ロイヤルTS転生追放者×3のぐだぐだ冒険者ライフ   作:GT(EW版)

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 本作はドラクエのようなRPGとモンハンのような狩りゲーをごちゃ混ぜにして紳士ゲー要素をちょっとだけ足したような世界観です。


もう10年ほど前だ……成人した証として(ry

「ああそうそう、次に受けるクエストなんだけど、さっき良さそうなのを見つけてきたんだ」

 

 そう言って、ネーリンが私たちの座るカウンターに一枚の紙を提出する。

 それは彼女が今しがたこのギルドの掲示板から剥ぎ取ってきたと思われる依頼書──クエスト表だった。

 

 私たち冒険者の職場は、基本的には二種類に分けられる。

 

 一つは各所の地底に広がっている摩訶不思議な領域、いわゆる「ダンジョン」の探索。

 そしてもう一つが、各地の冒険者ギルドの掲示板に貼り付けられたクエスト表から依頼を受け取り、期限内にそれを完遂することだ。

 

 地底世界のダンジョンには、地上ではお目にかかれない未知のお宝が眠っている。一攫千金を狙うのならば、そちらを主体に行うのが冒険者のロマンだろう。これもありきたりなイメージ通りではあるが、ダンジョン攻略は冒険者の華と言えた。

 

 いずれも前世の世界では、ゲーム等のフィクション創作でよく見たようなお約束の流れになるが、しかし私たちの活動方針としては後者のフィールドワークスタイルを重視していた。

 

 理由は単純に、ダンジョンの探索は一日に獲得できる収益が安定しないからだ。

 

 ダンジョン探索は運が良ければ際限なく儲けることもできるが、何の成果も得られなかった場合には丸一日タダ働きで終えることも珍しくない。

 その点、ギルドから受注するクエストには報酬に上限こそあるものの、失敗しない限りは確定で幾らかの金を稼ぐことができる。

 冒険者が受注可能なクエストはそれぞれパーティのランクごとに区分けされており、報酬の内容もピンからキリとなっているが、Bランクの冒険者が受けるクエストともなれば危険なクエストこそあるがCランク以下とは歴然の差があるほどに豪華だった。

 それこそクエストによっては、一週間か二週間の間仕事をしなくても怠惰に過ごすこともできる。

 何を隠そう、こうして私が酒場に入り浸っていられるのも数日前に危険なクエストをクリアしたからであった。

 

 一週間に二日か三日ぐらい働いて、後は次のクエストまでそれぞれのプライベートに時間を充ててゆっくりと英気を養う。私たち三人がパーティの契約を結ぶ際に交わした労働条件である。安定した収入と安定した休暇、それが私の望むスローライフというものだ。命懸けのスローライフと言うと些か歪にも聞こえようが。

 

「……言っておくが、今回は採取しか受けんぞ。この間は巨大イカの相手で疲れた。どうしてこの島のモンスターは……」

「キミ、積極的に狙われたもんね! 正直期待しながら見ていたよ」

「何をじゃ……わしは構わんぞ。昨日弟子たちがダンジョンに行ったから、暇潰しに適当なクエストでも受けたい」

 

 そして受けるクエストの種類は、指定モンスターの討伐任務と採取任務の二種類がある。

 身も蓋も無い言い方をすれば、前世の世界で流行っていたモンスターをハントする狩りゲームの方式に近いだろうか。はちみつください。

 

 ……ただ、当たり前だが現実の世界で人を襲うモンスターを何度も討伐するのはゲームとは比較にならないほど神経が擦り減る。

 魔法を使えば怪我も体力も回復することができるが、命懸けの任務を行った後には数日間精神的な疲労が抜け切らないのだよ。

 特にこの間戦ったイカモンスターは隙あらば我々に触手プレイを仕掛けようとしてくるエロモンスターだったから、それはもう最悪だった……その戦いの詳細は、絶対に語らないが。

 

「ボクはスリリングで楽しかったけどね! まあ、キミはそう言うと思ったから今回は採取クエストを持ってきたよ」

「ほう……確かに採取にしては、中々の報酬じゃな」

「だろ?」

 

 良さげなクエストを誰かが持ってきて、三人でやるかやらないか協議する──普段通りの流れだ。

 しかし最初に持ち込んでくる役目は今のように、専らネーリンが務めていた。私とヨークはまだ冒険者になって一年しか経っていない為、まだ割の良いクエストを見分ける目が養われていないからだ。

 その点ネーリンは300年以上生きている桁違いの年長者だけあって、我々の知らない冒険者の作法を熟知していた。

 割に合わない地雷的なクエストも、割の良いクエストも、経験豊富な彼女には一目で見抜くことができるのだ。おかげで何度も助かっている。……時々採算度外視で趣味に走ることがあるが、そこはお互い様なので何も言うまい。

 我々はパーティの仲間であると同時に、全員が持ちつ持たれつなビジネスパートナーの関係だった。

 

「ビジネスパートナーって言葉、大人っぽくていいな」

 

 私の思考に対してヨークが呟いた意見に、私も同意を返す。確かにハードボイルドな冒険者である我々にとって、その表現は自分で言ってよく似合うと思った。

 

 ふむ……今回のクエストは採取──それも指定モンスターの素材の納品か。しかし、これは……

 

「依頼内容は……ツィツインフェザーの羽根の納品か。なるほど、それは報酬が良いわけだ」

「だろう?」

 

 危険度の関係から、基本的には採取任務よりもモンスターの討伐任務の方が手っ取り早く儲かる。故に冒険者の中では、大型モンスターの狩猟に専念して活動する者も珍しくはない。

 

 しかし今回ネーリンが持ってきたクエストはBランク相当の討伐任務と比較しても、それに匹敵するほど豪華な報酬が記載されていた。

 それもその筈、この素材をドロップするのは「ツィツインフェザー」というAランク相当の戦闘能力を持つモンスターであり──共和国本土では狩猟を禁じられている希少な生物だからだ。

 

「ツィツインフェザー……タイニィフェザーか」

「対の二枚羽、全部で四枚の翼を持っていることから名付けられたようだね」

「タイニィフェザーじゃな」

 

 ツィツインフェザーは大きいものは全長8mを超す強力な大型モンスターだが、標高1500m以上の高い山にしか生息せず、人里に姿を現すことはない。

 私のいたシュヤクナブル王国の一部地域では、その羽根を手に入れることを若者の勇気を試す試練として扱われていたほどだ。

 

「タイニィフェザーじゃぞ」

 

 狩猟を禁じられている上に、ツィツインフェザー自身が非常に気高い性格である為、羽根は間違っても直接抜き取ってはならない。住処の周りに抜け落ちているものを拾うのが正道である。

 

「どう見てもタイニィフェザーじゃな!」

 

 あと、首が二本ある。全身を覆う虹色の羽毛は遠くから見ると神々しいが、近くで見ると禍々しい邪竜型のモンスターにしか見えない為、昔は魔王の遣いだと疑われていたそうな。

 実際には寧ろ人に益をもたらす聖獣に近い存在だったのだが、かつては誤解した勇者たちに狩り尽くされ、その数を一気に減らした歴史を持つ悲しい生き物である。

 

「タイニィフェザーじゃないのか……」

「ヨークはさっきから何を言っているんだい?」

「ナニモイウコトハナイ……」

 

 Are you you care "HIPのYOU".真相はそんなところだ。

 

 ツィツインフェザーと聞いて何故かそわそわしていたヨークが、その姿が双頭の邪竜と聞いて露骨に肩を落とす。スン……とした儚げな反応は、受付嬢たちだけでなく同じTS転生者である私たちにも庇護心を湧かせるものだった。あざとい。

 

 それはそれとして、報酬が良い採取任務と聞いてツィツインフェザーとは納得である。

 かのモンスターは本土では希少なモンスターとして扱われているが、幻影島では元気に飛び回っていることから、本土から渡ってきた生態学者などは日夜研究に大忙しな様子だった。

 

 もしかしたらこのクエストも依頼主は研究者だったりするのかもしれないが……その辺りの詮索は野暮というものである。

 冒険者は余計なことを考えず、仕事人として淡々とクエストをこなせばいい。

 

 そして今回のクエストが王宮の文献でも目にしたことのあるツィツインフェザーともなれば、先日の巨大ドスケベイカとの戦いですっかり萎えきっていた私のモチベーションも高まるというものだ。

 本で得た知識とは言え、平民よりも外のモンスターについて学ぶ機会に恵まれていたことについては、上流階級だった身分に私も感謝していた。

 

「いいだろう、今回はこのクエストを受けよう」

「そうこなくちゃ!」

 

 そうして「ツィツインフェザーの羽根の採取」というクエストを受注することが全会一致で決まると、提案者のネーリンが嬉しそうに頷く。

 

 

 ……しかしこの時、ピエロマスクの裏でしてやったりと言った具合の怪しい笑みを浮かべていた彼女の態度をもう少し警戒しておけば良かったなと後悔したのが、クエストを開始した翌日のことだった──。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ──クエスト当日。

 

 

 今回の採取対象であるツィツインフェザーの羽根は、かの大型モンスターが生息する山岳エリアの高度1500m地点に落ちているものと推測できる。

 この幻影島は本土から離れた孤島であるが、その面積は前世で言うところの北海道にも匹敵する。

 ザーマミナス共和国の手により開拓が進められて四十年経った今でも全てのエリアが把握されているわけではなく、危険度も不確かな領域が多いが故に冒険者の重要性が高かった。

 

 私たちのようなこの世界に住む一部の人間は魔力を持ち、それを行使することで「魔法」を扱うことができる。

 しかしモンスターハンティングで飯を食っていけるような人間はほんの一握りであり、危険なモンスターが闊歩する大自然に身一つで挑んでいける人間はまさしく「冒険者」の名に相応しい命知らずと言えた。

 

 その点既に一度死んだ身である転生者としては、もちろん死にたいわけではないが今の命にそこまで執着しているわけではない。

 前世の感覚で言えば大分人でなし的な価値観を持っている私だが、王宮で大事に扱われるよりかはよっぽど性に合っている気がした。

 

 そんな私の肉体は前世と比べると華奢な身体つきをしているが、恵まれた「魔力」のおかげか中身はすこぶる頑丈である。故に山岳地帯での活動も、ただ山路を歩くだけならば消耗することは無かった。

 まあ、目的地まで律儀に山登りする気はさらさら無かったが。

 

「うーん、やっぱり便利だねぇ。キミのテレポートは」

「元大賢者なのに、こういう系の魔法は使えないんじゃったなお主は」

「ボクの役目は時が来るまで「選定の湖」を守り続け、選ばれし勇者に聖剣を渡すことだったからね。そもそもボクが湖の外に出ること自体、剣の精霊は想定していなかったんだよ」

「お主も苦労してたんじゃな……」

 

 山肌に突き刺さる眩しい朝日の光が、私たち三人の到着を暖かく出迎える。

 それぞれの装備に身を包んだ私たちの姿が、一瞬にしてこの幻影島一の高山、「ハザードマウンテン」の中腹1500m地点へと現れたのである。

 それは私が発動した、高位魔法「テレポート」による移動だった。私が習得した魔法の中でも特にインチキ染みているお馴染みの魔法に、ネーリンが感嘆の声を漏らした。

 

 ……実を言うと私たちのパーティがダンジョン攻略ではなくフィールドの探索を主にしている理由には、このテレポートの存在も大きかったりする。

 

 あらゆる移動過程をすっ飛ばして目的地へ直行することができるこの魔法は、地底のダンジョンでは何故か発動することができないのだ。「おそらくはダンジョンに満ちる瘴気が一部の魔法を阻んでいるからじゃろう」とは、その手の事情に詳しい元聖女様が言っていたが、テレポートが使えないことで移動時間が掛かってしまうのは私にとって報酬の不安定さ以上にネックな部分だった。

 

「さて、では目標のポイントに向かうぞ」

「オーケー」

「イクゾー」

 

 もちろん、ダンジョン以外の場所で扱う分にはテレポートは万能に近い移動手段だが、移動は全部これ一つで良いわけではない。山登りの過程をスキップしてからの移動は、地道に徒歩で赴く必要があった。

 

 私の「テレポート」は細かな位置の調整はできない為、みだりに発動すると「石の中にいる」状態になったり、酷い場合には上半身だけ壁に埋まってしまう壁尻状態になってしまうからだ。

 

 前世の私はそういう系のジャンルも嫌いではなかったが、自分がやるのは当然NOである。

 私はTS美少女であるがネーリンのようなオープンスケベでも、ヨークのようなムッツリスケベでもないのだ。

 

「……今、トンチキなことを考えたなお主」

 

 フッ……聖女様は気軽に心を読んでくるから困る。

 

「これもフォースの力じゃよ。不埒なことを考える輩の心は、容易く読み取ることができる。……じゃから聖地にいた頃は結構辛かったんじゃ……アイツら聖職者のくせに内心わしに対していやらしいことしか考えてないんだもん……」

 

 さよか。

 

 ……お前も大変だったんだな、アル。そりゃあ前世の記憶が蘇った途端、暗黒面にも堕ちるわ。

 

 

 

 

 

 ──さて、そんなこんなでツィツインフェザーの羽根を探して山岳地帯を探索しているが、クエスト中の私たちは有事を想定してそれぞれの装備に身を包んでいた。

 

 とは言っても、私以外は普段の私服とそう変わりは無い。

 ヨークは私服の時と同様、呪術師や黒魔導師が好んで着るような怪しげなローブを身に纏っており、ネーリンは自称「遊び人」のイメージ通り、普段から被っている道化師の仮面と目が痛くなるような極彩色の衣装に身を包んでいる。

 

 そんな二人と比べると、私の装備は最も正統派な冒険者と言えるだろう。

 

 私の髪の色と同じ灼熱をイメージした赤いバトルドレスは薔薇のように煌びやかな色をしており、走行中にも動きを阻害しない軽量なグリーブと籠手は装備として必要な実用性を兼ね備えている。

 特に頭部を防護する銀色のティアラからは私の意思に合わせてシャキンとバイザーが展開する仕組みになっており、クエスト中にパーティメンバー以外の者と会う時にも目元を覆い隠せるようになっていた。正体バレ対策も完備である。

 

 デザインは全て私。製作者はヨークではなく鍛冶屋のおっちゃんである。彼とは趣味が合うのか、快くこちらのオーダーに応えてくれたものだ。

 冒険者に成り立ての頃は私服の上にパッドを付けただけの簡素な装備を着ていたものだが、Bランクになり安定した収入を得るようになってからはデザインと実用性を兼ねたいい感じの装備を作ってもらい、普段のクエストで愛用していた。

 

 やはり私のようなカッコいい美少女は、その素材を活かした相応の装備を纏うべきだと思うのだ。おかげでネーリンと違ってプライベート用の衣装に割く資金が無くなっているが、オーダーメイドの防具を作ってもらったことに後悔は無かった。

 

「プライベートより仕事の時の方がキマッているのは……当然と言えば当然なのじゃろうが」

「ボクが言うのもなんだけど、キミの防具って派手だよね。なんだか姫騎士感が凄い」

「本当にお前が言うなという話だが……既製品の中に私に見合うカッコいい装備が無かった以上、仕方あるまい」

 

 ふふ……私は某狩りゲームでも、自キャラに好みの装備を着せることがモチベーションに直結していたのだよ。寧ろその為の着せ替えゲーとして遊んでいたまである。キリン装備とかジンオウ装備とか。

 

 なので今の私が着ている衣装もその頃の思い出にあやかり、被弾率の低い部分にはところどころ素肌を露出したスタイリッシュな造形にしてもらっている。具体的には肩周りとかスカートの下とかそういう箇所を。

 これが案外実用的で、見た目よりも動きやすくて良かった。涼しいしな。

 流石にビキニアーマーとかまで行くとやり過ぎだが、せっかく美少女冒険者になったのだからほどほどに肌を出したいTS心である。

 

「昨日自分は素材で勝負する女だとか言ってたじゃろが。大体装備なんて避ければ良いんだから、適当でいいと思うのじゃが……わしにはよくわからんな」

「ヨークは武器には拘るけど、防具はそのローブさえあれば後は適当だよね」

「うむ、このローブは我が弟子がプレゼントしてくれたものじゃからな! 暗黒面を感じる衣装じゃから、これだけは気に入っておる」

「それは何とも……弟子想いなことで」

 

 それぞれ自らの在り様(ロール)に合った装備を意識しているのは三人とも共通しているが、見た目のインパクトを重視しているのがネーリンで、見た目と実用性を兼ね備えた衣装を重視しているのが私、実用性を重視しているのがヨークと細かいポリシーは三者三様である。

 お互いの装備について改めてグダグダと語り合いながら、私たちはそこかしこに目を配り周囲のモンスターの気配に注意して目標の捜索を続けていった。

 

 

 そろそろギルドの受付嬢が教えてくれた、ツィツインフェザーの縄張りに入るところだろうか……そう思いながらさらに警戒を深めて前に進んだ、その時である。

 

 ヨークがおもむろにライトセーバーを取り出し、ネーリンがボソリと呟いた。

 

 

「ふふっ、やっぱりいるね。密猟者」

 

 

 ……どうやらこのクエスト、ただの採取任務には終わらなそうだ。

 

 楽しそうに笑うネーリンの道化師の姿を見て、頭のティアラからバイザーを下ろした私はこれから起こるであろうアクシデントに溜め息を吐いた。

 

 ──だが、それもまた良し。

 

 王族時代には味わえなかった、ドーンと来てガシャーンとやられる感覚。これも冒険者の醍醐味という奴だ。

 作ってもらったビームサーベルが早速役に立ちそうだと、予測した未来にほんの少しだけ高揚を抱いた。




 コログ構文見てたら殿下のモウクタクタデェ……を思い出しました。
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