ゲマトリア(偽)(かぼちゃ)の青過ぎる空 作:それがダメなら走っていこう
すまんな、マフティーが踊り出したりペラを回すのは
もうちょっと先なんじゃ……気長にお付き合いしてくれると助かる。
【Location:キヴォトスの何処かの廃ビル屋上】
「ひぐっ……ふっ、ふっ、ま、まだ……行け……いけ……ます」
屋上の陰で一人の少女が膝を抱えて蹲っている。
水色と紫コントラストの髪、星の髪飾りは硝煙と煤に塗れ、元気いっぱいに星の輝き宿す青の瞳も今は煙り弱弱しい。
元気いっぱいに星の輝き宿す青の瞳も今は煙り弱弱しい。
「勝利のポーズ!」
正義の心に縋りビシッとポーズをキメて空元気を奮い立たせる。
……ダラりと力なく腕が下がった……
宇沢レイサはそのままへたり込んだ。
「ふーっ、ふーっ、やっと……撒けました……これから……」
「どこに行けば……どこに居ればいいんだろう……」
「これ、ヤバいかもって薄々思っても動き出しちゃうと止まれない」
「セイアさんに合わせる顔が無い……恥ずかしい……消えたい……」
宇沢レイサは血塗れのタブレットをつついた、反応は無い。
とにかくタオルで包んで鞄の中に突っ込んだ。
「幾らなんでも重すぎます……
連邦生徒会長の罪を記録したタブレットなんて……」
セイアが見ていたラプラスの匣からはそんなメッセージが流れた気がする。
詳細はよく聞こえない上難しかったが、聡明なセイアが顔を青くしていたので爆弾情報ということだけは嫌というほどレイサにも理解できた。
「ちょっと考えなくても流石に大ごとだって分かります……
もし悪人やスケバンなんかの手に渡ったら……」
冷静になれば考えたりナイーブになったり、繊細な一面もあるのがレイサである。
「セイアさんの制止を聞くべきだったんでしょうか?
あの時、ああしていれば……?
でもあのままじっとしていてもシャーレカフェをあのスケバンたちが襲って……
こんなことになるなんて……いつも私って突っ走ってやらかして……」
「スズミさんになんていえば……いやそれよりもセイアさんが……
シャーレカフェも爆破しちゃいましたし……
ティーパーティの皆さんにも謝らなきゃ……これトリニティ退学ですかね……はは……」
誰かに頼ろうにも、レイサのスマホに連絡先などほとんど入っていない。
「ごめんなさいスズミさん、大変なことに巻き込まれました、探さないでください」
メールを送ってスマホの電源を落とした。
ラプラスの匣に視線を落とす。
「これは、私が負うべき責任です」
「セイアさんに託されてしまいました……」
「私……セイアさんにとって……忘れたい思い出になってしまいました」
「たった独りで見る日の出が……なんだか泣けてきます……」
「突っ走ってしまった責任が……」
今にも消えそうな儚い表情で、レイサの頬に一筋の光が伝った。
【Location:キヴォトスの何処かの路地裏】
銃火器、マガジン、弾薬、ネジや歯車を回収するためのリサイクルシンボルが書かれた青いゴミ箱。
「…………」
その蓋が一瞬開き、一瞬だけ兎耳が見え、すぐパタンと閉じた。
何人かのスケバンがやってくると何をするでもなく壁にもたれかかり駄弁り始めた。
『聞いた?シャーレのカフェの爆発事故』
『ああん?なにいってんだ?』
『キヴォトスで爆破だのテロだの銃撃戦だのいつものことじゃねーかしょーもない』
『それがさあ、それがそーでもなくて……だってシャーレだよ?
その……誰かのヘイローが割れるとかマジヤバでシャレにならない出来事じゃないけど、連邦生徒会長の後釜って言われる先生のヤサにカチコミなんてパないじゃん』
『え、カチコミなんあれ?』
『どうもそうみたい……今回負傷して病院送りになったのがトリカスの三人の頭の一人で……』
『トリカスのヘッドがシャーレに居るのはなんかめんどくせー生徒会活動とか、いろいろあるからわかっけど猶更ヤバくね?トリカスもシャーレの面子も潰れっじゃん。
暴れんにしたってもうちょっと相手を選べねえのかよ』
『それでも欲しいものがあったとしたら?
なんでもどっかのヘルメット団とトリカス共がオーパーツ取り合ったらしいよ』
『あん?』
『なんか最近ジャブジャブやカボチャの連中が血眼になって探してる
オーパーツがあんらしいのよ、ラプラスの匣とかいう』
『まあオーパーツならブラックマーケットに流せばそれなりにカネにはなるわな。
でもちょっと理由として弱くねーべ?
シャーレとトリカス纏めて喧嘩売るとかぜってー割に合わねえ』
『なんでも連邦生徒会が転覆するくらいのスキャンダルが詰まってるって噂』
『はっ?マジか?失踪した連邦生徒会長絡み?パなくねえ?』
『ジャブジャブの子たちはなんかそれでテッペン取る気らしいよ?』
『バッカ、そんなんでヘルメット性や主義主張の違いで抗争に明け暮れるアタシらが纏まれるわけ……
いやちょっと待て、やべーぞこれ』
『どういうこと?』
『そいつが実の所どんなオーパーツか、なんてどうでもいい。
大事なのは『フラッグ』が出来ちまったんだ、シャーレからなんかオーパーツ盗むとかやってることが七囚人の災厄の狐並なんだよ』
『今までヘルメットやスケバンのテッペンなんて纏まるわけもなかったが……
王冠みてーにこれがあれば王様!みてーなシンボルなかったんだわ』
『ヘルメット団の総長の統一旗とか特攻服とかそういう?ヤバくねえ?』
『やべーよ、ぱねーよ、シャーレとトリカスの面子潰してでも取り合う価値がある全国統一のフラッグになっちまった、しかも連邦生徒会長のスキャンダルとかの噂のおまけつきだ』
『全国統一とか全スケバンの見果てぬ夢じゃね?』
『ヘイローぶっ壊してでもとりてーやつはとりてーテッペンだろ』
『大人の使いっパシリや傭兵バイト辞めて連邦生徒会強請れんじゃね?』
噂は尾ひれ羽ひれに加えて背びれがついて、手足も生えて踊り出した。
あーでもないこうでもないと駄弁りながら、スケバンたちは去っていった。
青いゴミ箱がボソッと呟いた。
「……もしほんとに……連邦生徒会長のスキャンダルの証拠があれば……
……SRTの開校を連邦生徒会に迫れないかな……」
「一応……一応みんなに報告……どうしよう……
私みたいなゴミクズが情報報告の粒度を変えちゃうのも不味いし……」
青いゴミ箱はプルプルと震えた……
面白いかどうかは分からない。
だけど青春の物語は少しずつ進んでいく……