人間に成った渾沌ゴアと、ミラルーツに成った少女のお話   作:サクラン

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UA3000件突破しました!ありがとうございます!

まーたタイトル変えやがって…なんにも学んでないな…

20日の夜にコロコロ変えまくって今のタイトルに落ち着きました。やっぱりこのストーリーでネタよりはどうしても合わないと思ったので…散々悩んで4Gのエピソードクエストが合うと思ったので引っ張って来ました。

振り回して申し訳ないです…本当にちゃんとします…

それではお楽しみください。


第十二話 居候

「初めましてだネ。ご主人」

 

「…お前みたいな使用人を雇った覚えはないんだが?」

 

 あまりに自然に話し掛けて来た自分のそっくりさんに俺はそう言うしかできなかった。ここが夢であること、コイツもただの幻覚じゃないことは分かるんだが…昼間の件もあって警戒しない訳には行かない。

 

「そう悲しいこと言わないでヨ。この喋り方だって身体の作りの問題なんだからサ」

 

 そっくりさんはやれやれと言った素振りでため息をつく。

 …身体の作りと言われればコイツは俺に似てるけど若干違う。

 特に違うのは顔。俺は左半分が少し甲殻に覆われてて白目の部分が真っ赤になってる感じなんだが、コイツは顔全体がそんな感じになってて俺には無いはずの触角が頭の右側から生えている。狂竜化状態の渾沌ゴアを擬人化したらこんな風になりそうだ。

 

「さテ、色々聞きたい事もあるでショ。答えられる事は答えるから聞いてみなヨ」

 

 胡散臭い素振りで少しムカつくが…聞かなきゃ分からないから聞くしかないよな。

 

「じゃあまず、お前は何なんだ」

 

「そんな警戒しないでヨ。捕って食おうって訳じゃないだからサ。まあその質問に対する答えとしては…キミの知る“渾沌に呻くゴア・マガラ”って言うのが正しいかナ」

 

 答えになってない。そう言おうとして俺は思い直す。

 この世界はまだ古代。つまり古龍の研究なんかは現代より進んでなくて、渾沌ゴアという存在すら知られてない可能性が高い。じゃあコイツが個体としての名が言えたって事は…

 

「気付いたみたいだネ」

 

「…お前元人間か?」

 

「それは違うヨ。あくまで名前とその意味が理解できたのは、キミの“記憶”と“知性”込みの話。ボクは今魂としてキミの中に在る状態なんだヨ」

 

 中々意味不明にも思えるが、前世ではよく漫画を読んでて考察もちょっとしていた俺なら理屈として理解できた。

 ただ理解はできても納得行かないことが一つ。

 

 

 

 

 

「何でお前は魂の状態なんだ?そんなファンタジーな世界だとは思ってなかったが」

 

 

 

 

 

 そう、どうやって魂だけの状態になったのかということ。

 近年ぶっ飛んだモンスターも出て来てるものの、魂を操るとかそんなモンスターはいない。渾沌ゴアにもそんなことはできない筈だ。

 

「何言ってるノ。いるでショ、それが可能な存在ガ」

 

「はあ?何言ってんだ」

 

「色んな()()()()に使ったでショ?」

 

「オトモンってそんな奴は…あ」

 

 いた。それが可能な存在。というか技術。

 “伝承の儀”。モンハンストーリーズで登場するシステムでモンスターの遺伝子を移し替えて別のモンスターの技や特性が扱えるようになるというもの。

 これを使えばウルクススが炎を吐けるようになるし、アプトノスがスーパーノヴァをぶっ放すことだって可能になる凄まじい技術だ。

 でもあれは遺伝子を移し替えるものであって…

 

 

 

 

 

「魂を移動させるものじゃなイ。そう思ったでショ?」

 

「…見透かしたように言うな。けどそうだな。魂なんか移動させられないだろ」

 

「ゲーム上だとそう見えるかもだけどネ、実際は違うんだヨ」

 

 そっくりさんは両手の指を一本ずつ立てて説明する。

 

「あれは分かりやすく言うとモンスターの魂を少し切り取って他のモンスターに移してるノ。2で破滅レウスが暴走しかけた時、お爺ちゃんが止めに入ったでショ?あれは破滅レウスの遺伝子―魂に干渉して止めたんだヨ」

 

「普通に考えテ、遺伝子を移し替える―そんなの現代の技術でやっとできるレベルでショ。この世界にも錬金術とかある訳だシ、おかしくはないでショ」

 

 言われてみりゃそりゃあそうだ。確かに伝承の儀って何をどうしてるかまでは説明されてないな。

 

「じゃあ、お前は伝承の儀で俺に乗り移ったのか?」

 

「まア、そうだネ。キミの母親のお陰だヨ」

 

 え?母親?この身体のってことだよな…

 

「俺の―いや、この身体の母親はライダーだったのか?」

 

「まだこの世界にはその概念は浸透してなかったけド、そうだネ。小さい頃に両親?祖父母?から絆石を受け継いでテ、元からあったライダーの才能もあってモンスターと仲良くしてたみたいだヨ。…その分気味悪がられてもいたみたいだけド…」

 

 まあ、現代でもライダーって肩身狭い思いしてるからなあ…モンスターについて更に理解が浅い古代だとそりゃあ迫害されてもおかしくないか…

 

「ここまで聞いたら分かると思うけド…ボクは脱皮が間に合わずに先を越されちゃってネ。まア、苦しんでた訳だヨ」

 

 少しバツが悪そうに頭を掻く。そりゃ思い出したくもないだろうからな。当然か。

 

「暗くテ、痛くテ、怖くテ…死にたくなかっタ。苦しんで睡眠だけが安心できる中デ…君の母親に出会ったんだヨ」

 

「痛くて苦しくてモ…彼女の側なら安心していられタ。絆石の効果かもしれないけド…ボクは彼女だからこそ安心できたと思うヨ」

 

 真っ赤に染まった瞳でも、ハッキリと分かるぐらい安らかな表情をしていた。コイツにとって、彼女はそれ程の救いになったんだろう。

 

「それでモ…現実は非情でネ、ボクの側に居ればウイルスによって身体は侵されて行ク。絆を結んでいた影響カ、ある程度症状は抑えられたみたいだけド…それでも生物である以上どうしようもなくてネ、見る見る内に弱って行ったヨ」

 

「…絆を結んでたなら、ウイルスの制御も石を通してできるんじゃないのか?」

 

「あくまで心を通わせる才能があっただけらしくてネ、自らその才能を磨くことはなかったらしいヨ」

 

 そう考えると惜しいな…まあ、環境が環境だからしゃあないが。

 

「僕もどんどん弱って行く中デ…彼女はボクにある提案をしたんダ」

 

 

 

 

 

「“私の子どもにアナタの未来を託さないか“…ってネ」

 

 

 

 

 

 成る程、それでこの身体はこんな風に…いや、腑に落ちない点があるな。

 

「確か…お前の種が繁殖できるのはシャガルマガラがばらまくウイルスの影響だろ?お前のウイルスじゃ生殖細胞にはならないんじゃないか?」

 

「正確に言えばボクのばらまくウイルスにも生殖細胞は含まれてるんだけど弱々しくてネ、繁殖するだけの力がないんだヨ」

 

 何気に初耳情報。でも半分古龍の力に目覚めていると考えると納得は行くか。

 

「そして本来繁殖するには足りない力ヲ、彼女は伝承の儀でボクの魂を上乗せすることで生命の基盤としたみたいだヨ」

 

「伝承の儀は両親から受け継いでたのか?」

 

「みたいだヨ。あまり詳しくは聞かなかったけド」

 

「それじゃあ、俺は文字通り竜と人の子で、実質的にお前の息子ってわけか」

 

「それと同時に兄弟でもあるけどネ。不思議な仲だヨ」

 

 少しからかうような表情で、コイツは俺に対して笑い掛けた。やっぱり楽しいんだろう。そこの所も知りたいが、そこは後だ。

 

「さテ、他に聞きたい事はあル?」

 

「…お前の持つ記憶と知識はどこまでだ?」

 

「“ゴア・マガラ”として過ごした時かラ、キミの前世の記憶をからこの世界で目覚めて過ごしたこれまでの全てだヨ」

 

「じゃあ分かると思うが、俺は何も最初からこの身体でいた訳じゃない。一定の年齢まで成長した状態でこの世界に来た。つまり、この身体は俺の知らない別の人格―元の人格として過ごして来た時間がある筈だが…お前も分からないのか?」

 

「そうだネ。第二の生の記憶はキミと全く同じだヨ」

 

「おかしくないか…?この身体はお前と一心同体なら、お前は記憶がないと辻褄が合わない」

 

 俺と違って、コイツは後付じゃない。聞いた限りだと生まれた瞬間からこの身体だった訳だから、記憶がないとおかしい。

 

「そう言われてもネェ…ボクも本当に知らないんだヨ」

 

 困った顔でソイツは言った。母親の影響でもなさそうだし、本当に何も知らないんだろう。

 

「…まア、ちょっとした仮説なら考えられるけどネ」

 

「! 本当か?」

 

「根拠なんて無いも同然だけどネ」

 

 少し咳払いをして、続きを話した。

 

 

 

 

 

「ひょっとしたらボク達、時空を越えて来たんじゃないかナ」

 

「…はあ?」

 

 

 

 

 

 あまりの突拍子のない説に、俺は素っ頓狂な声を上げてしまう。いや、でも本当に何でそうなった?俺は経緯こそ特殊だが、生前何かあったという訳じゃないし、ゴア・マガラも古龍でこそあるものの特別という訳じゃない。成体に成ったとしても力量で上回る古龍は存在する。

 

「そう考えないとキミはともかくボクに記憶がない理由が分からないでショ?」

 

「いや…それ以上に時空移動ってどういうことだよ」

 

「ボクは恐らく“この身体の母親と出会って生まれ変わった世界線”かラ、キミは“全くの別世界”から呼び寄せられたんじゃないかなト。ボクとキミ、それぞれが偶然融合してこんな風になったんじゃないかナ」

 

 んー…理屈は分かる。けど―

 

「呼び寄せるって誰が?」

 

 異世界転生ものとかによくある神様でもいるってのか?

 

 

 

 

 

「今日の昼に会ったでショ、彼女だヨ」

 

「…!」

 

 

 

 

 

 俺はソイツに言われて思い出した。そうだ、あの少女の正体は恐らく…

 

「…あの娘が俺達を呼び寄せたと?」

 

「正確に言えば彼女の中に“いる”存在だネ。今までは彼女が抑え込んでたみたいだけド…今は分からないネ」

 

「だが、自分はともかく他を時空間移動させることなんてできるのか?」

 

 アイスボーンの資料集で分かった“黒龍”に関する驚くべき仮説。普段どこにも姿を見せないのは時空の狭間に身を隠しているからではないかということ。他にも“力を平らに成す存在”とも称され、アイスボーンを通して黒龍の謎は更に深まった。

 ただ、紅龍や祖龍に関してはそもそも登場しなかったから結局謎は棚上げされたが…

 

「そんなの分からないヨ。さっきも言ったけどあくまでキミの“知識“と”記憶“を元に考えた可能性だヨ」

 

 ただ…とソイツは一拍言い淀んでから―

 

 

 

 

 

「―彼女は大きく変わっただろうネ。彼女の中にいる存在…あれはボクと違って明らかに彼女に敵意を持ってタ。中の存在が仕組んだのカ…あるいは偶然かは分からないけド…少なくとも“ただの少女”としての性格じゃなくなっただろうネ」

 

 

 

 

 

 ―そう締め括った。祖龍に関しては分からないことの方が多い。俺にできることもないか…また会えたら話したいもんだが。

 

「あ、そう言えば昼間白い影に取り込まれそうになった時に助けくれたのってひよっとしてお前か?」

 

 考えていた時に少し思い出したことを聞いてみる。あの時俺を守るように吼えてくれた影は思い返せば渾沌ゴアにそっくりだった。

 

「あア、あれネ。確かにボクだけド、あれに関してはキミのお陰でもあるんだヨ」

 

「俺の?俺は何もしてないが?」

 

「“あれ”に抵抗できたのは龍と全く関係がない人間であるキミの魂と繋がってたからこそだヨ。ボクも完全な古龍じゃないからある程度抵抗できるけド、跳ね除けられたのはキミという人間の魂と繋がっててボク自身にもハッキリとした“理性”と“記憶”があったかラ。そうじゃなかったら跳ね除けるのは無理だったネ」

 

「そうなのか。じゃあお前がさっきから頑なに名前を呼ばないのも…」

 

「うン、下手すれば感知されてここに来る可能性があるからだヨ。全ての龍の祖が本当に“あれ”なのかは分からないけド、少なくともそれだけの影響力があるのは確かだヨ」

 

 確かに開発陣からも、黒龍から祖龍になったとか、祖龍から黒龍が産まれた訳でもないって言われてたな。古龍の血がとれない事と言い、本当に謎だらけだ。

 だが気になるのは―

 

 

 

 

 

「お前大丈夫か?そんな相手を拒んだってことは、実質喧嘩売ったのと同じだろ?」

 

 

 

 

 

 ―そう、そこだ。俺としても言いなりになるのはゴメンだったから別に結果オーライなんだが、コイツは大丈夫なのか?

 

「そこは大丈夫だヨ。あれの為に死ぬまで言いなりなんてゴメンだからネ。折角この目で世界を“見る”ことができるんだかラ、人間の立場を捨てるなんて嫌だシ、人間の生活も悪くないからネ」

 

 祖龍というモンハン界でもトップクラスにやべー奴を敵に回したってのに、コイツは1ミリも後悔してない。

 俺達にとっては当たり前のことでも、コイツにとっては光を見て、死に恐怖することもない穏やかな生活というのは意地でも手放したくないものなんだろう。

 

「良いのか?人間も、愚かじゃないとは言い切れねえぞ?」

 

「確かニ、同胞を狩られてるのは良い気分じゃないけどネ、死にたくないから足掻いてるんでショ?死にたくないならどんな手でも使ウ、正しいとか間違ってるとカ、そういう問題じゃなくテ、自分が死にたくないからすル。ボクがそこにどうこう言う権利はないヨ。気持ちは痛い程分かるしネ、文字通リ」

 

「…洒落にならんことを言うな。気まずいだろ」

 

「アッハッハ!気にかけてくれてるのカ!嬉しいネェ!」

 

 カラカラと、コイツは違和感のある―でも心から楽しそうに笑った。それだけ、楽しいのか。人間を通して世界を感じることが。

 …まあ、さっきも言ったが親であり兄弟だ。コイツの望むことは、できる限り叶えてやりたい。

 

「名前は?」

 

「ン?」

 

「名前は何かあるのか」

 

「んー…無いネ。母親からも名前は付けられなかったシ」

 

「じゃあフィリアだ」

 

「…ボクの名前?そレ」

 

「良いだろ。性別ないんだから」

 

「自分のネーミングセンスが無いからって安直に装備から取るなんテ…」

 

「うるせぇ!ほっとけ!」

 

 自分でも正直どうかとは思ったがこれ以上良い案は思い付かなかった。

 

「マ、良いヤ。妙に凝った名前出して違和感出る方が嫌だシ」

 

「…お前ひよっとして俺の心まで読めたりする?」

 

 さっきから妙に俺の考えてること、思ったことを当てて来るもんだから気になって聞いてしまう。何故ならこの後のコイツの態度によっては俺はコイツを殴らなきゃならない。

 

「この空間にいる間は分からないヨ。ただ意識のある時はキミの感情や何を考えてるかが何となく分かル。そウ、例えばルインに対してあんなことやこんなことを考えてることだっテ―バキィ!!ブヘッ!」

 

 殴った。聞いた瞬間反射で殴った。

 

「痛いじゃないカ!ボクのお陰で救われたのになんて薄情ナ!!」

 

「人の心読み取ってニヤニヤしてるお前に言われたくねえ!!」

 

 こればかりは最悪だな…これから俺に安息の場所はないのか…

 

「全ク…ア、それとボクとキミの繋がりが強くなったかラ、できることが増えた筈だヨ。ウイルスの制御が前よりやりやすくなったと思ウ」

 

「! へーそうなのか」

 

 これはありがたい。ずっと課題だった中〜遠距離の攻撃手段が欲しかったからな。影響を考慮してあまり積極的に使う訳には行かないが、手札が増えたのは嬉しい限りだ。

 

「んオ、そろそろお別れみたいだネ」

 

「! これは…」

 

 フィリアに言われて身体を見ると少しずつ透け始めていた。どうやら眠りから覚めるらしい。

 

「じゃあ、またネ」

 

「これから寝る度にお前と会うのか…」

 

「嬉しいでショ?」

 

「毎日は正直勘弁だ…」

 

 そう言った俺が最後に見たものは、笑い掛けてくるフィリアだった。

 

 

 

 

 

―NowLoading―

 

 

 

 

 

「…夢か…」

 

 次に目を覚ますと、俺の視界には和式の天井が写っていた。まるで夢のようだったが、夢じゃないことは何となく分かる。

 

「どうせ中から見えてるだろうし…取り敢えず飯食いに行くか」

 

 

 

 

 

『おっはヨーーーーー!!』

 

「!!??」

 

 

 

 

 

 目覚めきってない頭の中に大声が響き、俺は思わずその場で飛び跳ねる。

 

『アッハッハッハー!ドッキリ大成功ー!!』

 

「…朝っぱらから何なんだ。喧しい…」

 

『チェー、驚いたのは最初だけカー』

 

「傍から見たら一人で喋ってるように見えるだろ。朝も早いし、大声は出せない」

 

 正直驚き過ぎて怒鳴る元気も吹っ飛んだ。それに何となくこういうことができるかもしれないのは予想してたからな。

 

『繋がりが強くなったからネ。こういう風に語り掛けることもできるようになったヨ。キミもわざわざ話さなくても考えるだけで伝わるヨ』

 

(…慣れないな…)

 

 それを聞いて俺は内心で返事をする。これ誰かと喋ってる時にしろってなったらキツそうだな…

 

(俺には安息の場所どころか時すらねえのか…)

 

『まぁまぁ楽しいでショ?ほラ、ご飯食べに行こウ!!』

 

(分かったからはしゃぐな。頭痛くなる…)

 

 こうして俺の中には居候が一人できた。『皆よろしくネー』語り掛けるな。




はい、わりと独自要素全開でした。

伝承の儀関連は全て私の勝手な解釈です。ご了承ください。

評価、感想もよろしければお願い致します。

それでは次回をお楽しみに。
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