人間に成った渾沌ゴアと、ミラルーツに成った少女のお話   作:サクラン

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人間の可能性…仕事してると色んな人がいるってよーく勉強になりますよ。ええ。

それではお楽しみください。


第十話 人間の可能性

「そういや、ここで俺は何すんだ?鍛冶のやり方でも学ぶのか?」

 

 拳骨を食らって頭に作ったタンコブを腫らしたまま、俺はおっちゃんに聞く。側には説教を終わらせたリサクもいた。

 

「んー…シンゲツ(アイツ)の性格的には剣術が中心だろうけどなあ。まあ多少なら教えられるだろうが…時間も限られてるから齧る程度だな」

 

 同じように頭にタンコブを作ったままのおっちゃんが答える。にしても何も考えてないのか…いや、そういやここにいる理由もシンゲツが急に言い出したからだな。

 

「彼もシンゲツ(あの男)の弟子なわけですし、彼の実力を見せるのは良い刺激になると思います。というか私も気になります」

 

「…ま、それもそうか。そんじゃ軽いデモンストレーションついでに実力のお披露目と行こうか」

 

 そんな感じでトントン拍子に話が進み、鍛錬ついでに手合わせ、実力のお披露目をすることになった。

 

 

 

 

 

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「と、言うわけでアークも鍛錬に参加することになった。面と向かって話すことが難しくても剣を交えたら話せるってこともあるだろ。アークも中々強えから、色々学べると思うぞ」

 

 さっきの集会に使った広場は修練場も兼ねてるらしく、そこには大きさこそ違えど刀を持った人達が汗を流して鍛えていた。

 というか年齢層が幅広い。男女混合なのはまだ分かるが、明らかなちびっこみたいな子まで本当に様々な人がいた。

 

「ねーねー!お師匠様と黒いお兄ちゃんはどっちがつよいのー?」

 

 その中でその元気そうなちびっこが勢いよく手を挙げて聞く。質問は微笑ましいが、やってる事考えたら中々クレイジーだ。

 

「ハッハッハッ!さあーどっちだろうな?でも負ける気はねえぞー」

 

 おっちゃんは笑いながら答えをはぐらかす。が、多分おっちゃんの方が強いな。腰に差してる刀…明らかにただの刀じゃない。

 

 

 

 

 

「ちと、よろしいですかな」

 

「!」

 

 

 

 

 

 少しガヤついてた場はしわがれた―でも何故か透き通るような声で一気に静まり返る。そして声のした方を皆が振り返るとそこには深い紺色の道着を着た白髪を後ろで結んだ爺ちゃんが姿勢良く手を挙げて立っていた。

 

「儂としては、其奴に少し興味があってな。アーク殿さえよろしければ、是非とも手合わせ願いたい」

 

「へえ…」

 

 爺ちゃんの意見に、おっちゃんは意味深に相槌を打つ。多分相当強いからだろうな。見た感じどれだけ低く見積もっても70は越えてそうなのに剣振れるってやべえだろ。

 

「ああ言ってるが…どうだ?やるか?」

 

 おっちゃんが試すような視線を向けるが、俺としても興味がある。やらない選択肢はない。

 

「やるよ。受けて立つ」

 

 俺の返答で、また広場がざわついた。俺と爺ちゃんは、互いに視線を外さず、無言のままだ。

 

「おーし、じゃあ皆端に寄れー。ここは全部戦闘範囲内にするからなー」

 

「! よろしいのか?」

 

「ああ、構わねえよ。折角なら全力でやりたいだろ?互いにな」

 

「…無論」

 

 えっここ全範囲?いやまあ普通の剣道みたいな範囲だったら確かに狭いって感じるけど、ここ全部?国立高校のグラウンドぐらい広いんだけど?それだけ必要ってこと?ヤバない?

 俺は何も言わずポーカーフェイスのままだったが、内心めっちゃ動揺してた。まあいいや(諦め)折角なら俺も思いっきりやるとするか。

 

 

 

 

 

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 俺と爺ちゃん、審判のおっちゃん以外の人達が移動し、俺と爺ちゃんは数メートルの距離を置いた状態で佇んでいた。

 

「よーし、じゃあ始めるぞ。確認だが、互いに致命傷は勿論、重傷以上の怪我を負わせるのは禁止。それ以外は基本何しても構わねえが、できることならここを派手に壊すのは止めて欲しい。キャロルの嬢ちゃんからため息つかれるからな」

 

「…善処する」

 

「……………」

 

「おい!善処するじゃねえんだよ!!イカヅチに関しては何か言え!!」

 

 おっちゃんから注意点を言われるが、俺は勝ち筋的に壊すなは無理だ。爺ちゃん…イカヅチ?も全力でやるからなのか黙ったままだ。

 

「ったく…とにかく、頼んだぞ」

 

 そう言っておっちゃんは右手を上に上げる。あれが振り下ろされた時が戦闘開始らしい。

 俺もイカヅチ爺ちゃんも、腰の刀に手を添えて構える。風の音しか聞こえず、互いの集中的が極限まで高まる。

 そして―

 

 

 

 

 

「始め!!」

 

「━━━━━ッ!!」

 

「!」

 

 

 

 

 

 ―おっちゃんから合図が出されると同時に、俺は翼脚を思い切り振り下ろして地面を砕き揺らす。おっちゃんの顔が死んだのが見えた気がするが、そんなことを気にしてる場合じゃない。

 イカヅチ爺ちゃんは強い以上に得体が知れない。何かする前に速攻でケリをつける!!地面を揺さぶって動きを制限した後、こっちの全力をぶつける。どこぞのタンクトッパーの十八番だ。

 

「シィッ!!」

 

 音にすら追いつけるんじゃないかと思える程の速度で俺は刀を振り抜く、当然イカヅチ爺ちゃんをぶった斬る訳じゃないし寸止めするが、だからって手加減や勝ちを譲るつもりはない。体勢は崩してる。行ける!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ふむ、着眼点は悪くないな。後は実戦経験さえ積めば…と言った所か…。若さ故に伸びしろもある。羨ましい限りじゃ」

 

「…!?」

 

 

 

 

 

 気付いたら俺は喉元に刀を突き付けられていた。

 え!?どうなってる!?俺は確かに間近まで迫った筈で…体勢も崩した。空中にも浮いてたから速さじゃ説明がつかない。

 

「ハッハッハッ!流石にまだ傷も付けられねえか!けど勘は悪くねえな!」

 

 おっちゃんがカラカラと笑いながら近付いて来た。この雰囲気は…嵌められたか?

 

「…何か隠してたか?」

 

「あー、悪い悪い。イカヅチ(コイツ)は俺の弟子ではあるが、それと同時に対等の存在だ」

 

「??」

 

 俺はおっちゃんの言ってることの意味が分からず混乱する。言葉遊びか?

 

「イカヅチは元は拳術軸の武術の師範でな、モンスターが出始めてから老化の筋力不足を補う為に俺に弟子入りしたって訳だ。だから立場上は弟子だが実力的には俺とほぼ互角だ」

 

ぶざけんな!!アンタと同等とか時期尚早にも程があるわ!!」

 

 思わず殴りそうになったわ!!通りで速え訳だよクソッタレ!!

 

「まあ落ち着けい」

 

「!」

 

 頭に軽く手を置かれ、後ろを見るとイカヅチ爺ちゃんが立っていた。さっきまでの凛々しい表情ではなく、優しい老人としての表情を見せながら。

 

「さっきも言ったが、その若さでその強さなら大したもんじゃ。それと、儂とシンゲツは同格じゃないぞ。今はシンゲツの方が強いわい」

 

「また謙遜を…お前の身のこなしは俺じゃ真似できねえよ」

 

「儂から言わせればオヌシの剣速の方がおかしいわい」

 

 実力はともかく立場は本当に対等らしく、二人は親しげに軽口を叩いていた。離れた場所から見ていた弟子達もぞろぞろと戻って来ていた。

 

「凄いですね。イカヅチさん相手に先手を取れただけ大金星ですよ」

 

「…ああ、大したものだ」

 

「黒いお兄ちゃんすごーい!!」

 

 リサクやシュラ、ちびっこと言った弟子が俺を取り囲んで口々に称賛の言葉を贈る。いや、実際は分からん殺しされただけなんだが…弟子の人らでも勝負にならないのか…

 その後はどうやったのか、振り方のコツを延々と聞かれた。そしてその流れで―

 

 

 

 

 

「なあ、アンタの実力も見たいんだが」

 

「! 俺のか?」

 

 

 

 

 

 ―おっちゃんの実力も気になった。あのイカヅチと同格、剣速に関しては明確に上?と認められる程の実力は気になる。

 おっちゃんは少し悩むような顔をするとした後―

 

「んー…正直これ以上土地を壊したくねえから…手合わせじゃない形になるが良いか?」

 

「ああ、別に構わねえよ」

 

「よっし、じゃあ…土台持って来ーい」

 

 おっちゃんがそう言うと、分厚い鉄塊―俺がシンゲツの修行で使ったのと同じ物―が運ばれて来た。

 

「おし、じゃあ見てろよ」

 

 おっちゃんは鉄塊を見据え、刀の鍔に親指を掛ける。俺は動きを見逃さないよう、集中して手元を見続ける。すると―

 

 

 

 

 

「ッ!!」

 

 

 

 

 

 ―一瞬おっちゃんの姿がブレると同時に、複数の剣閃が煌めいた。最低でも五十発以上、0.1秒にも満たない間に叩き込んだ。汗もかかずに。

 …いや速過ぎる。あれで息も乱してないのおかしいだろ。しかもあまりの速さに鉄塊も斬られたと認識してないのか、筋の一つも入っていなかった。

 

「ほいっ」

 

 そしておっちゃんが鉄塊を指でつつくと、思い出したかのように鉄塊はバラバラの破片になった。

 

「いやはや流石じゃな。全く衰えとらん」

 

「まだ流石にな」

 

 腕を回しながらイカヅチ爺ちゃんと話すおっちゃん。同じ人間の筈なのに、何だか遠い世界にいるような気がした。

 

 

 

 

 

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「ふー、お疲れさん。後は大浴場に行って汚れを流しゃ寝るだけだ」

 

「分かった」

 

 そしてその日の鍛錬と全員で晩飯を作って食い終わり、最初の部屋に戻って来た。俺がボーッとおっちゃんを眺めていると―

 

「…聞きたいことがありそうだな」

 

「! 気付いてたのか」

 

「あんだけ分かりやすく見てたら誰だって分かるっての。ホラ、別に刻まねえから言ってみろ」

 

 どうでも良いけどおっちゃんにとっては相手を倒す=刻むってなるのか…まあ良いか。

 

「おっちゃんは間違いなく俺より、いやこれまで見て来た誰よりも強い。あの剣速は簡単にたどり着けるものじゃない」

 

「ほお、そりゃ嬉しいね」

 

 おっちゃんが面白げに笑うが、これは俺が本気で思ったことだし、弟子の皆も思ってることだろう。

 

「その刀の放つ気配と言い、アンタ多分過去にとんでもない奴に勝ってるだろ。アンタを弱いって言える要素が今のところない。アンタ過去に―特にシンゲツと何があった?」

 

「!」

 

 俺がシンゲツの名前を出すと、おっちゃんは顔を顰める。やっぱり何かあったのか…

 ずっと気になってたんだ。シンゲツは強さに関しては厳しいが、ちゃんと認める所は認める。にも関わらず、シンゲツがおっちゃんを“腑抜け”って言ってること。正直二人の正確な実力は知らないとは言え、全然勝負の土俵には立てそうに思えるんだが…

 

「…ま、特別なことをした訳じゃねえよ。俺は昔―大体十五年前か?まあ、若さ故にブイブイ言わせててな、各地を放浪しながら武者修行してたんだ」

 

 遠くを懐かしむような表情でおっちゃんは話し始めた。

 

「この刀はその途中で遭遇した風を纏う鋼の龍を死闘の末に倒した時に手に入れた素材で作ったもんだ。いやあアイツは強かった」

 

「へーそんな奴がいたのか」

 

 すっとぼけて知らないフリをしてるが、刀を見て大体察してはいた。戦ったのはほぼ確実にクシャルダオラだろうな。どれぐらいの個体か分からないが、ゲーム上のランクより世界観上の強さが優先されるこの世界だと古龍を倒したって事実はまじでやばいな。

 

「ま、そんなことがあったもんで完全に俺は天狗になっててな。刀神なんて異名もつけられて自分が最強だと思ってたよ」

 

 まあ、自意識過剰にも思えるが古龍を単独で倒したってなると分からんでもない。

 

「そんな時に…シンゲツ(アイツ)と出会った」

 

「アイツの使ってる大太刀…どことなく俺の刀と似てる感じがしてな、間違いなく俺と渡り合える奴だと確信した」

 

「だが…俺はアイツに敵わなかった。正直、どれだけ研鑽を積んでも敵わねえと思ったよ。アイツは俺が勝つのを諦めたから、気に入らないんだろうな」

 

 成る程…そこまで聞けば確かに納得は行く。納得は行くが…

 

「本当におっちゃんでも全く敵わなかったのか?」

 

「勝負はできたし、斬り合うこともできたんだ。だが、何だろうな…格が違うってのか?とにかくアイツには絶対に勝てねえって思ったんだ」

 

「斬り合いが成立したなら、勝つ可能性もあるんじゃないのか?」

 

 斬り合いが成立したってのがどの程度か分からないが、圧倒された訳じゃないなら鍛錬積めばワンちゃんある気がするんだが…

 

「俺は風の龍と戦ってる最中に、何か一つの…壁?を越えた気がするんだ。自身の力が一つの到達点に至った感覚、それはその時だけじゃねえ、何にもないふとした瞬間だったり、伸び悩んでて刀を振った時…とまあ、色んな瞬間にその感覚があった。お前にも、似た経験はあるんじゃねえか?」

 

「…あるな」

 

 シンゲツの修行でルインからのアドバイスを受けた時、あの時確かに自分の中で何かが嵌まった感じがした。あれと似たようなもんか。

 

「で、それがどうしたんだ?」

 

「人…というか生物全体には成長の限界がある。人がどれだけ努力したって、羽が生える訳ねえだろ?だが、延長線上…刀を振るっていう単純な行動でも、極めれば俺みたいな剣速を出すことができる。その“極まった”感覚が風の龍と戦ってる最中にあったんだ」

 

「言うなれば俺はもう“完成”した状態なんだ。自身のポテンシャルを全て出し切り、自らの力を引き出すことができるんだ」

 

「そして至れる可能性は俺だけじゃねえ、お前ら皆にあるんだよ。鍛錬や気付き…とにかく何かしらのキッカケで、自分の中に在る力を引き出せば、至れる境地は皆同じだ」

 

 アニメや漫画でよく聞くことだな。というか実際人間も脳の本来の機能の10%?ぐらいしか使ってないって話だし。

 

「けどアイツは…シンゲツは違った。同じ人間の筈なのに、放つ気配が違った。何も俺の何十倍も強いって訳じゃないが、そのアイツが勝っている部分に追い付ける気がしなかった」

 

 おっちゃんはそこで少し俯くと、顔を上げて何か確信したような表情で言い放つ。

 

「ありゃ人間と背格好が同じなだけの別の生物だ。普通の人間じゃ決して辿り着けない境地、そこに至ることができるような設計をされた生物なんだ」

 

「更にやべえのはフランシスカの嬢ちゃんだな。あれは何もしなくても見て少し経験すれば、自然と最適な形が分かって、身体が合わせて行く。ある意味生物の究極形だな」

 

 集会所に行った時に会った黒い装備の姉ちゃんか…確かにあれは俺でも一目でヤバいって分かったもんな。確かにあれは別格だ。

 

「まあ、端から見れば情けねえ行動だってのは自分でも分かってる。シンゲツの野郎にどうこう言われても仕方のねえことだ」

 

「…そうか」

 

 自嘲するおっちゃんに俺は何も言えなかった。前世で俺も届かない悔しさ、辛さは嫌という程経験してきたから。

 一般人視点で見ればおっちゃんも十分凄い人ではあるんだが…こればかりはおっちゃんだからこそ分かることなんだろう。

 

「じゃあ、こうして加工屋と師匠を始めたのは?」

 

「んー?単純な興味だよ。それに、少しでも手助けできる奴がいるならしてやりたいからな。皆優秀だよ」

 

 けど、せめてこうして他のやりがいを見付けられただけ良かった。

 

「だから気張れよ。お前はお前にしかできないことが必ずある」

 

「そりゃアンタもだろ。アンタ以上の強さを持つ人なんか中々いないだろ。だから弟子の皆はアンタを慕ってるんだろ」

 

「…そうか…そうだな」

 

 そう言うと、おっちゃんは自嘲じゃなく、穏やかな顔で笑った。

 

「さて…それじゃあお前に相談があるんだが…」

 

 おっちゃんは深刻そうな表情で俺に顔を近付けて来る。俺は嫌な汗が頬を伝う。何故ならこういう顔をする時のおっちゃんは―

 

 

 

 

 

「ここの浴場は男女別れてるが繋がってるんだが―「もう読めたわ!!嫌に決まってんだろ!!」

 

 

 

 

 

 ―大抵馬鹿げた提案をしてくるから。俺は拳を顔面に向けて叩き込み、言葉を中断させた。

 こういう顔は弟子の前でも見せるのだろうか…俺は少し不安になった。




そろそろ話進めなきゃ…お気に入りもジワジワ増えていってるし、投稿ペースも上げたい。

評価、感想もよろしければお願い致します。

それでは次回をお楽しみに。
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