタイミングを考えるに、『氾濫』が本格化するまでにはまだ数日の余裕がある。つまり、ゴブリンの危険もそこまで高くないということだ。
人魔両方のリスクが限りなく低い今、イーガシア森林神殿は限りなく安全な『初心者向け
そしてそんな安全な場所で、アディに
「えーと、イーガシア森林の
言いながら、私はイーガシア森林関連の依頼を探す。
探してみると、意外とイーガシア森林関連の依頼は少なかった。
無理もない。初心者向けのわりに深層になるにつれて険しくなるあの
それでも探してみると、一つだけイーガシア森林関連の依頼を見つけた。
依頼には、こう書かれている。『モナッポルの採集依頼』──と。
……採集依頼かぁ。これならアディの危険も少ない……か?
■あまちょ用語解説
アルプの宝
慣用句。『昔取った杵柄』とほぼ同義。
古来、『鍛錬の』ビーアルプスに見立てた杯に演武を奉納し、鍛錬を捧げる祭があった。信徒達は過去の努力が実を結ぶと『アルプの宝をお借りした』と言い、そこから『役に立つかつての経験』をアルプの宝と言うようになった。
フィルマト信仰が主流になった現代でも伝承は語り継がれており、言い回し自体は残っている。
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『あまちょ』では依頼はイベントフラグ状況によって固定なので、何回宿屋で寝泊まりしても変動することはないのですが、現実ではそうはいかないよねという。