世界で当たり前のように享受されてきた日常は、ある日唐突にとある怪物の手によって破壊された。
とある怪物に全世界の海岸線が同時に襲われた。その目には憎悪が漲っており、目に映るもの全てを破壊し尽くした。
勿論、世界の国々はその国が持つ最高の技術、兵器を投入しこれに対抗を試みた。しかし、その怪物に傷をつけることは叶わず被害を増やすだけとなってしまった。
人々は深海から現れるその怪物を「深海棲艦」と呼び恐れた。
人類は深海棲艦に滅ぼされるかに思われたが、海を走る少女が現れたことで戦況は逆転し、一部制海権を取り戻すことに成功した。
この少女は自らを大戦で用いられた軍艦の魂が宿った「艦娘」と名乗り、深海棲艦を撃滅すべく海軍と艦娘を指揮する「提督」をもとめたのであった。
「士官学校に通う諸君!ここから本日、新たな提督が生まれた!出てこい、比企谷」
壇上で話す指導教官に呼ばれた俺は、壇上に向かいつつ平和だった頃に思いを馳せる。
あ…ありのまま今までに起こったことを話すぜ!
俺はいつものように総武高校に通っていた。そしたら職員室に呼び出され、赤紙が渡され気づいたらこの学校に入学させられていた…
な…何を言ってるかわからねーと思うが俺も何をされたかわからな…くはないな。だってたくさん説明されたもん。
妖精と呼ばれる小人が見える俺は提督の資格がある。この資格はとても稀有なもので、数百万人に一人の逸材なのだとか。資格を持つ人に法則などないようで、老若男女問わないために海軍士官として問題なく鎮守府を運営できる人が適性を持つ確率はさらに下がってしまうのだ。実質一千万人に一人いるかいないかの才能なのだ。そんな才能を持つ俺ってどんなラノベ主人公?はぁ…不幸だわ…
「比企谷、工廠で補佐艦を建造した後、鎮守府に着任だ。質問はないな?では行け」
「うす」
現実逃避をしていると話が終わったようで、工廠にに行くよう促される。俺はこれから鎮守府に着任するのだが、正常に鎮守府を運営するための補佐として、新米提督には補佐艦が与えられる。鎮守府運営に補佐が必要なやつを提督にしていいんですかねぇ…
まあ文句を言っても俺が鎮守府で提督をする運命は変わらないので、工廠についてすぐに建造を開始する。できれば俺を甘やかしてくれるような子がいいなぁ。訓練の途中で大本営から派遣された艦娘に雷という艦娘がいたが、彼女はよかった。甘やかしてくれる。専業主夫の夢を彼女と歩みたいぜ。
そんな他愛もない(雷からしたら最高に気持ち悪い)ことを考えていると、建造が完了したようで艦娘が建造カプセルから現れる。
「特型駆逐艦曙よ。って、こっち見んな!このクソ提督!」
「……まじか」
よりによって1番きてほしくないタイプが来てしまった……
雷と同様に大本営から派遣されていたため知っている。彼女はヤバい。ヤバすぎてヒッキーセンサーが絶え間なくアラートをならしているので、つい引きこもっちゃうレベル。それはただの引きこもりセンサーですね。
「何ぬぼーっとしてるのかしら。さっさとあんたの鎮守府にいくわよ」
「お、おう」
どうやら士官学校で建造される艦娘は着任する鎮守府の情報や提督の情報を持って生まれるらしく、建造前にその情報を建造カプセルにアップロードしておくためらしい。
まあ話が早いのは助かる。俺がこんな性格の子に緊張せずに状況を伝えられるか分からないからね。はいそこ、お前は誰と話しても緊張するだろとか言わない。
「背筋伸ばす!ポケットに手をつっこむな!そんなことも習わないの!?」
「別に教官いないんだからいいだろ…何、お前俺のこと好きなの?」
「殺されたいの?」
「はい!すいません!」
ごめんなさい、もう言いません。ですので主砲をこちらに向けないでください。
着任する鎮守府に到着する直前、この様子だと他の艦娘に示しがつかないらしく、ぐちぐち文句を言われ続けた。そんな文句も鎮守府が見えると鳴りを潜める。
「……艦娘っつーのは日頃こんなに静かなもんなのか?」
「静かな子もいるでしょうけど……ここまで静かなのは違和感があるわね…教官から何か聞いてないの?」
「何も聞いてない。俺は教官に嫌われていたからな」
「死んだ魚みたいな目をしているからよ」
「そんなにDHA豊富そうに見えるか。賢そうだな」
「賢いなら何度も同じことを言わせないでもらえないかしら」
まあ俺はやる気がないのに成績だけはよかったから教官に嫌われていたのだろう。嫌がらせとして何も伝えず問題のある鎮守府に送り込んだってとこか。まあ問題があると伝えられてたとしてどうにかできたわけではないので関係ないけどね。
鎮守府の正門にたどり着くと、敬礼している艦娘を見つける。
「お、お待ちしておりました。軽巡洋艦の大淀です。ひ、比企谷提督で間違いないでしょうか?」
「……おう」
顔を見てそんなにビビられると傷つく……目か?目が悪いんか?深海棲艦を沈める艦娘をビビらせる俺の目なら深海棲艦を沈めれんじゃね?俺最強。
「あ…あの…」
「こいつは放っておいて結構よ。執務室に案内してもらえるかしら」
「まじ?なら帰るわ。あとよろしくー」
「何バカなこと言ってんのこのクソ提督。蹴り飛ばされたくなかったらさっさときない」
チッだめか。帰る口実ができたと思ったが、蹴られたくはないので素直に大淀についていく。
……やっぱりか。他の艦娘の曙を見る目は大丈夫だが、俺を見る目だけは恐怖がほとんどで憎悪すらむけてくる子もいる。単純に俺のことを生理的に受け付けないか、前提督に何かあったか。十中八九後者だろうな。ぼっちは興味の対象にならないため憎悪が向けられることはない。軍服を着ている男に対して憎悪を向けていると考えるのが自然だろう。
「こ、こちらが執務室です」
「ああ。ところで大淀」
速やかに立ち去ろうとしていた大淀を呼び止める。その目にはやはり怯えがある。
「な、何か不手際がありましたか?」
「いやない。まあ質問したいことがあってな」
「質問したいこと……?」
「人間は好きか?」
「どう、してそんな事を……?私たちが人間を守っている事が示しているのでは?」
「ああ確かにそうだな。悪かった。もう戻っていいぞ」
聞けたいことも聞けたので退室の許可を出す。え、そんな逃げるようにしなくても良くない?もしかして提督という存在も嫌いだし俺という存在も嫌いなのん?
「いや、まだよ。クソ提督着任の挨拶をするからこの鎮守府にいる全艦娘を広場に集めてちょうだい。あと、この鎮守府にある艦娘の資料ももらえるかしら」
…え?曙さん?
「集合は1時間後で構わないわね?」
「…はい、分かりました。艦娘の資料はこちらです。では、失礼します」
そう言い大淀が退室する。
「あの、曙さん?先ほどのお話しはどういうおつもりで……?」
「あんたバカァ?顔も知らない艦娘達の艦隊指揮をするつもりなのかしら。それに艦娘からして、顔も知らない提督の指揮なんて聞きたくないに決まってるじゃない!」
「…ぐぅ」
ぐうの音の出ない正論でしたね。ん?ぐうの音はでてたな。つまり!反論の余地あり!俺は堂々と反論させてもらうぜ!
「…何か反論があるのかしら?」
「いえありません」
そんな睨まないでぇ!八幡ビビりだから今すぐ家に帰って引き篭もっちゃうぞ!
また大勢の人の前に立つ事が決定する。何だよぉお!もおぉぉお!またかよぉおおぉ……!
八幡っぽく書いているつもりですが、八幡ぽくないと思った人は比企谷八幡って名前の別人を想像してください。
難しいですね、そのキャラっぽさを出すのって。
あと曙だしたのは作者の趣味です。いいよね、ツンデレロリって。