人間に成った渾沌ゴアと、ミラルーツに成った少女のお話 作:サクラン
ちゃんと話も頑張って進めます…
それではお楽しみください。
俺がこの世界に来てから何やかんやで一年経った。時間の流れの速さに驚くと同時に自分の成長にもしみじみする。
修行でも完全に基礎はできたってシンゲツにも認められて、今はルインとシンゲツそれぞれに手合わせしてもらってる。ただ…
「おおっ…りゃあ!!」
「…ッ!重ッ…!!」
想像以上にルインが強い。年季の差的に当然ではあるんだが、肉体派古龍の力を持ってるってこともあって一太刀がめちゃくちゃ重い。武器も大太刀だから迫力がヤバい。見た目通り一撃重視の火力ゴリ押しタイプ。
「このッ…!!」
「うおっと」
ちなみに俺はスピードを活かした居合メインの手数重視タイプの戦い方。翼脚も交えた攻撃もできるようになってきたから一秒間に十発は叩き込めるようになった。
「いぃよっ!!」
「グッ!」
だが俺の刀は動きを見切られたルインに弾き飛ばされる。
「ふー、今回もアタシの勝ちだね」
「ハァー、やっぱ二十発は叩き込めなきゃ駄目か…」
「一年でそれなら十分でしょ。大半のキラーズよりも強いと思うよ、アンタ」
ルインは俺を褒めるが、その口調にはまだ余裕がある。手数で上回ってても単純な身体能力で上取られてるからジリ貧になりやすいんだよなー。何回か腕相撲とか追いかけっ子もしたけど勝てたことないし、やっぱ基礎は大事だな。
「……………」
そして一連の勝負を見ていた男、シンゲツは相変わらずの無表情だ。え、シンゲツはどんな戦闘スタイルなのかって?バ火力、アホ手数、超射程のクソゲー三拍子に決まってるだろ(迫真)
いやシンゲツはおかしい。タイマンは勿論ルインと二人で組んでも攻撃がかすりもしない。一応俺達にとって適性ぐらいまで手加減してくれてるがそれでもルイン以上の威力の斬撃が一秒間に百発は普通に飛んで来る。
二人でああでもないこうでもないと言いながらシンゲツ打倒法を探ってるが未だに有効打はゼロだ。
「…うむ、そろそろ十分だろう」
「お、もう挑戦させんの?」
「
「丁度良いクエストも手配してある。これから行くぞ」
「ええ!?これから!?」
「あくまで今回はアークの初陣だ。お前が前に出る必要はない」
「急だなぁ…行けるか?」
「ん、まあ問題ないよ。それに新しい武器は個人的にも欲しい」
まさかの今からってのには俺も驚いたが、まだ戦うだけの体力は十分有り余ってるし、あのラージャンモドキレベルの強さじゃなきゃ勝てる…筈。
―NowLoading―
そんなこんなで集会所でクエストの受注手続きをして、現在四輪車で移動中。ただ現代程道路が整備されてないから油断してると酔う。そこでシンゲツから今回の討伐対象の予習を受けてる。
「今回の相手は…“ワイバーンレックス”と呼ばれる大型の飛竜のようだ」
「初がアイツかー、ちょっとキツくない?」
「普通にやれば問題ないだろう」
「それアンタ基準の話じゃない?」
今回の討伐対象の名前には俺も聞き覚えがあった。ティガレックスやナルガクルガ…多くの飛竜の祖先種とされる古代のモンスター。設定上の存在だから実力はなんとも言えんが…最低でもティガと同等以上はあるだろうな。
「基本的に俺達は手を出さん。お前一人で勝って見せろ」
「はー…ま、本当にヤバくなったらアタシがフォローするから、遠慮なく戦いな」
「ああ、分かった」
ルインの気遣いは嬉しいが、心構えとしては一人でやるつもりで戦わなきゃな。この先古龍と戦うハメになるかもしれない訳だし。
「!」
四輪車が止まった。どうやら目的地に着いたらしい。
「じゃあ、行って来る」
「おー、頑張れよー!」
「………」
―NowLoading―
ルインの激励を受けながら四輪車から降りて一人で森の中を歩いて行く。ルインとしては少し離れて着いて来たかったらしいが、シンゲツから却下されたらしい。
「さて…とは言ってもどこにいるのやら…」
縄張り内に放り出されたのは良いものの、ワイバーンレックスがどこにいるのか分からない。モンスター一頭が所有する縄張りって相当広い訳だし、これ探すだけでも相当面倒だぞ…こういう時ウイルス散布で索敵できればって思うんだがなぁ…
「取り敢えず走り回って音で誘き寄せるか」
樹々がへし折れたりしたら音が響くからそれで気付かせる。ウォーミングアップにもなるしな。
俺は地面を蹴って樹の上に飛び乗ると、そこから一気に加速して樹から樹へ飛び移るという行動を繰り返す。
「んー…やっぱり広いな。森の終わりが見えない」
走りながらそれっぽい生物がいないか探すが、広過ぎて中々見つからない。改めてモンハン世界の広大さを実感する。それと同時にこのフィールド一帯分は軽く天候を変える古龍の規格外さがよく分かる。ゲーム上の強さより世界観上の強さが反映されるこの世界での古龍の強さなんか想像したくねえ…
そんなぼんやりとしたことを考えていると―
「! 来たか」
凄いスピードで近付いて来る気配と、樹々をへし折る轟音が響いた。そして俺が樹から飛び降りると―
「ガアアアアァァァァ!!」
―巨体が俺がいた場所に飛び掛かって来た。空振りではあったものの、地面に降り立つとしっかりと俺を睨み付けて鼻息を荒くする。
黒ずんだ甲殻に俺と同じ翼と前足の役割を兼ね備えた前足。ティラノサウルスを思わせる凶暴な顔。二十メートル以上ある体躯は俺の知るワイバーンレックスと瓜二つだ。
「さて…一狩り行くか」
「ガアアアアァァァァ!!!」
俺が腰の刀に手を添えると同時に、ワイバーンレックスが吼えた。狩猟開始だ。
―NowLoading―
「ガアアアア!!」
ワイバーンレックスは俺を目掛けて真っ直ぐに突進して来た。これ以上ない単純な攻撃方法だが、その速度は公式設定で五十キロを越えるらしいが、明らかにそれを越えてる気がする。大迫力にも程があるが―
「
やっぱりそれ以上の速さに目が慣れてると冷静に対処できる。ギリギリまで引き付けてステップで突進を躱す。
「ガアアアア!!」
「!」
だがワイバーンレックスは突進が空振った瞬間にドリフトで振り返って俺を叩き潰そうと前足を振り上げた。成る程、ゲームじゃないからこそできる初見殺しだな。だけど―
「フッ…!!」
ズババン!!
「ガアアアア!?」
―振り下ろされるよりも速く斬れば問題ない。俺は一瞬で腰を低くして構えると、抜刀して前足を斬りつける。
硬いな…バラバラにするつもりだったんだが…爪に至ってはちょっと削れただけだし、こりゃ身体両断して終わりってのは無理だな。
「ガアアアア!!」
「!」
ワイバーンレックスは予想外の手傷を食らって怒ったのか、身体を回転させて俺を吹き飛ばそうとする。当然食らったらマズいので後ろに飛び退いて躱す。
「━━━━━ッ!!」
「ッ!!」
飛び退いた俺に対して追撃として地面を抉って岩を飛ばして来た。俺は刀を振り抜いて無力化するが―
「ガアアアア!!」
―当然その隙を狙ってワイバーンレックスが飛び掛かって来た。刀は振り抜いてて防御するには一手遅くなる。だったら―
「フン!!」
ドゴォン!!
「ガッ…!?」
―俺は翼脚でワイバーンレックスの頭に拳骨を叩き込んだ。ワイバーンレックスは衝撃によって飛び掛かりの軌道が逸れて地面に叩き付けられた。
「痛ッ…流石に自分の倍どころじゃない相手を殴るのはキツイな…」
だが殴った翼脚からはじんじんとした鈍い痛みが伝わってる。流石に頭を砕くことはできなかったし、殴ることには向かないな。
「ガルルルル…!」
「! まだ戦う気か、タフだな」
ワイバーンレックスは口から血を流しながらも、まだやる気はあるようで顎を開閉させて威嚇している。ゲームみたいに何度も頭を斬り付けられて平気じゃないと思ってたが、やっぱりモンハン世界のモンスターはバケモンだな。
「ガアアアア!!」
またワイバーンレックスは俺に向かって突進して来る。俺は横に跳ぶことで躱すが、今度は切り返してしつこく狙って来る。単純ながら手が出しづらい攻撃だ。ゲームでもティガレックスの突進中はカウンター技やガンナーでもない限り手が出せないからな。
「ガアアアア!!」
ってか本当に暴れ回るな!?もう四回目だぞ!?しかも合間合間に前足叩き付けたりしてるし、間違いなくゲームに出てたらクソモンス確定だな。
こうなりゃ次の攻撃のタイミングでカウンター叩き込むしかないな。今の俺の身体能力じゃ追い掛けてぶった斬るなんてことはできないからな。
「ガアアアア!!」
五度目の突進、俺を通り過ぎたタイミングで俺は腰を低くして構える。今度は即席のカウンターなんてもんじゃない、全身全霊の居合抜きで仕留める。
「オオ━━━━━」
ワイバーンレックスが振り向く。ここだ!!
「フッ━━━━━」
俺は全力で地面を蹴ってワイバーンレックスに向かって突進する。全てがスローに見える中で、刀身を僅かに覗かせる。そして思い切り振り抜こうとした時―
「━━━━━━━━━━」
ワイバーンレックスが大きく息を吸い、身体を後ろに引いていた。
そこで俺は気が付く。このモンスターの子孫、ティガレックスの象徴とも言える武器を。轟竜と称される程の咆哮、それが最大の武器であるなら、その祖先種が使えないなんてことはあり得ない。
極限状態とも言える状況の中、俺の頭は全力で回転していた。とは言っても、もう抜刀の体勢に入っている以上は振り斬るしかない。今の俺は音を斬るなんて芸当はできない。このまま全力で駆け抜けて、俺の身体を音が貫く前に仕留め切るしかない。
賭けに近い形で情けないが、もうこうするしかない。覚悟を決めて、ワイバーンレックスを睨み付ける。
「ガアアアアァァァァ!!」
「━━━━━━━━━━ッ!!」
銀閃が煌めくと同時に、咆哮が大地を震わせた。
「……………」
「……………」
俺の頭の右側から、ツーっと一筋の血が流れ出す。衝撃を振り切れなかった…だが―
「ガアアアア…」
―ワイバーンレックスの身体に幾つもの剣閃が刻まれ、血を流して地面に倒れ込んだ。
危なかった…最後はギリギリだったな。とは言っても、俺が咆哮を考慮して戦っていれば避けられたことだからなあ、本当ならもうちょい余裕を持って勝てるぐらいじゃなきゃ駄目だな。
「終わったか」
「お疲れ様ー」
「!」
俺が一人で反省していると、後ろから声が聞こえた。振り向くとシンゲツとルインが立っていた。
「早いな、もう来たのか」
「轟音が聞こえる少し前に決着が着きそうな気がしたのでな。予想は容易い」
「血ぃ流してるけど大丈夫かい?」
「ああ、これは問題ない。というかある意味戒めみたいなもんだ」
「厳しいねえ…」
「いや、実際そうだ。コイツの実力なら無傷で勝つことも可能だった筈だからな」
うぐ…やっぱりシンゲツにはバレてるか。まあ、こればかりは俺が百パー悪いからな。
「だがそれ以外は目立った傷はないようだし、それに最後も音すら追随を許さず勝ち切った。実力は十分だろう」
「お、それじゃあ…」
「ああ、帰りに街に寄って
「え、死体どうすんの?」
「
「そっか、分かった」
シンゲツの言葉に俺は納得して、疲れていたのもあったからさっさと四輪車へ戻ろうと思った。
「……………」
「? ルイン、帰るぞー」
「! ああ悪い。今行くー」
「何見てたんだ?」
「いやー相変わらず良い腕してると思ってね」
ルインがワイバーンレックスの死体を見詰めていたが、声を掛けるとすぐにこっちに向かって来た。
少し何かを隠してるようにも思えたが、気の所為だと思って気に留めなかった。
―NowLoading―
そして俺達は四輪車で街まで移動し、アラシのおっちゃんの加工屋に寄った。
「お!来たか」
「! その口調からして知ってたのか?」
「ハハッ、そりゃあな。あれを打ったのも俺だしな」
「そうなのか。ありがとう」
「おお、今持って来るからちょっと待ってな」
そう言いながらおっちゃんは奥の方へ行くと、少ししてから白くて細長い包みを持って来た。
「この気配は…」
「お!鋭いねえ。そう、お前さんの身体から取れた甲殻を使ったもんだ。少し趣味が悪いかもだが」
「いや、別に良いよ。無理矢理剥ぎ取られた訳でもないし」
「そうか。それなら気合入れて打った甲斐があるってもんだ」
そう言って白い布を剥ぎ取ると、刺々しい装飾が施された白と黒、それぞれが混ざり合った刀が姿を見せた。それこそゲームの渾沌ゴア武器の感じをより刀に落とし込んだ感じだ。
「にしても変わってんなこれ、何か特殊な鉱石でも使った?」
ルインとしてもこの武器には少し興味を惹かれたようで、おっちゃんに質問する。
「いや、どんな鉱石を使ってもこんな風にはならねえよ。元の素材が多分特殊なんだろうな。武器自体の特性に癖がある」
「武器の特性…?」
おっちゃんの言った言葉に俺は思い当たる所があった。ゲーム内でも渾沌ゴアの武器には特殊な仕様があった筈だ。
「斬れ味自体は一級品なんだが、会心の手応えって思える時と不自然に手応えの悪い時があってな…闇雲に振るだけじゃ真価は発揮できんだろうな」
そう、渾沌ゴア武器はプラス会心とマイナス会心両方の性質を併せ持つ。普段は火力が上がったり下がったりするピーキーな武器なのだが…
「ただ…一種の極致に辿り着いた人間なら、この癖のある力すら十全に扱い切ることができるだろうな。使うだけでも良い修行になると思うぜ。どうする?」
おっちゃんは俺の方を見ながら聞いて来る。
狂撃化状態、狂竜症を克服した状態ならプラス会心とマイナス会心、両方の数値を足した上に克服したことによる会心率もプラス上乗せされるという破格の性能になる。
ただこの世界では極めることで一種の極致に至れるみたいだから、実力さえ付ければ常にその状態を維持できるというまさにぶっ壊れ状態だ。斬れ味も良いらしいし、貰わない手はない。
「貰って行く。ありがとう」
そう言って俺は刀を受け取る。握ってみると重いような軽いような、馴染むような気持ち悪いような、そんな奇妙な感覚に陥った。
「ハハッ、似合ってるぜ」
「良いね、映えてる」
「……………」
おっちゃん、ルイン、シンゲツは三者三様の反応を見せる。その反応とモンスターを倒してその報酬で新しい武器が手に入ったということで俺も内心テンションが上がっていた。
「頑張れよー。お前が上手く使えばそれだけ俺の評価も上がるからな」
「分かってるよ。ってか代金は?」
「ああ、今回は観測隊の調査も兼ねてのことだからな。そっちから代金は貰ってある」
ありがたいことだが、何か俺毎回代金踏み倒してる気がする。少し申し訳ない気もした。
「………おい」
「んー?どした?」
そこまでずっと黙っていたシンゲツが声を上げる。何か考えているような表情だったので、俺もシンゲツの方に向き直る。するとシンゲツは―
「
「「え?」」
―とんでもない提案をした。
「いや…!?は…!?良いのかよそれ!?」
「
「いや、俺にも本職があるんだが!?」
「弟子にやらせれば良いだろう」
おっちゃんは明らかに大慌てし、シンゲツはのらりくらりと躱して行く。
まあでもおっちゃんの驚きも分かる。いくら何でも急過ぎる。シンゲツは一体何を考えてるんだ?
「お前も教えられるだろうが!!」
「時には違う環境に身を置くことが刺激になることもある」
「お前以上の技術を持ってる人間なんていねえだろう!?」
おっちゃんがそう言うと、今まですぐに答えを返していたシンゲツは少し顔を落として―
「…お前も十分強い」
「…!」
―噛み締めるようにそう言った。おっちゃんもシンゲツの変わり様を感じ取ったのか、押し黙ってしまう。そうして少し間を置いた後、おっちゃんは静かに聞く。
「…本気でそう思ってんのか、お前」
「…でなければこんなことは言わん」
おっちゃんの質問に、シンゲツは力強く返す。実際、シンゲツは実力に対する評価は非常に厳しい。そのシンゲツが言うことの重さはおっちゃんも理解しているのか、少し考えた後―
「…わーったよ。アークは俺が預かる。本当に大丈夫なんだろうな?」
「構わん。責任は全て俺が受け持つ」
―頭を掻いて了承した。そして表情を柔らかくすると、呆れたような顔でシンゲツに聞く。
「今日からか?」
「ああ、よろしく頼む」
「あいよ」
そう言って、シンゲツは踵を返して帰って行った。事の成り行きを見守っていたルインはやれやれと言った様子でため息を吐くと、俺に近付いて来た。
「しばらくの間は会えないねえ…」
「ああ…家事ができないのは悪い…」
「いや良いよ。今まではアタシとシンゲツで回して来た訳だしね。気にせずしっかり学んで来な。おっちゃん良い人だし」
「分かった、ありがとう」
「おう!じゃあ頑張ってねー!!」
ルインは手を振りながら先に帰ったシンゲツの後を追って行った。俺はルインの姿が見えなくなるまで手を振っていると、おっちゃんが話しかけて来た。
「急で悪いな…大丈夫か?」
「環境が変わったぐらいどおってことねえよ」
「いや、美人な姉ちゃんがいなくなって気にしてるんじゃねえかと…」
「アンタ俺を何だと思ってんだ!?」
そんなこんなで、おっちゃんの元で世話になることになった。
大分話を進められた…お泊まり編もできるだけ早く進めます。
評価、感想もよろしければお願い致します。
それでは次回をお楽しみに。