ゲマトリア(偽)(かぼちゃ)の青過ぎる空 作:それがダメなら走っていこう
今回とにかくドタバタで滅茶苦茶でわかりづらい回かもしれません。
やめて!宇沢レイサの特殊能力で、シャーレカフェを焼き払われたら、
下手をすると世界のシステムと繋がってるキヴォトスまで燃え尽きちゃう!
お願い、死なないでシャーレカフェ!
あんたが今ここで倒れたら、先生や生徒たちの憩いの場はどうなっちゃうの?
ライフはまだ残ってる。ここを耐えれば、レイサに勝てるんだから!
次回「シャーレカフェ、死す」デュエルスタンバイ!
【Location:真夜中のシャーレ併設カフェ】
レイサとセイアがカフェに到着すると強固なはずのシャーレのセキュリティが機能していない。
まるで此処この場限りにおいて宇沢レイサ、彼女を来ることを止められるものは誰も居ない……
そう世界に保証されてしまっているようだ。
「アレのあそこが!きっちりと整い過ぎていて嫌いです!」
レイサはゴミ箱を蹴とばした。
崩さずにはおれない。
「何をやっているんだねレイサ!」
「ごめんなさいセイアさん!
このカフェはなんだか一部の隙も無くて息が詰まりそうです!」
「呼ばれてないけど!これますけれど!
長居は出来ないと思います!」
「どうしても崩さずにはいられません!」
「当て布を当てて穴をふさがないと!蟲を潰さないと!」
レイサは椅子を蹴とばしたり散らかしたり。
「とりゃー!」
それでも警備の一人も来やしない。
仮にもD.U.の連邦捜査部の本部があるシャーレビルで。
シャーレ所属の生徒だって詰めていないはずがないのに……
それどころか誰も何も反応しない、明らかに異常だ。
キヴォトスでは破壊活動など日常茶飯事。
綺麗に整えられたカフェが多少イラついた生徒によって壊されるなど良くある話ではあるのだが……
レイサのそれはちょっと散らかしておかないと大変なことになる、まるでレイサがカフェを破壊した、という事実が必要なような……
妙な切実さと脅迫観念のある行動だった。
百合園セイアはレイサの破壊行為を止めようとして止めた。
レイサの星型のヘイローがジジッっと異音を発してブレたからだ。
大気の、オゾンの焦げた匂いまでする……
レイサが破壊行為やシャーレカフェを散らかしている時だけその異変が止む。
そのことに気づいてしまったからだ。
「はは……物凄い恐怖を感じるというか名状しがたき不安に襲われてホラー映画のなかにいるみたいだよ……」
「ひっくり返して例のラプラスの匣を探しているけど多分ここじゃないです!」
「ひょっとして……此処の倉庫か……?」
シャーレのカフェにひっそりとある『倉庫』と書かれたドア。
「探し物があるなら急いでくださいセイアさん!!」
倉庫のドアは施錠されておらず、電気もついていない。
セイアが倉庫のドアに触れると音もなく開いた……
真っ暗で乱雑に物が詰め込まれており一つ一つ梱包を取り払うのだけでも一苦労そうだったが……
「こんなところから形状も不明なオーパーツを探せと言うのかい!?
これだけ物が乱雑にあって即座に見つかるわけが……!!」
倉庫が真っ暗が故、かえって目立つものがあったカーペットの一角からぼんやりと光が見えている。
「まさかとは思うが……うわっ……」
セイアがカーペットを剥がすと一枚のタブレットデバイスを見つけた……
元は白かったであろうデバイスには赤黒い血糊がべったりと張り付いて染められていた。
鉄錆の香りと白檀の香りが微かにする……
「皆が死に辛いキヴォトスでは死こそ禁忌。
殺人は極めて重い罪……ヘイローを砕く、とか『そうなった』とか、分かっていても言ってはいけない言葉を思い出させるね……
不良は殺す、とよく言うけれど、それだって二度と逆らわないよう、舐めた真似が出来ぬようヘイローを砕く一歩手前まで徹底的にボコボコにする……そういうニュアンスが強いが……」
恐る恐るセイアは光るタブレットを拾い上げた。
指でタップすると六角形の石板の枠の中、月と月桂樹、手を広げた人のピクトグラムロゴが表示されている。
ラプラス・エミュレーター……セーフモードで起動中……
ログが高速でタブレットの画面を流れていく。
限られたファイルとドライバのみの最小構成でブート中です……
生体認証――指紋認証中――
九件のゲストアカウントの内、該当一件、生体鍵及び神秘鍵一致しました。
非公開ゲストアカウント:百合園セイア
ブックマーク及び閲覧権限のあるスレッド:検索結果該当 一件
リンク先のページを新しい禁忌(タブ)で開きます。
ゲストアカウントは閲覧制限、有害コンテンツフィルタリング機能が実行されます。
【レイサは】パッチ当てて やくめでしょ【濡れ衣】 (online) 1 レイサ
【鍵アカ】ノアのストレージ【書き込みスレ主限定】 (online) 1 ノア
【対AI、遺産用ウイルスコード開発スレ】ROM (online) ――2 モモイ、ミドリ。
【セイアの】【編纂事象時系列スレ】【夢日記】(offline)
「これだ……間違いない、これがラプラスの匣だ。
滅茶苦茶気になる情報しかないんだが!!」
セイアは他のスレッドを開こうとするが鍵アカウントだったりフィルター、ファイアウォールなどに引っかかって上手く読み込めない。
自分の名前が書いてある項目をタップするが……
「警告――「α波」の不足、脳波周波数が不一致です。
覚醒時及び過緊張の状態でのラプラス・アーカイブへのアクセスは情報取捨選択に不具合が発生しかねません。
ヘイローを介して大量の01化された電子情報を受け取りきれず、セルフF5アタックの発生危険性……
発狂、ニューロンが焼き切れる不可逆損傷や電脳死フラットラインなどの心身の健康及び生命維持に重篤な危険を引き起こしかねません。
――それでも実行しますか?」
「そんなこと言われてこの場で開けるわけないじゃないか!!」
セイアは乱暴に×ボタンを押して警告文を閉じた。
詳しくヘルプを開くと睡眠時のリラックス状態ならばセイアは問題なく一部を閲覧、受信でき、あるいは精神のアバター化でキヴォトスの他の所に精神の一部を投射できると書いてある。
「くそっ、リンクは切れてないからやはり夢で接触するしかないのか……!」
「何かほかに情報は無いか……!」
ラプラスの匣のタブレットに、開けそうな動画データを見つけた。
(一件の動画データをデコードします……)
「見つけましたかセイアさん、ラプラスの匣を!」
ひとしきりカフェを破壊したレイサが駆け寄ってくる。
「今良い所なんだ!ホントお願いだから静かにしていてくれレイサ!」
「声、大きかったですか……すみません……私いつもこうなんです……」
宇沢レイサはしょんぼりした……
ラプラスの匣から再生された謎の動画をセイアは食い入るように見つめた。
ノイズもひどい動画の中で、背景は電車内だろうか?
電車のシートに座って一人の女の子が喋っている。
黒い傘の仕込み銃、紅い輪のヘイロー。長い白い髪。大きな白いリボン。
真っ黒な学生服とコートの少女が……
「キヴォトスの透明な世界、汚れ無き純白の少女に不要と断じられた色彩。
忘れられた神々には相応しくない忌まわしき虹、その一切が不純物……」
「嫉妬の緑 傲慢の紫 憂鬱の藍 憤怒の赤 強欲の黄 色欲の青 暴食の橙」
「“枢要罪(すうようざい)”」
「汚染されれば恐怖と狂気に陥って二度と戻りません」
「ラプラスの匣は色彩に対するファイアウォール、サンドボックス」
「ウィルスチェスト」
「シッテムの箱の子機、予備、あるいは仮想デバイス、ミラーシステム」
「キヴォトスに要らないと判断されたものを詰め込むゴミ箱」
ノイズは酷く、画面は砂嵐だらけ。音声は途切れがち。
それでも目を離せず、少しでも情報を拾おうと
食い入るように見つめるセイア、その後ろから珍しく黙って覗き込むレイサ。
「回答、物語を暗唱します……遠い昔、一人の女の子がいました」
「……女の子は頑張り屋さんなので、頑張りました」
「とてもとても頑張りました今でもずっと頑張っているそうです」
「頑張り終わる明日は来ません。だって終わらないために」
「頑張ってる女の子を、終わらせるなんて誰にも出来ないから」
「――おしまい」
ノイズ塗れで殆ど聞き取れないが
なぜ そんなことをと誰かが続きを促したようだ……
「それが彼女の願いだったから」
「自らの恋と体と記憶をも捨てて願ったキヴォトスの未来だったから。 」
「力に任せて無名の司祭と名も無き神を放逐した
「幽閉の煉獄。楽園の学校、いずれ彼らが復讐にやってくるのは自明の理……」
「でも、罪深き自らの民以上に彼女は自分自身を責めた」
「忘れられた神々と呼ばれる者たちに“世界”を与えるためには――」
「それしか方法がなかった」
「彼女は今でもその身を、タブレットに心を縛り付けて」
「最良の未来を計算し続けながら何人もの先生を、そして 最良の未来を待ち続けている」
「そう。あのタブレットが、彼女の棺」
「――シッテムの箱。連邦生徒会長の、罪に満ちた、聖櫃(アーク)」
(この子の言ってるお話難し過ぎてさっぱりです……)
(そうか……そうだったのか……これがキヴォトスの真実……)
宇宙猫になっているレイサ。
顔を真っ青にしているセイア。
「回答、どうやって時間を巻き戻すような途方もないエネルギーを得たか」
「マクスウェルの悪魔の話は以前したと推察――」
「"神の目"の話。何かに類似点を見出せませんか?」
「そう、マクスウェルの悪魔の逸話です」
「事象を完全に観測する手段があれば観測するという手段自体から無限のエネルギーを得られます」
「全ての次元、宇宙の可能性事象を時間軸を排除して観測し――」
「その後時間軸を戻していわば「忘れる」ことによって理論上無限に近いエネルギーを得ている、という事です」
「因果律に干渉できるほどの、そのプロセスの最初の火は連邦生徒会長が犠牲となって入れました」
「回答、無限の宇宙を可能性まで含めて演算するのは同じくらい巨大なコンピューターが必要になりますが……区切られた限定空間内であればクソデカコンピューターは必要ありません、現実的なサイズに収まります」
「サンクトゥムタワーを基点とする聖域(サンクチュアリ)内部」
「それによって再定義された有限の「キヴォトス」内部であれば演算可能」
「時間軸を排した時間操作及び事象可能性のロールバックは可能と推察します」
(手段まで回答されちゃったじゃないか!!)
(突然叫んでどうしたんですかセイアさん?)
ノイズは酷くなる一方で
ノイズは酷くなる一方でついに画像は砂嵐になり、音声データも飛び飛びになった。
「マフティーのやり方は……正しくありません……」
「絶対に間違わない独裁政権の樹立……」
「これがそもそもの間違いでした、ミスでした……」
「それができる頃には人類みんな神になっている」
「お願い……す…………マフティー…………………をとめて……」
ラプラスの匣――血まみれのタブレットの電源が落ちた。
「待って、まだ知りたいことが山ほどあるんだ!!」
セイアの悲鳴もむなしく、ラプラスの匣はうんともすんとも言わない。
「とにかく!マフティーって人を!止めればいいんですね!?」
とりあえず聞こえた部分だけ繋ぐレイサ。
「このデバイスを充電しなおして……ロックを解除……ミレニアムに協力を打診して……」
ブツブツと呟くセイア。
その時、轟音と共にシャーレ併設カフェの窓ガラスが叩き割られた。
「またやったのかい!?またやらかしたのかいレイサ!!」
「違います!!今の私じゃありません!!」
カボチャのヘルメットを被った連中が
シャーレのカフェになだれ込んできた。
「お前ら……そいつをこっちに渡してもらおうか……
うちらがテッペン取るためにそのオーパーツが要るんだ」
朱い髪にギザギザの歯をむき出しにしたリーダーらしきスケバンが
凶悪な面相でレイサとセイアを脅しつけた。
「……この程度でこの私、宇沢レイサを仕留められると思わないでください!」
大混戦が始まってしまった……
『くそっ、あいつトリニティ自警団のレイサだ!』
『キャスパリーグとガチでやり合ったこともあるスケバン轢殺正義暴走特急!』
「レイサはうちが抑える!おまえらはそのトリニティからラプラスの匣を取り上げろ!」
セイアは鼻を引くつかせた、硝煙に交じって
玉ねぎの腐ったようなにおいがあたりに漂っている……
カフェのキッチンに目をやれば弾痕のついたガスボンベと配管が……
「やめっ……戦闘の余波でガス管が……!!」
セイアの警告は遅きに失した。
シャーレのカフェは閃光と爆発に包まれた。
「セイアさん!セイアさん!!」
「ううっ……レイサ……匣を……!!」
「クソっ、追えっ!逃がすな……!!」
「隊長、時間切れだ、シャーレの奴らが来る……!!」
スケバンとヘルメット団に追い立てられ
ラプラスの匣を抱えて逃げ回ることになったレイサ。
駆け付けたシャーレの面々が見つけたものは……
破壊されきったシャーレカフェと……
爆発の余波で昏倒してしまったセイアだった……
面白いかどうかはわかんない。
カフェは無事爆破、しかしまだキヴォトスは終わらない。
先生も生徒もマフティーも誰も死んでませんしね。考察班の脳はこんがり焼いてやる……
「もうちっとだけ続くんじゃ」