ヴィランの秘密兵器です。異論はありません。   作:なゆさん

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3話

「嫌な予感がしてね。校長のお話を振り切ってやって来たよ。来る途中で飯田少年と擦れ違って、何が起きているかあらまし聞いた。もう大丈夫、私が来た!」

 

オールマイト。やっぱ生は違うな。画風が違うよ画風が。

 

「待ったよヒーロー。社会のゴミめ。」

 

弔君が笑みを深める。散々お預け食らったからね。我慢出来ないって感じだ。

 

オールマイトは、一瞬で広場に残ってたチンピラを片付け、イレイザーヘッドを抱きかかえる。そしてこちらを向いて、

 

「――っと!危ないなぁ。」

 

殴られそうになった弔君を庇い、個性で出した金属板でその拳を受け止める。ヒェ~、金属板がめちゃくちゃ陥没してるよ。

その隙に、オールマイトは生徒3人を救出した。一瞬驚愕してたから、受け止められるのは想定外だったようだ。

 

「ん〜速いなぁ。オールマイト。」

 

「くっ、強い!みんな入口へ!相澤君を頼んだ。意識がない、早く!」

 

「……助けるついでに殴られそうになった。フッ、国家公認の暴力だ。流石に速いや、目で追えない。けれど思ったほどじゃない。やはり本当の話だったのかな。弱ってるって話。」

 

弔君が嗤う。あの~、僕にお礼の一つもないんですか?一応助けたんですけど?……あ、ないですかそうですか。

 

CAROLINASMASH(カロライナスマッシュ)!」

 

「脳無。」

 

オールマイトが弔君へ放ったクロスチョップを、脳無が受け止める。

 

「ん…マジで全然効いてないな!」

 

追撃の拳。脳無には効果がない。

 

「なら…ふん!」

 

オールマイトの拳が、脳無の顔面を捉える。だが、

 

「顔面も効かないか!」

 

オールマイトは何度も拳を振るうが、脳無にはどれも効果がない。

 

「効かないのはショック吸収だからさ。脳無にダメージを与えたいなら、ゆっくりと肉をえぐり取るとかが効果的だね。それをさせてくれるかは別として。」

 

え?と、弔君?敵にそんな簡単に情報与えちゃだめだよ?分かってる?

 

「わざわざサンキュー!そういうことならやりやすい!」

 

オールマイトのバックドロップ。

コレは……チャーンス!

 

「おいおい」

 

「そ…そういう感じか…!」

 

「ナイス黒霧!」

 

黒霧がワープゲートで脳無の上半身をオールマイトの身体の真下に移動させ、脳無がオールマイトの横腹を全力で抑える。奇しくも、作戦通りの立ち位置。

 

「コンクリに深く突き立てて動きを封じる気だったか?それじゃ封じれないぜ。脳無はお前並のパワーになってるんだから。フフフッ。いいね黒霧、期せずしてチャンス到来だ。」

 

弔君が上機嫌に言う。

 

「君ら、初犯でこれは……覚悟しろよ…!」

 

「キャー、怖〜い。なんちって。」

 

「あんまりふざけるな未来。――黒霧。」

 

「私の中に血や臓物があふれるのは嫌なのですが、あなた程の者ならば喜んで受け入れる。目にも止まらぬ速度のあなたを拘束するのが脳無の役目。そして、あなたの身体が半端にとどまった状態でゲートを閉じ、引きちぎるのが私の役目。」

 

オールマイトは抵抗しているが、不利な体制で自分と同程度のパワーを持つ脳無の拘束を破るのは難しく、だんだんワープゲートに沈んでいく。

――そして後少しという時、

 

「オールマイトー!」

 

先程の緑髪の少年が、涙目で駆け出してきた。

 

「浅はか。」

 

すぐに黒霧がワープゲートで対処しようとするが、

 

「黒霧、油断しないで。別方向から来てる、よっと!」

 

「ぐっ!!」

 

奇襲を仕掛けてきた茶髪の少年を蹴り飛ばす。蹴り飛ばした先には緑髪の少年がいて、二人はぶつかって倒れ込んだ。

この茶髪の少年、完全に黒霧の実体部分を捉えていた。黒霧のワープゲートの仕組みを理解しているようだ。

あの短時間の接敵でここまで辿り着いたとしたら、相当凄いな。天才ってやつだ。

 

「あ、ありがとうございます、全能未来。」

 

「ん~ん、全然。――あ、脳無凍ってる。」

 

「てめえらがオールマイト殺しを実行する役だとだけ聞いた」

 

目を離した隙に、赤白髪の男の子に脳無が凍らされる。

あ、オールマイトが拘束から抜け出しちゃった。あ~あ、せっかくのチャンスだったのにな。

ついでに弔君も奇襲受けたみたいだけど、軽く躱していた。

 

「うーん、すごいね弔君。最近の子供は。」

 

「ああ、恥ずかしくなってくるぜ敵連合。――脳無。」

 

脳無が動き出す。凍らされた部分が砕けるが、すぐに再生する。

 

「何だ?ショック吸収の個性じゃないのか?」

 

オールマイトが驚いている。まぁ、普通個性って一つだしね。

 

「別にそれだけとは言ってないだろ。これは超再生だな。」

 

「んっ。」

 

ん?今のオールマイトの反応、なんか知ってる?先生と関わりでもあるのか?

 

「脳無はお前の100%にも耐えられるように改造された、超高性能サンドバッグ人間さ。」

 

弔君が得意げに脳無を解説している。脳無を貰った時、凄い喜んでたからね。誰かに自慢したかったんでしょ。

 

「さてと、さっき俺のこと殴ろうとした生徒がいたなぁ。さっきも黒霧を殴ろうとしてた。ああ、アイツだ。――行け、脳無。」

 

緑髪の男の子に脳無が襲いかかる。僕とオールマイト以外は誰も目で追えない程の速度だ。

だが、オールマイトは咄嗟に緑髪の子を庇い、吹き飛ばされた。

壁に激突し、土煙をあげた。

 

「へえー、やっぱり弱ってるってことかな?オールマイト。」

 

僕はオールマイトに語りかける。

 

「ハア、ハア、……加減を知らんのか。」

 

「えー?加減しなきゃいけないの?僕達が?」

 

そう言いながら、オールマイトに近づく。軽い足どりで、散歩でもしているかのように。

 

「どっちかっていうと加減すべきはそっちじゃない?生徒合わせたら4対5だよ?」

 

「……いや、1対4だ…!」

 

オールマイトが生徒と僕達の間に立つ。

 

「君達は逃げなさい。」

 

「さっきのは俺がサポートに入らなきゃヤバかったでしょ。」

 

「それはそれだ、轟少年。ありがとな。しかし大丈夫。プロの本気を見ていなさい。」

 

「オールマイト、血が…それに時間だって…」

 

ん?感動的な会話の中、緑色の…緑谷君?が言った言葉。『時間』?つまり、オールマイトは活動に時間制限がある?ちょっとカマかけてみるか。

 

「へえー、時間って何?」

 

緑谷君の真横に一瞬で移動して話しかける。

 

「な!?」

 

「――くっ!!」

 

「何!?」

 

「チッ!!」

 

生徒四人が驚く。その内二人はすぐさま動こうとするが、刀を突き出して止めさせる。

 

「はいはいちょっと動かないでね〜。――ねぇねぇ緑谷君?どうなのかな?オールマイトって、時間制限なんてあるの?」

 

私は続けて尋ねる。

 

「私の生徒達から離れろ!!」

 

オールマイトが高速で移動してくる。

 

「脳無~、足止めよろしく〜。」

 

「ガアア!」

 

脳無に足止めをさせる。―――が、

 

「ぬううー…はあ!!」

 

オールマイトの全力パンチとそれを受け止めた脳無のパンチで、もの凄い衝撃波が発生した。

 

「あ~れ~。」

 

残念ながら、僕も吹き飛ばされて、生徒達から引き離されてしまった。

 

「チッ、おいおい。ショック吸収ってさっき自分で言ってたじゃんか。」

 

弔君が吹き飛ばされながらも、オールマイトも嘲笑う。

 

「そうだな!!はあ!てい!やああああ!!」

 

オールマイトは脳無のショック吸収の上から次々にパンチを叩き込んでいく。衝撃波が突風となって、他の者が近づけない程の激しさだ。

 

「ち、近づけん…。」

 

黒霧ですら、割って入れない。――まぁ僕ならやろうと思えば割り込めるけどね。

 

「ふん!君の個性がショック無効ではなく吸収ならば!限度があるんじゃないか?」

 

オールマイトの攻撃が激しさを増し、脳無が押されていく。

 

「私対策?私の100%を耐えるなら…」

 

「は?」

 

「えぇ…」

 

そんな脳筋戦法で先生の特別製脳無を倒しちゃうの?マジ?弔君も唖然としている。だんだん脳無が押されてきているからだ。先生から渡された最強な筈のおもちゃが壊れかけて、理解が追いついてないのだと思う。

 

「更に上からねじ伏せよう!」

 

……不味いな。脳無の耐久の限界を超えちゃう。

 

「ヒーローとは!常にピンチをぶち壊していくもの!」

 

脳無も反撃しているが、そんなのお構いなしにオールマイトは脳無を、捻じ伏せ、叩きつけ、投げ飛ばし、圧倒する。

 

「うおおおー!!」

 

凄まじい力で、脳無が地面に叩きつけられる。振動で建物中が揺れ、地面はひび割れた。

 

「ヴィランよ、こんな言葉を知っているか?――更に向こうへ!Plus Ultra(プルス ウルトラ)!!」

 

めちゃくちゃな威力の拳が脳無に突き刺さり、脳無は星になる勢いで吹き飛んで見えなくなった。

 

「――やはり衰えた。全盛期なら、5発も撃てば十分だったろうに。300発以上も撃ってしまった。」

 

ふ~ん。コレがナンバーワンヒーロー、か。()()()()()()()()()()()

 

「さてとヴィラン。お互い、早めに決着つけたいね」

 

――へえ~、そうかそうか。やっぱり緑谷君が言ってたみたいにタイムリミットがあるのか。よく見ると土煙とは別に身体から煙が出始めている。限界なのだろう。あーあ、応援を呼ばれていなければ、目標は達成できただろうに。

 

「チートが!」

 

弔君は悔しそうだ。苛ついて首元をまた掻いてる。

 

「おいおい、どういうことだ?全然弱ってないじゃないか。あいつ、俺に嘘を教えたのか!」

 

「――そんなことないよ弔君。」

 

僕が口を挟む。先生への軽視や暴言は許さない。

 

「あ?」

 

「実際弱ってるって。脳無とはいえ、探せば同格程度の大型ヴィランはいるはず。そんなヴィランを特に苦戦もせずに倒し続けたのがあの男だ。たかが一改造人間程度に苦戦している時点で、相当衰えてるよ。スピードに関しても僕が目で追えて、反応できる程度だ。だいたい先生が――」

 

「どうした?」

 

……チッ。口を挟むなよオールマイト。

心の中で毒づく。

 

「来ないのか?クリアとか何とか言ってたな。できるものならしてみろよ。」

 

鋭い眼力。死に体でよくそんな虚勢を張れるものだ。

 

「ああっ。」

 

弔君が狼狽えている。まぁ、あれ見せられた後だと仕方ないか。

 

「さあ、どうした?」

 

「うるさいよオールマイト。虚勢張っちゃってさぁ。バレバレだよ?」

 

僕が声を上げる。

 

「僕は今、先生について話そうとしてたの。分かる?それを虚勢なんかで妨害しちゃってさぁ。――ちょっと黙ってようか。」

 

次の瞬間、僕はまず瞬間移動でうるさそうな生徒四人の前に行きノータイムで意識を沈め、オールマイトの前に立った。

 

「ほら、ご自慢のスピードと反射神経で生徒達を守る事も出来ない。弔君なら殺してたよ?そんな体たらくで僕達を威圧して何になるんだよ。時間稼ぎ?」

 

「くっ!」

 

オールマイトが顔を歪める。図星をさされまくってるし、狙いが全部読まれているから焦っているのだろう。

 

「今なら僕のパンチでも大ダメージでしょ?ほら!!」

 

そう言って、オールマイトのみぞおちに拳を放った。

 

「ぐはっ!!」

 

オールマイトが血を吐き、膝をつく。そして、煙を上げて縮んでいく。

 

「―――へえ~、びっくりだなぁ。まさかオールマイトの正体が、こんなガリガリのおじさんだったなんて。証拠動画撮っちゃったよ。」

 

個性でオールマイトが縮んでいく瞬間を捉えたカメラを取り出す。

 

「フフフ、傑作だなぁ!あのオールマイトの正体が、こんな干からびた男だったなんて!正体がバレてどんな気分なんだ?オールマイト。死ぬ前に教えてくれ。」

 

弔君が、笑いながらオールマイトに近づく。

 

「ぐっ、クソッ!」

 

オールマイトは未だに立ち上がれない。

 

「おいおい、無理をするなよオールマイト。そんな掴めば折れそうな身体でさぁ。」

 

俯くオールマイトの顔を、弔君が覗き込む。

 

「終わりだ、平和の象徴。」

 

そして弔君の手がオールマイトに触れようとして―――銃弾に撃ち抜かれた。

 

「あ~あ、丁度いいところで。」

 

弔君怒るぞ~。

 

「……ゲームオーバーだ。帰って出直すか。未来、黒霧。」

 

弔君が振り返る。その瞬間、嫌な予感がした。

 

「――黒霧!ワープゲート張って!」

 

咄嗟に黒霧に指示を飛ばす。そして、黒霧の展開したワープゲートに、僕達に向けて発射された銃弾が吸い込まれた。

ふう、撃ち抜かれるところだった。

 

「な…、これは…」

 

ワープゲートが!これは――13号のブラックホール!

 

「黒霧!速く!!」

 

僕が叫ぶ。

そんな中、弔君はまっすぐオールマイトを見つめ、

 

「今回は失敗だったけど……今度は殺すぞ!平和の象徴オールマイト!」

 

そう、言い残してワープした。

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