人間に成った渾沌ゴアと、ミラルーツに成った少女のお話   作:サクラン

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もっとテンポ上げないとなあ…

でもそれはそれで内容が薄くなっちゃうジレンマ…

それではお楽しみください。


第六話 刀の扱い

「んー…よく寝たなぁ…」

 

 アラシのおっちゃんから刀を貰った後、普通に帰って普通に飯食って寝た。特に運動した訳じゃないけど、色んなことを知ったから頭が疲れた気がする。

 とは言え、あまり疲れたとも言ってられない。今日はもっと疲れることになるだろうからな…取り敢えず朝飯を食いに行くか。

 

 

 

 

「おい、少し味付けが適当じゃないのか」

 

「ああ…?うるせぇ…文句言うな…」

 

「………」

 

 

 

 

 

 そうして俺が食堂の扉を開くと、ルインが作ったっぽい朝飯に苦言を呈するシンゲツと、相変わらず朝に弱いルインが髪もボサボサ声も明らかに寝起きですって感じでもぐもぐと朝飯を食べていた。

 

「えーと…おはよう」

 

「ん、起きたか」

 

「んあ…?おはよう…」

 

 取り敢えず俺は挨拶した後一緒に席に就いて朝飯を食べる。んー、そんなに適当か?俺としてはむしろ寝起きでちゃんと作れるのが凄いと思うんだが…

 

「アーク、お前給仕はできるか?」

 

「え?あーまあ人並みにはって感じだが…」

 

「明日からはお前にも朝飯を作って貰う。ルイン(コイツ)と俺も含めてこれからは三人で回して行く。担当の日は早めに起きてこの時間には食べられるようにしておけ」

 

「分かった。明日からだな」

 

 家事をローテーション制で回してくってのは案内された時から一応聞いてたからな、まあ二人が満足できる料理ができるかは不安ではあるが…

 

「早めに食えよ。今日は修行だからな」

 

「分かった」

 

「あいよ…」

 

 お喋りも程々にということで、俺達は早めに朝飯を済ませると、着替えて刀を用意して外の更地(修練場)に集合することになった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 俺が着替えて下に降りるとルインとシンゲツは何本かの巻藁と鉄塊を用意していた。あんなのどっから持ってきたんだ…?

 

「来たな」

 

「おし、やろうか」

 

 どっちも武器を抜いてやる気満々みたいだ。

 

「で、何をするんだ?走り込みとかか?」

 

「子どものクラブ活動じゃないんだからさ…」

 

「体力に関してはもうその身体なら必要最低限は身に付いているだろう。後は鍛えて行けば自然と伸びて行く」

 

 成る程…確かにモンスターの体力なんか人間の何十倍もあるもんな。その上で鍛えりゃ更に伸びるか。

 

「よって、まずは基本的な握り方や振り方だ。今日はそれをひたすら行って動きを身体に叩き込む」

 

「え゛ずっと刀振るだけ?」

 

「ああ、それをずっと、お前の体力を加味すると今からなら…最低でも夕方までは掛かるだろう」

 

「えーと…振り方によって規定の回数とかあるの…?」

 

「回数に制限はない。だが、あれが斬れるまでだ」

 

 そう言ってシンゲツが指を指したのは巻藁だった。え、あれを斬れるまで?わりと簡単なんじゃ…?

 

「ちなみに使う刀はお前のものじゃない」

 

「え?」

 

 じゃあ何を使うんだ?代わりの刀なんてどこにも…

 

 

 

 

 

「あーい、持って来たよー!」

 

「!」

 

 

 

 

 

 突然ルインの声が聞こえ、聞こえた方向に振り向くと大量の刀を乗せた人力車を引っ張ったルインが手を振っていた。

 もうこの際あの量を引っ張って来たことに対するツッコミは置いといて、あの量どっから持って来たんだよ!?

 

「キラーズがモンスターを倒す過程で使い物にならなくなったナマクラだ。あれを使って、お前には巻藁を()()()斬ってもらう」

 

「明らかに俺の刀と合ってない武器もあるんだが…」

 

「甘えるな。あれで斬ることができれば、他の刀をものにするのも大した問題にはならん。逆にあれでも正確に斬れんようではモンスターを相手にするなぞ到底無理だ」

 

 シンゲツの言葉は厳しいが…でも一理ある。モンスターの甲殻や鱗はあんな巻藁よりもずっと硬いし、戦う度に武器を駄目にするようじゃこの先やっていけないだろう。

 それによく聞くことだが刀はどんな物でも使い手次第だ。ゲームの武器とは違って、ちゃんと使わなきゃ真価は発揮されない。

 

「ふー…分かった。やるよ。でも正確に斬るったって誰が見るんだよ」

 

「俺だ」

 

「え、じゃあアンタが俺に付きっきりになるが…」

 

「フン、ルイン(コイツ)の相手をしながらお前の様子を見ることなんぞ容易い。合格なら合図か何かする。それがなければ続けることの合図だと思っておけ」

 

「舐めてくれるね…今度こそぶっ潰してあげるよ」

 

 シンゲツがナチュラルにルインを挑発して、ルインは額に青筋を浮かべながら拳を鳴らす。

 ある程度強くなったらただひたすらにシンゲツと斬り合う感じになんるだろうか…?

 

「巻藁は庭に腐る程ある。足りなくなったら自分で補充しろ」

 

「分かった」

 

「合格する度に次の斬り方は伝える。お前はひたすらに斬れ」

 

 そう言うとルインとシンゲツは少し離れた位置で刀を構える。あっちも始めるっぽいから俺も始めれば良いんだろう。

 とは言っても…斬り方なんてさっぱりだ。アドバイスも何もないもんだから自分で探って行くしかない。正直力ずくでも行ける気はするが、こういうのは力任せにしちゃいけないってのは漫画とかでよく見る。だからまずは…力抜いてシンプルな一文字斬りだ。

 

「フッ…!!」

 

ザクッ!!

 

 一応斬ることはできたが…切り口がガタガタだ。シンゲツの合図が飛んで来ないあたり駄目なんだろう。それに刀も折れた。想像以上に錆び付いてボロボロだった。うーん…これは厳しいぞ…

 

 

 

 

 

「構えと振り抜きをもっと思い切れ、まだ迷いや恐れがある」

 

「よそ見いィ!!」

 

「ッ!?」

 

 

 

 

 

 俺が悩んでいると、凄まじい轟音と一緒にシンゲツのアドバイスが聞こえた。気合の入ったルインの煽りと一緒に。

 俺が驚いて後ろを見ると、シンゲツが白銀に輝く大刀でルインの無骨な棘の装飾が施された大太刀の攻撃を弾き返していた。

 いや、アドバイスってそうやって伝えて来るのかよ…まあ一々動き止めて指導してたらルインの修行にならないもんな。それにアドバイス貰えるだけ有り難いことだ。地道に急いで頑張るか。

 そうして俺は後ろから聞こえる轟音をBGMにして巻藁に向き合って行った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ゼェ…ハァ…」

 

 すっかり日が西に傾き、俺の後ろには巻藁の山ができあがっていた。モンスターの身体故なのか、刀を振れば振る程太刀筋が鋭くなるのは良いのだが、危惧していた通り一日ぶっ通しで刀振り続けるのはキツい…しかも疲労でどうしても太刀筋雑になるからなぁ…

 ただ―

 

 

 

 

 

「フム…まあまあと言った所か。最低限のラインは越えられたな」

 

「ゼェ…ハァ…」

 

「………」

 

 

 

 

 

 ―疲労感で死にそうになってるルインと、一切息も乱してないシンゲツ。この二人ほぼ一日斬り合ってたんだが…ルインはともかく何でシンゲツは呼吸が全く乱れてないんだよ。やっぱバケモンだわこの人。

 

「明日は鉄を斬れるようになってもらう。今日とは違って安定して斬れるようになれば十分だ」

 

「巻藁からもうそんなにレベル上がるの!?」

 

「今日で分かったろう。お前達の身体の成長は早い。追い詰めれば追い詰める程、より強く研ぎ澄まされて行く。人間とは違い、鍛錬した時間が嘘にならん」

 

 確かにそうだが…だとしてもそこまで急ぐ必要あるか?

 

「…何か急いでないか?アンタ…」

 

「いつまでも足手まといのままでは困るからな。とっとと即戦力になってもらわないと依頼をこなすのが面倒だ」

 

 俺の質問にシンゲツははぐらかす訳でもなく普通に答えたが…やっぱり何か隠してる気がする。俺に戦えるようになってもらわなきゃ困ることでもあるのか?パッと思い付くのは古龍種の存在だが…

 

「ゼェ…次は…ハァ…勝つ…」

 

 ヘロヘロになったルインは腕を上げてシンゲツを指差して宣言する。無理すんなよ…

 

「フン、後何年経とうがお前には一本たりともやらん」

 

 シンゲツはその宣言に対して絶対的な自信をもって言い返す。実際どうやったら勝てるんだろうな…

 

「だーもう止めだ止め!!つっかれたー!」

 

 シンゲツの発言にルインは飛び起きて叫ぶ。流石身体能力特化の古龍、回復も早いみたいだ。

 

「何だ、余裕そうだな。もう一回やっておくか?」

 

「馬鹿言わないでよ。全快の状態でも勝てないのにちょっとでも疲労した状態で勝てる訳ないでしょ。それよりお腹減ったー!ご飯ー!」

 

「今日はアークが作る。少し待て」

 

「え?俺が作るの?」

 

「当たり前だ。一番余力が残っているだろう」

 

「いや、アンタ息一つ…」

 

「何か言ったか?」

 

「いや、何も」

 

 …まあ、今まで任せっぱなしだった訳だし、その程度はやるか。

でもあの量一人で作るのか?日本の食卓の量の比じゃないんだが…

 

「食材は好きなように使え。いくら使おうと文句は言わん」

 

「お!じゃあ全部使っちまえ!言質取ったからな!!」

 

「その場合はルイン(お前)に全額利子付きで払わせるからな」

 

「あ!ずるいぞシンゲツゥ!!」

 

「そんな量そもそも作れねえよ…」

 

 相変わらず騒がしく屋敷に戻り、身体を休めた。ちなみにこの日俺が作った料理は炊いた白米と味噌汁と魚(サシミウオっぽい?)を塩焼きにして食べた。

 まさか白米や味噌があるとは思わなかったがこれはシンゲツが用意したものらしい。意外とルインにもウケが良かったのと、シンゲツが初めて食べたようなリアクションじゃなかったからひょっとしたらシンゲツの出身は日本に近い和風の国なのかもしれない。モンハン世界にも東洋の国から来たハンター?みたいなのがいた筈だし。

 

 

 

 

 

 そして次の日―

 

 

 

 

 

「ハッ!!」

 

ズバギィン!!

 

 甲高い金属音が響いた後、俺の前には半ばまで切れ込みの入った鉄塊と、折れてしまった刃毀れの多い刀があった。

 

「ん〜…昨日よりも手応えはあるが…」

 

 今は丁度昼頃、最初は昨日とは違い過ぎる硬さに手を焼かされたが、少しすると斬り方のコツを掴んで切り込みは入れられるようになった。

 だが…ここで問題になるのが刀そのものの斬れ味。元より使えないと判断されて譲られた武器達だ。少しでも無理をさせるとすぐに折れる。だから実質的にどの武器も斬れるのは一回までだな。

 

「うおりゃあ!!」

 

ズゴォン!!

 

「………」

 

 そして今日も変わらず背後から聞こえる轟音と掛け声、刃のぶつかり合う音がBGMだ。…俺もいつかあんな風にできるのかな。

 そして結局、今日は切れ込みを入れるのが限界でそのまま終わった。

 

 

 

 

 

 そして三ヶ月後―

 

 

 

 

 

「くっ…」

 

 やっぱり斬れない。どうしても刀の方が折れてしまうし、それで両断することも叶わない。正直、速すぎるとは思うが焦りを感じていた。

 努力の結果は簡単には実らない。そんなことは前世で嫌という程知っているが、境遇にこそ難はあるものの、力そのものは一級品である渾沌ゴアの力を持って転生したこと、同じ境遇であるルインや(一応)普通の人間であるシンゲツがあそこまでの強さを持っていることがまた話を拗らせる。

 

「…ちくしょう…」

 

 拳を強く握り、鞘からミシリと軋む音が響いた。正直、渾沌ゴアに転生して、初めて巻藁を斬れた時は充実感があった。自分にも力がある、特別であるということは、前世で成功体験がなかった俺にとってはこれ以上ない程に嬉しいことだった。

 だが、流れの先は結局いつもと同じ。行き詰まってどうしてもそれが超えられない。才能がないという事実を嫌でも突き付けられる。未だにアラシのおっちゃんから貰った刀は握ることすらできていない。自分に対する嫌悪感でいっぱいだった。

 

 

 

 

 

「お困りみたいだね」

 

「!」

 

 

 

 

 

 いきなり声を掛けられて振り向くと、ルインがいた。シンゲツとの手合わせはいつの間にか終わっていたみたいだ。

 

「シンゲツは?」

 

「屋敷に戻ったよ」

 

「…何をしに来たんだ?」

 

「全く素直じゃないねえ。困ってるなら助けてぐらい言ってくれても良いだろうに」

 

 …バレてたか。

 

「…どうしても斬れないんだよ。これ」

 

「まあ、最初の壁だからねえこれ。巻藁で勢い付けてからだから尚更質が悪いよ」

 

「同じことやったのか?」

 

「そりゃあね。昔の自分を見てる気分だよ」

 

「どうやって斬ったんだ?」

 

 ルインも同じことしたなら何かコツも知ってる筈だが…

 

 

 

 

 

「うーん、勘かな」

 

「……………」

 

「あああ!!ごめんごめん!!アークにできない訳じゃないから!!ないから!!」

 

 ルインの答えを聞いてこの世の終わりみたいな顔をしていると、ルインも慌てた様子でフォローした。

 

「いやでも、わりとマジで斬り方は巻藁と変わらないよ。大事なのは気の持ちよう、自分を信じ抜くことだよ。アークの性格的に難しいことかもしれないけど」

 

「…変わるのか?そんなことで」

 

「証拠ならあるでしょ。アタシ達の身体に」

 

「? どういうことだ?」

 

 俺らの身体に?何か付いてるのか?

 

「アンタ、初めて修行をした日と今、何が違う?」

 

「…巻藁が斬れるようになったことか?」

 

「それもだけどそうじゃない。アンタ、一日に何回斬ってるか覚えてる?」

 

「最近か?最近は軽く二万回以上は…」

 

「そうかい。じゃあ最初にシンゲツから何回斬れたらいいか言われた回数は覚えてる?」

 

「最初?最初は確か一万…」

 

 そこまで言って俺は初めて気付いた。よく考えれば最初の二倍以上の速さで刀が振れてることに。

 

「そう、それが証拠。アンタがより速く、より鋭く刀を振るっていう意識に自然と身体が合わせて適応…いや、力を引き出して行く」

 

「これはアタシの身体を調査して分かった事なんだけどね、アタシ達が鍛えれば鍛えるだけモンスターの身体能力が引き出されて行くらしい。身体が壊れるのを防ぐ為に、自然とそうなって行くんだって」

 

 ルインが自分の棘が生えた腕に手を当てながら言う。

 

「だから、アタシ達が意識を強く持って刀を振れば、自然と身体がそれに適した動きができるようになる」

 

「だから、自分のことを強く信じな!!ナマクラだろうと斬れる!!斬って見せるってね!!そうすれば自然と身体が付いてくる!!巻藁でできたんだ、鉄も同じ理屈だよ!!」

 

 ルインの言ってることはただの根性論だ。だが、それでも確かな説得力があった。実際、証拠はある。自分の身体が何よりの証明。前々から確かに成長はしてたが、言われなきゃ気付けなかったのは俺の悪い癖だな。

 だけど、今は―

 

 

 

 

 

「分かった。ありがとう」

 

「良い顔になったね。その意気だ!」

 

 

 

 

 

 ―目の前の壁をぶった斬る。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ハァ…ハァ…」

 

 すっかり太陽が西に沈みかけた頃、俺の前には真っ二つになった鉄塊と刃毀れこそ多くあるものの折れていない刀があった。

 

「やっ…た…」

 

「ああ、見事に斬ったね」

 

 そして後ろにはずっと見守っててくれたルインがその樣を称賛してくれた。

 

「悪いな…ずっと付いててくれて」

 

「そりゃ自分が手塩に掛けたんだ。見守らなきゃ無粋ってもんだろ?」

 

 いやマジで感謝しかない。ルインがいなかったら負のループに嵌まる可能性が高かったからな。

 

 

 

 

 

「終わったか」

 

「「!」」

 

 

 

 

 

 突然声が聞こえて振り向くと、いつものコートと帽子を着ていないラフな格好のシンゲツが佇んでいた。見てはいただろうがいつの間に…

 

「今更来たのかい。全く薄情な奴だね」

 

「できることなら自身の力で乗り越えさせたかったが…まあ良い。最低限の自覚はできたようだし良しとしよう」

 

「はあ…そりゃ有り難いこった」

 

「明日は本部に行って検査の日だ。とっとと風呂に入って寝ろ」

 

「アンタ今回何もしてないだろ。少しはご褒美とかないのかい?」

 

アーク(コイツ)はあくまで戦いのスタートラインに立ったにすぎない。あるとしたら強敵を打ち破った時だ」

 

「強情だねえ本当に」

 

 シンゲツとしては少し不服だったらしいが、何とか許しは貰えた。明日も予定ができたし、早く休むか…

 そうして俺は晩飯を食べて風呂に入って何もせずに寝た。




この作品毎回主人公が寝て終わってる気がする。

日常系じゃあるまいしもっと引きを良くしないと…

評価、感想もよろしければお願い致します。

それでは次回をお楽しみに。
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