人間に成った渾沌ゴアと、ミラルーツに成った少女のお話   作:サクラン

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しおりやお気に入り登録数は順調に増えてる…タイトル変えて伸びが絶望的にならなくて良かったー(そもそも最初から決めとけって話)

それではお楽しみください。


第十三話 竜機兵

「グオオオオ!!」

 

「ッ!」

 

 俺を叩き潰さんと振り下ろされた前足を後方に跳んで躱す。その一撃は地面に大きなヒビを入れる程であり、食らえば間違いなくただじゃ済まない。

 

「グオオオオ!!」

 

「!」

 

 怪物は俺が前足を躱すのを見るや否や追い打つように口から業火を放つ。俺は火球に合わせるように刀を置くことで切断するが、着弾した後方では大爆発が起きていた。

 

「グオオオオォォォォ!!」

 

 攻撃が当たらないことに業を煮やしたのか、咆哮を上げながら俺に向かって突進して来る。巨大な顎を開き、炎を滾らせながら俺を噛み砕こうと―

 

 

 

 

 

「ふー…このぐらいの相手ならどうって事無くなったな」

 

『ボクのお陰だからネ、当然でショ』

 

 

 

 

 

 ―した瞬間に俺は怪物の後方に降り立ち、怪物はバラバラになっていた。

 息を吐きながら、俺は刀を鞘に納めた。自分の中に居候がいることに気付いてそこそこの時間が経ち、渾沌ゴアの身体を使うことにも違和感が無くなった。前までは人間としての感覚が強く残り過ぎてたからか、あまり翼脚とか使えなかったんだよな。今ではわりとそつなく使える。

 

「ほう、そこまで余裕を持っているとは、腕を上げたな」

 

「…文字通り目にも止まらない速さでシェルレウス両断した奴が何言ってやがる」

 

『何なら人類最強なんだよナァ…』

 

 真っ二つにしたモンスターの死体を尻目に歩いて来るのは人類最強、フランシスカである。前に一度手合わせしてからその戦闘力の高さにはフィリアすらドン引きした。仮にも古龍の幼体が化け物だと思うレベルの強さってなんだよ。

 

「どうだ?手合わせでも」

 

「少なくとも止める奴いないと歯止めが効かなくなるだろお前、それに今日は呼び出し食らってるだろ。そっち行ってからだ」

 

『もう二度相手はゴメンだからネ…』

 

「なんだ、つまらん。呼び出しと言ってもどうでもいい報告だろう」

 

「今日の呼び出しはシンゲツやイカヅチまで来るらしいから、流石にどうでもいいことしゃないと思うぞ」

 

『どうでもいい呼び出しがあることの方が問題だと思うんだけド…』

 

 そう、今日はキラーズの面子の内約半数が呼び出しを食らっている。詳細は誰も知らされてない。

 正直呼び出す必要があるのかとは思うが…迎えはキャロルが来てくれるって話だから重要な話だと思う。

 

 

 

 

 

―NowLoading―

 

 

 

 

 

「二人共お疲れ様です」

 

「ああ、お疲れ」

 

「御託はいい、何故呼び出した?」

 

 帰りの四輪車の中、キャロルと向かい合う形で席に座っていた。お前らの足なら走って帰れるだろとか突っ込んではいけない。

 

「とある兵器が完成したんです。水面下で開発していたある兵器がね」

 

「!」

 

「私達を呼び出すだけのものなんだろうな?」

 

「実際貴方達のお陰で予定より早く完成したので、そのお披露目ということで」

 

 フランシスカは面倒くさいですっていう態度を隠さずに行ってるが、俺としてはその兵器の方が気になっていた。

 多分その兵器は―

 

 

 

 

 

(竜機兵か…)

 

『あア、記憶を見たけど中々胸糞悪いよネ、あレ』

 

(確か…竜が30頭以上だったか?必要だったからまあ俺達のペースだとそりゃあ素材は余る程あるだろうな)

 

 

 

 

 

 ―あくまで裏設定…今だと没設定同然なのかな?だがシンゲツの話を聞くにまず竜機兵以外あり得ない。他にないと思うし。

 

「フン、オモチャか、下らん」

 

「言っときますけどモンスターと一対一ができるキラーズなんて極一部ですからね?」

 

 フランシスカは竜機兵に全く期待していないようだった。まあ俺としてもワイバーンレックスやシェルレウスは正直脅威にならない。それはそれとしてキャロルの言葉には同意しかないが…

 

『実際どれぐらい強いのかネ?』

 

(さあ…ただ下手すれば古龍級の影響力があるかもしれない)

 

 裏設定中の没設定みたいなもんだから概要がちょろっと触れられた程度で分かんないんだよなー。強いて言うなら発見された時ボロボロだったから禁忌には劣るってぐらいかな?…何の参考にもならねえな!

 

「とにかく、失礼な事は思っても言わないようにして下さいね」

 

「知るか。何なら退屈だろうから追い出されるならそれで構わん」

 

 キャロルとフランシスカの声を聞きながら、俺は不安に駆られながら車に揺られている内に研究所に到着していた。

 

「到着しました。お疲れ様です」

 

「ふー…やっぱり車は苦手だな、俺」

 

「ん、確かにかなりの強者が集っているな。集める必要があったかは知らんが」

 

 いくら強くなっても慣れない車の揺れに俺が深呼吸していると、フランシスカが研究所から感じる気配に言及した。

 確かに施設内からは強い気配をいくつか感じる。多分シンゲツやルインもいる…のか?

 

「というか貴方達、ドレスコードとか考えなかったのですか?」

 

「私程の美女は何を着ても様になる、問題ない」

 

「俺はこれ以外に着れる服ないからな。別に貴族の奴らは俺なんぞ気にしないだろ」

 

「自由人ですか…」

 

 キャロルは呆れたように呟くが、実際前世でもオシャレとかに微塵も気を遣ったことがない俺としては、ドレスコードなんてさっぱりだ。それに貴族の奴らは男の俺に興味ないだろうからな。

 フランシスカやキャロルは目を付けられたらご愁傷様としか言い様がないな…まあ最悪フランシスカが実力行使すれば問題ないだろ。

 

「ここか、やっぱり一番デカい部屋なんだな」

 

「ハァ…」

 

「溜息をつかないで下さい…」

 

 そして扉を開くと、相当酒が入って顔を赤く染めた貴族が獣欲を思わせる瞳で俺達を―正確に言えばフランシスカとキャロルを見た。

 

「新車の発表会に間違えたか?」

 

「置いて逃げたら一生恨みますよ…」

 

 逃げようとするフランシスカの裾を掴んでキャロルがピッタリと密着する。フランシスカはともかくキャロルは権利で押し通されたらどうしようもないからな、フランシスカを盾にするのは理屈としては間違ってない。

 

「ハッハッハッ、人類最強をそんな扱いとは贅沢だな!」

 

「中佐、離れないで下さい…!」

 

「…やっと来たか」

 

「おっ、久し振りだなー!」

 

 その様を笑って見物する初老の男性と、キャロルと同じ様に場の空気に圧倒されて萎縮してしまってる女性が一人、そして見覚えのある大太刀と刺々しい装備が見えた。

 

「アンタ等も呼ばれてたのか」

 

「おう!久し振りだな坊主!元気か?」

 

「まだそれを気にする年じゃねえよ。アンタこそ大丈夫か?」

 

「ここにいることがその質問に対する答えだ」

 

 顔に大きな傷跡があり、髪をオールバックに纏めているこの男性はフーゴ、それに引っ付いてる女性はアクレシアだ。

 キラーズの中だと実力派のペアで名が通っている。“魔境”と呼ばれる地から生還した数少ない人物でもある。実は俺もちょくちょくお世話になった人だ。

 

「半数が呼ばれていると聞いていたが…こんなにこっちに来ていて大丈夫か?」

 

「街の防衛はシエルの嬢ちゃんとアラシ率いる剣道陣が担ってる。流石に全員抜けたら防衛が成り立たないからな」

 

「フム、私やシンゲツの代わりと考えるなら妥当か…」

 

 アラシのおっちゃんやイカヅチの爺ちゃん、リサクやシュラがいないのは街の防衛に回ってるかららしい。まあ、ずっといない訳じゃないから、そのぐらいが妥当か。

 

「! 周りが暗く…!」

 

「どうやら発表が始まるらしいぜ」

 

 ワイワイ話していると周囲が暗転し、舞台上の老人に明かりが当てられていた。

 

「あれは…」

 

「竜機兵を開発した、テオスって奴だってよ。他にも色んなアイテムを作ってるらしい」

 

 その照らし出された老人に、俺は見覚えがあった。身体検査の時、少し姿を見せてた人だ。直に話したことは無かったが…

 

『ア、胡散臭い人』

 

(そういうこと言うの止めろ。気持ちは分かるが)

 

 フィリアも気に入らないらしい。実際、竜30頭犠牲にする兵器を作り出した奴を疑うなって方が無理だよな。

 

『それではこれより!新兵器こと“竜機兵、イコール・ドラゴン・ウェポン”の発表をさせて頂きます!!』

 

 拡声器から大きな声が響き、舞台上の幕が上がった。

 その幕の裏から現れたのは、巨大な水槽。全長60メートルを越える水槽の中は研究施設とかでよく見る薄緑色の液体で満たされ、その水槽が丁度良いと言える程の巨体が収まっていた。

 黒い竜鱗と、所々が鋼鉄に覆われた身体。あらゆる箇所を管で繋がれ、湾曲した角に長い翼脚、胴体と同じ程度の大きさの尻尾に背中に並んだ鋸のような刃、不自然極まりない身体をしていた。

 

 その迫力に会場の各部から歓声が上がるが、俺の周りにいるキラーズはほとんどが顔を顰める。キラーズは命を懸けた戦いをしてる故に、生命の重さもよく分かってる。復讐の為に生きてるキラーズもそうだ。

 自然や生命を愛するキャロルは口元を押さえ、アクレシアは顔色を悪くしてフーゴの背中に顔を埋める。フーゴとフランシスカは苦虫を噛み潰したような表情になり、シンゲツですら眉を顰めた。ルインは不自然な程に無表情だ。

 

「これは想像以上に悍ましいな、本当に生きているぞ、アレは」

 

「ああ、まさか本当にゼロから生命を創っちまうとはな…」

 

 フランシスカとフーゴは竜機兵の異常性に驚いてるようだ。かく言う俺も同じだが。

 

『…分かってはいたけド、直に見ると一周回って感心するヨ。何を喰ったらこんなモノを考えつくのかネ』

 

(確かに…これは気色悪いな。不自然極まりないのに、確かに生きてやがる)

 

 フィリアは強い怒りを滲ませて吐き捨て、俺も少し気分が悪くなった。特にフィリア―というよりマガラ種にとってはコイツ程ムカつく存在はいないだろうな。

 生命としての当然の権利。生存ということすら人間の手によってコントロールされる。

 生きる上で、何かに頼らなければならないのは当然のことだが、この生命は、全てを人間の指先の捜査一つで決められる。哀れと言う他ない存在。

 

 俺だけじゃない。その場にいたキラーズは全員確信した。自然に生きる()()を確実に怒らせることになると。

 熱狂しながら竜機兵についての説明をするテオスと、貴族達を尻目に、キラーズ達は気を引き締めた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「やっぱり、変わらないのね…」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 その時、たった一人の少女が、誰に気付かれることもなく扉を開けて出て行った。

 

 

 

 

 

―NowLoading―

 

 

 

 

 

 一方その頃、街の側では何人かが壁上で外を眺めていた。

 

「くあ〜…暇だな」

 

『真面目にやって下さい。もし見逃しでもあったら大問題ですよ』

 

『まあそう言うなてシエル嬢。ずっと気を張っとっては疲れるだけじゃし、程よく力を抜くことも大事じゃよ』

 

『それに師匠なら十分対処できるでしょう』

 

 その人影は壁上で胡座をかいて欠伸をしており、腰に携えた通信機から厳しい女性の声とそれを諌める老人の声、若い青年の声が響いていた。

 その人影はアラシ率いる何人かの弟子だった。彼等は街の防衛を任されており、何かあっても対応できるようにとそれぞれ街から東西南北に配置されていた。

 東にはイカヅチ率いる機動力重視の剣道陣、西にはアラシ率いる火力重視の剣道陣、南はシエルが、北にはシュラとリサク率いる残りの剣道陣が防衛を担当していた。

 だが、ここ最近は()()()()()()()()()()()()()()()()()、特に防衛隊に大きな動きはなかった。

 

「フランシスカやアークの奴も来てんだろ?久し振りに挨拶したかったんだが…」

 

『今日の発表会が済んだら起動実験をするらしいので、その時の打ち合わせで会えるでしょう』

 

『ふむ、フーゴの奴とまた将棋を指したいのじゃがのう』

 

 アラシとしてはフランシスカはあちこちを飛び回っている為中々会う機会が少なく、よければ手合わせもしたかった。

 残りの二人も発表会に行っている者達とはそれなりに交流があり、時間が許せば会いたかった。

 

「ハァー、ったく朝までこんなことしてろってのかよ」

 

 アラシは事前に買っておいたリンゴを懐から取り出し、そのまま齧りだした。

 

『…食事ぐらい事前に済ませておいて下さい…』

 

 マイペースなアラシの行動に、シエルが呆れたような声を上げる。もう叱るのは諦めたようだ。

 

『にしても竜機兵…あの存在はどのような影響を与えると皆さんは思いますか?』

 

「「「!」」」

 

 そんな中、リサクの放った一言によって弛緩していた空気が引き締められた。

 実は防衛に参加しているメンバーは防衛に出る前に竜機兵と対面しており、おおよその概要も聞かされている。当然、その異常性も直に感じていた。

 

『うーむ…()()()()()()()考えるのなら、わしら人間が更に優勢となるじゃろうな。気分の悪くなる兵器なのは事実じゃが、竜を遥かに上回る戦力が大量に追加され、人間側の課題じゃったカバー範囲、殲滅速度が解決する。利益を齎す存在なのは確実じゃ』

 

 リサクからの質問にはイカヅチが冷静に答える。大局的なものの見方ができる故にその分析は的確であり、大きく読み違えてるとは思えないだろう。だが―

 

 

 

 

 

『繰り返し強調するが、()()()()()()()考えればの話じゃな』

 

 

 

 

 

 ―まずこのままで終わる筈がないと、この場にいる全員が確信していた。当然外れてくれれば嬉しいことなのだが、戦争は避けられないと全員気を引き締めている。それは直感だけでなく、確かな根拠もあった。

 

『その辺りは、直に()()()()()()()()()()()貴方なら分かるんじゃないですか?アラシさん』

 

「……………」

 

 その時シエルが発した言葉に、アラシは口を紡ぐ。シエルの発言に何か思う所があるような沈黙だった。

 イカヅチやシュラ、リサクもその反応には何かあると察しており、それが今回の問題と繋がることだと理解していた。

 特に―アラシの振るう刀にその秘密があると、イカヅチ達は予想していた。

 

「…別に何か知ってる訳じゃねえよ。そう怪しむようなこと言ってくれるな」

 

 アラシは少し鋼でできた刀の柄を撫でると、茶化すような声で言った。実際彼の握っている情報が大したものではないことはシエルは知っているが、イカヅチとリサク達は情報を渡されていない為、少しでもヒントになることが知りたかったのである。

 イカヅチ達―というよりほとんどのキラーズには()()()()()()()の情報は渡されていない。報告例すらほとんどなく、混乱や(フランシスカの)独断専行を防ぐ為に徹底した情報統制が行われている。

 知っている、あるいは知らされているのは国の王女としての立場もあるシエル、後は何かしら関係があるとされる人物ぐらいだ。

 

「まあ、なんだ。人間も竜も、これから大きく動き出す。それだけは確実だな」

 

 アラシは真剣な表情で、地平線の彼方を見詰めていた。誰も返事をすることは無かったが、それは分かり切っていたことだったからだ。

 

ゴロ…ゴロゴロ…!

 

『『!』』

 

「ありゃ、こりゃあ嵐が来るかもな」

 

『お、新手のギャグか?』

 

「違えよ」

 

 空には黒い雲がかかり、震えるような音が空から響いた。僅かに光った雲の中には、紅い光が見えたような気もした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 人智の届かぬ秘境に、一つの影が降り立った。その周りにいくつかの人影が集まる。

 

「いかがでしたか。姉上、遠征の成果は?」

 

 赤いローブを纏った青年が白いドレスの少女に近付き、労わりつつ質問する。少女は少し俯いた後、決意を感じさせる表情で顔を上げた。

 

「決まったよ」

 

 

 

 

 

 それは平和を願う少女の決意か―

 

 

 

 

 

「私の目指す未来も」

 

 

 

 

 

 絶対者たる龍の審判か―

 

 

 

 

 

「人間の行く末も」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「私は人間と共存する未来を目指す。だから―」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ―それは彼女本人にすら分からないのかもしれない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「―この世界の人間は、滅ぼす。一切の躊躇もなく」




はい、ここからどんどん原作とかけ離れていきます。管理しきれるかな…いや、する!

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