ヴィランの秘密兵器です。異論はありません。   作:なゆさん

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2話

――作戦決行当日

 

「さてと、こっちは準備オッケーだよ。」

 

僕はストレッチをしながら黒霧に告げる。

 

「そうですか。死柄木弔は?」

 

「とっくにできてる。さっさとゲート開け。」

 

おお~。弔君がいつになくやる気だ。そんなにオールマイトを倒したいのかな?特に接点なさそうだけど。

 

「分かりました。では」

 

黒霧が僕達の目の前に黒いモヤを広げる。コレ、ちょっと入るの怖いんだよね。不気味だし。なんか黒霧このゲートを『私の中』なんて言ってたし。

――まあもう慣れたけど。さてと、じゃあ行こうかな。

 

僕達は目の前の黒い空間に足を踏み入れた。

 

 

◆◇◆◇◆

 

 

USJについた。

 

「あれ?オールマイトは?」

 

いない。あの一人だけ画風の違うムキムキマンが。

 

「13号にイレイザーヘッドですか。先日頂いた教師側のカリキュラムではオールマイトがここにいるはずなのですが。」

 

気づかれたにしては僕達への対応がない。トラブルかな?

 

「どこだよ。せっかくこんなに大衆引き連れてきたのにさぁ。オールマイト、平和の象徴いないなんて。――子供を殺せば来るのかな?」

 

「多分待ってれば来ると思うけど……。ま、弔君の好きにしてよ。」

 

おっと、イレイザーヘッドが戦闘態勢に入ったな。情報では見た相手の個性を消す個性。中々に厄介な個性だ。ただ、それ以外は訓練していても所詮無個性レベル。この数の暴力、どう対処する?

 

イレイザーヘッドが跳躍し、階段下へ飛び降りる。直後、遠距離個性の連中が狙いを定めるが、イレイザーヘッドは個性を消して冷静に対処、昏倒させる。

その後も、迫りくる敵を巧みに捕縛武器を使いつつ、対処していく。

反応が速いし動きも予想以上だ。プロを侮っていたかも。異形型の個性持ちも、体術のみで昏倒させている。コレがイレイザーヘッドか。

 

「肉弾戦も強く、その上ゴーグルで目を隠されていては誰の個性を消しているのか分からない。集団戦においてはそのせいで連携が遅れを取るな。なるほど、嫌だなプロヒーロー。有象無象じゃ歯が立たない。」

 

弔君の分析通りだ。チンピラが団結した程度で潰れてくれる程、ヒーローは甘くないらしい。

――だが無敵ではない。よーく見て……今。

 

「黒霧。」

 

「ええ。分かっています。」

 

イレイザーヘッドのまばたきの隙に黒霧にワープゲートで生徒達の方へ向かわせる。さっさと分断してしまわないと、一人でも逃げ出されたら別のヒーローを呼ばれて面倒な事になる。

 

「ふう。第二段階は完了と。」

 

打ち漏らしが数人いるけど、黒霧が取り逃がすようなヘマはしないだろう。一応生徒を守っている13号は個性こそ強力だが戦闘経験に乏しいから黒霧の敵ではない。散らした生徒のうち分けはテキトーだけど、まあ殺すのが目的じゃないし、最低限逃げられなければ問題はない。いくら金の卵でも卵は卵だ。脳無や僕らの敵じゃない。

 

 

◇◆◇◆◇

 

 

生徒達を分断して少し経った。

相変わらず、イレイザーヘッドはチンピラ共相手に無双している。だが、

 

「そろそろかな。僕が行っていい?」

 

「ああ?俺が行くに決まってんだろ。」

 

「えー、なんでさ。僕でも良くない?」

 

「イレイザーヘッドの個性が消えるのはほんのまばたきの一瞬だ。その一瞬を突くならオマエの個性より俺の個性の方が向いてる。」

 

「むむむ…。」

 

残念ながら、今回は弔君が正論だ。

 

「チェッ。しょうがないなぁ。」

 

「ハッ!」

 

弔君がイレイザーヘッドに向かって駆け出す。

 

「本命か!」

 

イレイザーヘッドは捕縛武器を繰り出しつつ弔君と距離を詰める。

 

「ふっ!」

 

イレイザーヘッドの肘打ちが弔君に繰り出される。が、弔君はそれを左手で受け止め、そして、

 

「動き回るので分かりづらいけど、髪が下がる瞬間がある。1アクション終えるごとだ。そしてその間隔は、だんだん短くなってる。無理をするなよイレイザーヘッド。」

 

イレイザーヘッドの右肘が崩壊により、崩れて筋肉が丸見えの状態になった。これでもはや右腕は使い物にならないだろう。

咄嗟に弔君を突き飛ばし、距離を取るイレイザーヘッドだったが、すぐさまチンピラに囲まれる。

 

「その個性じゃ、集団との長期決戦は向いてなくないか?普段の仕事と勝手が違うんじゃないか?君が得意なのは、あくまで奇襲からの短期決戦じゃないか?それでも真正面から飛び込んできたのは、生徒に安心を与えるためか?」

 

ヴィランを処理するイレイザーヘッドの動きが明らかに悪くなっている。慣れない集団との長期戦闘、右肘の負傷、個性の酷使。流石のプロも体力を消耗したか、息も荒くなっている。

 

「かっこいいな――あ?なんだよ。」

 

僕が弔君の肩をつつく。

 

「脳無出すんだったら僕にやらせてよ。少しとはいえ、ここでオールマイト用って先生から言われた脳無を他の事に使いたくはないしさ。」

 

「……まぁいいよ。」

 

よし、許可が降りた。

 

「という事でイレイザーヘッド。僕とアソボ?」

 

 

◇◆◇◆◇

 

 

side相澤

 

「僕とアソボ?」

 

あくまで純粋に、悪意など一欠片も感じさせない異質な女。一瞬で俺の横に移動したアレを下げてまでこいつが出るか。正直、俺としてはアレと黒いモヤのやつと同レベルで厄介そうな相手であるこいつと、今やるのは避けたいところだが、そうも言ってられない。

油断せずに構える。

 

「何処見てんのさ?」

 

――は?

 

「そぉれ!!」

 

「ぐっ!」

 

かなりの力で蹴飛ばされる。

――瞬間移動か!!厄介な!!

女を見ると、そこには既に姿はない。

 

「目、痛いんじゃない?ずっと目開けたままだとキツいでしょ?」

 

耳元で声。

即座に裏拳を放つが、手応えはない。瞬間移動に溜めやラグがないタイプの個性。厄介だ。更にこの女は、

 

「……慣れてるな。」

 

「ああ、やっぱり分かる?やりづらいでしょ?」

 

徹底的に俺の行動を先読みされている。()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()ようだ。

 

「イメトレ、積んできたんだよね~。」

 

「ぐっ!」

 

のん気な言動とは裏腹に、苛烈さを増す女の攻撃。

チッ!!右腕が使えない上にこんな相手か!!

 

「そこ〜。」

 

「うっ!!」

 

左腕に一瞬で抱き着かれるそして、

 

『ゴキ』

 

鈍い音が響いた。

左腕が折られた!!くっ、このままでは!!

 

「はい焦った〜。」

 

「がはっ!!」

 

背中を鋭い痛みが駆け抜ける。

後ろを振り返ると、いつの間にか持っていた日本刀で俺の背中を斬った少女の姿。

 

「流石。咄嗟に前に動いて切り口を浅くしたね。そのままだったら死ななかっただろうけど確実に戦闘不能になってたのに。」

 

「はぁ、はぁ、はぁ……。」

 

「まっ、とりあえず!!」

 

次の瞬間、俺の視界は暗転した。

 

 

◇◆◇◆◇

 

 

「よし、いっちょ上がり。」

 

イレイザーヘッドを気絶させ、弔君の元に戻る。

 

「どうだった?」

 

「ああ、よかったよ。だがイレイザーヘッドのトドメはどうした?」

 

「え?殺るのはオールマイトでしょ?」

 

「あ?オールマイトが第一優先ってだけだ。他のヒーローとかも殺せるなら殺す。」

 

「へー。面倒だから僕はいいや。任せるよ。」

 

「自分から戦っておいてよくそんな事言えるな…。」

 

そうこう言ってる内に、黒霧が帰ってくる。

 

「死柄木弔、全能未来。」

 

「黒霧、13号はやったのか?」

 

「行動不能にはできたものの、散らし損ねた生徒がおりまして、1名、逃げられました。」

 

へー、黒霧にしては珍しいミスだな。雄英生侮り過ぎたか?

 

「は?はぁ……」

 

あ、キレた。

 

「んん…んん…黒霧、お前…!お前がワープゲートじゃなかったら粉々にしたよ…!」

 

首元を掻きむしりながら、不機嫌そうにそう言う弔君。

 

「――流石に何十人ものプロ相手じゃかなわない。ゲームオーバーだ。あーあ、今回はゲームオーバーだ。帰ろっか。」

 

「そだね。しょうがない。」

 

まぁ黒霧にもミスはあるよ。いつも苦労かけてるし、これくらいは許してあげないとね。

 

「あ、そうだ。帰る前に平和の象徴としての矜持を、少しでも――」

 

瞬間、水辺で僕達の様子を伺っていた生徒達に、弔君が向かって行った。

 

「へし折って帰ろう!!」

 

そして、弔君の五本の指が、女子生徒に触れ……

 

「チッ。ホントかっこいいぜ。イレイザーヘッド。」

 

へ?もう起きたの?

 

「もう少し眠ってて、よ!!」

 

イレイザーヘッドの顎を蹴り上げ、完全に意識を奪う。

そして、弔君の方は、緑髪の少年が弔君に飛びかかり、

 

「手ぇ離せ!SMASH!」

 

咄嗟に脳無が弔君を庇う。拳が脳無に当たり、かなりの風圧が辺りに吹き荒れた。脳無じゃないとまともに食らったら少しヤバかったかもね。

 

「良い動きをするな。SMASHって、オールマイトのフォロワーかい?まぁ、いいや、君。」

 

そして、脳無が緑髪の子、弔君が残り二人にトドメを刺そうと手を伸ばし、

 

『ガシャン』

 

入口のドアが吹き飛ばされた。

……あ、来た。

 

「――もう大丈夫。私が来た!」

 

「あ~、コンティニューだ。」

 

ゲームのメインターゲットが、やって来た。

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