人間に成った渾沌ゴアと、ミラルーツに成った少女のお話 作:サクラン
できるだけそういう空気は出さないようにします。
それではお楽しみください。
いや、えー…どうしようかこの状況。
シンゲツと謎の女性は間近で睨み合って俺達が入り込める余地がない。ってか誰?雰囲気が聞いて良い感じじゃないんだが…あ、近くのお兄さんに聞いてみよう。
「なあアンタ、あの女の人誰か分かる?」
「あ?お前知らないのか?人類最強って言われてるフランシスカだよ。ここ最近出て来て急に頭角を現し始めたんだ。何なら少し前にクエストを受けてたんだが…」
あまりに帰還が速過ぎるってわけか…近場だとしても本職の人らが驚くぐらいだから相当速いんだろうな。実際肌越しに感じる戦意も相当な気配だし。
「見ない顔だな…名は何と言う?」
「………シンゲツだ。貴様の名は何と言う?」
「フランシスカ・スレイヤーだ。…シンゲツ、貴様は相当の使い手だと見受ける」
「………お前もその若さにしてその領域とはな。才能とは恐ろしいものだ」
あの二人こっちの緊張感も知らないで当然のように話してやがる!でも皆の顔を見るに…緊張してるけど興味もあるって感じだな。まあここまで強い奴らがぶつかったらどうなるのかは知りたいが…
「…退屈だろう?時間さえ良ければ立ち合い願いたい所だが…」
「………嘘をつくのが下手だな。だが…丁度暇つぶしの手段が欲しかった所だ」
フランシスカの表情が狂笑に変わり、シンゲツは背中の大刀に手を掛ける。
やべぇな…一触即発の雰囲気になっちまった。こうなったら俺とルインで割って入るしか…と思って横を向くと―
「っていねえし!?」
―何故かいつの間にか姿を消してた。逃げたのか…?もうこうなったら仕方ない、もう怪我するのも覚悟で止めに入るしか…
パァン!!
「「「!」」」
急に乾いた拍手の音が響いた。全員が音の聞こえた方―入り口の方に顔を向ける。そこにはルインと高そうなコートを着た銀髪の女性がいた。
「ハァ…全く…集会所の動きを止めるのはやめてください。フランシスカにシンゲツさん」
「ようやく来たか」
「チッ…良い所だったと言うのに…」
「聞こえてますからね」
どうやらフランシスカとも面識があるらしい。特に臆する様子もなく親しげに話すことができてる。シンゲツの反応的にあの人がキャロル…か?
「手合わせしたいなら手配はしてあげますからせめて場所は選んで下さい。ここでされたら様子見でも吹き飛びます」
「…まあいい。言質は取ったからな」
不服そうな顔をしつつも納得はした様子でフランシスカはクエストカウンターの方へ向かって行った。
「ふー…心臓に悪い…」
「いやー悪いね、助かったよ」
「最悪の自体にならないで良かったですよ本当に…」
キャロルは相当疲れたようでどっと肩を落とす。よく喋れてたな…まあ知り合いだから多少ハードルは下がるのか?
「やっと来たか」
「誰のせいでこんな事態になったと思ってんだよ!!」
「だが本当に助かったよ…もう少し遅かったら一か八かで突っ込むつもりだったからな」
「やけっぱちにならないでくれて良かったよ…」
「彼は一体…」
「今日はコイツのことで報告と相談をしに来た」
「一言連絡ぐらい入れて下さい…」
少しの間集会所で話し合っていたが、やはり周りの目もあってキャロル本人の部屋で話すことになった。
「…で、彼は一体何なんです?見た所ルインさんと同じ存在に見えますが…」
「知らん。屋敷の近くで獣に襲われている所を拾った」
「捨て猫じゃないんですから…」
俺ってそんなに猫みたいだと思われてんの?ってか知らんて…まあ俺自身も分かんねえんだけど。
「いや、悪いけどキャロルちゃん、コイツが何なのかは本当に分からないのよ。記憶もないみたいで…」
「うーん…見た所関連性のある生物は思いつきませんね…というより生物として不完全、中途半端のようにも思えます」
へえ、鋭いな。まあ観測隊の隊長さんだったし、それぐらい見抜けるのは当然と言えば当然なのかも。
ちなみに俺の知識に関しては話していない。記憶はないのに生物のことを研究している人ですら知らないことを知ってるっていうのはおかしいからな。上手い言い訳が思いつかなかったのも大きいが。
「まあ、とにかく彼もルインさんと同じように、月一回の身体検査を行うようにしましょう。
誰も…?
「貴方が預かるということで良いのですよね?」
「ああ」
「分かりました。それではまた検査の日程は送ります。まずは上に報告しなければなりませんので、今日の所はこれで大丈夫です。…ルインさんだけ残って下さい。話したいことがあるので」
「…おっけー。じゃあ先に行っててくれ。後で追い付くから」
「………分かった。行くぞ、アーク」
「…ああ」
ルインとキャロルが二人だけで話すってことらしいから、俺とシンゲツは先に部屋の外で時間を潰すことになった。…にしても気になったのは、あのルインの表情。普段からは想像できない程冷たい表情だった。キャロルの発言から疑問もできたしな。
部屋から出てしばらく歩き、建物の外に出てから人の目がない所で俺はシンゲツに切り出した。
「なあ、ルインって何なんだ?」
「………何のことだ」
「別にしらばっくれることないだろ。二人だけで話すこと、ルインやキャロルの意味深な表情から何かあることぐらい嫌でも分かるっての。何も分からない俺とは違って、アイツなりのルーツがあるんだろ?」
そう、明らかに人でありながら竜の力を使うっていう異端にも程がある存在なのに、キャロルの視線は驚きこそあれど恐怖が想像以上になかった。それだけじゃ確信は持てなかったが“
言葉の裏を読めば、以前に“誰か”―つまり人間が手を加えた存在がいたってことだ。そしてそんなのは俺が知る限りだとルインしかいない。
「………まあ、お前もいずれは知らねばならんことか…」
シンゲツは悩んだ末に話すことを決めたのか、ため息をつきながら話し始めた。
「………昨今の状況として、獣―モンスターによる被害が絶えず、多くの命が奪われているというのが現状だ」
「それに対抗する為に強い人間によってモンスターを駆除する組織―キラーズが設立された」
「各地で強者も存在する故に、対抗はできているものの…やはり単独で、かつ素早く処理できる人材は中々いないらしく、効率的に駆除する手段が竜種観測隊や研究者達の間で模索されていた」
シンゲツから語られたのは、これまでのハンター―いや、キラーズの歴史だった。まあ、一人でモンスター狩れるのは世界観上でもそりゃ希少だよな、うん。各シリーズの主人公みたいなのがポンポン生まれたらたまったもんじゃない。
…でも聞いた感じに各地に一人はそういうのいそうだなぁ。
「様々な策が浮かび上がったらしいがその中で唯一実用に踏み切ったのが―
―“竜機兵”という兵器だった。」
「! 何だそれ?」
俺は知らないフリをしたが、シンゲツが言ったその名は俺にも聞き覚えがあった。モンハン世界における古代の遺物、竜大戦が起こった最大の原因。
「今造られているらしい兵器の名だ。なんでも三十体分の素材で使って造られるらしい」
そう、これが古龍達を怒らせた理由の最たるもの。これを使って人類と古龍―引いてはモンスター達が絶滅寸前まで戦ったのが竜大戦、と聞いてる。
ここまでは良いんだが…それとルインに何の関係がある?
「相当なコストを賭けているだけあり、戦闘力も高いらしいが…やはりそのコストの問題が大きいらしくてな、もっと少ないコストで、かつ効率的に戦闘力の高い兵器の量産法を模索したらしい」
「そしてコスト削減の方策を考える中で、竜機兵を作成する上で最もコストを使う部分が―“生命”だと分かった」
“生命”を造るか…まあ当然と言えば当然だ。1を2にするのも難しいが不可能じゃない。だが0から1を造るのはとんでもなく難しい。生命という不可逆性のものなら尚更だ。しかも死んでるものを動かすってんだから実質死者蘇生だな。
「…生命ってどう造るんだ?」
「知らん。だが生命が全ての根幹になっているからな。身体を動かすのも、攻撃をするのも、世界を認識するのも全ては“生きている”が故だ。それらを繋ぎ合わせるのも含めて数珠繫ぎになっているらしい」
成る程。死ねば五感どころか身体を動かすことすら叶わなくなる。それらを再現するのに更に金と素材と時間が取られるって話か。
「最初はモンスターを捕獲しそれを生きたまま強く改造するという案もあったらしいが…捕獲の難しさと数少ない実験から実用化までに時間が掛かり過ぎると判断された」
うわぁ…視点がどんどんマッドでサイエンティストな方向に…胸糞悪い奴だなこれ…
「だが、生きたものを改造するという発想は間違っていないとされ…次はいかに実験から実用化までの道のりを短縮できるかという観点になった。そこで白羽の矢が立ったのが―」
「―人間か」
「そう。人間なら少なくとも数には困らん。トライアンドエラーでいくらでも試行回数を積めるからな」
やっぱりそうかぁ…まあ、何となく予想してたがやっぱり胸糞悪い。この身体になったからかもしれないが。
「ってかまさか一般人を…」
「モラルの薄い奴らと言えども理由もなく実験はせん―理由さえあれば、躊躇なく行うことができる奴らでもあるがな」
「…何かアテがあったのか」
「奴らは犯罪者、スラム街に住まう者、立候補者といった立場的に強く出られん者の子を集って使うようにしたそうだ」
「!? 何で子どもを…」
「やはり人としての身体に後付で力を安定させるのは難しいらしくてな、生まれてくる子に龍の力を付与したらしい」
「じゃあルインは…」
「アイツの親はスラム街出身だ。親と研究者の間に何か取り引きがあったらしいが…その内容は俺も知らん」
こんな環境で生まれたのか…せめて今は心の底から笑えてる…と思いたい。でも…
「…ルイン以外の奴がいないってことは…」
「具体的な数は俺も知らんが…相応の山はできているだろうな」
俺は手で顔を覆い隠して空を仰ぐ。そっかぁ…ってか一つ気になったんだが…
「キャロルとか反対しなかったのか?さっきの話聞いた限りだと協力してたみたいだが…彼女以外は知らんが少なくとも彼女は賛成しそうにない気がするんだが…」
「実際竜機兵の時点で相当な数の反対意見は竜種観測隊の面々を中心に出たそうだが…それ以外の有効な打開策が浮かばなかったようでな、意見を押し通すことができなかったらしい」
うーん…現代とはモンスターに対する認識や考え方が違うっぽいしな。共存って考え方は受け入れられ難いのか…
「今更だけどアンタ何でそんなに事情知ってんだ?ルインを預かる前にか?」
というか今の話聞いてると何でシンゲツがルインを預かる必要があるんだ?どういう経緯で繋がりを持ったのかってことと言い、色々と謎な点が多過ぎるな…
「アイツを預かる前に概要をな。竜機兵の情報に関しては問い詰めた。明らかに狩る数が多かったからな」
「アンタそういうの興味あるのか…」
「完成品を見たことはないがな。あくまで気まぐれだ」
なーんか自身の全部を喋るつもりはなさそうだな…まあ良いけど。ただ一つ聞きたいのは―
「―ルインを引き取ったのも気まぐれか?」
「………まあ、そうだな。人と龍の力を合わせ持った存在、それに惹かれなかったと言われれば嘘になる」
「…まあ、アンタの人生だ、それにどうこう言う権利は俺にはないのかもしれないが…ルインにとって、アンタは親代わりかもしれないってことは覚えておけよ」
「馬鹿を言うな」
「?」
いつも感情を感じさせないシンゲツが珍しく食い気味に割って入って来た。
「お前が俺をどう思っているかは知らんが…一度面倒を見ると言った相手を軽々と見捨てる程俺は軽い男じゃない。一度約束した以上、俺はアイツと向き合うと決めている、見くびるな」
普段から何考えてるかは分からないが…そう言えば剣士としてのプライドは大切にしてるってルインが言っていたのを思い出した。それを考えると確かに、俺はシンゲツを見くびっていた。
「…悪いな、アンタのことを勘違いしてたみたいだ」
「…フン」
流石に失礼に当たったと思って謝ると、シンゲツは鼻を鳴らして呆れたような声を上げる。まあ、グズグズ引き摺るような人じゃないし、許してくれた…と思いたい。
何かちょっと気まずくなっちゃったな…あ、まだ気になることあったな。
「ルインに付与したモンスターの力についてアンタ分かるか?」
「…何やら何処ぞで手に入れた
「そうか…」
「ま、どんなことがあっても、せめてルインが生きてて良かったって思えるようにしたいな」
「…そうか」
シンゲツは結局いつも通りの無表情だったが、確かに頷いてくれた。親心とか…あんのかなぁ?
「おーい…!」
「「!」」
門の方から聞き覚えのある声が聞こえた。俺とシンゲツが振り返ると、ルインが門を抜けてこっちに走って来ていた。
「悪いな、話し込んじまってさ。待った?」
「…いや、大丈夫だ。何なら丁度良かったぐらいだ」
「そっか、なら良かった」
そう言ってルインはニカリと笑う。…こういう笑顔も本当だったら良いな。
「で、これからどうすんの?」
「アークの為の武器を調達したい。これから店に行くぞ」
「おー!おっちゃんのとこ行くのは久し振りだなー!」
「武器屋か?」
「そ、あそこに見えるだろ?」
ルインがそう言って指を指した方向には、鍛冶屋があるのか、煙がもくもくと上がっていた。
「キラーズと連携して営業してる加工屋だよ。色んな種類の武器が作れる上、出来も良いから凄い人気なんだよ。店主のおっちゃんはシンゲツの知り合いだしな」
「へーそうなのか」
「……………」
ルインの言葉を聞くに凄い人なんだろうが、シンゲツはどこか不服そうに黙っている。喧嘩でもしてんのかな…?
そうして少し歩くと、大きな煙突に熱気を感じる溶鉱炉が炎を上げ、中では忙しそうに数人の男女が熱した鉄を打っていたり、走り回ったりしていた。
その中で頭に手ぬぐいを巻いた黒い和服の男が振り返った。
「お、いらっしゃい…と思ったらお前らか!久し振りだな〜」
「よっす!おっちゃんも久し振り〜」
男とルインは親しい仲なのか、砕けた口調で挨拶している。ちょっと雑談した後、男が俺に気付いた。
「お、なんだ。新しい家族か?」
「そうだよ。アークってんだ。中々の上物だよ」
「ほ〜ルインちゃんがそう言うってことは期待大だな!ってことでアラシってもんだ、よろしくなボウズ!」
流れるように挨拶してきたな…ま、別に良いけど。
「さっき紹介されたけどアークだ。よろしくなおっちゃん」
「成る程…自己紹介できて凄えなあ!こりゃ御主人様より常識人なんじゃねえか?」
「…喧しい腑抜け。それよりも―」
「あー分かってる。アークの刀だろ?用意してやるから少し待ってろ」
シンゲツとアラシのおっちゃんは軽口を叩き合うとアラシのおっちゃんは奥の方に消えて行った。シンゲツは変わらず無粋な表情のままだ。
やっぱり何か喧嘩でもしたのか…?少なくともここまで不機嫌です!って表情はしない筈なんだが…
「おーし、これでどうだー?」
「!」
色々一人で考えているとアラシのおっちゃんが刀を手に戻って来てた。
「ルインちゃん程パワー型じゃないと思ってな、少し振ってみろ」
「おい、乙女にパワー型って失礼だろ」
ルインの言い分は無視され、アラシのおっちゃんから刀を渡される。もっと重いかと思ってたが、この身体になったからか想像以上に軽く感じる。
鞘から刀を抜くと、鈍い光を放つ銀色の刀身が覗く。そのまま一回振り抜いてみても、手に馴染んで振り辛さも感じさせない。
「流石に初っ端からモンスターの素材を使ったモンは渡せねえが…どうだ?」
「うん、手に馴染む感じがするし、扱い易い。ってか代金どうすれば良いんだ?」
「あーいらねえよ。期待分の贈り物だと思ってくれ」
「え、マジで?」
「その代わり形を変えたかったり更に良いモンが作りたかったり強化したい時は代金と素材を持って来い。その分だけのモンは作ってやる」
成る程、モンハンで言うところの加工屋チュートリアルみたいなものか。違うのは武器種の括りがないってとこかな。
「十分だ。ありがとう」
「おー、頑張れよー」
「じゃあなーおっちゃんー!!」
「……………」
俺とルインは礼を言いながら加工屋を後にするが、シンゲツは最後まで不服そうな表情を変えることなく加工屋を後にした。
「さて、明日から本格的に修行だ。今夜は早めに寝ておけ」
「えー、折角ならアークのお祝いパーティーでもしようぜー。新しい仲間なんだからよー」
「それは後だ」
「ちぇー」
いや後ですんのかい。こういう所よく分からないよな。シンゲツは。…ま、楽しいから良いがな。
そのまま騒がしく、俺達は帰路についた。
区切りが難しかったから詰め込んじゃった…まあ後で絡みあるから良いか。
流れは決めてますが出力の仕方はわりと適当にしてます。その方が面白そうなので(管理ができてないだけ)
評価、感想もよろしければお願い致します。
それでは次回をお楽しみに。