人間に成った渾沌ゴアと、ミラルーツに成った少女のお話 作:サクラン
誠に勝手ながら書き直させて頂きます。
前世の一話程長くないのでご安心を。
それではお楽しみください。
うーん…んん?俺の布団ってこんなに固かったっけ?
ってかそもそも、ウチは木の葉が擦れ合ったり揺れる音が聞こえる程山や森の中になかったし、壁も薄くなかったと思うんだが…
俺は眠たげな目を開くと、そこには見慣れた自分の部屋ではなく、鬱蒼とした緑が広がっていた。
んー…何で?
おかしい。絶対におかしい。俺は確かに疲れていたが過労死するほどじゃなかったし、何か持病持ちという訳でもなかった。
誘拐だとしても余りに意味不明過ぎる。誘拐した相手を殺してから棄てるということはニュースの遺体遺棄事件とか見てたらなんとなく分かるが、殺さず棄てるのは分からない。
しかも身体にも違和感があるし、何だか気持ち悪い。しかも全身を強く打ったかのように鈍く痛む。
俺は左手を膝の上に乗せて右手で頭を掻いて身体を支える為に…ってちょっと待て。今俺両腕使ってるのに何を使って身体を支えようとした?
「………」
俺は身体を震わせながら恐る恐る振り向くと、そこには翼と鉤爪を足した黒い外套のような“モノ”が俺の左肩で蠢いていた。
………待て。落ち着け。深呼吸だ。素数を数えて落ち着くんだ(震え声)
俺は落ち着いて“それ”をゆっくりと上下に動かすことを意識すると“それ”は俺の意識に応えるようにゆっくりと上下に動いた。
「ってかこの…腕?ってひょっとして…」
そこで俺は気付いた。異形の“それ”を見たことがあったから。
俺はそこで自分が置かれている状況にとある仮説を立てた。
「どっかに鏡か…姿を確認できるものは…」
そしてそれを証明する為には自分の姿を見ることが必要だ。
いや、割りともう限りなく黒に近いグレーぐらいなんだけどまだ望みはある。
そうしてしばらく辺りを歩き回っていると―
「お、湖」
―湖を見つけた。
俺は湖の側によって深呼吸する。
ふー、大丈夫だ。きっとそんなことあるわけない。だって
そう信じて俺は湖を覗き込む。
そしてそこに写ったのは―
―左肩から伸びた異形の鉤爪。肩から侵食するように腕や足などの見える箇所を覆う黒い甲殻。頭の右側から生えた捻れた角。
身体のサイズは人だが、シルエットを見て人と呼ぶ人はいないだろう。
この姿に俺は見覚えがある。何故なら俺がよく遊んでたゲームに登場するモンスターだったから。
“ゴア・マガラ”
モンスターハンターに登場するモンスター。
モンハン世界の頂点に立つ種属の幼体であり、生物を狂わせる“狂竜ウイルス”と呼ばれるウイルスを操るモンスター。
目を持たず、特殊な骨格と性質から、登場からしばらく経った今でも分類不明とされている色んな意味で異質な存在だ。
その分だけ戦闘力もそれなりに高く、普通に生きて行く分には困らないし、成長すれば更に強くなれるのだから十分大当たりと言える分類のモンスターだろう。
―だが
「この倦怠感と身体に走る鈍い痛み…それに本来生えてない筈の角が生えてるってことは…“アイツ”だよなぁ…」
俺の顔色は浮かない。それは俺の身体の特徴がゴア・マガラと一致せず、その特殊個体と合致するからだ。
“渾沌に呻くゴア・マガラ”
至る筈だった生の輪廻から弾き出され、冥界に堕ちた哀れな存在。
並の出来事では動じない古龍観測所の者達に“この世にあってはならないもの”、“生きとし生けるもの全てと相慣れない者”と呼ばれる程の悍ましい存在。
その正体は成体に至る寸前でとある要因によって脱皮を阻害され、古龍として得る筈だった力に蝕まれているゴア・マガラであり、未熟な幼体としての身体に成体に成って得られる古龍の力が体内に在り、苦しんでいる状態である。
そう、つまり―
それだけでも問題だが、更にややこしいのは、単純に渾沌ゴアに転生しただけじゃなく、人の身体と渾沌ゴアを足して2で割ったような状態だということ。
人の何千倍も頑丈で巨大な竜の身体でももて余す古龍の力を、人間の身体に宿しているというそもそも成立しないだろと思えるような状況にも関わらず、俺は生きている。誰のものかも分からない身体で。
しかもモンハン世界と言えば強大なモンスター達が思い浮かぶ。
渾沌ゴアも世界観上は相当の強者であり、並大抵の相手には負けはしないが、敵となり得る、油断できない存在も多くいる。
各地の主として君臨する飛竜の王や砂漠の暴君と言ったモンスターも勝てはするだろうが油断できないし、勝つことも厳しい相手―某脳筋ゴリラや貪食ゴーヤ、愉快犯の爆撃機と言った古龍級生物なんかは間違いなく厳しい戦いを強いられる。
そしてモンハン世界の絶対者―古龍種達。
こいつらは全員ヤバい。最低格の幻獣でも多分キツイし、超大型古龍種以上の奴らはもう論外の域だ。
そして真の意味で頂点に立ってる“アイツら”は…いや止めよう、考えたくもない。
そしてそれらを倒せる程の実力者―ハンター達もまた脅威だ。
ゲームみたいに数分で狩るような奴はいないと思うが、世界観上でも古龍種を単独で狩ることができる実力者は何人かいるのは確定してる。
まあ、こっちは話が通用すればワンチャン敵対しなくて済む。
そして最後の懸念点は―時代。
モンハン世界にも歴史があるとされているのは、遺跡平原や遺群嶺、古代竜人達の存在から分かる。
細かいことは語られていないが、裏設定としていくつかの出来事があったと推察できる。
竜大戦、シュレイド城、黒龍、竜機兵…そしてそれらが関わった先の結末。
詳しくは分からないが、穏やかな結末じゃなかったのは間違いない。
えーと…これまでの情報をまとめると俺が生き残るには―
現代のモンハン世界なら強大なモンスター達をやり過ごしつつ話の通じるハンターを探して手を組んだ後、あるかも分からない身体を治す手段を探す。
古代のモンハン世界ならモンスターをやり過ごしつつ何処にいるかも分からない話の通じる人を探して治す手段を見つけた上でどうにか穏便な結末を見つける(人かモンスターかどちらの側につくかにもよるが)。
………詰みでは?
今俺のいる場所は何処かも分からない深い森の中だが、これじゃ現代か古代かも分からない。
最初にモンスターに会うか人に会うかでもうお祈りしなきゃならないし、その他にも色々と運の要素が強過ぎるし、そもそも自身の寿命がいつまで保つのか分からない。RTA走者でも真っ青な祈りの連続だ。
まっまあワンチャンまだ夢オチもあり得るし…(悪あがき)
一旦寝てから判断するのも遅くはない…筈。
「流石に下で寝るのはまずいよな…けど樹の上から落ちるのも怖いし…そもそも上れるか?」
うーん…身体能力の確認ついでにちょっと上れるか試してみるか。
4割程がモンスターの身体だから普通の身体能力じゃないだろうが…いざって時に事故らないように全力で跳ぶか。
そう思った俺は膝を曲げ、力を入れて樹の上に向かって全力で跳ぶと―
「イッ━━━━━━━━━━!?」
―樹の葉を突き抜けて、一気に視界が切り替わって清々しい青空が見えた。
ええ…こんなに高く飛べるのかよ…にしても俺高所恐怖症だったのにあんまり怖くないな。竜の力がある影響か?
少しぼーっと空や眼下の景色を見ていると、俺はあることに気付く。
あれ?俺の翼脚って片方しかないのにどうやって飛行するんだ?
そう、翼脚があるのは片方だけなので飛行できない俺は無様に落ちて行くしかない。
「ウソオオオオオオオオォォォォォォォォ!?」
加速度的に叫びながら落ちて行った俺は、途中で頑丈そうな樹の枝を翼脚で掴んで自分の身体を引き寄せて無事で済んだ。
「ゼー…ハー…、危なかった…」
こ、これは何度か試しておく必要があるな…
いざって時に全力を出したものの、振り回されてピンチになるとかシャレにならん。
まあ一番嬉しいのは起きたらウチのベッドであることなんだがな!
という訳で俺は寝る。どうか夢オチであってくれ…!
数時間後―
起きても樹の上のままだった。
あまりの無慈悲さに思わず涙が出る。家族は…父さんや母さん、妹はどうしているのだろうか?
どうにかして戻れないのか?いや、戻れるとしても何をすれば戻れるんだ?
モンハン世界はRPGじゃないから明確な“クリア”や“終わり”がない。やろうと思えばどこまでもやれるのだ。
強いて言うならストーリーはあるからそれをクリアすれば戻れる可能性もあるが、どのシリーズか分からない上、古代の世界なら本当に終わりがない。
死ねば戻れる…いや、そもそも俺が覚えていないだけで元の世界で死んでこの世界に来た可能性もある。死ぬのはあまりにもリスクが高過ぎる。
それに…こんなに散々な目にあったのに、死ぬのはあまりにも割に合わない。
せめて…せめて生き延びてやる。絶対に死んでやるもんか。
家族には…もう恐らく会えないだろう。あっちがどうなっているのか分からないが、幸せに生きてくれていることを祈る。
にしても…考えれば考える程神が苦しめって言ってるような境遇だよなぁ…
普通のゴアや古龍、ハンターは贅沢過ぎるとしても、小型モンスターや一般人なら割り切った生活を目指す方向にシフトできたんだが…
転生特典とか…無いんだろうなぁ…(諦観)
本当にクソみたいな状況だけど…頑張って生き残るか。死ぬしかないって言われてた奴が生き延びるってのは、ロマンがあるしな。
はい、プロローグでした。
凄いぞ!前世の4分の1以下でまとまってやがる!まあ前世が詰め込み過ぎただけだと思うんすけどね。
何を言ってるのか分からない方は、そのまま読み進めてくれて大丈夫です。
頑張って面白い話が書けるようにします。
評価、感想もよろしければお願い致します。
それでは次回をお楽しみに。