人間に成った渾沌ゴアと、ミラルーツに成った少女のお話 作:サクラン
前世より伸びが良い気がする…やっぱり変に拘るよりある程度ノリに任せた方が良いね。完全にシリアスで面白いのはよっぽどの人じゃなきゃ無理だわ。
それではお楽しみください。
愉快な二人組に拾われてから一日が経過した。
あの後ルインの作った晩飯も食ったのだが、普通に美味かった。聞いた話だと二人で家事全般は回していたらしく、シンゲツが味には厳しいので自然と鍛えられたらしい。
その後は特に何もなく(特に俺は大怪我してたのもあって)早めに寝た。まあ強いて言うとしたらルインの寝間着がエロかったってことぐらいかな。
そして一夜が過ぎ―
「ん〜…よく寝た…」
目が覚めた俺はゆっくりと腕を伸ばして肩を回す。
あー…昨日文字通りバキバキにされたから何かすっげえ身体が固くなってる気がする。ってか昨日の骨折の治りが明らかに早い。多少まだ鈍い痛みは走るけど普通に動く分には全然気にならないし、よっぽど動かない限りは大丈夫だと思う。
渾沌ゴアなんだからむしろ遅くてもおかしくなさそうなのに…気になるな…
「お〜…アークゥ〜…おはよう〜…」
「! おはよう…朝弱いのか?」
「んあ~…まあな〜…」
隣の部屋の扉が開き、ルインが目を擦りながら起きて来た。
ちなみに寝間着は基本バスローブで全員統一。ルインは角の違和感が凄いが、ボディラインが出やすいからそれどころじゃない。
「あさめしぃ〜…食いにいくぞぉ〜…」
「シンゲツが作ってるのか?」
「アイツ朝早いんだよぉ〜…」
へー、まあ夜遅くまで起きてるならまだしも、昼まで寝てるイメージはつかないから、納得ではある。
そして俺とルインは長い廊下を歩いて食堂へ向かって行く。食堂に着いて扉を開けると―
「ん、起きたか」
―シンゲツは料理どころか食卓を完成させていた。それも簡単にできるパンだけでなく、目玉焼きやサラダ等、明らかに作らないといけないものまでちゃんと並べられていた。
「…アンタいつ起きてんだ?」
「そこの惰眠女と一緒にするな」
「うるせぇ…」
シンゲツは呆れた顔でルインを煽るが、ルインは悪態を突きつつも辛そうに返した。元になったモンスターは凶暴なのに本人は低血圧っぽいの何か不思議な感じだな。
「…そうだ、今日は町に行くからな。朝食を食べ終えたら外出の準備をしておけ」
「…ああ?キャロルちゃんに報告か…?」
シンゲツが行儀よくナイフとフォークを使って目玉焼きを食べながら言い、ルインは未だにぼんやりとした顔でソーセージを貪りつつ答えた。
「昨日も言ってたが、キャロルって誰だ?」
「ああ…そういや言ってなかったな…アタシらも誰とも繋がりが無いって訳じゃなくてな…アタシはこんなだし、シンゲツの実力も桁並み外れてるからただの一般人として過ごすのは難しい訳だよ…」
「だからいざって時に社会的に認められてる組織と繋がりがあれば都合が良いから…アタシらにも後ろ盾になる組織がいる訳だが…その組織の中でも特に繋がりが深いのがキャロルちゃんなんだ…」
「…悪いな、疲れたろ」
「あ〜…良いよ…喋ってたら目ぇ覚めてくるし…」
にしてもそうか…ま、流石に誰とも繋がりがなかったら色々と不便なこともあるだろうからな。特にこの二人は人が近寄り難い雰囲気してるし。
「…そういやシンゲツはともかく俺達はどうするんだ?変装でもすんのか?」
「…基本は変装だな。お前達二人を袋に詰めて運んでも良いが」
「絶対やめろ」
これまで眠たげだったルインが目をガン開きして拒否する。
…俺としては少し残念ではあるが、理屈としても成人二人も詰めたら袋の大きさもヤバいし、それを運ぶ絵面もヤバいからやめておいて正解だろう。
そうして朝飯も食い終わって準備した後―
「あ…角どうすりゃ良いんだろ…」
俺は角をどうするか悩んでいた。
翼脚は畳んだ上で上からコートを着込んで誤魔化したが、角は帽子を被ることもできないから誤魔化しようもない。うーん…ルインに聞けばどうしてるか分かるかな。何回か行ったことあるだろうから角をどうしてるかも分かるし。
「おーいルイン、お前いつもどんな変装してんだ?」
「あー、ちょっと待ってな、今行く」
隣の部屋のルインに声を掛けると、ドタドタと音がして焦ってるようなことが伝わる。そしてガチャリと扉を開くと―
「悪い、待たせた」
―棘の装飾に露出の激しい防具、昨日の服装と変わらな…いや、胸や下半身の露出が抑えられてるが、その点以外は昨日と何ら変わりない服装だった。
「え…お前、変装は…?」
「? これがアタシの変装だ」
「いや、露出が少なくなってるだけで目茶苦茶目立つぞ」
指摘するが、ルインは何らおかしくないと言った様子で答える。
「いーんだよ。街には色んな奴がいる。アタシ達も多少の変わり者程度の認識だから、最低限人と思える服装ならそれでいい」
「そ、そうか…」
分かった情報としてはありがたいんだが…これから向かう街の治安が若干心配になった。
そして結局角はどうしようか…あ、そう言えば…
数分後―
「準備はできたか」
「おう!」
「ああ」
シンゲツは昨日と同じ黒のコートとズボンにロングブーツ、背中には大刀を背負い、ルインはさっき言ったような昨日の服装から露出を抑えた服装、俺は黒のローブを羽織って頭から全身を隠した。
「お前真っ黒になったなー」
「何か服装考えるのも面倒になってな、いっそのこと全身覆えば良いって思ったんだ」
「オシャレには気を遣わねえとモテねえぞ?」
「別に良いだろ…」
「雑談している場合か、行くぞ」
そう言い出すや否やシンゲツは走り出して行った。
「何となく察してはいたが走って行くのか…」
「はー、せっかちだねえ全く」
俺とルインは小言を言うと、後を追うように走り出した。
ってか当然のようにシンゲツが先頭を走ってるけど足はっや…何で肉体派の俺達が追い付けないんだよ…
「街までどのくらい掛かるんだ?」
「ざっと30分も走れば着くよ。あの屋敷は森の中でも比較的浅い場所にあるからね」
じゃあ何気に俺の逃げ方危なかったな…シンゲツとルインが来てなかったら街にラージャンモドキと一緒になだれ込むことになってたかもしれない。
「今日会う人ってどういう人なんだ?」
「そもそもアタシ達と繋がりを持ってる組織ってのが自然や生物を調査する組織でね、そこの隊長さんだよ」
モンハンで言うところの古龍観測所みたいなもんか…でもだとしたら俺達めっちゃ怖がられない?
「話の分かる人だから大丈夫だよ。わりと年頃の女性だしね」
「へえ…そうなのか」
まあ、ルインの性質を知ってるなら俺も多分セーフ…だと思う。それにあまりくよくよしてても仕方ないし、モンハン世界を普通に観光する感覚で行こうか。ラージャンモドキを見るに、多分古代ではあるけど。
しばらく走って数十分後―
「! なんだありゃ」
「お!あれが見えたってことはもう着くね」
ずっと森の中を走っていると、巨大な壁が見えて来た。流石に某巨人漫画程の大きさじゃないが、目測でもざっと20メートルぐらいはある。
…ここ本当にモンハン世界だよな?なんちゃってモンハン世界だったりしない?いや、でもよく考えれば古代文明発達してる説とか見た気がするし、こんぐらい発達してても不思議じゃないのか?
「どっから入るんだ?これ」
「あっち側に門があるから、門番の人達に通行証見せれば入れるよ。何ならアタシ達はある程度話通ってるからなしでも入れるし」
「行くぞ」
門に向かって歩いて行くと、ガタイの良いおっちゃん二人が門番をしてる。身に付けてる装備と言い、モンハン世界ってよりは、ちょっと異世界成分を加えた現代って言われた方が納得が行く。
「おい、中に入れてくれ」
「おお…?ああ、シンゲツさんとルインちゃんに…お?後ろの子は誰だい?」
「拾った。生娘に話を通しに行く」
「おい、捨て猫みたいに言うな」
「おー、ツッコミができるなら悪い奴じゃなさそうだな。俺達ゃ兄弟でこの街の門番やってんだ。よろしくな」
「ああ、よろしく」
「ちゃんと挨拶もできるのか、こりゃ御主人様より人間できてる可能性があるなー?」
「余計な御託はいい、さっさと開けろ」
「けっ、相変わらずマナーがなってねーなー?ま、いいけどよ」
愉快なおっちゃん達だな…
おっちゃん達は門に手を付けるとゆっくりと押して開けていく。…あっさり開けてる時点でやっぱりモンハン世界だなあってなる。
「んじゃ、行って来ーい」
「おう!あんがとなー!」
門番のおっちゃん二人は手を振って見送ってくれた。ちょっと不安だった街に関しての忠告とかも無かったし、多分大丈夫なんだろう。
そして門をくぐると、賑やかな街並みが広がっていた。それもよく見る異世界の街並みとかじゃない。現代の地方都市って言われても納得が行く程の規模だ。古代文明ヤベー…
「でっかいな…」
「ハハッ、まあ初見はビビるよなー」
「目移りしている場合か、さっさと行くぞ」
「えー、いいじゃんか。久し振りにアラシのおっちゃんにも挨拶しとこうぜ?」
「アイツは帰りだ」
「誰だ?アラシって」
「ちょっとした知り合いだよ。まあ、後で会うからその時な」
気になるけど…まあ後で会えるならいいか。
そして街の方に視線を戻すと、信じられないものが横切った。金属質の体に4つのタイヤ、煙を噴き上げながら走るその姿は―
「車!?マジで!?」
「ハハッ、初見のものがいっぱいで驚きまくりだなぁ」
―車だ。ルインが俺の百面相を面白がるが、俺にとって車の存在は衝撃だ。モンハン世界がぶっ飛んでるのは設定大好きな俺としては知っていたが、一方で科学技術は現実に劣るものってのが俺の認識だった。
現実みたいなガッツリ車って訳じゃないが、にしても立派な四輪車だ。だが排気ガスの臭いが酷い。流石にそこはまだ考慮できてないか。
「………チッ、急ぐぞ」
「あ、待てよー」
シンゲツは排気ガスで気分が悪いのか、顔を顰めて急ぐよう促した。俺とルインもいつまでも駄弁っている訳にはいかないので後を追う。
「…めっちゃ見られてるな」
「そりゃ全身フードは珍しいだろ。アタシやシンゲツも目立つ見た目だし」
さっきから周りの人達がチラチラとこっちを見てる。まあそりゃ目立つよな。
大刀背負ってる鋭い目の男と、エrゲフンゲフングラマスな身体で棘の服装の女性と、フードで全身覆った謎の男がいれば目立つなって方が無理だ。
「知り合いとかいるのか?」
「そりゃたまに買い物とか来るしな。アタシらはともかくアンタは初めましての人しかいないし」
周りの街並みを見ながらあれやこれやと話していると―
「着いたぞ」
「「!」」
―シンゲツの言葉で気付くと大きな建物の前に着いていた。
お!よく見ると門の前に建物の名前が書いてある。えーと…“キラーズギルド本部”
んー、これが古代モンハン世界での“ハンターズギルド”と同じ位置の組織ってことか?“ハンター”も“キラーズ”も似たような意味だろうし(英語の意味よく知らんが)。
「ってか、今更ではあるんだけどキャロルちゃん今日いるの?連絡したの?」
「……………行くぞ」
「うおおおい!!何のアポも無しに来たの!?これ通してもらえるか怪しいわよ!?」
「まあ…最悪待てばいいだろ…」
シンゲツってわりと抜けてるとこあるんだな。何となく天然の気はあると思ってたが。大きな門をくぐって建物の中に入る。
「おお…ゴツい人がめっちゃいる…」
「まあ、モンスターを殺す奴らの集まりだからな…」
俺が実際にハンター…いや、この時代だとキラーズになるのか?の熱気に当てられていると、ルインが苦笑いしながら相槌を打つ。にしても少し違和感があったのは、モンスターを“殺す奴ら”と言ったこと。現代と少しモンスターや自然に対する認識が違う可能性がある。
死ぬしか救いはないと言われたモンスターの力を継いでる立場からすると、少し複雑な気持ちになる。
「おい、キャロルはいるか?」
「ああ…アヴァロン隊長は少し用事に外出されていまして…もう少しで戻って来ると思いますのでお時間よろしければ少々お待ち下さい」
「…分かった」
一方でシンゲツは受付嬢?っぽい人に遠慮なく要件を伝えていた。本人としては威圧してる訳じゃないんだろうけど、お姉さん完全に萎縮しちゃってるじゃないか…
「少し待つぞ」
「ハァ…今度からはちゃんとアポ取っとけよな…」
「にしてもお前ら注目されてんな…」
「強さに惹かれるここの人間にとって、シンゲツは憧れの対象だからな」
さっきからずっとシンゲツの方を見て噂してる奴らが多い。このキラーズと繋がってるから何回か戦う姿も見てるんだろう。にしても初対面の時は結局戦う姿見れなかったから何気に気になるんだよな…
「「「━━━━━ッ!!」」」
「? 何だ?」
急に入り口の方が騒がしくなった。キャロルって人が戻って来たのか?
「……………!」
「! どうした?」
シンゲツが急に立ち上がって入り口の方をじっと見る。ルインとしても驚きが隠せないらしい。何がいるんだ…?
「ほう…これは良い見つけ物をした」
凛々しい女性の声と共に、たむろっていたキラーズの人達が道を開ける。
そこには黒い服装で腰には立派な刀を携えた美人な女性がいた。一見その軽装から遊女とも思えるが…戦闘に疎い俺でも分かる、相当強い。感じる威圧感は…シンゲツと同等のものだ。
「これは…とんでもないな…」
ルインも額に冷や汗を浮かべて強さを感じ取ってるみたいだ。何ならそういう勘は鍛えてあるだろうからより異常さが感じられてるかもしれない。
女性はゆっくりとシンゲツの方に歩み寄り、間近で二人が睨み合う形になった。
「…何者だ?」
「……………」
そして、二人の剣士が対峙した。
はい、まさかの邂逅でした。
実はキャロルちゃんに会って終わりの予定だったんですがね。何かアドリブ入りました。
評価、感想もよろしければお願い致します。
それでは次回をお楽しみに。