いつの間にか悪の組織の幹部になっていた件   作:アジぺんぎん

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48 さて、そろそろ結びに入ろうか

 

 さて、やりたいことは大体終わった。

 今回の件、着地点は決まったね。

 これからするだろうクロノくんの行動は、大体分かる。

 ボクの忠告を無視するような性格じゃないし、そうすれば彼は必ず動くだろう。

 きっと、クロノくんは奔走する。

 手の届く範囲の人間が窮地に陥れば、彼は思わず助けてしまうんだ。そして、放っておけばクロノくんはピンチになって、『神気』を使う。

 ボクはその時、世界にバレないように結界を張ってあげればそれでいい。

 これまでのと同じさ。

 ちゃんと見てれば、ミスはない。

 三回も同じことして、要領掴めない訳ないし。

 

 ということで、あとは野となれ山となれ。

 適宜、介入してクロノくんを守る。

 一応エセ神父も控えてるんだし、万一すらボクにはないね。

 

 いつも通りならっていう話だけども。

 

 不穏な言い方になっちゃったよ。

 まあ、それも仕方がないか。今回のは前の二つとはまったく違う。

 ボクも頑張るけど、やっぱりしくる可能性はなきにしもあらずだ。

 八割がたは大丈夫だと思うけど、

 下手すりゃクロノくん、普通に死ぬし。

 

 

「いや、どういうことですか?」

 

「そのままの意味だけど?」

 

 

 ボクも忙しいもんだよ。

 あっちで動いて、こっちで見て、そっちで喋って。

 今さらだけど、こんな絵図を描くみたいなのって、ボクの領分じゃないんだけどなあ。

 引っ掻き回して欲しい盤面で投入し、なんも考えずに暴れまわる。

 これがボクの一番効率的な運用方なのに。

 

 お前の畑だろ、こういうチマチマしたの。

 勝手に想像して、勝手に正解しろ。

 

 

「……そこまであの小娘は厄介なのですか?」

 

「うーん、多分だけど、ボクも今の状態じゃあ勝てないかも」

 

「そこまで!? 確かに、あんな呪術の使い方は見たことがありませんが……」

 

「クロノくんと似て、なんかヤバそうだし。でも、クロノくんより不安定で、力が漏れやすい。暴走したら、クロノくんよりマズそう」

 

 

 ボクの感度は、星由来の魔力とかのエネルギーと、その敵である『神気』だけだ。

 他はちょっと対応してない。

 だから、マジでボクの経験から来る直感になる。

 精度の方からすれば、あんまり自信持っては言えないけどね。

 でも、一応四百年かけて積み上げた感性だ。

 ヤバイっていうのは、間違いない。

 

 

「下手をすれば、どうなりますか?」

 

「これからクロノくんと小娘をぶつけるつもりだけど、両方死ぬね」

 

 

 考え込んでも、多分無駄だよ。

 ボクが分からないんだし、君に分かるわけないじゃん。

 今のところ、ツンケン娘の正体は不明だ。

 あのヤバイ力の源がどこかは、ちょっと分かんない。

 

 

「あの小娘の家のことは、小生の方からも探りました。ですが、()()出来る範囲では、得られた情報は皆無に等しかった」

 

「そんなにガード固いの?」

 

「並みの貴族では関われもしない。かなり上級の貴族の伝手が必要ですが、かの国は我らの勢力がそれほど伸びていませんし……」

 

 

 じゃあ、もうなんもわからんな。

 しゅーりょーしゅーりょー。

 明日のことは明日考えようぜ。

 

 

「どんだけガード固いのさ? ていうか、なんで国ぐるみで秘匿する一族の、多分めっちゃ大切な秘蔵っ子が留学?」

 

「まったく謎です」

 

 

 ちょっとツンケン娘、不思議ちゃんすぎるな。

 何を狙ってるのかまったく分からん。

 

 

「で、()まで含めればどこまで調べられたんだ?」

 

「あまり変わりませんよ」

 

 

 いや、期待はしてないさ。

 ()の人員だって、下手に動かせば()にバレるからねー。

 ちょっとマシな情報網くらいに思ってるさ。

 怪しい密偵が居れば世界中どこでもカッ飛んで来る迷惑な奴らが居るんだよなあ。

 でも、少しはあるんだろう? なにかしらの情報が。

 

 

「ロックフォードの屋敷の場所くらいです。その調査も、一月はかかりましたよ」

 

「へー。なんで中身は調べなかったんだ?」

 

「調べられる代物ではなかったそうです。呪術は、我々の専門外ですので」

 

 

 ……あー、なるほど。

 じゃあ、大丈夫か。

 

 

「ちなみに、どこ?」

 

「地図に書きおこしています。どう使うおつもりで?」

 

「手の施しようがないなら、クロノくんに探ってもらおうかと思ってね」

 

 

 露骨に顔しかめやがった。

 いいじゃん、別に。

 クロノくんはツンケン娘を助けるために動けるし、ボクらはツンケン娘の情報を得られる。

 これ以上はないって、マジで。

 

 

「あまり、貴女に彼から目を離して欲しくないのですが」

 

「死なない死なない。呪いは、この何日かで大分性質を理解したみたいだ。気にしなくていい」

 

 

 そんなリスク、いちいち気にしてらんないわ。

 小石に蹴躓いて頭打って死ぬの気にして、クロノくんを閉じ込めたりしないっしょ?

 大丈夫大丈夫。大抵のことはなんとかなる。

 だから、このくらいのリスクは負ってくれよ。

 

 ……マジで渋々だなあ、エセ神父め。

 

 

「分かりました。代わりに小生が監視につきます」

 

「過保護だねぇ。可愛い子には旅をさせよっていう格言、知らない?」

 

「知りません。どこの国のことわざですか?」

 

 

 通じないの、なんかムカつくな。

 近いのは、えー、なんだっけ?

 あー、『博愛の将メリードルの才能潰し』とか?

 でも訂正するのもダルいし、もういいや。

 

 

「クロノくんに情報を掴ませて、あとはボクが上手く料理するよ」

 

「分かりました。今回の件、教主殿が直々に貴女に任せたのです。貴女に従うのが、道理というものでしょう」

 

 

 そうそう、ボクがリーダーなんだから黙って従ってろ。

 可愛げのない奴ばっかりだよ、まったく。

 

 

「あ、そういえば、他の連中はどうしてるのさ? この件で報告会してるの、お前とだけなんだけど?」

 

「皆さん、忙しいのです。最近、()が活発化してきまして」

 

 

 あー、そうなんだ。

 そういえば、最近そのこと聞いてないよなあ。

 どうなってるんだろ、戦況。アイツらがどんだけ間抜けでも、負けはないだろうけど。

 

 

「しつこいよねぇ、彼らも」

 

「毎度毎度、邪魔で困っています。英雄クラスの実力者はすぐ身内に引き込むので、なかなか数も減らせません。何故、あちらの組織にホイホイ入るのでしょう? 英雄とは、一様に病にかかっているのでしょうか?」

 

 

 だから、ボクが動いたら全員……

 

 あー、やっぱもういい。

 ボクを死なせたくないもんなあ。

 

 

「今のところ、厄介なのは?」

 

「『無明の剣』『黒曜山脈』『霊獄大使』が最近暴れていますね。それと新たに、ランプトン皇国の英雄『白銀の彗星』が所属したようで、派手に暴れています」

 

「……全員わからん」

 

「一応最低限は知っておいてください。後で資料をあげますから」

 

 

 ここ百年くらいの英雄クラスか?

 まあ、そんな若造どもに負ける訳ないし、別に構わん構わん。

 使徒どもはアホだけど、そんな奴らに負けるほど、このアホどもは弱くない。

 警戒すべきは、ボクが名前を覚えてる古参だけど、それでもそう簡単に負けはしない。

 

 てか、そろそろ潰したいなあ。

 大事な時期なんだし、もうボクが直接……

 

 

「脳筋な貴女は今すぐ自分が暴れて()を殲滅したいと考えているかもしれませんが、少々お待ちいただきたい」

 

「は? 何、お前? そんなに死にたいなら……」

 

「小生が密偵を放っております」

 

 

 え、マジ?

 嘘だろ?

 天才かよ。

 

 

「よくもまあ、そんなの用意できたね」

 

「五十年ほど時間が必要でしたが、完璧です。英雄としての実力と信念を持ち、なおかつ私の言う通りに動いてくれる。貴女が動くのは、万策尽きてからです」

 

 

 うーん、じゃあいいか。

 出し惜しみしすぎなきらいはあるけども、まあそこまで問題にはならんだろう。   

 

 

「貴女の力は強大です。正しく、象徴。貴女と教主殿の格が落ちれば、我らの教団は死にます」

 

「…………」

 

「なので、抑えてください」

 

 

 いつも通りか。

 いつも通りなら、仕方がない。

 

 

「はあ……わかったわかった」

 

「では、今後は貴女の予定通りに」

 

「それは期待してていいよ。多分、ボクが思った通りになるだろうし」

 

 

 さて、この後クロノくんは、

 

 

 ※※※※※※※※

 

 

「リリア・フォン・ロックフォードの実家を探る」

 

 

 予想通りだ。

 クロノくんなら、そう言うと思った。

 

 

 

 

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