Fate/GO 神人隣生国 イズモ 作:柏 憂奈
「先輩!先輩!!大丈夫ですかっ!!!」
身体を揺さぶられて目が覚めた。目の前には必死に呼びかけるマシュの顔がある。どうやら、レイシフトの衝撃で気を失ってしまっていたらしい。
「おはよう、マシュ」
「はいっ……おはようございます。マスター、体調に問題はありませんか?」
「大丈夫そう、問題ないよ」
軽くストレッチをしながら立ち上がり、どこかが痛んだりしていないか確認する。
痛みや違和感は見つからず、体調に悪影響はないと安心した。
「どれくらい気を失ってた?」
「……5分もたっていないと思います。ただ、私たち二人しか周囲に反応がなかったもので……。すみません。」
そういわれて思わず周りを見渡す。
周囲にノッブや沖田さん、晴明の式神などの姿はなく、木々に囲まれているだけだった。
晴明の言う異聞帯にレイシフトできたのか、それとも別の場所に飛ばされたのか、不安な気持ちになる。
「カルデアとの通信はできる?」
ただ、立ち止まっていることはできない。周囲の散策、現在確認できる情報を得ようとマシュに声をかける。
「あ、えーっと。つながらないみた――」
「マスター、拙僧がおりますぞ!」
耳元から急に声が聞こえ、思わずのけぞる。
振り向いて声の主を確認しようとするが誰もいない。
確かに某ンンンンの声が聞こえた気がしたが、幻聴だったのかとマシュと次の行動について話し合おうとする。
「マスター、聞こえていますでしょう、マスター」
「マスター、背中に道満さんの呪符が」
マシュがオレの背中を指差して指摘する。
言われてみれば、確かレイシフトの際に背中に衝撃を感じたような……
あれは道満が呪符を張ったことによるものだったのかと納得する。
背中に手を回すとしっかりと紙が張り付いている。
苦戦しながら剥がすと呪符はふわりと中にまって話し出した。
「マスターくん聞こえるかい?ダヴィンチだ!どうやら無線による通信も周囲の状況把握もできないから、こちらはすべて道満くんの呪符頼りなんだ。こっちの声が聞こえていたら呪符に向かってしゃべりかけてくれ!」
ダヴィンチちゃんの声も先程の道満と同じように聞こえ、完全な孤立状態ではなくカルデアとの通信は使えるのだと安堵する。
「こちら藤丸!ちゃんと聞こえてます!」
「それはよかった!ねえ道満くん、周辺の探索なんかもこの呪符でできないかな?」
「拙僧に出来ぬことなどそうそうありませんとも!ンンンンン!この通り!!すとーむ・ぼーだーで見れるようにもできますが」
どうやら今回の道満はやる気に満ち溢れているようで、ダヴィンチちゃんの言うことを素直に聞いているらしい。
解析するダヴィンチちゃんたちを素直に待つ。
「……表層だけだけど、簡単な解析ができた。場所としては日本の出雲……といえると思う。ただ、位相が完全にこの世界とずれている。これじゃあ初めからあることを知っていて、この目で確認できていないと認識することはできなかっただろう……」
「空気質は限りなく神代に近いですねー。しかし、先ほど晴明氏が異聞帯?とおっしゃっていましたが、異聞深度は限りなくEに近いです……現代からのものなのでしょうか?建物なんかも現代にかなり近いですね。ちぐはぐしています。しかも、異聞帯なら存在するはずの、空想樹の反応がありません。」
「東へと森を抜けた先に街並みが広がっていますぞ!。マスター!!まずは情報収集を!!晴明めの力なぞ必要ありませぬ!!マスターの実力を見せてやりなされ。ささ!!」
「ええい、なぜ君が指示を出すのかね!とにかくっ、安倍晴明からの連絡は今のところない!つまり、こちらだけで空想樹の切除に向けて動き出さなければならない!聞けば、この異聞帯は現代に近い日本。藤丸が暮らしていた……………様相に似ているだろう。情報収集を行い、まずは敵の正体を探りたまえ。そしてその中で安倍晴明、織田信長、沖田総司との合流をめざすのだ」
「「はいっ!」」
行動の方針が決まり動き出す。
場所は日本。平安京でのこととは違い、今度は現代に近い様子のようだ。
少し楽しみに思ってしまうのは不謹慎だろうか、現代に近い日本という言葉に懐かしさを覚えてしまう自分がいる。
「マシュ、行こう」
「はい!マスター」
そうしてオレたちは異聞帯の攻略を始めた。
――――――――――――
「これは、すごい活気ですね……」
木々を抜けた先には確かに懐かしい風景が広がっていた。
たとえるならば、夏に行われるお祭りのような喧騒が広がっている。
道には紙の提灯が浮かび、街灯の役割を果たしている。
商店街のような街並みに、人々が客を呼び込み、まるで人々全員が知り合いであるかのように笑い合い、話し合っている様子が伝わる。
思わず地元でもあった祭りのことを思い出してしまい笑ってしまう。
マシュとお祭りデートもいいかもしれないな、なんて思いつつ周りを散策する。
その中で、呼び込みをしていたひとりがこちらに気がつくと、当たり前のように挨拶をしてきた。
「あれま、これはこれは。こんにちは」
「こんにちは」
自分たちをまるで旧知の友人であったかのように接する。不審者を見つけたような態度は全くない。
まさかいきなり向こうから話しかけてくるとは思わなかったので、冷や汗が背中に流れる。
何かかおかしな行動を取ってしまっていたのだろうか。
「降りてきたのは初めてですか?」
なんてことを聞かれ、思わずうなづく。
「「ここから一番近いのはみくまり様のところか」「ええ、そうです」じゃあ、この道を真っすぐ行って左に曲がった突き当りです」
「ええと、ありがとうございます」
あれよあれよと道案内だけをされる。
いったいどこに案内されたのかもわからないが、とりあえず行ってみようか。
いきなり案内された先が監獄、なんてことはあり得ないだろうし。
マシュがどうしますか、と目で訴えかけてくるので行ってみようと合図をする。
――――――――――――
案内された先は大きな鳥居を持つ神社だった。
白く、太い柱に支えられた鳥居がこちらとあちらを分け、ここから先は神域だということが肌で感じられるように示している。
「マスター……」
「入ってみよう」
日本人として粗相がないよう、きちんと一礼をして鳥居を抜ける。
冷ややかな風が背中を吹き抜け、思わず身震いをする。
マシュもオレに習い、一礼をして入る。
二人で参道の端を歩き、手水舎で心身を清めて拝殿へと向かった。
もうすでに子供たちが笑いあう声が聞こえているので、危険はないのだと判断出来る。
マシュも緊張状態を既に解き、リラックスしているようだ。
拝殿前には、公園のように遊んでいる多数の子供たちと、それを優しく見守る女性の姿があった。
「こんにちはー」「おはようございまーす」などと、子供たちがこちら側に気づき各々挨拶してくる。
無邪気な様子に頬が緩み、自分たちもこんにちはと笑いかける。
当たり前だった日常が、ここにあるような気がした。
「初めまして、急にすみません」
子供たちを見ていた女性に挨拶をする。
二十代中盤くらいだろうか、はかなげな雰囲気を持つその女性は、黒くつややかな髪は腰のあたりまで伸ばしている。服装は着物で露出はないものの切れ長な目と合わさって、人の目を引き付けるような魅力が発せられている。
その瞳がこちらを覗き、オレは思わず唾を呑み込んだ。
何とも言えないこわばりが自分の身体を支配する。
隣のマシュも同じようで、戦闘の意識は全くないものの何かがあったときにすぐに動けるような準備をしている。
「そんなに恐れないで、君は……君たちは、カルデアの子だろ」
緊張をほぐすかのように、女性はこちらの最重要事項を口にした。
プロットとプロットの間を補完することが、こんなにも難しいことだとは思っていませんでした……