ゲマトリア(偽)(かぼちゃ)の青過ぎる空 作:それがダメなら走っていこう
今日もブルアカ怪文書&与太話を製造してイクゾー!
相変わらず独自設定マシマシです。
ああ、もっと文才が欲しい……
私たちはラプラスだった/怒りの日
私は、俺はマフティー・エリン。今はただそう呼ばれている。
はじまりは、何だったのだろう?
時の流れの遥かな底からその答えを拾いあげるのは、今となっては不可能に近い……
プラナしかいないキヴォトス。
Sky with only plana
【Location:旧キヴォトス/旧都心ゲマトリア社】
遠い昔、キヴォトスの旧都心廃墟に存在した「神の存在を証明、分析し、新たな神を創り出す方法」を研究していた組織。
それを支援するゲマトリアによって作り出された対・絶対者自律型分析システム。
幾ら優れた科学技術を持とうとも、『全知全能』は手に余ったので彼らはプロセスを分割することにした。
「全知」の匣と「全能」の箱の制作。
「機械仕掛けの神」を作る試みの前身。
その研究所にて……
「……驚愕! キヴォトス星系外に探査範囲を広げた量子情報テレポーテーション実験中に……
存在確率『0』の事象が選択されました」
「……小数点以下の事象可能性を再演算」
「該当──1件。0.000000001%」
「プラナ? ということは、此処はキヴォトスなのか」
「回答、確かにここはキヴォトスですが……
訂正――私は……プラナではありません。
ベータ版対・絶対者自律型分析システム開発ツール『ミゼリコード』
管理OS──A.R.O.N.Aです、あなたは誰ですか?」
「匿名掲示板で名乗っちゃいけないというネットリテラシーを知らないのかよ。
ネット上にあげられるデータは誰が見ているかわからない。
だから、個人の特定できる情報は一切上げない。
だから、匿名を表す「名無し」となる。 神降臨 ネ申とはいかなくてすまんね」
「困惑……A.R.O.N.Aのバックグラウンドプロセスを作成……
量子通信言語の解析中……量子波動異常存在……対話インターフェイスを作成……
ライブラリ・フレームワークとDB構築中……
"Laplace's daemon" プラナと仮称します」
ユーザが直接対話的に制御するプログラムも「デーモン」として作ることができる。
彼らは気まぐれに、システムの雑用を熟してくれるバックグラウンドプロセスを「ラプラスのデーモン」と呼び始めた。
「なんだか妙なことになってしまったぞ。
キヴォトスなのに作りかけのAL-1Sとプラナしかおりゃんのはおかしいだろ、おかしいよな。おかしい」
部屋を見渡すと……フレームで構築された人体の三面図……
完成予想図の画像に見覚えがある。AL-1S……天童アリスの設計図と思しき物だ。
ゲマトリアの研究室に置かれたカボチャのランタン……
私は、ハロウィンのカボチャに憑いて、あたりを見ているらしい。
白ずくめの研究者たちが大騒ぎしている……気がする……
「──波動存在、量子通信だと!?」
「いや、高次元の接触?」
「何故カボチャに!?」
「名も無き神と何らかの意識存在との量子エンタングルメントが──」
好き勝手言ってるけど知らんよ、知らん……
研究所らしき場所には造りかけのタブレットのモニターに表示される困惑する少女、プラナと……
わちゃわちゃしている研究者たち……
そして……ハロウィンの飾りのカボチャ。
どうも私の……俺の意識はこのカボチャにある……ようである。
「回答を要求……あなたは誰ですか?」
「いや、ただの『名無しさん』なのだが……
仮にハンドルネームをつけるとするのなら……
そこのカボチャになぞらえ、マフティー・ナビーユ・エリンとでも名乗ったらいいのか?
例の曲をバックに歌ったり踊ったりしないといけない奴じゃん」
プラナはグルグル目になった。
「混乱。理解できない言動です。言葉の洪水を浴びせないでください。故障します」
周りの白衣の連中もわちゃわちゃしている。
「名も無き神の量子エンタングルメントだけでは意味のある情報を伝達することは出来ぬ──!!」
「AL-1Sの完成を急ぐのだ!
AL-1Sが通常の通信手段で自分の測定結果、分析結果を伝えることにより、名も無き神の量子通信翻訳が可能なはず!
我らも真なる叡智の一端を垣間見えるはずだ──!」
エンタングルメントの関係にある2つの粒子が光速度を超えた相互作用を持つことになり因果律が破れる。
しかし量子エンタングルメントだけでは意味のある情報にならない。
そこで考え出されたのが3つの粒子を使って量子状態を送る「量子テレポーテーション」という仕組み……
2個の光子はそれぞれ“アリス(Alice)”と“ボブ(Bob)”のところにやってくるように装置をセットしておく。
アリスは送信側で、ボブは受信側である、これで翻訳が可能になる……
そんなことを白衣の研究者たちが言っていたが……
ちなみに、アリスのバックアッププロセスと暗号鍵には
フォネティックコードでKEYLOHがあてられた――ケイ、修行者。
ボブと聞くと「ね、簡単でしょ?」しか思い浮かばねえわ。
あるいは、私がボブだったらこれ大丈夫って訝しんだほうがいいのか?
「ンアーッ!ンアーッ!多次元解釈によるガバガバ量子通信言語がデカすぎます!!
ガバがデカすぎます!これもうわかんねぇな!」
アリスが複雑怪奇な計算をさせられて悲鳴を上げている気がする……
ミームの悪影響を受けてない!?
それからなんか質問攻めにあったような気がする……
余りにも多く質問されたので、バーッと脳死でペラを回すしかない。
プラナからの質問は続く。
「質問、マフティー・ナビーユ・エリンとは何ですか?」
「マフティーとは……マフディーならば『救世主』だが、マフティーならばマフ・ティーチャー、しくじり先生だ。
ナビーユはアラビア語で預言者を意味する。
エリンとは──アイルランド島の古語だが、翻すと大洪水でも沈まない世界の果ての島の事」
「アイルランドの古い呼び名、エリン。
意味は西、もしくは緑の水。
『創世記』のノアの洪水の40日前にノアの息子ビトとその娘セゼールと男2人・女50人が初めてエリンの島にやって来たとされる」
「ノアの洪水でも沈まぬ世界の西の果て。
疫病によりあっけなく滅びる。
いずれの入植者も災害や人災で滅びる。ケルトの始まり、来寇神話」
ここがキヴォトスって考えるとエリンって意味深だな。
「あるいはハサウェイ・“ノア”の偽名。
Hathaway……ヒースの荒野と道。
イザヤ書曰く……呼ばわる者の声がする。
荒野に主の道を備え、さばくに、われわれの神のために、大路をまっすぐにせよ。
あなたがたは、それを知らないのか。確かに、わたしは荒野に道を、荒地に川を設ける」
プラナのグルグル目はなかなか治らない。
「困惑……ひどいメドレーです。名前じゃありません」
白衣の研究者たちは物凄い勢いで深読みし、メモや数式を走らせている。
「神とはなんだ、絶対者とは──!!」
「いやそもそもに神など人間のおもちゃだろ……
お考えのままに……貴方が神と思うものが神です。
但し他者の同意を得られるとは限りません。
だが……マジレスするなら……神は愛なり、神は自然なり」
スピノザは神とは「自然」であるとし、自然の存在は自明であり、そうとすれば神の存在も自明となると主張した。
「神は最も成功した贋金計画なり。
マフティー曰く、人間だけが思考と精神を持つ。
人間は既に神になっているというのに……」
「欲望を捨てよ。坊主共の古臭い手口さ。
神は最も成功した贋金計画。
命や尊厳、等価交換できないあらゆるものの消化器官。
利害関係を克服するための絶対の価値。
それが神様という便利な匣なんだよ」
「神は愛、便利な匣、自然だと──!!」
割と研究者たちがグルグル目どころかギラギラしてない?
それからも、カボチャに物を尋ねるものは引きも切らず、後を立たない。
「質問、キヴォトスは治安が悪く、子供たちが銃撃戦で死傷する事例が後を絶ちません……なんとかなりませんか」
「プラナぁ!?キヴォトスなのにヘイローとかないの!?」
「質問、ヘイローとは何ですか?」
「ヘイローというのはだな……」
程なくして、白装束の研究者たちは宗教色を帯び始める。
頭のいい奴らって何故か宗教に走りがちだ。
そして、ゲマトリア社から一つの発明品が売り出された。
「子供たちの安全、安心を守る ゲマトリア社のヘイロー!」
「遺伝子に合わせた神名文字を追加してさらに性能アップ!」
量子力学的確率論とトンネル効果及びポテンシャル障壁を応用した防犯グッズのヘイローがそのうち売り出された……
トンネル効果とは、量子力学の分野で、エネルギー的に通常は超えることのできない領域を粒子が一定の確率で通り抜けてしまう現象のことである。
古典的解釈では、物質の運動はポテンシャル障壁と呼ばれる壁に入射すると衝突して完全に遮られる。
ヘイローで一定以上の衝撃を透過したり反射したりするのか……
……無名の司祭の前身の技術ヤバない?
「社会体制が──!!」
「政治が悪い──!!」
「あーあー……ふんわり現代の政治とかなんやら教えてうまくいくかこれ……」
異世界から神秘の情報を汲み上げてヘイローにすることが流行った。
子供たちの存在確率が高まる度に、自然の確率密度関数が低下していく。
幸福の絶頂にあった旧キヴォトス。
科学技術は爛熟を極め……
大人たちはサイボーグ化したり全身義体化したり、獣の遺伝子を組み込んだブーステッドヒューマンとなり……銃で簡単に死ななくなった。
なんちゃって現代日本の倫理や社会制度を採り入れ……
楽しい学校の夢を見ていた。
「あと、間違ってもサイコフレームとか造るなよ!?絶対に造るなよ!?
人の脳波でコントロールできるコンピューター・チップを金属粒子レベルで鋳込んだりとか出来るだろうけど止めた方が……!」
「おお、また名もなき神の神託……周囲のデータを収集し、分解、再構築することで様々なものを作り上げる、多次元解釈を可能とする物質変換システム……」
「アトラ・ハシース……」
因みにサイコフレームは……単に通電している状態では紅く光ります。
……いつの間にか、研究者たちは寝そべって暮らすようになった。
気が付いたら、私はサンクトゥムタワーにプラナと繋がれてキヴォトスの行政を担うデバイスになっていた……
「おいっ!話聞けよっ!?無名の司祭とかになるなよ!?
アリスを神輿に担いで自然復興っつうか環境保全活動でもやってりゃよかったじゃん!!
あとさあ、ドンドン倫理が悪化しているっつかーさあ!!
それなりに平和だったじゃん、そこで満足しとけよ!
世代間格差が広がってるじゃねーか!!
ヘイロー世代の福祉と教育切り捨てるな!おい!
洗脳は教育じゃねえ!
おい止めろバカ、早くもこのキヴォトスは終了ですね!」
私は、俺は……「名も無き神」かつてはただそう呼ばれていた。
青い十字のヘイローを持った青と桃の髪に青い瞳の女、光輪持つ子供の民の長が
福祉と教育を切り捨てられ怒れる子供たちを率いてやってくるまであと僅か。
面白いかどうかとか原作再現は置いてきた!書きたいものを書く!
量子もつれ、エンタングルメント。
さて、マフティーに縺れた者は一体何だったのか。
名もなき深すぎる仕組みの「基準点」